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2019年2月の投稿

民法改正5 保証

保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、主債務者に代わって支払をすべき義務のことをいい、主債務を保証している者を保証人といいます。

 

保証のうち、将来発生する不特定の債務を包括的に保証するものを「根保証」と呼んでいます*1。

その中でも、保証人が法人でない根保証契約(「個人根保証契約」)については、つぎのような規制が設けられています。

(1)極度額を定めない個人根保証契約は無効(改正法465条の2・2項*2)

(2)極度額の定めは、書面または電磁的記録で行わなければ無効(改正法465条の2・3項、446条3項*3)

(3)貸金等債務の根保証に関し、保証期間は原則3年、最長5年(改正法465条の3*4)

(4)主債務者の死亡、保証人の破産・死亡等の事情があれば、保証終了(改正法465条の4)

 

また、事業に係る債務(事業用融資)に関する保証契約についても、特則が設けられています(改正法465条の6・1項)。

すなわち、事業用融資に関する保証契約は、一定の場合(主債務者が法人である場合の取締役等が締結する場合等)を除き、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、効力を生じません。

 

なお、公証人による保証意思の確認の方式についても、詳細に規定されています(改正法456条の6・2項)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

このほか、保証には、通常の保証(単純保証)のほか、連帯保証、根保証、物上保証などの種類があります。

 

*2 改正法465条の2

「1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。」

 

*3 改正法446条3項

「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

 

*4 改正法465条の6・1項

「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」

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民法改正4 法定利率

債務に付けられる利息は、「年10パーセント」のように、一定の期間、一定の割合で発生する旨が定められます。

この利息を算定するための割合を「利率」といいます。

 

この利率には、法定利率と約定利率があり、法定利率は法律で定められた利率をいい、約定利率は当事者間の合意で定められた利率をいいます。

 

約定利率が定められている場合は、原則として約定利率に従います。

これに対し、法定利率は、

(1)利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定

(2)約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定

(3)逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除*1

に用いられます。

 

法定利率は、現行法では、民事の法定利率は年5%(404条)、商事の法定利率は年6%(商法514条)とされています。

 

しかし、昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いており、利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が 抑えられるなど、当事者の公平を害するとの指摘がなされていました。

 

そこで、改正法は、法定利率を市中の金利の変動に合わせて上下させる変動制を導入しています(改正法404条*2)。

具体的には、

(ア)利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による

(イ)当初の法定利率は、年3パーセント

(ウ)法定利率は、3年を一期とし、一期ごとに、変動する

ことになります。

 

なお、約定利率の上限がある場合(利息制限法等)、異なる法定利率が定められている場合(賃金の支払の確保等に関する法律等)もあるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 中間利息控除とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することをいいます。

 

*2 改正法404条

「1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。」

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民法改正3 消滅時効(2)

改正民法では、債権については

(ア)権利を行使することができる時から10年

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

のいずれか早い方の経過によって消滅時効が完成するのが原則です(改正法166条1項)。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時(権利を行使することができる時)から20年

(イ)損害および加害者を知った時から3年

とされています(改正法724条)。

 

しかし、これには、例外があります。

 

それは、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の場合です。

生命・身体は重要な法益であり、これに関する債権は保護の必要性が高く、また、治療が長期間にわたるなどの事情により、被害者にとって迅速な権利行使が困難な場合があります。

 

それゆえ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、つぎのような特則が設けられています。

すなわち、債務不履行の場合、不法行為の場合のいずれにおいても、

(ア)権利を行使することができる時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法167条*1、改正法724条の2*2)。

 

以上のとおり、債務不履行・不法行為のいずれを根拠とする場合も同じであり、かつ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間が、伸長されていることに注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法167条

「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。」

*2 改正法724条の2

「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。」

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民法改正2 消滅時効(1)

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度をいいます。

 

現行法は、原則として、権利を行使することができる時から10年間行使しない場合、当該債権は時効で消滅する一方(167条1項)、職業別に短期の消滅時効を定めています(170条~174条)。

たとえば、医師の診療債権は3年(170条1号)、弁護士の報酬債権は2年(172条1項)で消滅するとされており、また、商取引によって生じた債権(商事債権)は、5年で消滅するとされています(商法522条)。

 

しかし、この短期の消滅時効制度は、どの時効期間が適用されるのか、複雑でわかり辛いという批判がありました。

他方で、消滅時効制度が設けられている趣旨は、(1)長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図るとともに、(2)権利の上に眠る者は保護しない(権利を行使しないのであれば、当該権利を行使しえなくなっても構わない)という点にあります。

 

そのため、これらを単純に撤廃するだけでは、時効期間の大幅な長期化を招くことになり、消滅時効制度が設けられている趣旨に反することになりかねません。

 

そこで、改正民法では、短期の消滅時効制度を撤廃したうえで、

(ア)権利を行使することができる時から10年

という時効期間を維持しつつ、

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

という規定を新設し、いずれか早い方の経過によって消滅時効が完成することとしました(改正法166条1項*1)。

 

このように、新たに主観的な起算点から5年で消滅時効が完成することになるため、債権管理を行うにあたっては十分注意してください。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法724条*2)。

 

なお、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、さらに特則が設けられています。

これについては、次週解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法166条1項

「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」

 

*2 改正法724条

「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。」

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