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大家さんのための建物賃貸借入門

大家さんのための建物賃貸借入門9

さて、前回まで、賃貸借契約の解除についてみてきました。

 

解除の場合を含め、賃貸借契約が終了する場面で、問題となりやすいのは、賃借人の原状回復義務に関する点です。

 

原状回復義務とは、賃借物を借りてから生じた損傷を回復する(元に戻す)義務をいいます。

 

ただ、原状回復義務は、建物を借りた当時の状態まで完全に直さなければならないというわけではありません。

そもそも建物は、使用しているうちに古くなっていくものですから、賃借人が通常の使用によって汚損・破損したもの(通常損耗といいます。)については、原状回復義務を負わないとされています。

 

これは、仮に通常損耗についても賃借人の負担とするとの特約が定められていたとしても、特段の事情がない限り、同様と解されています。

 

なお、上記特約と似た特約として、クリーニング特約があります。

これは、汚損・破損に関わらず、専門業者による清掃費用を、賃借人の負担とする特約です。

 

通常損耗を賃借人の負担とするとの特約との差異が明確でないことも多く、その有効性に疑問が残るところです。

ただ、裁判所は、(1)特約を締結するものであることが明確に書面に記載されており、(2)その金額が清掃費用として高額とはいえないような場合には、有効と判断する傾向にあります。

 

クリーニング特約を付加する場合は、上記要件に注意するとともに、将来的に無効と判断されるリスクがあることを理解したうえで、行ってください。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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大家さんのための建物賃貸借入門8

さて、前回、(1)用法違反の場合と、(2)無断譲渡・転貸の場合は、比較的契約の解除が認められやすいという話をしましたが、実は、もうひとつ、契約の解除が認められやすい場合があります。

 

それは、暴力団等の反社会的勢力が関わっている場合です。

 

まず、居住目的と偽って、暴力団事務所として使用したような場合、使用目的違反を根拠に解除することが可能でしょう。

 

また、賃借人が賃貸人に無断で反社会的勢力に転貸しているような場合であれば、無断転貸を根拠に解除することが可能です。

 

他方で、近時、暴力団等の反社会的勢力が、その身分や目的を秘して建物を賃借するケースが見受けられます。

 

たとえば、賃借人が暴力団員であるものの、賃借人である暴力団員以外の者が出入りしているといった事情もなく、毎月の賃料を約定通り支払って、特段の問題行動なく、通常の住居として使用しているような場合です。

 

この場合、特段の定めがなければ、信頼関係を破壊するような背信的な行為がない以上、さすがに暴力団員というだけでは賃貸借契約を解除することは難しいでしょう。

 

ただ、賃貸建物に暴力団員が居住しているだけで、暴力団同士の抗争に巻き込まれてしまう可能性があります。

 

そこで、賃貸借契約書に、暴力団排除条項を設け、相手方が暴力団員等である場合は、そのことだけで契約を解除できるようにしておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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大家さんのための建物賃貸借入門7

さて、前回、賃貸借契約は、当事者の一方がその信頼関係を破壊するような背信的な行為をした場合にのみ、解除ができるという話をしました。

 

このため、建物の賃貸借契約は容易に解除できないのですが、比較的契約の解除が認められやすい類型が2つあります。

 

それは、(1)用法違反の場合と、(2)無断譲渡・転貸の場合です。

 

建物の賃貸借契約においては、契約締結時にその使用目的・方法を定めることが通常です*1。

そして、賃借人は、この使用目的・方法を遵守しなければなりません(民法616条・594条1項*2。用法遵守義務)。

 

用法遵守義務に違反した場合、たとえば、居住目的の賃貸した建物を工場として使用する場合などは、使用目的・方法が著しく異なっていますから、信頼関係を破壊するような背信的な行為であることは明らかでしょう。

 

また、無断譲渡・転貸は、民法上、契約の解除ができる旨が規定されています(612条2項*3)。

このため、無断譲渡・転貸の場合、原則解除が可能であり、例外的に信頼関係が破壊されない特段の事情があるときに限り、解除が制限されると考えるべきといえます。

 

以上から、(1)用法違反の場合と、(2)無断譲渡・転貸の場合は、比較的契約の解除が認められやすいのです。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

仮に定めていない場合であっても、建物の性質等から使用目的・方法はある程度は定まることが多いと思われます。

 

*2 民法594条1項

借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならない。

 

*3 民法612条

1 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

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大家さんのための建物賃貸借入門6

さて、前回まで、賃貸借契約の期間が満了しても、正当事由がなければ、建物を返してもらえない、という話をしてきました。

 

しかし、建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」というのは、何も賃貸借契約の期間が満了した場合に限りません。

 

賃料の支払義務は賃貸借契約の中心的な義務ですから(民法601条*)、賃借人がその義務を怠っている(賃料不払い)場合は、賃貸人は賃貸借契約を解除することができるはずです。

 

ところが、判例は、賃貸借契約が当事者双方の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることを理由に、当事者の一方がその信頼関係を破壊するような背信的な行為をした場合にのみ、契約の解除を認めています(最判昭和39年7月28日民集18巻6号1220頁等)。

 

そして、賃料不払いの場合も、わずかの不払いでは信頼関係の破壊があったとはいえず、賃貸借契約の解除もできないとされています。

 

なお、建物賃貸借契約の場合、おおよそ3か月分の賃料が不払いであれば、信頼関係の破壊があるとされることが多いですが、これはあくまでも目安です。

事情によっては、これより短い期間でも信頼関係の破壊があったと認められることがありますし、反対に、これより長い期間でも信頼関係の破壊があったと認められないこともあります。

 

このように、やはり建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」のです。

(弁護士 國安耕太)

 

*民法601条

「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」

 

 

 

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大家さんのための建物賃貸借入門5

さて、正当事由の補完となる財産上の給付(立退料)とは、いったいどのくらいの金額になるのでしょうか。

 

実は、あくまでも賃貸人と賃借人の具体的な事情によって立退料が算定されるので、立退料の額に明確な相場はありません。

そのため、定型的な計算式に数字を入力すれば、立退料のおおよその額が分かる、ということもありません。

 

ただ、裁判となった場合には、住居については賃料の●か月分といった計算がなされることが多いようです。

 

また、会社のオフィスや事務所については、移転費用(移転に必要な内装費、引越代等の費用を積み上げたもの)や、不動産鑑定による借家権価格を算定し、この金額を基準とすることが多いです。

 

さらに、飲食店や販売店など営業用の店舗については、「その場所」で培った顧客が移転によって離れてしまう可能性があるため、その分を補償(営業補償)しなければなりません。

このため、営業用の店舗については、立退料の額も高額になりがちで、賃料の額にもよりますが、1000万円を超えることも珍しくありません。

 

このように、正当事由の補完となる立退料は、高額になってしまう可能性があり、

正当事由の判断の難しさと相俟って、建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」のです。

 

以上を踏まえて、大家さんとしては「誰に貸すのか」を慎重に吟味する必要があるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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大家さんのための建物賃貸借入門4

さて、前回、更新拒絶の通知には正当事由が必要であり、実際の裁判では、この正当事由をそう簡単には認めてもらえないことが多い、という話をしました。

 

正当事由の有無の判断においては、まず、(1)賃貸人が建物の使用を必要とする事情および(2)賃借人が建物の使用を必要とする事情を検討することになります。

 

(1)賃貸人が建物の使用を必要とする事情としては、(ア)賃貸人自身がその建物を使用・利用する必要性、(イ)建物の修繕・取壊し等をする必要性、(ウ)資産状況等が勘案されます。

 

また、(2)賃借人が建物の使用を必要とする事情としては、(ア)賃借人自身がその建物を使用・利用する必要性、(イ)建物を使用していた期間、(ウ)資産状況等が勘案されます。

 

(1)賃貸人が建物を使用する高度の必要性があり、(2)賃借人が建物を使用する必要性がないのであれば、正当事由が認められることになります。

 

しかし、実際の事案では、そのような一方的な状況となることはほとんどありません。

 

そこで、裁判では、財産上の給付(立退料)を補完的に考慮することによって、正当事由を認めることが多いのです。

(もちろん、賃貸人が建物を使用する必要性が皆無であれば、いかに財産上の給付をしようとも、正当事由が認められないことはあります。)

(弁護士 國安耕太)

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大家さんのための建物賃貸借入門3

さて、前回、賃貸借契約を終了させるためには、更新拒絶の通知を忘れないようにしなければならない、という話をしました。

 

ところが、更新拒絶の通知をしたとしても、貸した建物を返してもらえないことがあるのです。

 

すなわち、借地借家法は、更新拒絶の通知(および解約申入れ)は、「正当の事由」(以下「正当事由」といいます。)があると認められる場合でなければ、することはできないと定めているからです(28条)。

 

この正当事由は、

(1)賃貸人が建物の使用を必要とする事情
(2)賃借人が建物の使用を必要とする事情

のほか、

(3)建物の賃貸借に関する従前の経過

(4)建物の利用状況

(5)建物の現況および

(6)財産上の給付(いわゆる立退料)

を考慮して、判断されることとされています。

 

これだけを見れば、「賃貸人が建物の使用を必要とする事情が大きければ、貸した建物を返してもらうことも難しくないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、実際の裁判では、この正当事由をそう簡単には認めてもらえないことが多いのです。

(弁護士 國安耕太)

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大家さんのための建物賃貸借入門2

さて、建物の賃貸借契約ですが、契約締結にあたっては、いくつか注意しなければならない重要なポイントがあります。

 

このうち、もっとも重要なポイントは、

「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」

ことです。

 

通常、賃貸借契約においては、契約期間(賃貸借の期間)が定められます。

「契約期間があるのであれば、契約期間が終了したら、返してもらえるのでは?」

と思うかもしれません。

 

ところが、借地借家法は、期間の満了の一年前から6か月前までの間に、賃借人に対して、「更新をしない旨の通知」または「条件を変更しなければ更新をしない旨の通知」(以下、併せて「更新拒絶の通知」といいます。)をしなかったときは、「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」と定めています(26条1項)。

 

このように、たとえ契約期間を定めていたとしても、更新拒絶の通知をしない限り、契約は自動で更新されてしまうのです。

 

このため、賃貸借契約を終了させるためには、更新拒絶の通知を忘れないようにしなければならないのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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大家さんのための建物賃貸借入門1

ここ数年は下火になりつつありますが、資産運用として人気のワンルーム投資。みなさんも、一度は勧誘されたことがあるのではないでしょうか。

また、相続で、アパートやマンションを相続する、といったこともあるかもしれません。

いずれの場合も、ただ持っているだけでは、固定資産税等の支払等の負担が生じるだけですから、「誰かに貸す」ということになるでしょう。

この場合に締結するのが、(建物)賃貸借契約です。

 

賃貸借契約は、「当事者の一方がある物の使用および収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことおよび引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約する」契約で、民法601条以下にその定めがあります。

ただし、建物の賃貸借に関しては、民法601条以下の特則として、借地借家法が定められています*。

 

このため、建物の賃貸借契約を締結するにあたっては、民法だけでなく、この借地借家法にも留意する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

*厳密には、建物の所有を目的とする地上権および土地の賃借権についても、適用があります。

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