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2013年9月の投稿

白斑問題と製造物責任

1 先日、東京都内に住む女性が、9月18日、化粧品会社であるK社に対し、K社の美白化粧品で肌がまだらに白くなる白斑症状が出たとして、約4800万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したとのニュースが配信されました。

 

訴状の内容が公開されていませんので、この女性がどのような法的根拠に基づいて損害賠償を求めているのかは不明ですが、一般的にこのような場合、どのような法的根拠に基づいて、損害の賠償を請求できるのでしょうか。

 

2 まず、①会社に対し、製造物責任法に基づき損害賠償請求をすることが考えられます。

すなわち、製造物責任法は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入・・・した製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(3条)と定めています。本件でも、K社の美白化粧品の欠陥により、白斑症状が出たということが立証できれば、K社は、それにより生じた損害を賠償する責任があります。

 

つぎに、②会社に対し、民法709条、710条の規定に基づき損害賠償(慰謝料)を請求することも考えられます。

 

さらに、③K社の役員等が、自社の製品によって白斑症状が出ることを知りながら放置していたような場合には、役員等に対し、損害賠償請求(会社法429条)することができる場合もあります。

 

3 近時、上記のような法的根拠に基づき、製造物責任を問う訴訟が増えています。たとえば、お茶を原材料とした石鹸を使用したことで多数の方が小麦アレルギーを発症してしまったという事件は、記憶に新しいところと思いますが、この事件では、北は北海道から南は沖縄まで、各地で被害者弁護団が結成され、各地の裁判所に提訴されています。

 

また、過去には、化粧品を使用したことにより、その顔面などに接触性皮膚炎を生じたとして、製造・販売会社に対して、化粧品に指示・警告上の欠陥が存在したなどと主張して、製造物責任法(2条、3条)又は不法行為(民法709条)による損害賠償請求を行った事案があります。

この事案について東京地裁は、化粧品の使用と皮膚障害が生じた製品事故について因果関係を肯定したものの、右事故について化粧品の製造業者の警告上の欠陥を否定して、原告の請求を棄却しています(東京地判平成12.5.22判例時報1718号3頁)。

 

このほか、化粧品に関する事案ではありませんが、製造物責任を問題とした有名な裁判例として、こんにゃく入りゼリーを子供(当時1歳9か月)が食べ、喉に詰まらせて窒息死したことついて、亡くなった子供の両親が、製造会社及び役員等に対し、製造物責任法(3条)又は不法行為(民法709条、会社法429条)等による損害賠償請求を求めた事案(大阪高判平成24.5.25)もあります。

この事案について大阪高裁は、こんにゃくゼリーによる窒息事故の危険性は、食品自体の危険性ではなく、食べ方に起因して発生する危険であり、本件事故当時,本件警告表示が不十分であって,本件こんにゃくゼリーが通常の安全性を欠くとまではいえないなどとして、控訴人らの各控訴をいずれも棄却しました。

 

4 上記のとおり、化粧品やこんにゃくゼリーの事案では、製造物自体に欠陥があるということを立証できず、会社等の損害賠償責任は認められませんでした。

しかし、会社等にとっては、このような事件が起こると、製造物の回収・調査のため費用を支出しなければならなくなりますし、このような訴訟を提起されること自体が、風評被害等のリスクを生じます。

また、製造物の欠陥が明らかな場合には、予想外に高額な賠償金を支払わなければならなくなることもあります。

 

ぜひ今回の白斑問題を他山の石として、自社製品を改めてチェックするとともに、不具合等の社内報告および社外からのクレームを吸い上げるようなシステムを構築しましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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ブラック企業と経営者

先日、「ブラック企業大賞2013」の授賞式が開催され、大賞は大手居酒屋チェーンを経営するW社が受賞したようです。

ブラック企業について、明確に定義されているわけではありませんが、ウィキペディアでは、「広義には入社を勧められない労働搾取企業を指す。すなわち、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す」とされています。

私たち外部の人間には、ブラック企業大賞を受賞したW社が本当にブラック企業かどうかはわかりません。

しかし、仮に使用者である企業が、長時間のサービス残業を従業員に強いているとすれば、未払残業代(労基法37条1項)や付加金(労基法114条)を請求することができますし、長時間労働により身体に異常が生じたような場合には、安全配慮義務違反を根拠に損害賠償請求(民法709条)をすることができます。

また、サービス残業については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が労働基準局長通達(平成13年4月6日基発339号)として出されています。この通達では労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、始業・終業時刻の確認及び記録等が挙げられています。これに関連して、タイムカードによる労働時間の記録がある場合には、使用者による適切な反証がない限り、その記録に従って時間外労働の時間を算定するとの裁判例(丸栄西野事件、大阪地判平成20・1・11、労判957-5)もあります。サービス残業に対する裁判所の姿勢は近年厳しくなっているといえましょう。

さらには、悪質なサービス残業の事例では、労働基準監督署の立入検査や是正勧告を受けている場合もあります。

また、刑罰の対象にもなりえます。たとえば、残業代不払いの場合は、労基法24条に違反し、30万円以下の罰金となり(労基法120条)、36協定の締結がないのに時間外労働をさせた場合には、労働基準法32条に違反し、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。

昨今では、ひとたびニュースとなれば半永久的にネットに残り続けますから、万一これらの処分を受けて公表されると、企業にとって大きなダメージとなります。

さらに、パワーハラスメントについては、加害者である上司や同僚に対する慰謝料請求(民法709条)だけでなく、労働契約上の安全配慮義務違反を根拠に、企業に対し、損害賠償請求することも考えられます。現に川崎市水道局事件(東京高判平成15・3・25、労判849-87)では、使用者である川崎市に、安全配慮義務違反を理由とした国家賠償法上の責任が認められました。

このように、現代社会においては、昔と同じように従業員に働いてもらっていたにもかかわらず、突然ネット上でブラック企業であると批判されたり、現実に従業員から訴訟を提起されることも珍しくありません。

そして、企業にとっては、このような批判をされたり、訴訟を提起されること自体がリスクとなり得ます。

企業の経営者としては、このような批判や訴訟を防止するため、事前に専門家によるチェックを受けることが必要不可欠な時代となったといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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