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2019年9月の投稿

近時の労働法改正6

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法の施行とともに、改正労働安全衛生法が施行されています。

主な改正は、労働時間把握の義務化と産業医、産業保健機能の強化です。

 

まず、労働時間把握の義務化については、これまで割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定しているのみでした。

また、裁量労働制が適用される人などは、この通達の対象外とされていました。

本改正では、健康管理の観点から、事業者に対し、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての労働者の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握するよう法律で義務づけています(66条の8の3)。

 

つぎに、産業医、産業保健機能の強化については、これまでは産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対して勧告することができること、事業者は、産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務があることが規定されていました。

本改正では、事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないこととされ、事業者は、産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければならないこととされました(労働安全衛生法13条4項、13条6項等)。

このほか、産業医の独立性・中立性の強化が図られています。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正5

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

これまで主に中小企業に対する影響が大きいと考えられる改正について解説してきましたが、このほか、フレックスタイム制の拡充および高度プロフェッショナル制度の創設といった改正もされています。

 

まず、フレックスタイム制の拡充については、次のような改正がされました。

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるため、子育てや介護等の理由で、毎日固定の就業時間で勤務することが難しい労働者にとって働きやすい職場を提供することができ、ひいては離職率の低下につながるなど、使い方によっては労働者・使用者双方にメリットのある制度です。

ただ、これまでは清算期間の上限が「1か月」までとされていたため、労働者は1か月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1か月を超えた調整をすることはできませんでした。

本改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能となりました(労働基準法33条の3 1項2号*1)。

 

つぎに、高度プロフェッショナル制度の創設については、次のような改正がされました。

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者に関し、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないという制度です。

本改正では、①年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を付与すること、②選択的措置の実施、を義務化しました(労働基準法41条の2 1項4号・5号*2)。

 

このように本改正では、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方ができるよう様々な改正がなされています。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法33条の3 1項

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

二清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

 

*2 労働基準法41条の2 1項4号・5号

四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。

五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。

イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。

ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。

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近時の労働法改正4

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

主な改正のうち、時間外労働の上限規制・月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げとともに、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、年次有給休暇の取得義務付けです。

 

本改正で、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して年次有給休暇を与えなければならないことになりました(労働基準法39条7項*1)。

 

ただし、労働者が自らの希望で5日以上年次有給休暇を取得する場合や、計画的付与で5日以上年次有給休暇を付与した場合は、この規定は適用されません(労働基準法39条8項*2)。

 

年次有給休暇は、入社日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日間付与されます(労働基準法39条1項)。

また、継続勤務年数が増加するごとに、付与される年次有給休暇も増加していきます(労働基準法39条2項)。

このように、年次有給休暇は、全労働者一律に付与されるものではないため、労働者ごとにきちんと管理しておくことが必要となりますので、ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法39条7項

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

 

*2 労働基準法39条8項

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

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