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債権回収6
さて、前回、債権回収におけるリスクの管理として重要なことは、
「取引開始前に、信用できる取引先か入念にチェックすること」、すなわち
「将来にわたって相手方のことを信用できるかをきちんと検討すること」、それも
「抽象的な理由ではなく、具体的な根拠に基づいて、信用できるかをきちんと判断するようにすること」
である、ということを述べました。
では、どうやって、具体的な根拠に基づいて、将来にわたって相手方のことを信用できるか、を検討すればよいのでしょうか。
まず、ぜひ最初にやっていただきたいことは、取引を始める前に、できるだけ相手方の情報を手に入れて、分析をしておく、ということです。
出来れば直近2年分の決算書の写しをもらって、貸借対照表から資金の調達と運用の状態を分析し、損益計算書から、費用・成果・利益の状況を分析したいところです。
もっとも、そうはいっても、相手方が自社よりも大きい会社の場合、なかなか決算書の写しが欲しいということが難しい場合もあると思います。
そのような場合は、調査会社の調査報告書を活用するということも考えられます。
いずれにしても、会社間の事業としての取引である以上、相手方の財務状況を客観的な資料に基づいてきちんと分析しておきましょう。
(弁護士 國安耕太)
債権回収5
さて、前回まで、①正しい人(会社)が勝つ、②裁判所は、正しい人(会社)の味方である、③裁判に勝てば、未払債権を回収できるというのが幻想である、ということを説明してきました。
人(会社)を信用するのは大事なことですが、自分の会社は、自分で守らなければなりません。
会社経営者は、この現実を直視する必要があります。
では、どのように債権回収におけるリスクの管理をしていけばいいのでしょうか。
まず、なんといっても重要なことは「取引開始前に、信用できる取引先か入念にチェックすること」です。
「そんなこと、当たり前じゃないか」
「当然、信用できるかできないかチェックしているよ」
と思うかもしれません。
しかし、みなさんにぜひ覚えておいていただきたいのは、世の中で起きている紛争の多くは、
「信用して取引を始めた相手方とのトラブルである」
ということです。
これはある意味、当たり前です。
誰しも、信用できない相手となんて、最初から取引をしませんから、トラブルにもなりません。
では、なぜ、「信用して取引を始めたにもかかわらず、その信用が裏切られる事態が生じてしまう」のでしょうか。
ここで重要なのは、「いまここで相手方のことを信用できるか」ではなく、「将来にわたって相手方のことを信用できるか」をきちんと検討したかどうかです。
「もともと知っていて、信用できるから」
「信頼できる人からの紹介だから」
という抽象的な理由ではなく、具体的な根拠に基づいて、信用できるかをきちんと判断するようにしましょう。
(弁護士 國安耕太)
債権回収4
前回、経営者が陥ってしまっている3つの落とし穴の2つ目を紹介しました。
今回は、3つ目の落とし穴を紹介したいと思います。
裁判を起こして、仮に勝訴したとしても、それだけで債権の回収ができるわけではありません。
実は、裁判所がしてくれるのは、「被告は原告に対し、金30万円を支払え」という文字を紙(判決書)に書いて渡してくれることだけです。
これで相手方が支払をしてくれればいいですが、世の中、そう簡単に事は運びません。
金30万円を支払え、との判決を出されても、支払わない人などいくらでもいるのです。
そして、たとえ裁判に勝ったとしても、裁判所が債権を回収してきて、お金を渡してくれることはありません。
そのため、勝訴したとしても、実際に回収するためには、自分で、強制執行という別の裁判をしなければならないのです。
そして、この強制執行をするためには、その対象となる財産を特定しなければなりません。
しかし、裁判所が、被告の財産がここにあるよ、と教えてくれるということもありません。
あくまでも、自分たちで、被告の財産の所在を調査しておかなければならないのです。
それゆえ、③裁判に勝てば、未払債権を回収できるというのも大きな幻想にすぎないのです。
(弁護士 國安耕太)