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民事信託

新しい相続対策(民事信託7)

さて、先週まで、新しい相続対策として、民事信託制度の概要を見てきました。

委託者の意思能力に問題が生じた場合や、財産の承継者の順番を決めたい場合、承継させる財産の使用・処分を制限したい場合など、民事信託が有用な場面は多々あります。

 

しかし、民事信託とて万能の制度ではありません。

 

もっとも注意しなければならないのは、民事信託が、当事者を長期間拘束する制度である、ということです。

そのため、様々な場面を想定したうえで、適切に設定をしないと、かえって財産の承継に支障をきたしてしまう可能性があります。

 

民事信託は、あくまでもツールです。

場合によっては、遺言を利用した方が良い場合もありますし、一般社団法人を利用した方が良い場合もあります。

民事信託を使うことが目的ではなく、目的にあわせて、民事信託を含めた適切な制度を選択することが重要なのです。

 

ある程度の類型化は可能ですが、何が最適解なのかは、その家族ごと、そして、どのように財産を承継させたいと思うのかによって変わってきます。

 

ぜひご自身にとってベストの解決策を見つめていただければ幸いです。

(弁護士 國安耕太)

 

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新しい相続対策(民事信託6:承継した財産の使用・処分を制限したい場合)

亡くなった後、自分の財産をどのように承継して欲しいかについては、遺言であらかじめ決めておくことができます。

しかし、遺言の場合、承継した財産をどのように使用・処分するのかは、当該財産を承継した相続人の自由であり、遺言者が承継した財産をどのように使用・処分するのかを指定することはできません。

 

たとえば、先祖伝来の土地建物を長男に相続させる、できれば売却しないで自宅として使用して欲しい、と遺言書に記載していたとしても、土地建物を相続した長男は、これに従っても良いですし、従わなくても構いません。

相続人である長男は、遺言者の意思に従わなければならない法的義務はないのです。

 

これに対し、信託を活用した場合、委託者の希望通りに、承継した財産の使用・処分を制限することができる可能性があります。

 

たとえば、先祖伝来の土地建物に信託を設定し、受託者を長男とします。

そして、この信託契約において、受託者に土地建物の売却権限を付与しなければ、長男は土地建物を売却することはできません。

 

他方で、収益不動産に信託を設定し、その信託契約において、受託者である長男に対し、第三者に賃貸する権限や裁量により信託不動産を換価処分する権限を与えておくこともできます。

この場合、受託者である長男は、自己の判断で、第三者に賃貸したり、売却することもできることになります。

 

このように委託者のニーズに合わせて、契約内容を変更することができるのも、信託を活用する大きなメリットといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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新しい相続対策(民事信託5:財産の承継順位を決めておきたい場合)

亡くなった後、自分の財産をどのように承継して欲しいかについては、遺言であらかじめ決めておくことができます。

しかし、遺言の場合、つぎの承継者を指定できるにすぎず、その後の承継について決めることはできません。

 

たとえば、先祖伝来の土地建物について、自分の死後はまず、妻に相続させ、妻の死後は長男に相続させたいと思っていたとしても、遺言では、妻に相続させることまでしか決めることはできません。

 

これに対し、信託を活用した場合、委託者の希望通りに、承継者の順番を決めることができる可能性があります。

 

たとえば、先祖伝来の土地建物に信託を設定し、当初は、自身を第1次受益者とします。

そして、この信託契約において、第2次受益者を妻、第3次受益者を長男と指定することにより、承継者の順番を決めることができます。

もちろん、長男が先に亡くなってしまったような場合など不測の事態が生じたときは、当初の予定通りに承継できないこともあります。

 

しかし、財産の承継にこだわりがある場合に、それを実現しうる制度が存在するかしないかは、大きな違いではないかと思います。

 

また、この制度を活用することで、事業承継を円滑に進めることができる可能性もありますし、相続の生前対策となる可能性もあります。

 

その意味でも、委託者の希望通りに、承継者の順番を決めることができる可能性がある、というのは重要な意味を持ってくるといえます。

(弁護士 國安耕太)

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新しい相続対策(民事信託4:委託者の意思能力に問題が生じた場合)

委託者の意思能力に問題が生じた場合、たとえば、委託者が認知症に罹患した場合、実質的に財産が凍結されてしまうことになります。

すなわち、財産の処分等を行うためには、意思表示をすることができなければなりません。

しかし、委託者が認知症に罹患した場合、本人は、意思表示をすることは困難ですから、財産の処分等を行うことができません。

そのため、たとえば、老人ホームの入居料を支払うために自宅の不動産を売却しようと思っても、それはできない、ということになります。

 

そのような時に備えて、成年後見という制度があるにはあります。

ところが、成年後見人が、実際に被後見人の自宅の不動産を売却するためには、家庭裁判所に対して、不動産を売却することについての必要性や妥当性を訴え、売却を許可してもらわなければならず、非常に困難なのです。

 

そこで、このような場合に備えて、自宅の不動産について、委託者兼受益者を親、受託者を子どもとする信託を組成しておく、ということが考えられます。

そして、信託契約の条項で、当該不動産の処分権限を認めておけば、受託者を売主として信託不動産を売却することができます。

 

なお、受託者の権限は、信託目的の範囲内で、自由に定めることができます。

そのため、処分権限はなく、管理権限のみと定めることも可能です。

 

このように、民事信託を利用することで、委託者が認知症に罹患した場合等委託者の意思能力に問題が生じた場合に、実質的に財産が凍結されてしまう事態を回避することができる可能性があるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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新しい相続対策(民事信託3:制度の概要)

民事信託は、受託者が、特定の委託者から、営利を目的とせず、反復継続しないで引き受ける信託をいいます。

 

実は、信託法とは別に信託業法という法律があり、受託者が、「信託の引受けを行う営業」を行う場合、信託業の免許が必要になります(信託業法2条1項、3条)。

この信託業法の適用を回避するため、「営業」もあたらないこと、すなわち、営利の目的をもって反復継続して行わないことが必要となります。

そのため、複数の依頼者から依頼を受けて受託者になることはできません。

 

他方で、受託者が信託報酬を受け取ることは禁止されていません。

ただし、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬を受ける旨の定めがある場合に限ります(信託法54条)。

 

なお、未成年は受託者になることができませんが(信託法7条)、法人は受託者になることができます。

 

さて、このような民事信託ですが、この制度を利用した場合の主たるメリットは、つぎの3つに集約されます。

 

1つ目は、委託者の意思能力に問題が生じた場合(委託者が認知症に罹患した場合など)、実質的に財産が凍結してしまいますが、そのような事態を回避することができる可能性があります。

 

2つ目は、遺言等では、つぎの承継者を指定できるにすぎないのに対し、委託者の希望通りに、承継者の順番を決めることができる可能性があります。

 

3つ目は、遺言等では承継者が承継した財産をどのように使用・処分するのか指定することはできませんが、使用・処分を制限することができる可能性があります。

 

では、それぞれ、どのような場面で有用なのか、具体的に見ていきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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新しい相続対策(民事信託2:信託法改正)

我が国においては、従前、「信託」といえば、信託銀行等が取り扱っている商事信託(信託を利用した金融商品)を指しており、委託者=受益者であることが原則でした。

 

しかし、本来、「信託」とは、委託者が受託者に対して財産権の移転等の処分をし、一定の目的(信託目的)に従って、受託者が、受益者のために財産(信託財産)の管理、処分をすることをいいます。

要するに、信託制度は、委託者が、受益者のために、受託者に対し、委託者の所有する財産の管理等を委ねる、という制度です。

すなわち、本来的には、委託者=受益者でなければならない、というものではありません。

 

むしろ、歴史的には、中世ヨーロッパの十字軍遠征の際、遠征する兵士が、信頼できる人に財産を譲渡し、そこから得た収益を残された家族に渡すための制度として利用されたといわれる制度です。

そのため、委託者≠受益者が本来の姿であるといってよいかもしれません。

 

そこで、信託という優れた制度を商事信託のみならず、後見的な財産管理や財産の承継を目的とした民事信託の分野でも活用できるよう2006年(平成18年)12月(2007年9月施行)に、信託法が改正されました。

 

改正された信託法では、多様な信託目的に応じられるようにするため、受託者の義務の合理化、受益者の権利行使の強化を図りつつ、その一方で信託制度を柔軟に運用できるようにし、従前の信託法では認められていなかった、自己信託、遺言代用信託、受益者連続信託等も新たに認められています。

 

このように、大きく変わった信託法ですが、今回は、その中でも、新しい相続対策として、民事信託の制度とその活用について考えていってみたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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新しい相続対策(民事信託1)

相続紛争を避けるもっとも有効な手段の一つが「遺言書」を作成することです。

 

しかし、遺言では解決できない問題もあります。

 

たとえば、遺言者(被相続人)が、自分の財産を、最初は妻に、その後は自分の弟にあげたいと思っていたとします。

しかし、遺言では、自分の財産誰に承継させるかを決めることができるのみで、自分の財産を承継した人がそれを誰に承継させるのかを決めることはできません。

 

では、どうすればいいのか。

 

この悩みを解決する一つの方法として考えられるのが、「民事信託」という制度の活用です。

 

もちろん、民事信託がすべてのケースで妥当するわけではありませんし、民事信託ですべての問題が解決するわけではありません。

 

しかし、遺言とは別に、民事信託という選択肢を知っているかどうかで、解決できる問題があることも確かです。

 

そこで、次回以降、民事信託について解説をしていきます。

(弁護士 國安耕太)

 

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