最新の記事
アーカイブ
カテゴリー
債権回収16
さて、どんなに取引先の信用調査を行い、 しっかりした契約書も作成し、万全の体勢で取引が開始できたとしても、それだけでは十分ではありません。
その後の与信管理をおろそかにすると、結果的に債権回収に支障が生じてしまうからです。
では、与信管理とは、いったいどうすればよいのでしょうか。
まず重要なのは、取引先に対し、現在いくらの債権・債務があるかを正確に把握することです。
たとえば、取引基本契約に基づいて、継続的に取引するような場合は、少なくとも注文書・注文請書といった書面を取り交わし、どのような債権・債務が生じているのか、きちんと証拠に残すようにして、現在いくらの債権・債務があるかを正確に把握します。
これをしておかないと、取引先に未払が発生しているのかどうかもわからないからです。
つぎに、入金があったらただちに請求額と入金額をつき合わせます。
おおよそ一致しているかどうかではなく、1円単位で一致しているかどうかを確認しましょう。
合理的な理由がないにもかかわらず、請求したのに支払わないというのは、取引先が資金的な問題を抱えているという、もっとも顕著な徴候だからです。
また、支払金額の値下げや支払期限(納期)の延期を求めてくるといったことも、危険な兆候の一つです。
与信管理は、このような様々な危険な兆候を素早くキャッチするため、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けることに尽きるといえます。
(弁護士 國安耕太)
債権回収15
つぎに不動産の登記事項証明書です。
不動産の登記事項証明書には、権利部(甲区)という記載があります。
「権利部(甲区)」には当該不動産の所有権に関する事項が記録されています。
たとえば、甲区欄に取引先ではなく、第三者の名前が記載されている場合には、取引先は不動産の賃貸を受けており、不動産資産を保有していないことを把握することができます。
また、甲区欄に取引先の名前があったとしても、国税や他の債権者の差押えが登記されているようなときは、税金や他の債権者に対し、支払いができないほどに資金繰りに行き詰まっていることが分かります。
したがって、そのような会社と取引をしても支払を受けられる見込みは薄いですから、その会社との取引は断念すべきといえます。
同様に、代表取締役の自宅に差押えがなされているような場合も、取引先として信用できるか、かなり疑問があるといえます。
このほかにも、不動産の登記事項証明書から読み取ることができる情報はいくつもあります。
取引開始前には、不動産の登記事項証明書を取得し、分析しておくことを強くお勧めします。
(弁護士 國安耕太)
債権回収14
このほか、法人や不動産の登記事項証明書を読み解くことで、貴重な情報を得られる可能性もあります。
まず、法人の登記事項証明書であれば、商号変更の履歴を見るだけで、重要な情報が得られることもあります。
たとえば、商号が頻繁に変更されているような会社は、会社が乗っ取られたり、支配権を巡って争いがあったりする可能性があるので、要注意です。
過去ご相談いただいた案件でも、現在の商号をインターネットで検索しても何も出てこなかったが、過去の商号で検索を掛けてみたら、詐欺会社として数多くの書き込みが見付かった、ということもありました。
また、本店の記載からも重要な情報が得られることがあります。
たとえば、本店が頻繁に移転している場合には、その理由について説明を求めた方がよいでしょう。
もちろん、世の中には引越マニアと呼ばれる人もいますので、頻繁に移転しているだけで危ない会社ということが確定するわけではありません。
また、会社が急激な成長を続けて短期間に引っ越しを繰り返しているというような特別な事情があることもあります。
しかし、一般的には、引越には相当の労力と手間がかかりますので、特別な事情がないにもかかわらず、頻繁に移転しているのは、移転しなければならないようなマイナスな事情が隠されている可能性があります。
特に商号変更と共に本店移転を繰り返している場合は、かなり「あやしい」といえます。
このほかにも、法人の登記事項証明書から読み取ることができる情報はいくつもあります。
取引開始前には、相手方の会社の登記事項証明書を取得し、分析しておくことを強くお勧めします。
(弁護士 國安耕太)
債権回収13
つぎに、調査会社の調査報告書です。
代表的な信用調査会社として、株式会社帝国データバンクや、株式会社東京商工リサーチ等があります。
調査報告書には様々な情報が記載されています。
従業員・設備概要、系列・沿革、業績、取引先、銀行取引・資金現況、現況と見通し、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表情報、株主資本等変動計算書、財務諸表分析表、推定キャッシュフロー計算書・分析表等を取得することができます。
また、企業が健全な経営活動を行っているか、支払能力があるか、安全な取引ができるか等について100点満点で評価がされていることがあります。
そのため、決算書が手に入らなくても、ある程度の情報を得ることができます。
決算書を取得できなかったような場合や第三者機関による客観的な評価を自社による分析に併せて参考にしたいような場合には、取得してみるものよいかもしれません。
(弁護士 國安耕太)