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労災と遺族補償給付(続報)

先日(平成27年2月5日)、労災と遺族補償給付との相殺の方法に関し、近日中に最高裁の判断が示される旨をブログに掲載しました(*1)。

 

この件に関し、昨日(平成27年3月4日)、最高裁は、「被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するに当たり、上記の遺族補償年金につき、その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。」との判断を示し、従来の最高裁判例を変更しました(*2)。

 

この事案では、地裁判決は、賠償額にかかる遅延損害金から遺族補償給付を差し引くという処理をしましたが、二審の高裁判決では、元本から遺族補償給付を差し引くという処理をしました。

遅延損害金は、元本の額によって大きく増減するため、遅延損害金と元本のいずれから差し引くのかによって、被害者が受領できる金銭の額に大きな差異が生じます。

 

本判決は、その意味で実務上非常に大きな意味を持つものといえます。

 

なお、本判決は、上記損益相殺の対象に関する判断の他、「被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるというべきである」との判断も示しています。

 

遺族補償給付は、元本から差し引くものであるとしても、不法行為(事故)の発生と実際に遺族補償給付がなされるまでにはタイムラグがあります。

そして、「不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に発生し、かつ、何らの催告を要することなく遅滞に陥る」(最判昭和37年9月4日民集16巻9号1834頁)とされています。

そのため、不法行為の発生と現実に遺族補償給付を受けられるまでの間は、遅延損害金が発生するのではないか、との疑問が生じます。

そこで、最高裁は、この点について「不法行為の時に塡補された」ものと評価する旨を明確にしました。

 

今後、様々なところで詳細な分析がなされると思いますが、実務上重要な意義を持つ判決ですので、ご紹介いたします。

 

*1

https://north-blue-law.com/blog-child/%e5%8a%b4%e7%81%bd%e3%81%a8%e9%81%ba%e6%97%8f%e8%a3%9c%e5%84%9f%e7%b5%a6%e4%bb%98%e3%81%a8%e3%81%ae%e7%9b%b8%e6%ae%ba%e3%81%ae%e6%96%b9%e6%b3%95/

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/909/084909_hanrei.pdf

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