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2015年6月の投稿

精神障害と労災

厚生労働省は、毎年「過労死等の労災補償状況」を調査・公表していますが、先日(平成27年6月25日)、その平成26年度版が公表されました*1。

これによれば、精神障害を理由とする労災請求件数は1456件、支給決定件数は497件で、いずれも過去最多を記録したようです。

 

また、平成23年と少し古い情報ですが、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」によれば、精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、約320万人との統計が出されています*2。

 

このように現在の日本社会には、多くの精神疾患を有する患者を抱えており、どの会社においても、社員がうつ病等に罹患してしまうという危険を内包しているといえます。

そして、いったん社員が精神疾患に罹患してしまうと、当該社員のケア、業務の調整等、会社は多大なコストを投じなければならなくなります。

また、社員が亡くなってしまった場合には、数千万円から1億円超の損害賠償義務を負う可能性も十分あります。

 

このように企業においてメンタルヘルス対策をしておくことは、必要不可欠といえます。

 

なお、精神障害を理由とする労災と認定されるためには

①対象疾病を発病していること。

②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

という3要件を満たしている必要があります*3。

 

ただ、現実の運用では、業務による心理的負荷が強いか否かにかかわらず、業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したと認められなければ、業務起因性が肯定されてしまう傾向にありますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089447.html

*2

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html

*3

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120118a.pdf

 

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店舗BGMと著作権

先日(平成27年6月9日)、JASRAC(日本音楽著作権協会)が、「BGMを利用していながら音楽著作権の手続きが済んでいない全国の171事業者、258施設(美容室、理容店、アパレル店、飲食店他)に対し、民事調停を全国の簡易裁判所に申し立てた」旨のプレスリリースを発表しました*1。

 

著作権法上、著作権者は上演権*2を有しており、著作権者の許諾なく著作物を演奏する行為は著作権侵害になります。

そして、ここでの演奏には、録音されたものを再生することおよび電気通信設備を用いて伝達することを含むとされていますので(著作権法2条7項*3)、店舗でBGMを流す行為も演奏にあたります。

 

そのため、著作権者の許諾を得ずに、店舗で、お気に入りのアーティストのCDを流したり、iPod等に保存したデータを再生したりすると、著作権侵害となります。

 

なお、株式会社USEN等の有線放送サービスの場合、JASRAC等の著作権管理団体と包括的に著作権利用契約を結んでいるため、著作権侵害とはなりません。

また、営利を目的としない演奏の場合は、著作権者の許諾がなくても、著作権侵害とはなりません(著作権法38条1項*4)。

 

以上のとおり、店舗でBGMを流す場合、著作権者の許諾を得なければ、著作権侵害となり、損害賠償義務を負う可能性があります。

また、これは店舗に限らず、オフィスや工場であっても同様です。

 

音楽を利用する際には、著作権に十分注意するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.jasrac.or.jp/release/15/06_2.html

 

*2 著作権法22条

『著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。』

 

*3 著作権法2条7項

『この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。』

 

*4 著作権法38条1項

『公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。』

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会社の生存率

みなさんは、会社の生存率をご存知ですか?

これは、設立された会社が、何年後まで存続しているか、という統計をとったものです。

 

中小企業庁は、毎年、中小企業を取り巻く状況などを「中小企業白書」としてまとめ、公表していますが*1、2011年度版中小企業白書に、会社(企業)の生存率についての記載があります*2。

 

この記載によれば、5年で82%、10年で70%の生存率とされています。

ただ、同じ中小企業白書でも2006年度版*3では、5年で41.8%、10年で26.1%の生存率となっています。

他方、インターネット上では、5年で15%、10年で6%の生存率であるとする説もあります*4。

 

いずれにしても、長期にわたり会社を存続させていくこと、すなわち安定的に利益を上げ続けることは、容易ではありません。

特に、リスクに対する意識が低い会社は、不安定な取引先と契約を交わし、取引先の資金状況の悪化や倒産により売掛金が回収できない事態が発生することが多いです。

 

ぜひリスクを適切にコントロールして、10年後も発展し続ける会社を目指してください。

なお、当事務所代表弁護士國安耕太が、きたる7月9日(木)18:30から、「事業拡大と会社の守りを両立できるようになる!第2回企業法務セミナー」にて講演いたします。

会社の利益拡大のために押さえるべき取引先の見極め方・付き合い方・契約書の作り方や、売掛金が回収できないトラブルが発生した時の対策等について、解説する予定ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

【セミナー詳細】

[日 時]7月9日(木) 18:30~21:00 (開場:18:15~)

[会 場]東京都新宿区西新宿7-4-7 イマス浜田ビル5階

[参加費]税込5000円

[お支払]当日受付にて現金でお支払下さい。

[定 員]先着10名(1社2名までとさせていただきます。受付にて各名刺2枚をご提出下さい)

[キャンセルについて]準備の都合上、参加申込み後のキャンセルは 7月2日 (木) までにご連絡下さい。 以降にキャンセルされる場合キャンセル料をいただきます。

[講師]弁護士 國安耕太(ノースブルー総合法律事務所代表)平成20年弁護士登録 (第一東京弁護士会)/中央大学法科大学院実務講師、中央大学法学部兼任講師/2014年 財務省税関研修所 委託研修講師(知的財産法)その他セミナー実績多数/

(弁護士 南部弘樹)

*1

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

*2

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/Hakusyo_part3_chap1_web.pdf#search=’%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E7%99%BD%E6%9B%B8+%E7%94%9F%E5%AD%98%E7%8E%87′

*3

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h18/H18_hakusyo/h18/html/i1220000.html

*4

http://broadnakanishi.blog118.fc2.com/blog-entry-68.html

 

 

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労災保険法に基づく療養補償給付等と労基法75条に定める療養補償の意義

昨日(平成27年6月8日)、最高裁は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく療養補償給付等が労働基準法(労基法)75条に定める療養補償に該当するか否かに関し、初めての判断を示しました* 1。

 

労基法は、労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合、使用者は、平均賃金の1200日分を支払えば、解雇できる旨規定しています(労基法81条、75条1項、19条1項*2*3*4)。

 

他方、労災保険法に基づく療養補償給付は、使用者が、労働者に対し、直接支払うものではないため、労災保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者は、この労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者に該当しないのではないか、という点が問題となりました。

 

原審(東京高判平成25年7月10日)は、労基法81条・75条1項が、労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等から、労災保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者は、この労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者に該当しないと判断しました。

 

これに対し、最高裁は、

①業務災害に関する労災保険制度は、労基法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提として、その補償負担の緩和を図りつつ被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、使用者による災害補償に代わる保険給付を行う制度である

②労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものである

としたうえで、

③労災保険法に基づく、療養補償給付を受ける労働者は、解雇制限に関する労基法19条1項の適用に関しては、労基法81条・75条1項に定める療養補償を受ける労働者に含まれる

と判断しました。

 

本判決を受けて、労災による休業がしにくくなるのではないか、といった論調も見られますが、そもそも打切り補償による解雇は労基法上認められているものであり、また、労災保険分は、全額事業主負担であることを考えれば、妥当な判断ではないかと思います。

 

なお、打切り補償による解雇の場合であっても、解雇である以上、解雇権濫用*5にあたらないことが前提となります(本件も、この点をさらに審理するため、差し戻されています。)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/148/085148_hanrei.pdf

 

*2労基法81条

「第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」

 

*3労基法75条1項

「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」

 

*4労基法19条1項

「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。」

 

*5労働契約法16条

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

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最新判例のご紹介(債権譲渡と異議を留めない承諾について)

6月1日、長い間確立した判例がなかった「異議を留めない承諾」(民法468条1項)について最高裁の判断が示されましたので、ご紹介します。

 

民法467条1項は、「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」と定めています。

そして民法468条1項は、「債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。 」と定めています。

 

平たく言いますと

 

「AさんがB社から300万円を借りた。その後、AさんはB社に200万円を返済した。ところがその後B社からAさんに対し、「あなたに対する債権をC社に譲渡した。承諾書を同封したからからサインし、印鑑を押して返送してくれ。」との連絡があった。承諾書には簡単に「私はB社の私に対する下記債権を、B社がC社に譲渡することについて、承諾します。」などと書かれていただけだった。Aさんは深く考えずに言われるままに承諾書にサインし、印鑑を押して返送してしまった。」

 

という場合、C社はAさんに対して残りの100万円ではなく300万円全部を請求でき、AさんはC社に対し300万円を払わなければいけない、ということなのです。

つまり、AさんはB社にすでに払っていた200万円分はなかったものとしてC社に300万円を払わなければいけません。Aさんにとっては大事ですね。

もしAさんが200万円をすでに払っているということを主張したかったら、Aさんは「200万円をすでに払っています。」と主張すべきでした(これを「異議」といいます。)。

 

もちろん、AさんはB社に対しすでに払った200万円を返すよう請求できます。しかし、B社が素直に返すとは限りませんし、連絡が取れなくなったり倒産している可能性もあるでしょう。

また、C社が200万円はすでに返済されているという事情を知っていた場合には、Aさんは法律上C社に対して残りの100万円しか返済する義務はありません。しかし、これを立証するのは簡単とは限りません。

 

このような場合に、C社が事情を知らなくとも知らなかったことに過失があったとき、Aさんは300万円全額を払わなければいけないのか、残りの100万円で済むのか、長いこと見解が分かれていました。

この点について最高裁は、残りの100万円でよいとの判断を示しました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/133/085133_hanrei.pdf

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/134/085134_hanrei.pdf

 

ただ、この過失があったことをどうやって立証するかということについてはまだ問題が残されています。

内容がよく分からない書面には、安易にサインをしたり、印鑑を押さないということがまずは大切でしょう。

 

なお、民法468条1項は改正が議論されています。こちらの行方も注目されるところです。

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情報漏えい事故が会社に与える影響

昨日(平成27年6月1日)、外部からの不正アクセスによって、日本年金機構が保有する約125万件の個人情報が外部に流出したとの報道がありました*1*2。

 

昨年も、ベネッセホールディングスの情報漏えい事故が社会的に大きな問題となりました。

ベネッセは、情報を盗まれた、いわば被害者ともいえる立場ですが、個人情報が流出した顧客へのお詫び費用等で総額306億円の特別損失を計上したほか、国内通信教育講座「進研ゼミ」等の会員数が前年比で約25%減るなど、金銭的な損害だけでなく、会社としての信用についても大きな損害を被っています*3。

 

先日(平成27年5月14日)、当事務所主催の第4回労務管理セミナーで、情報管理の実務と情報漏えいが起きたらどのように対応すべきか等について講演をしましたが、やはり情報漏えいが会社に与えるダメージは、甚大と言わざるを得ません。

 

そして、消費者庁が公表している「平成25年度 個人情報の保護に関する法律施行状況の概要(平成26年10月)」*4によれば、ここ5年くらいは、毎年300~500件の情報漏えい事故が起きているとされていますので、決して他人事ではありません。

 

また、情報漏えい事故の恐ろしいところは、第三者の不正アクセス等、第三者の加害行為によって情報漏えいが起きてしまったとしても、不正アクセスを防止するために必要な措置をとっていなかったことを理由に、損害賠償義務が認められてしまう可能性があることです。

過去にも、宇治市の住民基本台帳データが外部に漏えいした事案において、宇治市には、データの管理に万全を尽くすことが要請されていたというべきとして、1人あたり1万5000円の損害賠償義務が認められた事案があります(京都地判平成13.2.23、判例地方自治 265号17頁)。

 

情報管理システムを構築するだけでなく、継続的に運用をチェックすることおよび情報漏えいが発生したら、直ちに弁護士等の専門家に相談することが重要といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150601-00000111-mai-soci

*2

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150601/k10010099511000.html

*3

http://mainichi.jp/select/news/20150502k0000m020121000c.html

*4

http://www.caa.go.jp/planning/kojin/pdf/25-sekou.pdf#search=’%E3%80%8C%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%95%E5%B9%B4%E5%BA%A6+%E5%80%8B%E4%BA%BA%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B%E6%96%BD%E8%A1%8C%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%80%8D’

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