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2018年7月の投稿

平成30年度上半期最高裁判例ダイジェスト

平成30年度上半期(1月~6月)に出された最高裁判決の中から、特に気になった判決をご紹介します。

 

今回は、何といっても、平成30年6月1日に出された2つの最高裁判決です。1つ目は、未払賃金等支払請求上告、同附帯上告事件(平成28(受)第2099号)*1です。

 

この事件は、期間の定めのある労働契約(「有期労働契約」)締結している労働者と、期間の定めのない労働契約(「無期労働契約」)を締結している労働者の間で、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給および退職金に相違があることが労働契約法20条*2に反すると主張して、正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、差額の支払いを求めたものです。

 

この判決のポイントは、

(1)有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない、ということ。

ただし、

(2)有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができる場合は、その差額について損害賠償を求めることができる。

ということです。

 

このこと自体は、これまでの最高裁判決の流れからすれば、当然の帰結ではあります。

しかし、本判決で明らかとなったのは、よほど合理的な理由がない限り、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は、不合理なものと判断されてしまう、ということです。

 

同様の判断は、地位確認等請求事件(平成29(受)第442号)*3でも、みてとれます。

 

具体的に、どのような事情が考慮されているのかは、それぞれの判決を確認していただければと思いますが、この2つの最高裁判決によって、会社は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について、再度、きちんと考察し、その合理性を厳しく検討しなければならない状況に置かれた、といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/784/087784_hanrei.pdf

*2

(労働契約法20条)

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

*3

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf

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男女をめぐる法律関係8 離婚後の親権

第8回目のテーマは、離婚後の親権です。

 

父母が離婚した場合、いずれか一方が未成年である子の単独親権者になります。

 

協議離婚では、父母の協議で未成年者の親権者を定め、離婚届に記載します。

親権者の記載がない離婚届は受理されません。

 

父母の協議がまとまらない場合には、親権者指定の調停または審判を家庭裁判所に申し立てることにより親権者を定めることができます。

家庭裁判所の手続きを利用する場合、家庭裁判所調査官による事実の調査が実施されることが一般的です(家事事件手続法58条)。

 

家庭裁判所調査官は、父母や子との面接、子が親の一方といる場面における子の状況の観察、保育園や学校の先生との面接、家庭訪問といった方法により、①子の監護状況・非監護親の看護体制、②子の意向確認、③親権者としての適格性等の事実の調査をし、調査結果を家庭裁判所に報告します。

 

親権者指定の判断基準については、明文の規定があるわけではありません。

しかし、一般的には、①監護の継続性、②子の意向、③母性尊重、④兄弟の不分離、⑤親の状況、⑥面会交流に対する当事者の意向といった要素を総合的に考慮して親権者を決めることになります。

 

家庭裁判所は、子の意向に拘束されるわけではありませんが、実務上、子の意向は重視されます。

ただし、未成年者は監護親の影響を受けやすく、言葉と真意が一致しない場合もあるため、事案ごとの子の発達段階に応じて評価することが必要になります。

 

また、面会交流は基本的に子の健全な育成に有益なものであって、その実施によりかえって子の福祉が害されるおそれがある特段の事情がある場合を除き、面会交流を認めるべきであると考えられています。

そのため、非親権者・非監護者による面会交流を認める体勢にあるかどうかも、親権の適格性を判断するための1つの要素になります。

 

(弁護士 松村 彩)

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男女をめぐる法律関係7 財産分与

第7回目のテーマは、財産分与です。

 

夫婦が離婚する場合、婚姻中に夫婦が協力して蓄えた財産を公平に分けることができ、これを「財産分与」といいます。

 

当事者間での話し合いで調整できない場合には、離婚の時から2年以内に、家庭裁判所に財産分与の調停または審判を申し立てることができます(民法768条2項)。

なお、離婚前の場合であれば、離婚調停の中で財産分与について話合いをすることもできますし、離婚訴訟に付帯して財産分与に関する処分を求めることもできます(人事訴訟32条)。

 

財産分与の対象は、婚姻中に夫婦が協力して蓄えた財産となります。

そのため、一方の名義で取得した財産であっても、実質的に夫婦の共有財産であるといえる場合には、財産分与の対象になりますし、将来取得する予定の財産であっても財産分与の対象になりえます。

 

例えば、婚姻中、妻の協力により稼働が可能となり、その稼働の対価として夫の退職金が支払われることが予定されている場合には、夫の退職金も財産分与の対象となります。

ただし、財産分与の対象となるのは、あくまで婚姻期間中に形成されたと評価できるものに限られますので、稼働期間30年、婚姻期間10年の場合には、退職金のうち10年分だけが財産分与の対象ということになります。

もっとも、実際には、将来どの時点で退職金を受給できるのか不明確であり、退職金の金額が不確実であることが多いため、その不確実性をどの程度考慮するのかは問題になります。

 

また、年金については、平成16年に離婚時の年金を分割する年金分割制度が創設されており、配偶者が加入している厚生年金、共済年金の報酬比例部分については、その一部を離婚に際して分割請求することができます。

ただし、原則として、離婚をした日の翌日から2年以内に分割を請求する必要がありますので、注意してください。

 

次回は、「離婚後の親権」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

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男女をめぐる法律関係6 法律上の離婚原因

第6回目のテーマは、法律上の離婚原因です。

 

前回ご紹介したように、協議離婚や調停離婚によって調整がつかない場合には、「法律上の離婚原因」を主張して離婚訴訟を提起し、判決により離婚を認めてもらうことができます。

 

民法は、以下の5つの「法律上の離婚原因」を定めています。

①配偶者に不貞行為があったとき

②配偶者から悪意で遺棄されたとき

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

 

①「不貞行為」とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこといいます(最判昭和48年11月15日判タ303号141頁)。

自由な意思に基づく姦通に限定されますので、配偶者が強姦の被害者である場合には、不貞行為は認められないと考えられます。

 

②「悪意の遺棄」とは、正当な理由もなく夫婦間の同居・協力・扶助義務を継続的に怠っていることをいいます。

具体的には、配偶者の一方が相手方を置き去りにして帰宅しない場合や、相手方を自宅から追い出す場合が挙げられます。

職業上の理由から長期間出張しなければならないケースや、病気療養のために入院するケース等、別居するにつきやむをえない事情がある場合には、「悪意の遺棄」にはあたりません。

 

③「配偶者の3年以上の生死不明」を理由とする離婚訴訟は、終戦後の戦地からの未帰還者にかかわるものが多く、最近の裁判例ではほとんど問題になりません。

 

④「回復の見込みがない強度の精神病」とは、重い精神病のために婚姻生活の継続を期待できず、長い療養生活にもかかわらず軽快の見込みが立たない場合をいい、専門医の医学的判断を踏まえて裁判官が判断します。

 

⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、上記①~④以外の離婚事由で、婚姻の継続を不可能とする事由をいい、配偶者の暴力、侮辱、犯罪行為、性格の不一致等がこれに該当します。

 

次回は、「財産分与」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

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男女をめぐる法律関係5 離婚の方法と手続き

第5回目のテーマは、離婚の方法と手続きです。

 

離婚の方法には、大きく分けて、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つの方法があります。

 

①協議離婚は、夫婦で離婚について話合いをし、合意ができれば離婚届を役所の窓口に提出する方法です(民法763条)。

この場合、婚姻届の場合と同様に、成年の証人2名の署名押印が必要になります。

 

②調停離婚は、夫婦間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合に、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停により離婚する方法です(家事事件手続法244条)。

調停は、男女各1人ずつの調停員が当事者の言い分を基本的に交互に聞きながら、離婚についての当事者の合意をあっせんするというものです。

調停手続では、離婚そのものだけではなく、子の親権者や面会交流、養育費、慰謝料といった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

 

③裁判離婚は、上記の方法によっても調整がつかない場合に、離婚を求める一方当事者が、法律上の離婚原因を主張して、離婚訴訟を提起し、判決により離婚を認めてもらう方法です。

原則として離婚調停を経てから離婚訴訟を提起する必要がありますので(調停前置主義)、離婚調停を経ずにいきなり離婚訴訟を提起したとしても、相手方が所在不明である等の事情がない限り、裁判所により、離婚調停に付される(調停から始める)ことになります。

なお、いったん離婚訴訟が提起された場合であっても、裁判の途中で当事者が離婚に合意すれば、判決を待たずに和解をすることもできます(人事訴訟法37条)。

 

次回は、「法律上の離婚原因」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

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