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相続をめぐる法律関係12 自筆証書遺言に関する法改正
第12回のテーマは、自筆証書遺言に関する法改正です。
現行法において、自筆証書遺言を作成するためには、遺言者が遺言内容の全文を自署する必要があり、遺言に添付する財産目録をパソコンで作成したり、通帳のコピーを遺言に添付することは認められていません。
そのため、特に財産が多数ある場合には、財産目録を含め、遺言の全てを手書きで作成しなければならず、遺言者にとって相当な負担がありました。
しかし、今回、相続法が改正されたことにより、自筆証書遺言を作成する場合に、パソコンで財産目録を作成したり、通帳のコピーを添付することができるようになりました(改正民法968条2項)。
目録を手書きで作成しない場合には、偽造を防止のため、目録の枚数ごとに遺言者が署名捺印しなければなりません。
自筆証書遺言の方式緩和に関する改正法は、平成31年1月13日に施行されます。
それ以前に自筆証書遺言を作成する場合には、現行法が適用されますので、全て手書きで作成するよう注意してください。
また、今回の法改正により、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も創設されました。
遺言者が申請すれば、法務局で遺言を保管してくれるため、遺言書の紛失や隠匿を防止することができます(法務局における遺言書の保管等に関する法律4条1項)。
また、遺言者の死亡後には、相続人が遺言書の写しの請求や閲覧をすることができます(同法9条1項)。
法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行日は、平成32年7月10日です。
それ以前には、法務局において遺言書の保管を申請することはできませんので、注意してください。
(弁護士 松村 彩)
相続をめぐる法律関係11 遺贈
第11回のテーマは、遺贈です。
遺言により、被相続人の財産の全部または一部を、相続人または相続人以外の者に贈与することを「遺贈」といいます(民法964条)。
相続人以外の者に財産を遺したい場合には、遺言を作成しておく必要があります。
特に、内縁関係の場合には、夫婦としての実態があったとしても法律上の相続権は認められませんので、遺言を作成しておく意味があるといえます。
遺贈の方法としては、「A不動産をXに遺贈する」というように特定の具体的な財産を対象とする方法(特定遺贈)と「遺産全部をXに遺贈する」「遺産の2分の1をXに遺贈する」というように遺産全体の全部または一部を対象とする方法(包括遺贈)があります。
遺贈を受けることができる者(受遺者)は、自然人に限られず、法人や胎児も可能です(民法965条、886条)。
ただし、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈の効力は生じません(民法994条)。
また、受遺者は、原則として遺贈を放棄することもできます。
なお、「遺産全部をXに遺贈する」というように、他の相続人の遺留分を侵害する遺言を作成した場合には、遺留分を有する相続人により遺留分減殺請求がなされる余地があります。
次回は、「自筆証書遺言に関する法改正」についてご紹介します。
(弁護士 松村 彩)
相続をめぐる法律関係10 遺産分割
第10回のテーマは、遺産分割です。
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、協議で遺産を分割することができます。
遺産分割協議は、共同相続人全員で行わなければならず、一部の者を除外した場合、除外された相続人は再分割を求めることができます。
遺産分割をするためには、前提として、①分割の当事者(相続人)が確定していること、②分割の基準となる相続人の具体的相続分が確定していること、③分割の対象となる相続財産の範囲が確定していることが必要です。
そのため、この点に争いがある場合には、裁判所の手続きにより確定することが必要です。
遺産分割について、共同相続人間で協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、当事者である共同相続人は、家庭裁判所に対して遺産分割の調停を申し立てることができます。
遺産分割調停手続きでは、調停委員が、当事者双方から事情を聞いたり、必要に応じて資料の提出を求めたりするなかで、話合いによる解決を目指していきます。
調停手続きにおいて、話合いにより解決することができた場合には、合意の内容を明記した調停調書を作成することになります。
他方で、調停手続きにおいて、話合いにより解決することができなかった場合には、審判(裁判官が判断を決定する手続き)により遺産分割がなされます。
次回は、「遺贈」についてご紹介します。
(弁護士 松村 彩)
相続をめぐる法律関係9 遺言
第9回のテーマは、遺言です。
遺言は、15歳以上の者で、合理的な判断能力としての遺言能力を備えていれば作成することができます。
遺言の普通方式には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があります。
①自筆証書遺言は、遺言者が、遺言内容の全文、日付、氏名を自書して判を押して作成する遺言です(民法968条1項)。
法律家の関与なく、遺言作成者が単独で自由に作成することができるため、最も安価な方法といえます。
ただし、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、遺言には厳格な方式が定められています。
そのため、その方式に従わない遺言は無効になってしまうため、自筆証書遺言作成にあたっては、方式を誤らないよう注意する必要があります。
②公正証書遺言は、遺言者が公証役場に出向き、口頭で公証人に遺言の内容を伝え、公証人がその内容を文章化し、遺言者が内容を確認した上で署名押印することにより作成するものです。
自筆証書遺言とは異なり、公証人の関与により作成しますので方式の不備で遺言が無効になるリスクを下げることができます。
ただし、証人の立会が必要になるほか、公正証書遺言作成には手数料がかかりますので、あらかじめ公証役場で手数料を確認するようにしてください。
③秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成するものです。
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にすることができる点で利点がありますが、手続きが煩雑であり、公証人に支払う手数料も要するため、あまり利用されていないといえます。
次回は、「遺産分割」についてご紹介します。
(弁護士 松村 彩)