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本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。
これまで主に中小企業に対する影響が大きいと考えられる改正について解説してきましたが、このほか、フレックスタイム制の拡充および高度プロフェッショナル制度の創設といった改正もされています。
まず、フレックスタイム制の拡充については、次のような改正がされました。
フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるため、子育てや介護等の理由で、毎日固定の就業時間で勤務することが難しい労働者にとって働きやすい職場を提供することができ、ひいては離職率の低下につながるなど、使い方によっては労働者・使用者双方にメリットのある制度です。
ただ、これまでは清算期間の上限が「1か月」までとされていたため、労働者は1か月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1か月を超えた調整をすることはできませんでした。
本改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能となりました(労働基準法33条の3 1項2号*1)。
つぎに、高度プロフェッショナル制度の創設については、次のような改正がされました。
高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者に関し、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないという制度です。
本改正では、①年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を付与すること、②選択的措置の実施、を義務化しました(労働基準法41条の2 1項4号・5号*2)。
このように本改正では、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方ができるよう様々な改正がなされています。
(弁護士 國安耕太)
*1 労働基準法33条の3 1項
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
二清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
*2 労働基準法41条の2 1項4号・5号
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。
五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。
ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。