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2015年3月の投稿

暴力団排除条例と賃貸借契約

東京でも桜が満開ですね。

当事務所の目の前は防衛省なのですが、ここの桜も綺麗に咲いています。

 

さて、当職は、平成25年12月11日に、DIAMOND online 「知らなきゃマズい!法律知識の新常識」に、「マンションのお隣さんが“反社”だったら?正当な賃貸契約解除方法と距離の置き方」を寄稿しました*1

*1 http://diamond.jp/articles/-/45797

 

この中で、「特段問題行動がなく平穏に住居として使用している場合、暴力団員であるというだけで、賃貸借契約を解消することは困難」であり、そのためにも「賃貸借契約書には、必ず暴力団排除条項を設け、相手方が暴力団員等である場合は、そのことだけで契約を解除できるようにしておくことが重要」であると解説しました。

 

そして、実際に先日(平成27年3月27日)、最高裁は、賃貸人が「暴力団員であることが判明したとき(同居者が該当する場合を含む。)。」には、「住宅の明渡しを請求することができる。」との条項を根拠に、賃借人である暴力団員に対し、賃貸借契約の解除および建物の明渡しを求めた事案において、賃貸人の請求を認める判断をしました*2

*2 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/994/084994_hanrei.pdf

 

本件は、賃貸人が地方公共団体であり、契約ではなく条例に基づいて賃貸されていたという特殊な事情はありますが、暴力団員であることのみを理由として賃貸借契約の解除が認められた事案として、一定の意義を有するといえます。

(なお、この事案で、賃借人側は、①本件規定は合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから、憲法14条1項に違反する、②本件規定は必要な限度を超えて居住の自由を制限するものであるから、憲法22条1項に違反する等の主張をしていましたが、いずれも否定されています。)

 

賃貸借契約を締結する際は、暴力団排除条項を忘れずに規定するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

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会社の不祥事と取締役の責任

早いもので、本日(3月23日)で、35歳になりました。

これまで大きな病気もなく、健康でこれたことおよび不安なく仕事に打ち込める環境を整えてくれていることを両親・義母そして家族に感謝します。

また、公私に渡り支援してくれる諸先輩方、事務所の仲間そして友人達に深く感謝します。

みなさま、これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

さて、先日来、東洋ゴム工業株式会社(以下「東洋ゴム」)の販売する、免震ゴムの性能偽装問題が話題となっています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150321-00000556-san-soci

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150322-00050109-yom-soci

 

事実関係については、まだ明らかになっていない部分も多いですが、一部の報道では、偽装問題が発覚した後も、出荷をしていたとされています。

 

本件では、東洋ゴムの取締役等の役員が、偽装の事実を認識していたのかは明らかではありません。

しかし、仮に、偽装の事実を認識していたにもかかわらず、これを公表していなかったような場合には、取締役等に損害賠償責任が課される可能性があります。

 

実際、過去の裁判例では、食品衛生法上、使用の認められていない添加物を使用した商品が販売されていたことを認識したにもかかわらず、その事実を公表しなかった取締役等に、巨額の損害賠償責任が認められたものがあります(大阪高判平成18年6月9日判時1979号115頁、ダスキン肉まん事件)。

 

もちろん、会社経営に損失はつきものであり、会社に損失(損害)が生じたからといって、常に取締役に損害賠償責任が生じるわけではありません。

ただ、経営上の判断の内容およびその決定過程に不合理な点が存する場合は、取締役の善管注意義務(会社法330条・民法644条)、忠実義務(会社法355条)に違反すると判断され、損害賠償責任を負う可能性があります。

 

たしかに偽装のような不祥事に関する事実は、会社の評判を毀損するものですから、これを隠したくなる心理はわからないでもありません。

しかし、上記のとおり、事実の隠匿は、損害賠償責任を負わされる可能性があります。

また、過去の不祥事事案をみる限り、不祥事を起こしたことそのものよりも、その後の対応の悪さ(隠匿、ごまかし、開き直り等)による影響の方が大きいといえます。

 

いずれにしても、不祥事が起きた際は、初動が大事です。

速やかに弁護士等の専門家に相談し、対応するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

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【雑感】競馬の外れ馬券と所得税法上の必要経費

昨日(2015年3月10日)、馬券を長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を上げていた被告人が、その所得につき正当な理由なく確定申告書を期限までに提出しなかったという所得税法違反の事案に関する最高裁判決が出されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/934/084934_hanrei.pdf

 

この事案は、一時期、「競馬の外れ馬券が、所得税法上の必要経費にあたる」と判断されたとして、報道されていましたので、記憶にある方もいると思います。

 

ただ、残念ながら、一審判決(大阪地裁平成26年10月2日判決)および本最高裁判決のいずれも、一般的に競馬の外れ馬券が、所得税法上の必要経費にあたると判断したものではない、ことに注意が必要です。

 

すなわち、本事案は、毎週土日に開催される中央競馬の全ての競馬場のほとんどのレースについて、数年以上にわたって大量かつ網羅的に、一日当たり数百万円から数千万円、一年当たり10億円前後の馬券を購入し続けていたという非常に特殊な事案です。

かかる特殊な事案であるからこそ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるとして、「払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる」と判断され、また、「当たり馬券の購入代金の費用だけでなく、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ」るとして、「外れ馬券の購入代金について当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる」と判断されました。

 

以上のとおり、本事案で「競馬の外れ馬券が、所得税法上の必要経費にあたる」と判断されたのは、上記のとおり非常に特殊な事情が存したからです。

したがって、一般の方が、趣味の範囲で馬券を購入するような場合には、残念ですが、必要経費として計上することはできません。

馬券の購入は節度をもって行いましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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過労死と脳・心臓疾患の認定基準

先日(2015年3月4日)、2011年に26歳で亡くなった堺市の市立中学校の教諭が、公務災害(労災)による死亡と認定されたとの報道がありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150304-00000024-asahi-soci

 

報道では、『同僚教員の証言などを元に推計した前田さんの死亡直前3カ月の校内での残業時間は月61~71時間だった。国の過労死認定基準(2カ月以上にわたり月平均80時間以上)を下回る数値だったが、残された授業や部活の資料などから、「(一人暮らしの)自宅でも相当量の残業をこなしていた」と判断し』過労死と認定されたとされています。

 

では、「国の過労死認定基準」とは、どのようなものなのでしょうか。

 

過労死の労災認定について、国(厚生労働省)は、「脳・心臓疾患の認定基準」を公表し、これに基づいて判断しています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

 

具体的には、

次の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、労基則別表第1の2第9号に該当する疾病として取り扱う。

(1)発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事)。

(2)発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務)。

(3)発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)。

とされています。

 

そして(3)長期間の過重業務については、

業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。

としたうえで、特に労働時間について、

①発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

②発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること。

としています。

 

そうすると、報道では、『死亡直前3カ月の校内での残業時間は月61~71時間」で、「国の過労死認定基準(2カ月以上にわたり月平均80時間以上)を下回る数値だったが、残された授業や部活の資料などから、「(一人暮らしの)自宅でも相当量の残業をこなしていた」』とされ、あたかも月61~71時間の残業に加え、相当量の残業をしていたことを根拠に特別に労災認定されたかのように読めますが、実際には、むしろ忠実に認定基準に沿って判断されたということが分かります。

 

以上のとおり、脳・心臓疾患の労災認定は、あくまでも総合判断です。

1か月あたり45時間を超える時間外労働が認められない場合であっても、異常な出来事や短期間の過重業務があれば、労災認定される可能性もあります。

 

1か月あたりの時間外労働が45時間以上とならないよう注意することは、もちろん重要ですが、これだけにとらわれず、職場環境の改善に努めるようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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労災と遺族補償給付(続報)

先日(平成27年2月5日)、労災と遺族補償給付との相殺の方法に関し、近日中に最高裁の判断が示される旨をブログに掲載しました(*1)。

 

この件に関し、昨日(平成27年3月4日)、最高裁は、「被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するに当たり、上記の遺族補償年金につき、その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。」との判断を示し、従来の最高裁判例を変更しました(*2)。

 

この事案では、地裁判決は、賠償額にかかる遅延損害金から遺族補償給付を差し引くという処理をしましたが、二審の高裁判決では、元本から遺族補償給付を差し引くという処理をしました。

遅延損害金は、元本の額によって大きく増減するため、遅延損害金と元本のいずれから差し引くのかによって、被害者が受領できる金銭の額に大きな差異が生じます。

 

本判決は、その意味で実務上非常に大きな意味を持つものといえます。

 

なお、本判決は、上記損益相殺の対象に関する判断の他、「被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるというべきである」との判断も示しています。

 

遺族補償給付は、元本から差し引くものであるとしても、不法行為(事故)の発生と実際に遺族補償給付がなされるまでにはタイムラグがあります。

そして、「不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に発生し、かつ、何らの催告を要することなく遅滞に陥る」(最判昭和37年9月4日民集16巻9号1834頁)とされています。

そのため、不法行為の発生と現実に遺族補償給付を受けられるまでの間は、遅延損害金が発生するのではないか、との疑問が生じます。

そこで、最高裁は、この点について「不法行為の時に塡補された」ものと評価する旨を明確にしました。

 

今後、様々なところで詳細な分析がなされると思いますが、実務上重要な意義を持つ判決ですので、ご紹介いたします。

 

*1

https://north-blue-law.com/blog-child/%e5%8a%b4%e7%81%bd%e3%81%a8%e9%81%ba%e6%97%8f%e8%a3%9c%e5%84%9f%e7%b5%a6%e4%bb%98%e3%81%a8%e3%81%ae%e7%9b%b8%e6%ae%ba%e3%81%ae%e6%96%b9%e6%b3%95/

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/909/084909_hanrei.pdf

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