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死後事務委任契約1
みなさんは、「死後事務委任契約」という言葉を聞いたことはありますか?
死後事務委任契約は、委任者が、第三者に対して、自分が亡くなった後の諸手続や葬儀・埋葬等に関する事務(死後事務)に関する代理権を付与して、処理を代行してもらうという内容の契約です。
通常、このような死後事務は、残された家族や親族が行っています。
もちろん行ってくれる家族や親族がいるのであれば、死後事務を委任する必要はありません。
そのため、現時点で死後事務委任契約を必要としている方はそう多くはないかもしれません。
しかし、一説によれば、2040年には65歳以上の単身世帯が2割を超えるとも言われています。
このようないわゆる「おひとりさま」が増えてくると、死後事務を家族や親族に頼むことは難しくなってくる可能性があります。
また、同様に、高齢の夫婦で身寄りがなかったり、親族と疎遠だったりする場合にも、死後事務を家族や親族に頼むことができないということが考えられます。
このような場合に備えて予め死後事務を代行してもらう契約、これが死後事務委任契約です。
今後は、死後事務を家族や親族に頼むことができない方も増えてくると思いますので、次回以降、死後事務委任契約の基本について話をしていきたいと思います。
(弁護士 國安耕太)
感染症と労務管理10
さて、先週、会社は、できる限り従業員の解雇ではなく、合意退職となるよう努力すべきという話をしました。
しかし、どう説得しても労働者が退職してくれない、ということもあり得ると思います。
この場合、やむを得ず、労働者を解雇できないか、検討することになります。
ただ、前回お伝えしたように、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすことから、制限されています。
そのため、解雇が無効となるような解雇権の濫用とならないように、慎重に検討・判断しなければなりません。
特に業績の悪化を理由に従業員の解雇をする場合、いわゆる整理解雇の場合について、過去の裁判例がその判断基準を示しています。
具体的には、多くの裁判例で、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つの要件を検討し、当該解雇の有効性が判断されています。
そこで、コロナの影響で業績が悪化した場合であっても、この4要件を満たしているか、慎重に検討し、解雇の有効性を検討する必要があります。
(弁護士 國安耕太)
感染症と労務管理9
最近、従業員に退職してもらいたい、との相談が増えてきました。
なぜこのような相談が増えてきているのか、正確なところはわかりません。
ただ、コロナの影響で業績が悪化したものの、各種助成金や補助金、融資で急場を凌いでいた会社が、緊急事態宣言の解除後も業績が十分回復していないといった状況もあるのかもしれません。
さて、上記のように、会社が従業員に退職してもらいたいと考えた場合、いきなり当該従業員を解雇してしまうということがありますが、このような対応は、正直、考えものです。
たしかに、法律上、解雇は自由に出来るのが原則です。
労働基準法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としており、解雇そのものを禁止するものではありません。
しかし、判例上、解雇権濫用法理が確立されており、これをうけて労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、事実上解雇を制限しています。
それゆえ、たとえコロナの影響で業績が悪化したとしても、それだけでは、解雇が無効となってしまう可能性があるのです。
会社は、このことを肝に銘じて、解雇ではなく、労働者が話し合いによって退職する合意退職となるよう努力すべきといえます。
(弁護士 國安耕太)
感染症と労務管理8
先週、テレワーク等の場合、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することで対応することになるのが原則となるという話をしました。
これに対し、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働に関するみなし労働時間制(労働基準法38条の2の1項*)が適用されることになります。
では、どのような場合に、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるといえるのでしょうか。
この点について、厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、つぎの内容が記載されています。
(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること)
(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
以上の2つの要件を満たしていなければ、テレワーク等において、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難とはいえない。
そのため、テレワーク等を実施した際に、事業場外労働に関するみなし労働時間制の適用を受けようとする場合は、上記要件を満たすように実施する必要がありますので、注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)
* 労働基準法38条の2の1項
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。