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感染症

感染症と労務管理10

さて、先週、会社は、できる限り従業員の解雇ではなく、合意退職となるよう努力すべきという話をしました。

 

しかし、どう説得しても労働者が退職してくれない、ということもあり得ると思います。

 

この場合、やむを得ず、労働者を解雇できないか、検討することになります。

ただ、前回お伝えしたように、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすことから、制限されています。

そのため、解雇が無効となるような解雇権の濫用とならないように、慎重に検討・判断しなければなりません。

 

特に業績の悪化を理由に従業員の解雇をする場合、いわゆる整理解雇の場合について、過去の裁判例がその判断基準を示しています。

具体的には、多くの裁判例で、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つの要件を検討し、当該解雇の有効性が判断されています。

 

そこで、コロナの影響で業績が悪化した場合であっても、この4要件を満たしているか、慎重に検討し、解雇の有効性を検討する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理9

最近、従業員に退職してもらいたい、との相談が増えてきました。

なぜこのような相談が増えてきているのか、正確なところはわかりません。

 

ただ、コロナの影響で業績が悪化したものの、各種助成金や補助金、融資で急場を凌いでいた会社が、緊急事態宣言の解除後も業績が十分回復していないといった状況もあるのかもしれません。

 

さて、上記のように、会社が従業員に退職してもらいたいと考えた場合、いきなり当該従業員を解雇してしまうということがありますが、このような対応は、正直、考えものです。

 

たしかに、法律上、解雇は自由に出来るのが原則です。

労働基準法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としており、解雇そのものを禁止するものではありません。

 

しかし、判例上、解雇権濫用法理が確立されており、これをうけて労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、事実上解雇を制限しています。

 

それゆえ、たとえコロナの影響で業績が悪化したとしても、それだけでは、解雇が無効となってしまう可能性があるのです。

 

会社は、このことを肝に銘じて、解雇ではなく、労働者が話し合いによって退職する合意退職となるよう努力すべきといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理8

先週、テレワーク等の場合、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することで対応することになるのが原則となるという話をしました。

 

これに対し、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働に関するみなし労働時間制(労働基準法38条の2の1項*)が適用されることになります。

 

では、どのような場合に、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるといえるのでしょうか。

 

この点について、厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、つぎの内容が記載されています。

 

(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること)

(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

以上の2つの要件を満たしていなければ、テレワーク等において、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難とはいえない。

 

そのため、テレワーク等を実施した際に、事業場外労働に関するみなし労働時間制の適用を受けようとする場合は、上記要件を満たすように実施する必要がありますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

* 労働基準法38条の2の1項

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

 

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感染症と労務管理7

さて、今般の新型コロナの流行にかんがみて、テレワーク・リモートワーク・在宅勤務(以下、総称して「テレワーク等」といいます。)を導入したり、導入を検討したりする企業が増えています。

 

では、テレワーク等を実施するにあたり、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

まず、テレワーク等を実施するため、許認可等の特別な法的手続きが求められるわけではありません。

 

ただ、従業員の職場環境や労働条件に関係するため、就業規則を整備しておくことが望ましいといえます。

また、会社は、労働契約を締結する際、従業員に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければならないとされていますので(労働基準法第15条1項*1、労働基準法施行規則5条1項1号の3*2)、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示する必要があります。

 

つぎに、テレワーク等を行う場合においても、会社は、その労働者の労働時間について適正に把握する責務を有しています(労働安全衛生法66条の8の3*3)。

 

テレワーク等の場合、会社(上司)が、直接視認して確認することは難しいと思いますので、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することで対応するのが原則になると思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働契約法15条1項

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

*2 労働基準法施行規則5条1項1号の3

使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

 

*3 労働安全衛生法66条の8の3

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施する ため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

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感染症と労務管理6

さて、先週、会社が新型コロナに関する感染防止策を実施していたにもかかわらず、従業員が新型コロナに罹患してしまった場合、労災保険給付の対象となりうるという話をしました。

 

では、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償と労災保険給付はどのような関係にあるのでしょうか。

 

この点、労基法84条*1には、労災保険給付がなされた場合、使用者は補償義務を負わないことが明記されています。

 

では、なぜ、使用者である会社の賠償義務が問題となるのでしょうか。

 

実は、これは労災保険の性質に基づきます。

すなわち、労災保険は、あくまでも「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行」うものにすぎません*2。

 

そのため、労災保険給付は、必ずしも損害を完全に賠償するものではないのです。

 

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法84条

1 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

2 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由 については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

 

*2 労働者災害補償保険法1条

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

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感染症と労務管理5

さて、先週、会社が、新型コロナに関する感染防止策を怠っていた場合、安全配慮義務違反を問われる可能性がある、という話をしました。

 

では、会社が新型コロナに関する感染防止策を実施していたにもかかわらず、従業員が新型コロナに罹患してしまった場合、当該従業員は何の補償も受けられないのでしょうか。

 

まず、考えられるのは、労災保険に基づく補償です。

 

新型コロナに罹患したことが労災保険給付の対象となるのかについて厚生労働省は、「業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。」としています(新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5労災補償 問1)。

 

では、つぎに、どのような場合であれば「業務に起因して感染したものである」とされるのでしょうか。

 

この点に関し、令和2年2月3日に出された厚生労働省の基補発0203第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労災補償業務の留意点について」との通達では、

(1)業務または通勤における感染機会や感染経路が明確に特定され、

(2)感染から発症までの潜伏期間や症状等に医学的な矛盾がなく、

(3)業務以外の感染源や感染機会が認められない場合

に該当するか否か等について個別の事案ごとに判断するとされています。

 

そのうえで、「接客などの対人業務において、新型コロナウイルスの感染者等と濃厚接触し、業務以外に感染者等との接触や感染機会が認められず発症」したような場合は、「業務上と考えられる」旨記載されています。

 

このことからすれば、上記(1)ないし(3)の要件を満たしているような場合には、「業務に起因して感染したものである」と認められる可能性が高いといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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感染症と労務管理4

さて、先週まで、新型コロナ等の感染症に基づく休業に関し、休業手当の支払義務が生じるか否かについて検討してきました。

 

では、休業せずに業務に従事していた従業員が新型コロナに罹患した場合、会社は当該従業員に対し、損害賠償義務を負うのでしょうか。

 

まず、会社(使用者)は、従業員に対し、安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)*。

 

安全配慮義務とは、会社が負っている従業員が安全で健康に働くことが出来るように配慮しなければならないという義務のことで、労働(雇用)契約書や就業規則に明示されていなかったとしても、労働契約に伴って会社が当然に負うべき義務とされています。

 

会社は、この安全配慮義務に基づき、従業員が勤務中や通勤中に新型コロナに罹患しないよう必要な措置を取らなければならない、ということになります。

 

具体的には、新型コロナが接触や飛沫で感染することは広く知られた事実であることから、事業所内を消毒したり、従業員に対しマスク着用・手洗いを呼び掛けたりするなど、新型コロナに罹患しないよう感染防止策を実施する義務があると考えられます。

そのため、これらの感染防止策を怠っていた場合、会社は、安全配慮義務違反を問われる可能性があるといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*労働契約法5条

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

 

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感染症と労務管理3

では、つぎに、緊急事態宣言後に、会社が休業することを決定した場合はどうでしょうか。

 

まず、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく協力要請(法24条9項)の一環として、休業を要請され、営業を自粛し、労働者を休業させた場合です。

 

協力要請の一環としての休業要請は、強制力を伴うものではありませんが、法律に基づく要請であることからすれば、休業の原因が事業の外部から発生したということができます。

 

それゆえ、協力要請の一環としての休業要請をされた場合は、休業手当の支払義務が生じないことが多いと思います。

 

ただし、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないためには、事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができないといえなくてはなりません。

 

そのため、テレワーク等で業務を行うことができるような場合は、休業手当の支払義務が生じる可能性があります。

 

この点について、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」でも、

「・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか

・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」

との観点から、事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができないといえるかを検討することとされています。

 

以上のことを踏まえ、休業手当の支払義務が生じるか否か、慎重に判断しましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理2

さて、前回の続きですが、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、不可抗力による休業といえるのでしょうか。

 

まず、社内感染防止等の観点から、会社が自主的な判断で休業することを決定した場合はどうでしょうか。

 

新型コロナの発生自体は、会社の事業の外部から発生したものと言うことができると思います。

しかし、新型コロナが発生したとしても、休業するかどうかの判断は、基本的には各会社に委ねられているといえます。

そうすると、休業の原因が事業の外部から発生したとすることは難しいように思います。

 

このことからすれば、使用者の自主的な判断で休業することを決定した場合、会社には休業手当の支払義務が生じるものと考えられます。

 

この点について、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」でも、

『自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。』

とされています。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理1

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染症を理由に緊急事態宣言が発令され、5月25日に解除されるまで、多くの企業でリモートワークが導入され、また、従業員の休業措置が採られました。

 

さて、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、従業員に対し、休業手当を支払わなければならないのでしょうか。

 

労働基準法は、休業手当について、つぎの通り定めています。

 

*労働基準法26条

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

 

そこで、問題は、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるかどうかです。

 

この点について、厚生労働省が公表している「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」*では、

「不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。」

「ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。」

とされています(4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)の問1)。

 

このため、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合に、この不可抗力による休業といえるのかを検討する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

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