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民法

インターネット上の名誉棄損7

さて、前回は(1)加害者に対して(ア)損害賠償をすることについて、解説しました。

今回は、(1)加害者に対し(イ)謝罪広告を求めることおよび(2)サイト管理者等に対し、削除請求を行うことについて、その概略をご紹介します。

(1)(ア)謝罪広告が認められるには
(a)故意または過失があること
(b)違法性が特に強い悪質な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)謝罪広告等が名誉回復のために、相当であること
という要件を満たす必要があります。
裁判では、(b)と(d)はまとめて検討されることが多く、(b)と(d)が認められるかは、名誉侵害の内容・程度、指摘された事実の公共性の程度、金銭賠償・書き込み削除の有無などを総合的にみて判断されます。

次に、(2)サイト管理者等に対する削除請求についてです。
管理者等に対する削除請求が認められるには、
(a)名誉権が現在も侵害されていること
(b)内容が事実でないか、公益目的でないことが明らかであること
(c)金銭による損害賠償では、損害の補填が不十分であること
という要件を満たす必要があります。

なお、削除請求をする場合、通常の訴訟だけでなく、より迅速な判断を得られる仮処分という方法が用いられることも多いです。
この場合は、(a)(b)(c)に加えて、さらに
(d)保全の必要性(名誉侵害の程度が大きいことや、書き込みを放置しておくと、さらに多くの人がアクセスして、名誉侵害の被害が拡大することなど)。
を裁判官に説明(疎明)する必要があります。

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インターネット上の名誉棄損6

さて、前回までご紹介した手続を経て、ようやく加害者を特定することができるわけですが、そこで終わりではありません。
むしろ、これまでの手続はあくまでも前哨戦で、ここからが本戦といってもいいくらいです。
加害者を特定できたとしても、被害回復がなされるわけではありませんから、被害回復の手続を別途取らなければならないからです。

 被害回復の手段としては、(1)加害者に対し、(ア)損害賠償や(イ)謝罪広告を求めること、また、(2)サイト管理者等に対し、書き込みの削除請求を行うことが考えられます。

 任意の交渉で応じてもらえればよいですが、応じてもらえなかった場合、訴訟を提起して解決することを検討することになります。

 まず、(1)加害者に対し、(ア)損害賠償請求をする場合を検討してみましょう。

 損害賠償請求が認められるためには、(ア)故意または過失があること(イ)違法な行為であること(ウ)特定個人の名誉権を侵害したこと(エ)損害が発生したことという要件を満たす必要があります。
 このうち、特に問題となるのが(イ)です。

 実は、大前提として、指摘した事実が真実であったとしても、原則として、名誉権の侵害となり、損害賠償義務を負うことになります。
 ただ、真実を指摘した場合に、常に損害賠償義務を負わなければならないとすると、憲法上の権利である表現の自由(21条)が著しく損なわれることになります。

 そこで、
(a)名誉棄損の対象が公共の利害に関することであること
(b)公益を図る目的があること
(c)指摘された事実が真実であることまたは(d)加害者が書き込みをするにあたり、相当な調査をし、指摘した事実が真実だと信じたこと
という要件を満たしている場合には、(イ)違法な行為とはいえない、として損害賠償義務を免れることできるとされています。
 
 そのため、実際の訴訟では、加害者の行為が(イ)違法な行為といえるか、について熾烈な争いとなることが多いです。

 なお、名誉権とは、人の品性、名誉、信用といった客観的な社会的評価のことをいい、「バカ」や「アホ」といった具体的な事実を伴わない侮辱的な書き込みでは、名誉権侵害は認められません。
 また、「特定個人」の名誉を侵害するものでなければなりませんから、たとえば、「日本の飲食店では、諸外国に比べて、コロナ対策が不十分である」といった抽象的な書き込みは、名誉権侵害として認められないということになります。

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インターネット上の名誉棄損5

さて、前回は(β)IPアドレス等のISPを特定するための情報を得る手段である1段階目の手続について説明しました。

今回は、(β)の手続きにより得たIPアドレス等を利用し、(γ)ISPを特定したうえで、ISPから加害者情報を得る2段階目の手続について解説していきます。

手続としては、(1)加害者の利用したISPの特定+ログの保存、(2)ISPに対し、加害者の契約者情報の開示を行います。

まず、(1)加害者の利用したISPの特定についてですが、これはインターネットで「IPアドレス ISP 特定」などと検索すれば、IPアドレスを入力しただけでISPを特定してくれるサイトが見つかりますので、それを利用します。

なお、ISPを特定した段階で行っておくべきことがあります。
それは、ログの保存です。
ログの保存方法としては、裁判外でISPにログ保存の要求をする方法と裁判上の手続による方法がありますが、要求をすればログを保存してくれるISPが多いので、裁判上の手続までは必要ないことが多いです。
 
 ログの保存後、(2)ISPに対し、加害者の契約者情報の開示を求めていくことになります。
 こちらも、裁判外による方法と裁判上の手続による方法があります。
 
 裁判外による方法として、テレコムサービス協会の書式を利用する手段があります。
ただ、契約者情報は、顧客の個人情報であるため、裁判外で開示される可能性は低く、あまり効果的な方法ではありません。
 
 そこで、主たる手段は、裁判上の手続による方法になります。
 この場合、第1段階の場合と違い、アクセスログが短期で抹消されるといった緊急性を基礎づける事情がないため、仮処分ではなく、通常の訴訟になります。
 
 この訴訟では、発信者情報開示請求権があることを証明する必要があります。
発信者情報開示請求権が認められるためには、前回も説明しましたが、(ア)特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたこと、(イ)特定電気通信役務提供者に対する請求であること、(ウ)権利侵害の明白性、(エ)開示を受けるべき正当な理由が必要です。

 以上の2段階の手続によって、インターネットに書き込みをした加害者を特定することができます。
 加害者を特定できれば、損害賠償や謝罪広告等の命令に関する訴訟を提起することができるようになります。

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インターネット上の名誉棄損4

さて、前回、書き込みをした加害者を特定するには、2つの段階を踏む必要がある、という話をしました。

今回は、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得るという1段階目の手続について、解説していきたいと思います*1。

コンテンツプロバイダからISPを特定するための情報であるIPアドレス等を入手する方法としては、裁判外による方法と裁判上の手続による方法という2つの手段があります。

まず、裁判外による方法については、テレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」という書式にしたがって、印鑑証明書や身分証の写しと共に、コンテンツプロバイダに対し郵送するのが一般的です。

つぎに、裁判上の手続としては、仮処分の申立てを用いるのが一般的です。
 この手続では、(1)発信者情報開示請求権があること、および(2)IPアドレス等を早急に開示してもらう必要性を裁判官に説明(疎明)する必要があります。

(1)発信者情報開示請求権があることという要件が認められるには、
・特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたこと
・特定電気通信役務提供者に対する請求であること
・権利侵害の明白性
・開示を受けるべき正当な理由
が必要です(プロバイダ責任制限法4条1項*2)。

(2)IPアドレス等を早急に開示してもらう必要性については、加害者を特定するには、アクセスログという通信履歴が必要ですが、一般に3か月ほどで削除されてしまうので、削除までの期間が経過していなければ、緊急性があるとされることがほとんどです。
 
以上を経て、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得ます。
そして、ここで得たIPアドレス等を利用し、(γ)ISPを特定したうえで、ISPから加害者情報を得るという2段階目の手続を行っていくことになります。
次回は、この2段階目の手続について解説していきます。

*1 現在、発信者情報開示請求について、手続きの迅速化に向けて改正案が作成されていると報道されています(産経新聞2021年1月9日「【SNSの罠】ネット被害、裁判迅速化へ 地方の負担軽減は不透明」等)。
そのため、手続が大幅に変更となる可能性があります。
*3 プロバイダ責任制限法第4条第1項
「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損 害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。」

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インターネット上の名誉棄損3

さて、今回は、インターネット上の名誉棄損の加害者に対し、各種請求等を行いたいにもかかわらず、加害者が誰かわからない、という場合に、どのような手続きを取れば、加害者を特定できるのでしょうか。

まず、最初に、インターネットを利用する一般的な仕組みを簡単に説明します。
(a)加害者の利用したパソコン・スマホ
 ↓   
(b)インターネットの接続窓口であるISP*1(NTTドコモなど)のサーバーに接続
 ↓
(c)SNSや動画サイトを提供するコンテンツプロバイダ*2のサーバーに接続、という流れになります。

そこで、加害者を特定するためには、この流れをさかのぼっていく必要がある、ということになります。

まず、(α)書き込みを見て、書き込みがされたSNSや動画サイトのコンテンツプロバイダがどれかを確認します。

つぎに、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者が利用したISPを特定するために必要な情報であるIPアドレス等の開示を求めます。

そして、明らかになったIPアドレス等を基に、(γ)加害者の利用したISPを特定した上で、そのISPに加害者が誰かであるかの情報の開示を求めていきます。

以上のように、加害者を明らかにするには、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得た上で、(γ)加害者の利用していたISPから情報を得て加害者を明らかにする、という2つの段階を踏む必要があります。

次回は、この1段階目の手続である、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得るための具体的な方法や要件について、詳しく見ていきます。

*1 ISPは、インターネットサービスプロバイダの略称であり、「インターネット通信に接続するサービスを提供している主体」のことです。一般にプロバイダーと呼ばれます。代表的な企業としてはNTTドコモやソフトバンクなどがあります。

*2 コンテンツプロバイダとは、「コンテンツを提供する事業者」のことであり、SNSや動画サイト、ショッピングサイトなどが、代表例です。

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インターネット上の名誉棄損2

さて、前回、インターネット上の書き込みにより被害が起きてしまった場合、会社は、(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請や(イ)削除請求を行う、(2)加害者本人に対し、(ウ)書き込みの削除要求や(エ)被害の回復を求めるためα損害賠償・β謝罪広告等を強制する命令に関する訴訟を提起することが考えられる、という話をしました。

では、具体的に、どのような要件を満たせば、上記各手段を取ることができるのでしょうか。

まず、(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請する場合は、サイト上のオンラインフォームを利用する方法やプロバイダ責任制限法*1のガイドラインの書式に従った送信防止措置依頼の方法*2があります。
いずれの方法も、書き込みが掲載されている場所、掲載されている情報、侵害された権利、なぜ自分の権利が侵害されたと言えるかといったことを、サイト管理者等に説明する必要があります。

つぎに、裁判上の手続きである(イ)削除請求を行う場合には  
(a)名誉権(人の品性、名誉、信用といった客観的な社会的評価のこと)が現在も侵害されていること
(b)内容が事実でないか公益目的でないことが明白であること
(c)金銭による損害賠償では、損害の補填が不十分であること
が必要になります*3。

(2)加害者本人に対し、(ウ)書き込みの削除要求する場合も、やはり、任意の交渉ですので、定まった要件というものはありませんが、書き込みが違法であることや名誉権を侵害していることなどを説明し、説得することになります。

さらに、被害回復の(エ)α損害賠償に関する訴訟を提起する場合は、
(a)故意または過失があること
(b)違法な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)損害が発生したこと
が必要になります。

同じく、β謝罪広告等を強制する命令に関する訴訟を提起する場合は、
(a)故意または過失があること
(b)違法性が特に強い悪質な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)謝罪広告等が名誉回復のために、相当であること
が必要になります。

このような各要件を満たせば、形式的には、加害者本人に対して、削除要求や各種訴訟を提起することができる、ということになります。
ただ、実際の事案では、匿名で書き込み等がなされており、そもそも誰が加害者かわからない、ということが往々にしてあります。

そこで、次回以降は、加害者が誰かわからない場合に、どのような手続きを取れば加害者を特定できるのか、について解説していきます。

*1 正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
*2 プロバイダ責任制限法のガイドラインでは、どのような送信防止措置(書き込みの削除)の依頼があった場合に、送信防止措置を行うべきかが解説されており、送信防止措置請求に関する書式が公開されています。
  このガイドラインに従わない場合、サイト管理者等は、損害賠償責任を負う可能性が出てきますので、サイトのフォームを利用するときよりも、事実上の強制力が高い手段といえます。
*3 なお、削除請求の要件についての見解は別れており、上記の要件でなくとも、削除請求が認められる場合もありえます。

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インターネット上の名誉棄損1

2021年1月8日、再び非常事態宣言が発令されることになりました。本年も、新型コロナウィルス(以下「コロナ」)の問題は長引きそうです。

このような状況の中、心配されるのは、クラスター(コロナの感染者集団)の発生の有無やコロナ対策の実施などについてインターネットで虚偽の情報を書き込まれることです。
例えば、とあるレストランで、クラスターが発生したと虚偽の情報がインターネット上に書き込まれた場合、そのレストランの社会からの信頼や評価が低下し、来店客や売上の減少という損害が発生してしまう可能性があります。
また被害者がもう少し広い例としては、ある市町村で、居酒屋のコロナ対策が十分にされていないと虚偽の情報がインターネット上に書き込まれ、その市町村のとある居酒屋が被害を受けるという場合も考えられます。

では、上記のような被害が起こってしまった場合、会社はどのような対応ができるのでしょうか。

まず、考えられるのは、

(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請や(イ)削除請求を行う

ということです。

つぎに、(2)加害者本人に対し、

(ウ)書き込みの削除要求
(エ)被害の回復を求めるため
㋐損害賠償
㋑謝罪広告等を強制する命令
に関する訴訟を提起すること

等が考えられます。

もっとも、あらゆる書き込みに対して、上記の手段を行使出来るわけではありません。
次回は、どのような要件を満たせば、上記各手段を取ることができるのか、検討していきたいと思います。

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死後事務委任契約6

さて、これまで、死後事務委任契約についての概略を見てきました。
ただ、実は、死後事務委任契約だけでは、おひとりさまの終活としては、不十分です。

死後事務委任契約は、あくまでも故人である被相続人の財産以外についての要望を規定しているものです。

財産については、基本的には「遺言書」で規定しなければなりません。

むしろ、死後事務委任契約は、遺言書ではカバーできない自分が亡くなった後の諸手続や葬儀・埋葬等に関する事務について、被相続人の要望を実現するために考えられた手法なのです。

この点を踏まえて、先週(11月12日)、あさ出版様から上梓した著書『おひとりさまの終活「死後事務委任」』でも、死後事務委任契約だけでなく、遺言書や家族信託、成年後見制度等にも触れています。

おひとりさまや死後事務委任に興味がある方のみならず、終活についての知識を一通り得たい方にも最適な内容となっています。
終活のバイブルとしてご活用いただければ幸いです。

(弁護士 國安耕太)

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あさ出版様から著書『おひとりさまの終活「死後事務委任」』を上梓いたします(11月12日発売予定)

現在、日本は65歳以上の人口の割合が全人口の21%を超え、超高齢社会を迎えています。また、国勢調査では、高齢者の6人に1人が、一人暮らしをされているとされています。
生涯未婚率の上昇、出生率の低下など、超高齢社会の原因が今後も改善しなければ、“おひとりさま”社会がやってくるのは目前です。ニュースで耳にする孤独死も他人事では済まされなくなってきています。
実際、安心して晩年を過ごしたいとおっしゃる方々からのご相談も、年々増加してきています。

このような背景のなか、あさ出版様の編集者である小川様と知己を得、今後のおひとりさま社会について話をする中で、おひとりさまの終活についての書籍を執筆することになりました。
超高齢社会という日本社会の実情を踏まえ、最近話題となることの多い死後事務委任のほか遺言・家族信託・成年後見などおひとりさまの終活にかかわるトピックについて、まとめております。
ご自身の終活だけでなくご両親などの終活にもお役に立てれば幸いです。
(弁護士 國安耕太)

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死後事務委任契約5

死後事務として、埋葬、散骨等に関する手続きを依頼する場合、注意しなければならないことがあります。
 
まず、現在、日本では99%が火葬となっていますが、法律上は土葬も可能です。
ただ、場所によっては、条例等で土葬が禁止されています。
たとえば、東京都の大部分は土葬禁止区域に指定されています*1。
また、各墓地によって土葬が禁止されている場合があります。
そのため、土葬を希望する場合は、これらに違反しない墓地を選択する必要があります。
 
つぎに、遺骨についても様々な規制があります。
まず、遺骨は墓地以外の場所に埋蔵することはできません*2。
そのため、自宅で遺骨を保管することは可能ですが、庭や畑に埋めたりすることはできません。
また、遺骨をそのまま山中や海中に撒くことは、犯罪になります*3。
さらに、自治体によっては粉骨して粉状にした遺骨を撒くことも禁止しています。
 
このように、埋葬、散骨等に関しては各種規制がありますので、実際に依頼する場合は、これらの規制に注意して行うことが必要です。
(弁護士 國安耕太)
 
*1 港区墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則
7条(土葬禁止地域の指定)
条例第十四条第一項の規定により区長が指定する土葬を禁止する地域は、区内全域とする。
 
*2 墓地埋葬法
4条1項
埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

*3 刑法
190条(死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、または領得した者は、三年以下の懲役に処する。

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死後事務委任契約4

さて、前回は、誰に死後事務委任の受任者になってもらうのか、ということについて話をしました。

 

では、つぎに、死後事務として、どのような内容を委任したらいいのでしょうか。

 

一般的には、次のような事項を定めておくことが多いです。

 

・病院の退院手続きと精算

・葬儀、火葬に関する手続き

・埋葬、散骨等に関する手続き

・自宅賃料の支払い、解約手続き

・ガス、水道、電気などの解約手続き

・遺品整理など

 

もちろん、死後事務委任契約は委任者と受任者との間の契約ですから、基本的にはどのような内容を定めても構いません。

ただ、財産に関する事項は、遺言書等の定めが優先されますので、ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

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死後事務委任契約3

では、実際に死後事務委任の契約はどのように進めていけばよいのでしょうか。

 

まず、誰に死後事務委任の受任者になってもらうのか、という問題があります。

 

もちろん、遠い親族や友人、知人と契約することも可能です。

 

ただ、自分が歳を取れば、その分親族や友人、知人も歳を取ります。

死後事務の中には、慣れていないと面倒な手続きもありますから、頼んだ時は簡単にできると思っていたことでも、後々自分でやることが難しくなってしまう可能性もあります。

実際、友人に死後事務を委任され引き受けたものの、亡くなられたあと手続きをしようとしてうまくいかず、受任者の方が専門家に依頼することになってしまったというケースもあるほどです。

 

そのため、場合によっては、専門家に依頼することを検討してみることをお勧めします。

 

また、親族や友人、知人に依頼するのか、専門家に依頼するのかといった表面的なことよりも、もっと重要な本質的なことがあります。

 

それは、信頼できる相手に依頼する、ということです。

実際に死後事務が行われるとき、当然のことながら、委任者は亡くなっています。

依頼した相手が契約のとおりに実行してくれたのかを確かめることはできないのです。

 

そのため、何よりもまず自分の信頼できる相手に依頼する、ということを心掛けてもらいたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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死後事務委任契約2

前回お伝えした通り、死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の諸手続や葬儀・埋葬等に関する事務(死後事務)を第三者に委託する契約です。

 

ある人が亡くなったあとの諸手続は、残された家族や親族が行うことが前提になっています。

葬儀を取り仕切ったり、埋葬の手配をしたり、借家の解約や引渡しをしたりといった死後事務は、誰かが自動的にやってくれるものではありません。

 

役所がなんとかしてくれる、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

役所は何もしてくれません。

仮に役所の担当者がとてもいい人で、何とかしてあげたいと思っていたとしても、法的権限がない限り、そもそも何かをすることはできないのです。

 

以前、テレビを見ていたら、身寄りのない方が亡くなった際、「銀行に預金を預けているので、死んだらそのお金を使って埋葬して欲しい」といった書置きが自宅で見つかったといった話が出てきました。

 

もし、このような書置きがあったとしても、役所が銀行に行って預金をおろすことはできません。

役所には、そのような法的権限がないからです。

 

亡くなったときに他人に迷惑をかけたくないという理由で、自分の葬儀費用を残しておく人は多いと聞きます。

しかし、ただ葬儀費用を残しておくだけでは、そのお金を目的通りに使用することはできませんし、自分の思い通りの終活を完了することもできません。

 

そのため、死後事務を家族や親族に頼むことができない場合や、思い通りの終活をしたい方は、死後事務委任契約を検討することをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

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死後事務委任契約1

みなさんは、「死後事務委任契約」という言葉を聞いたことはありますか?

 

死後事務委任契約は、委任者が、第三者に対して、自分が亡くなった後の諸手続や葬儀・埋葬等に関する事務(死後事務)に関する代理権を付与して、処理を代行してもらうという内容の契約です。

 

通常、このような死後事務は、残された家族や親族が行っています。

もちろん行ってくれる家族や親族がいるのであれば、死後事務を委任する必要はありません。

そのため、現時点で死後事務委任契約を必要としている方はそう多くはないかもしれません。

 

しかし、一説によれば、2040年には65歳以上の単身世帯が2割を超えるとも言われています。

このようないわゆる「おひとりさま」が増えてくると、死後事務を家族や親族に頼むことは難しくなってくる可能性があります。

 

また、同様に、高齢の夫婦で身寄りがなかったり、親族と疎遠だったりする場合にも、死後事務を家族や親族に頼むことができないということが考えられます。

 

このような場合に備えて予め死後事務を代行してもらう契約、これが死後事務委任契約です。

 

今後は、死後事務を家族や親族に頼むことができない方も増えてくると思いますので、次回以降、死後事務委任契約の基本について話をしていきたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正8 まとめ

さて、先週まで、個別の改正箇所についてみてきました。

このほかにも重要な改正がなされていますが、基本的には、これまで判例で確立されてきた法理を明文化したものになっています。

 

たとえば、意思能力(判断能力)。

判例上、意思能力を有しないでした法律行為は無効と解釈されていましたが、これが明文化されました。

*改正法3条の2

「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」

 

また、判例上、将来発生する予定の債権であっても、譲渡や担保設定できると解釈されていましたが、明文はありませんでした。

これを明文化しています。

*改正法466条の6・1項

「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。」

 

さらに、賃貸借終了時の敷金返還や、原状回復に関する基本的なルールも追加されています。

*改正法621条

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

*改正法622条の2・1項

「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。」

 

このほか、多数の改正がなされていますので、改正法が施行される2020年4月1日までに、一度きちんとチェックしておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正7 瑕疵担保

現行法では、瑕疵担保責任が規定されています。

瑕疵担保責任とは、売買・請負等の有償契約において、その目的物に、容易に発見できないような欠陥があった場合、売主や請負人らが、買主や注文者に対して負わねばならない担保責任のことをいいます。

 

*570条本文

「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。」

*566条1項

「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」

 

このような瑕疵担保責任ですが、「隠れた瑕疵」の意義が分かりにくいといった批判がありました。

 

そこで、この度の改正では、瑕疵担保責任を契約不適合責任と再構成することになりました。

 

*改正法562条1項

「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」

 

そして、現行法では、買主は、損害賠償請求と解除しかできませんでしたが、改正法では、履行の追完請求(改正法562条)や代金減額請求(改正法563条)も選択できるようになりました。

 

このように、瑕疵担保責任は、契約不適合責任となり、大幅な改正がなされているので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正6 約款

約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項をいいます。

現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠となっており、たとえば、電車の運送約款、生命保険の保険約款、インターネットサイトの利用規約など、約款は、現実に数多くの場面で広範に利用されています。

このような約款を当事者間の契約内容とするためには、当該約款を契約内容とする旨の合意が必要となるのが原則です。

 

ところが、現行の民法には約款に関する規定がなく、また、確立した解釈も存在していませんでした。

そこで、改正法は、約款(「定型約款」)に関する規定を新設しています(改正法548条の2・1項)。

 

まず、「定型約款」については、「定型取引」において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体とし、

「定型取引」については、①ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、②その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものとしています。

 

そして、定型約款を契約の内容とするための要件についても明らかにしています。

すなわち、

(ア)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき

(イ)定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

は、相手方が定型約款の条項の内容を認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となるとされています(改正法548条の2・1項)。

 

ただし、(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなされず、契約内容とはなりません(改正法548条の2・2項)。

 

そのため、約款の内容については、専門家にきちんと相談してその有効性について検討しておくことが重要といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正5 保証

保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、主債務者に代わって支払をすべき義務のことをいい、主債務を保証している者を保証人といいます。

 

保証のうち、将来発生する不特定の債務を包括的に保証するものを「根保証」と呼んでいます*1。

その中でも、保証人が法人でない根保証契約(「個人根保証契約」)については、つぎのような規制が設けられています。

(1)極度額を定めない個人根保証契約は無効(改正法465条の2・2項*2)

(2)極度額の定めは、書面または電磁的記録で行わなければ無効(改正法465条の2・3項、446条3項*3)

(3)貸金等債務の根保証に関し、保証期間は原則3年、最長5年(改正法465条の3*4)

(4)主債務者の死亡、保証人の破産・死亡等の事情があれば、保証終了(改正法465条の4)

 

また、事業に係る債務(事業用融資)に関する保証契約についても、特則が設けられています(改正法465条の6・1項)。

すなわち、事業用融資に関する保証契約は、一定の場合(主債務者が法人である場合の取締役等が締結する場合等)を除き、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、効力を生じません。

 

なお、公証人による保証意思の確認の方式についても、詳細に規定されています(改正法456条の6・2項)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

このほか、保証には、通常の保証(単純保証)のほか、連帯保証、根保証、物上保証などの種類があります。

 

*2 改正法465条の2

「1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。」

 

*3 改正法446条3項

「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

 

*4 改正法465条の6・1項

「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」

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民法改正4 法定利率

債務に付けられる利息は、「年10パーセント」のように、一定の期間、一定の割合で発生する旨が定められます。

この利息を算定するための割合を「利率」といいます。

 

この利率には、法定利率と約定利率があり、法定利率は法律で定められた利率をいい、約定利率は当事者間の合意で定められた利率をいいます。

 

約定利率が定められている場合は、原則として約定利率に従います。

これに対し、法定利率は、

(1)利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定

(2)約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定

(3)逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除*1

に用いられます。

 

法定利率は、現行法では、民事の法定利率は年5%(404条)、商事の法定利率は年6%(商法514条)とされています。

 

しかし、昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いており、利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が 抑えられるなど、当事者の公平を害するとの指摘がなされていました。

 

そこで、改正法は、法定利率を市中の金利の変動に合わせて上下させる変動制を導入しています(改正法404条*2)。

具体的には、

(ア)利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による

(イ)当初の法定利率は、年3パーセント

(ウ)法定利率は、3年を一期とし、一期ごとに、変動する

ことになります。

 

なお、約定利率の上限がある場合(利息制限法等)、異なる法定利率が定められている場合(賃金の支払の確保等に関する法律等)もあるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 中間利息控除とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することをいいます。

 

*2 改正法404条

「1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。」

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民法改正3 消滅時効(2)

改正民法では、債権については

(ア)権利を行使することができる時から10年

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

のいずれか早い方の経過によって消滅時効が完成するのが原則です(改正法166条1項)。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時(権利を行使することができる時)から20年

(イ)損害および加害者を知った時から3年

とされています(改正法724条)。

 

しかし、これには、例外があります。

 

それは、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の場合です。

生命・身体は重要な法益であり、これに関する債権は保護の必要性が高く、また、治療が長期間にわたるなどの事情により、被害者にとって迅速な権利行使が困難な場合があります。

 

それゆえ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、つぎのような特則が設けられています。

すなわち、債務不履行の場合、不法行為の場合のいずれにおいても、

(ア)権利を行使することができる時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法167条*1、改正法724条の2*2)。

 

以上のとおり、債務不履行・不法行為のいずれを根拠とする場合も同じであり、かつ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間が、伸長されていることに注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法167条

「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。」

*2 改正法724条の2

「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。」

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民法改正2 消滅時効(1)

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度をいいます。

 

現行法は、原則として、権利を行使することができる時から10年間行使しない場合、当該債権は時効で消滅する一方(167条1項)、職業別に短期の消滅時効を定めています(170条~174条)。

たとえば、医師の診療債権は3年(170条1号)、弁護士の報酬債権は2年(172条1項)で消滅するとされており、また、商取引によって生じた債権(商事債権)は、5年で消滅するとされています(商法522条)。

 

しかし、この短期の消滅時効制度は、どの時効期間が適用されるのか、複雑でわかり辛いという批判がありました。

他方で、消滅時効制度が設けられている趣旨は、(1)長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図るとともに、(2)権利の上に眠る者は保護しない(権利を行使しないのであれば、当該権利を行使しえなくなっても構わない)という点にあります。

 

そのため、これらを単純に撤廃するだけでは、時効期間の大幅な長期化を招くことになり、消滅時効制度が設けられている趣旨に反することになりかねません。

 

そこで、改正民法では、短期の消滅時効制度を撤廃したうえで、

(ア)権利を行使することができる時から10年

という時効期間を維持しつつ、

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

という規定を新設し、いずれか早い方の経過によって消滅時効が完成することとしました(改正法166条1項*1)。

 

このように、新たに主観的な起算点から5年で消滅時効が完成することになるため、債権管理を行うにあたっては十分注意してください。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法724条*2)。

 

なお、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、さらに特則が設けられています。

これについては、次週解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法166条1項

「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」

 

*2 改正法724条

「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。」

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民法改正1 総論

2017年5月26日、民法の一部を改正する法律が成立しました(同年6月2日公布)。

今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます。

 

民法は、私人間の権利義務関係の基本となる法律で、私たちの生活に最も深く関係しています。

たとえば、コンビニでペットボトルの水を買う行為は、民法の売買に関する規定が、家を借りる行為は、民法の賃貸借に関する規定が適用されます。

 

ところが、この民法のうち、売買や賃貸借といった債権関係の規定は、1896年(明治29年)に制定された後、なんと約120年間ほとんど改正がされていませんでした。

 

今回の改正は、「民法のうち債権関係の規定について、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたもの」とされています。

(法務省HP:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html)

 

その改正箇所は、多岐にわたっていますが、次回以降、事業を行うにあたって、特に影響が大きいと考えられる部分を中心に、簡単な解説を行っていきたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男の責任

新聞等で大きく報じられましたのでご存じの方も多いと思いますが、平成28年3月1日に責任無能力者の監督義務者等の責任について定めた民法714条について注目すべき最高裁判所の判例が出ています。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85714
そもそも「責任無能力者」という言葉自体なじみがないですが、「自己の行為の責任を弁識するに足る精神能力を有しない者」をいうとされています。それでもまだ日常用語からは離れていますが、具体的には重度の認知症や知的障害がある人などがあてはまります。
そして、報じられていますように、線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男の民法714条1項に基づく損害賠償責任が否定されました。これはどういうことでしょうか。
そもそも民法714条の1つ前に置かれている民法713条は、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。」としています。これは、先ほどの責任無能力者が他人に損害を与えても損害賠償をする義務はないとするものです。
しかし、これでは被害者が救済されません。そこで、今回問題となった民法714条が置かれています。
民法714条は「(1項)…責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。(2項) 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。」としています。
つまり、責任無能力者は損害を賠償する義務はありませんが、この者を監督する義務を負う者は損害を賠償しなければいけません。
そして、先ほども触れましたとおり、最高裁判所は、線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男は民法714条に基づく損害賠償をする義務はないとしたのです。
判決文はかなり長いですが、簡単に要約するとその論理は以下のとおりです。
①本件における認知症の者の妻と長男は、いずれも民法714条1項にいう監督義務者ではない。民法の規定を分析すると、配偶者だったり、後見人だったからといって直ちに監督する義務があるという立場を民法が取っていると解釈することはできないからである。
②ただし、生活状況や心身の状況などとともに、精神障害者との親族関係の有無・濃淡、同居の有無その他の日常的な接触の程度、精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情、精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容、これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して民法714条1項の監督義務者に準じて責任を負うことはある。しかし、本件においては認知症の者の妻と長男は諸般の事情を総合考慮しても民法714条1項の監督義務者に準じて責任を負うべきとはいえない。
本件の場合、損害賠償請求をしたのが大手の鉄道会社であり、また人がケガをしたり、亡くなったりしたという事案ではありませんでした。しかし、この判例の考え方は、被害者が個人であり、また被害者がケガをしたり、亡くなったりしたという事案にもあてはまります。
たとえば名古屋地方裁判所平成23年2月8日 判例時報2109号93頁は、以下のような事案です。
Aさん(責任無能力者)は、スーパー内のレジで、おつりを受け取るのを忘れたままその場から立ち去ろうとしました。これを見ていたBさんは、気づいてもらおうとAさんに声をかけ、手を伸ばしてAさんの肩に触れようとしました。ところが、Aさんは振り向きざまにBさんの両肩付近を押してBさんを突き飛ばし、レジに戻っておつりを受け取り、その場を立ち去りました。Bさんは、Aさんの行為により、右半身を床にたたきつけられ、右上腕骨頸部骨折、右大腿骨頸部骨折という大けがをしてしまいました。その後、Bさんは自宅付近で転倒して頭部を打撲し、外傷性硬膜下血腫により亡くなりました。Bさんの遺族はAさんの両親に対し、民法714条に基づく損害賠償請求をしました。
この事案で、裁判所はAさんの両親への損害賠償請求を認めませんでした。
理由は、Aさんの生活状況などを考えると、Aさんが第三者に危害を加える可能性があることを予想することは困難だった。そのため、Aさんの両親が、外出の際にはBさんに付添いをする等して、Aさんを保護監督すべき具体的必要性があった場合とは認めらられない。したがって、Aさんの両親に対して監督義務者に準ずるとして民法714条1項あるいは2項による損害賠償請求をすることはできないというものです。
とても悲しく、やりきれない事件です。裁判官も判決文で「本件事案の内容に鑑みれば、道義的には(Aさんの両親が)何らかの損害負担をすることが望ましいものである。」などとしています。しかし、このような場合であっても法律上は民法714条による損害賠償請求はできないというのが裁判所の立場です。
判例の立場がこのまま維持されるのであれば、必ずしも万全とはいえない場合もありえますが、保険で自衛するほかないのかもしれません。

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