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労働者派遣のルールが変わります!
先日(平成27年9月17日)、当事務所主催(共催)の第3回企業法務セミナーを開催しました。
当日は、生憎の天気でしたが、多数の方にご参加いただきました。ありがとうございます。
さて、その際、当事務所髙安弁護士が、「雇用と請負」の相違点、メリット・デメリット等を解説しましたが、この他、雇用との区別が問題となる契約形態として、「派遣」があります。
この派遣に関する法律(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。以下「派遣法」)が改正され、今月30日から施行されます*。
今回の改正では、派遣労働は、 臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、派遣労働者の雇用の安定やキャリアアップを図ることを目的としています。
主な改正点は、つぎの4点です。
①労働者派遣事業を許可制に統一
②期間制限のルールの変更
③派遣元事業主の義務の強化
④労働契約申込みみなし制度の導入
まず、①についてですが、これまで、労働者派遣事業には、一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の2種類が存在していました。
これが、許可制に一本化されます。
つぎに、②についてですが、これまで、特定の業務以外の業務に対する労働者派遣に関する派遣期間の上限は、原則1年(最長3年)とされていました。
これに対し、改正法では、つぎの2つのルールが設けられました。
㋐派遣先事業所単位の規制
一つの事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期間が、原則3年以内となります。
㋑派遣労働者個人単位の規制
派遣先の事業所における同一の組織単位(課)において、同一の派遣労働者を受け入れることができる期間が、原則3年以内となります。
たとえば、甲社の人事課に派遣されていたAさんを、3年後に、同社の会計課に派遣することは可能です。
③については、派遣元事業主に、つぎの義務が課されました。
㋐雇用安定措置の実施
派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者に対し、派遣終了後の雇用を継続させる措置(雇用安定措置)を講じる義務があります。
㋑キャリアアップ措置の実施
派遣元事業主は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、
・段階的かつ体系的な教育訓練
・希望者に対するキャリア・コンサルティング
を実施する義務があります。
㋒均衡待遇の推進
派遣元事業主は、派遣労働者から求められたときは、賃金の決定、教育訓練の実施および福利厚生の実施について、派遣先の労働者と待遇の均衡を図るために考慮した内容を説明する義務があります。
最後に、④について、派遣先が違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と 同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。
以上のとおり、派遣法の改正は、国が正規雇用をより推進していこうとしていることを明確に示しています。
派遣業を営んでいる方、派遣の利用を検討している方は、本改正と共に今後の動向にご注意ください。
(弁護士 國安耕太)
* http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html
リストラと解雇権濫用法理
本日、インターネット上に「東芝赤字転落 リストラ不可避」とのニュースが配信されていました*1。
使用者と労働者との労働契約を解消するためには、
①包括的同意(定年に達するなど一定の事由が発生すると当然に労働契約が終了するもの。「当然退職」)
②個別的同意(一般的に、労働者が退職を申込み、使用者が承諾する形で、双方の合意により労働契約を終了させるもの。「合意退職」)
③労働者の単独行為(労働者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「辞職」)
といった方法がありますが、この他、
④使用者の単独行為(使用者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「解雇」)
があります。
そして、リストラは、このうち④の「解雇」にあたります。
労働基準法上、この「解雇」は、自由に出来るのが原則です*2。
しかし、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼします。
そこで、裁判所は、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」として、実質的には解雇を制限してきました(「解雇権濫用の法理」)*3。
リストラ(整理解雇)も、解雇の一種ですから、原則的には自由であるものの、解雇権の濫用となるような場合は、無効となります。
そして、整理解雇の正当性を判断する際、多くの裁判例が、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つ要件を検討してきました。
したがって、本件でも、上記4つの要件を満たすよう慎重に手続を検討し、実行していくことになるでしょう。
(弁護士 國安耕太)
*1
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150914-00000112-mai-bus_all
*2
労基法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期・手当等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としています。
*3
なお、現在では、労働契約法16条に同趣旨の規定がある。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
こころほっとライン
厚生労働省は、今月(2015年9月)1日から、電話相談窓口「こころほっとライン」を開設しています*1。
厚生労働省によれば、こころほっとラインでは、つぎような相談の対応をしているようです。
①働く人のメンタルヘルス不調
・こころの悩み
・人間関係の悩み
・仕事の悩みについて
②ストレスチェック制度
・ストレスチェックの受検
・ストレスチェック結果の評価とセルフケア
・医師による面接指導を受けることについての助言
・事業場内における情報管理とプライバシー保護
・ストレスチェックをめぐる不利益な取扱いなどについて
③過重労働による健康障害
・長時間労働による健康への影響
・事業場における健康管理の状況
・長時間労働の削減などの対策について
なお、ストレスチェックに関しては、「ストレスチェック実施促進のための助成金」も支給されるようですので、興味のある方は、チェックしてみてください(50人未満の事業所に限る等要件があります。)*2。
(弁護士 國安耕太)
*1
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000095839.html
*2
http://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/stresscheck/tabid/1006/Default.aspx
第3回企業法務セミナーを開催します!
きたる9月17日(木)18時30分から、当事務所主催(共催)の第3回企業法務セミナー「キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)についての説明会」を開催いたします*1。
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)は、平成25年5月からスタートした厚生労働省管轄の助成金で、契約社員やパート等のいわゆる正社員ではない労働者を、正社員にした場合に貰える助成金です。
たとえば、契約社員(有期雇用契約の労働者)を正社員にした場合、平成28年3月31日まで*1は、50万円が助成されます*2。
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)は、労働者が1人しかいない事業所でも助成金を受給できることから、比較的多くの事業所で利用されています。
ただし、もちろん必要な要件を満たしている必要があります。
たとえば、正社員に転換する有期雇用契約の労働者が、当該事業主に、①通算6か月以上雇用されていることや②過去3年以内に正社員として雇用されていないこと等の要件を満たす必要があります。
また、事業主に関しても、①労働協約または就業規則に転換に関する規定があることや②転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に事業主都合で労働者を離職させていないこと等の要件を満たす必要があります。
このようにキャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)を受給するためには、様々な要件をクリアーする必要があります。
ご興味のある方は、ぜひセミナーにご参加ください。
(弁護士國安耕太、社会保険労務士村中幸代)
*1
[日時]:9月17日(木)18:30~21:00 (18:15開場)
[場所]:東京都新宿区西新宿7-4-7 イマス浜田ビル5階
[定員]:30名
[参加費]:3000円(税込)※当日会場にてお支払いください。
*2
現時点では、平成28年の4月以降の要件や助成額
*3
中小企業の場合。また、母子家庭等の場合助成額が加算されます。