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交通事故

交通事故をめぐる法律関係8

第8回のテーマは、損害賠償請求の流れについてです。

 

交通事故の被害者になった場合、損害を賠償してもらう流れとしては基本的には以下のとおりです。

 

まずは、自賠責保険会社に対して、損害賠償額の支払請求をすることができます。

具体的には、自賠責保険会社等の窓口に備え付けられた所定の請求用紙に必要事項を記入して、必要書類(交通事故証明や診断書等)を添付して支払を請求することになります。

 

ただし、前回ご紹介したとおり、自賠責保険では物損事故の損害賠償は対象外であり、仮に人身事故であったとしても支払限度額が設定されています。

そのため、自賠責保険だけでは全ての損害をカバーできるとは限らず、加害者の任意保険で不足分をカバーしてもらうことになります。

 

もし交通事故の加害者が自賠責保険にしか入っておらず、任意保険に入っていない場合、被害者はどうすればよいのでしょうか。

 

自賠責の上限を超える損害については、まずは加害者等に直接、損害賠償請求をすることが考えられます。

例えば、加害者が仕事中に起こした事故の場合には雇用主に対して損害賠償請求をする余地もありますので、直接の加害者以外の者にも請求することができないかを検討することになります。

 

交渉段階で加害者等が任意で支払ってくれれば問題ありませんが、任意で支払ってくれない場合には、訴訟提起をして加害者の財産を差し押さえて強制的に回収することになります。

ただし、加害者に資産がない場合や加害者の資産がどこにあるのか分からない場合には、訴訟で勝訴しても実際に債権を回収することは難しいでしょう。

 

そこで、被害者自身が加入している任意保険を使って、自賠責保険を超える部分の損害を補填することが考えられます。

ただし、被害者自身が加入している保険の内容によって、保険金が支払われる条件や金額が異なりますので、注意してください。

 

(弁護士 松村 彩)

 

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交通事故をめぐる法律関係7

第7回のテーマは、自賠責保険です。

 

自動車保険には、自動車損害賠償保障法により保険契約の締結が強制されている「自賠責保険」「自賠責共済」(以下「自賠責保険等」といいます。)と保険契約の締結が任意である「任意保険」があります。

 

自賠責保険等は、被害者救済を目的としていますので、自賠責保険等に加入せずに自動車を運行の用に供した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(自賠責法第86条の3第1号)。

 

自賠責保険等と任意保険の大きな違いは、支払の対象です。

自賠責保険等は、被害者の生命または身体に対する損害(人身事故)の填補のみを目的としており、自動車の修理費用等の損害(物損事故)については支払の対象としていません。

また、人身事故の場合、被害者の被った損害はまずは自賠責保険により填補され、自賠責保険の負担額だけでは足りない場合に、その不足額が任意保険により填補されることになります。

 

なお、労働者が、業務が原因で負傷した場合や通勤中に負傷した場合には、「労働災害」として労働基準監督署に届け出ることにより、労災保険を受けることができます。

そのため、労働者が通勤中に交通事故により負傷した場合には、労災保険と自賠責保険等のいずれからでも給付を受けることができますので、どちらを先に請求するのかは被害者が自由に選ぶことができますが、同時に請求をして二重取りをすることはできません。

 

自賠責保険等と労災保険の主な違いとしては、以下のとおりです。

①自賠責保険等では支払限度額があるが、労災保険には治療費の限度額がない

②自賠責保険等では慰謝料も支払い対象であるが、労災保険では慰謝料は支払対象ではない

③自賠責保険等では仮渡金の制度(損害賠償額が確定する前であっても、一定額の支払を自賠責保険会社に対して請求することができる制度)があるが、労災保険では仮渡金の制度はない

 

次回は、「損害賠償請求の流れ」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

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交通事故をめぐる法律関係6 過失相殺

第6回のテーマは、過失相殺です。

 

交通事故の場合において、被害者に事故の発生や損害の拡大に落ち度がある場合に損害賠償額が減額されることがあります。

これを「過失相殺」といいます。

 

例えば、歩行者が、横断歩道が付近に存在するにもかかわらず、あえて横断歩道外を歩行して交通事故が発生した場合、被害者の過失として基本的には25パーセント程度の過失相殺がなされます。

 

どの程度の過失相殺をするのかは、訴訟においては、最終的には裁判官の裁量に任せられることになりますが、一般的には、東京地裁民事交通訴訟研究会編「交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂四版」(別冊判例タイムズ16号)に掲載されている過失相殺の基準を利用します。

 

ただし、現実に発生する交通事故は千差万別ですので、基準のうちのどの類型を適用すべきであるのかについては、交渉や訴訟においても争いになることが多々あります。

 

また、被害者本人に過失がなくても、被害者と身分上、生活関係上一体の関係にある者の過失が存在する場合には、「被害者側の過失」として、被害者本人の過失と同視して過失相殺をすることがあります。

 

例えば、夫が妻を同乗させて運転していて交通事故を起こした場合、夫と第三者の双方に過失があるときには、妻の第三者に対する損害賠償請求においては、夫の過失を「被害者側の過失」として斟酌し、過失相殺をして損害額を決めることになります。

 

次回は、「自賠責保険」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

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交通事故をめぐる法律関係5 物的損害

第5回のテーマは、物的損害です。

 

交通事故で車両に損傷を受けた場合、修理が可能なときは、原則として必要かつ相当な修理費用の賠償を請求することができます。

 

実務上、加害者側の保険会社のアジャスター(保険会社から依頼されて事故車両の修理費の算定等を行う者)が事故車両を検分し、修理工場との間で修理方法や修理内容について協議を行い、修理費の金額について協定を締結することが多く、この場合には修理費の金額が争いになることは多くはありません。

 

修理の見積額が、車両の時価を超える場合には、修理費用を全額請求することはできず、事故当時の車両価格および買替諸費用の合計額を請求するにとどまります(これを「経済的全損」といいます。)。

なぜなら、事故当時の車両価格および買替諸費用が賠償されれば、被害者は同等の車両を手に入れることができ、その結果として、被害を受ける前の経済状態が回復されるため、これ以上の賠償を認める必要はないからです。

 

また、車両の修理期間中、レンタカー等の代車を使用することになった場合、代車を使用する必要性が存在するのであれば、代車使用料を損害として加害者に請求することができます。

代車のグレードとしては、被害車両が外国車の場合には国産高級車の限度で、国産車が被害車両の場合には同等以下の国産車の代車料を認めるが一般的です。

 

なお、車両の損傷等の物的損害を理由とする慰謝料は原則として認められません。

例えば、飼い犬が自動車にひかれて死んだ事例で、加害者が責任を否定して不誠実な対応をとり被害感情を刺激したことを重視して、飼い犬を喪失したことによる飼い主の慰謝料として2万円を認めた裁判例がありますが(東京地判昭和40年11月26日判時427号17頁)、これは例外的なケースといえるでしょう。

 

次回は、「過失相殺」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

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交通事故をめぐる法律関係4 慰謝料

第4回のテーマは、慰謝料です。

 

交通事故によって被害者が感じた苦痛や不快感等を金銭により賠償するのが慰謝料です。

 

被害者が死亡した場合、いわゆる赤い本*に記載されている以下の基準を目安に具体的な事情を斟酌して慰謝料額を算出します。

①一家の支柱が死亡した場合 2800万円

②母親、配偶者       2500万円

③その他          2000万円~2500万円

 

なお、加害者の過失が重大であったり事故態様が悪質な場合、加害者の事故後の態度が著しく不誠実な場合には上記の基準額よりも増額される傾向にあります。

 

他方で、被害者が傷害を受けた場合には、入通院期間を基礎として、赤い本に記載されている慰謝料算定表を元に算出します。

例えば、通院1ヶ月入院0日の場合には慰謝料額は28万円、通院0日入院1ヶ月の場合には慰謝料額は53万円が基準額となります。

 

また、交通事故により後遺症が残った場合、第1級から第14級までの等級に応じて慰謝料額が決まります。

例えば、一番重い第1級の場合には2800万円、一番軽い第14級の場合には110万円が基準とされています。

なお、第14級に相当するとはいえないものの、後遺症があると認められた場合には一定額の慰謝料が認められることもあります。

 

次回は、「物的損害」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

 

*公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」

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交通事故をめぐる法律関係3 消極損害の種類

第3回のテーマは、消極損害の種類です。

 

被害者が自己に遭わなければ得られたであろうと考えられる利益を失ったことによる損害を、「消極損害」といい、具体的には休業損害や死亡による逸失利益がこれにあたります。

 

休業損害は、交通事故により受けた傷害の治療のため休業を余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害をいいます。

休業損害は、交通事故前の収入を基礎として、1日の基礎収入に休業日数を乗じて計算します。

 

給与取得者の場合、勤務先が発行する休業損害証明書や源泉徴収票等により、基礎収入と休業日数を立証することになります。

 

事業所得者の場合、前年度の所得税確定申告書により、基礎収入と休業日数を立証することになりますが、業績に変動がある場合には、数年間の実績を平均して計算することもあります。

 

主婦等の家事従事者の場合、収入はありませんが、家事労働も財産的評価が可能であるため、受傷のため家事に従事することができなかった期間について、休業損害を請求することができます。

この場合、基礎収入は、賃金センサス(厚生労働省が毎年発表している賃金構造基本統計調査)の女子労働者の全年齢平均賃金によって計算します。

 

失業者の場合、原則として休業損害は認められませんが、就職が内定している場合や治療期間中に就職の可能性があれば休業損害が認められます。

就職が内定している場合は、就職したときに得られる見込みであった給与が基礎収入になります。

一方で、それ以外の場合は失業前の収入を参考として賃金センサスの平均賃金またはこれを下回る額が基礎収入とされることが多いといえます。

 

一方で、死亡事案においては、以下の計算式により算出します。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数

 

次回は、「慰謝料」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

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交通事故をめぐる法律関係2 積極損害の種類

第2回のテーマは、積極損害の種類です。

 

前回ご紹介したとおり、人身事故の場合、被害者は「積極損害」と「消極損害」の賠償を加害者に請求することができます。

被害者が交通事故のために出費を余儀なくされたことによる損害を、「積極損害」といい、具体的には①治療費、②付添費用、③交通費、④葬儀費用等がこれにあたります。

 

①治療費については、診察料や検査料、入院料、手術料等が含まれますが、治療のために必要かつ相当なものであれば、原則として実費の全額を加害者に請求することができます。

ただし、按摩や鍼灸、マッサージ等の東洋医学による施術については、医師が治療上必要と認めて指示した場合は基本的には全額請求することが認められますが、医師の指示がない場合には治療上有効であっても実費から減額された額しか認められない傾向にあります。

 

②付添費用については、医師の指示がある場合または被害者の受傷の程度や年齢等から付添看護を必要とする場合には、入院や通院の付添費用を請求することができます。

裁判例では、1日あたり5500円~7000円程度の近親者の付添費用が認められています。

 

③交通費については、被害者本人の入退院および通院のために公共交通機関を利用した場合には、現実に支出した額を加害者に請求することができます。

タクシーやハイヤー等を利用した場合は、歩行が困難な事情があるときや公共交通機関の便がないとき等、タクシー等を利用せざるを得ない事情があるときのみ、タクシー等の代金を請求することができます。

 

④葬儀費用については、火葬・埋葬料、布施・供物料、花代、弔問客に対する饗応等は相当のものに限り加害者に請求することができます。

一方で、引出物代、香典返し等は加害者に請求することはできません。

 

いずれの請求についても、実際に加害者に損害賠償請求する場合には、領収証や支払明細等といった証拠を残しておくことが重要です。

 

次回は、「消極損害の種類」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

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交通事故をめぐる法律関係1 交通事故の損害賠償責任

今回から、交通事故をめぐる法律関係について、ご紹介していきます。

第1回のテーマは、交通事故の損害賠償責任です。

 

交通事故の被害者は、直接の加害者である運転者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条)。

被害者が請求することができる損害は、傷害または死亡による損害である「人身損害」と車両破壊による損害等の「物件損害」に大別することができ、「人身損害」は、さらに「財産的損害」と「精神的損害」に分けられます。

 

「財産的損害」とは、交通事故によって被害者に生じた財産的・経済的な不利益をいいます。

具体的には、治療費や通院交通費といった、被害者が交通事故のために出費を余儀なくされたことによる損害(積極損害)と休業損害といった、被害者が自己に遭わなければ得られたであろうと考えられる利益を失ったことによる損害(消極損害)がこれにあたります。

 

一方で、「精神的損害」とは、交通事故によって被害者が感じた苦痛や不快感等をいい、これを賠償するのが慰謝料にあたります。

 

従業員が業務中に交通事故を起こした場合には、会社も被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。

また、従業員が無断で私用のために社用車を運転して交通事故を起こした場合であっても、当該従業員がどのような経緯で社用車を持ち出したのか、日常的に当該従業員が自動車を業務として運転していたのか、これまでも無断私用運転が行われてきたのか等といった事情を総合的に考慮し、当該運行が会社の支配下にあったと評価できる場合には、会社も被害者に対して損害賠償責任を負うことになります(大分地判平成5年10月20日交民26巻5号1299頁)。

 

もっとも、会社が被害者に対して損害賠償を支払ったときは、直接の加害者である従業員に対して、会社が被害者に支払った損害を求償することができます。

ただし、会社は従業員を使って利益をあげている以上、従業員を使うことによって生じた不利益も甘受すべきであるという報償責任の原則から、従業員に対する求償権が制限されることがあります。

 

次回は、「積極損害」についてご紹介します。

(弁護士 松村 彩)

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未成年者の事故と親の責任

たとえば、未成年者が自転車に乗っていて、高齢者をはねて怪我をさせてしまったような場合、誰がその責任を負うのでしょうか。

 

まず、未成年者に責任能力(小学校卒業程度の判断能力)がある場合は、原則として、当該未成年者が責任を負います。

 

他方、未成年者に責任能力がない場合は、親権者である親が責任を負うことになります(民法714条1項本文*1)。

ただし、この場合、親が監督義務を怠らなかったような場合は、責任を負いません(民法714条1項ただし書き)。

 

そして、この親の監督義務について、先日(平成27年4月9日)、最高裁は、つぎのような判断を示しました*2。

 

「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務がある」

「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」

 

本事案において、原審は、両親に損害賠償義務を認めていましたが、最高裁は、上記のとおり判示し、損害賠償義務を否定しました。

本事案は、小学校の校庭で、フリーキックの練習をしていたところ、蹴ったサッカーボールが、ゴールを外れ、たまたま校門の外に出てしまい、折から自動二輪車を運転していた被害者が、そのボールを避けようとして転倒した、というものであることにかんがみれば、妥当な判断ではないかと思います。

 

ただ、本事案を離れれば、未成年者の行為態様によっては、親が責任を負わなければならないことも十分考えられますから、事前にきちんと対策をしておくことが重要でしょう。

 

なお、本件では、問題とされていなかったようですが、ゴールに向かってボールを蹴るという通常の行為をしているだけにもかかわらず、校門の外に出てしまうような構造自体が、通常有すべき安全性を欠いていたとして、工作物責任(民法717条)を問う余地はあったのではないか、とも思います(工作物責任については、当事務所4月3日付けブログ*3をご覧ください。)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

民法714条1項

「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

 

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/032/085032_hanrei.pdf

 

*3

【雑感】プロ野球観戦と損害賠償

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自転車事故と保険

平成27年3月18日、兵庫県にて、自転車の使用者に保険への加入を義務づける条例が制定されました。

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201410/0007427608.shtml

 

自動車については自動車損害賠償保障法で自賠責保険への加入が義務づけられていますが(同法第5条)、自転車については保険への加入を義務づける法令が制定されるのは日本では初めてのことです。

 

このように法令で保険加入を義務づけることの是非については様々な考え方があると思いますが、実際、自転車を運転して交差点(歩行者側青信号)にさしかかった際に横断歩道上を歩行中の被害者と衝突し、被害者が亡くなったという事案において5437万9673円の支払が命じられた例もありますから(東京地方裁判所平成19年4月11日)、自転車事故の加害者になってしまうリスクに対する備えは必要です。

 

この自転車事故は、個別の保険でなくとも、自動車の任意保険に付帯されている個人賠償責任保険によってもカバーされていることもあります。

自動車の任意保険にご加入の方は一度保険証券をご覧になってみてはいかがでしょうか。

 (弁護士 南部弘樹)

 

 

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