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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)7
先週(平成30年5月24日)、徳川綜合法務事務所と共催で、第2回経営者交流会を開催いたしました。
当日は、25名を超えるみなさまにご参加いただきました。
ありがとうございます。
その際のミニセミナーでも少しお話したのですが、契約書のチェックをする際の基本は、つぎの3つです。
(1)当事者双方の義務か、片面的か
(2)契約の目的、内容の特定がされているか
(3)当事者の特定がされているか
たとえ厳しい義務が課されていたとしても、当事者双方に対するものであれば、それほど問題となることはありません。
そのため、契約書を見る際は、まずここ(1)当事者双方の義務か、片面的かを確認する必要があります。
ただ、形式的には双方の義務とされていても、実質的には片面的な義務となっていることもありますので、注意が必要です。
また、どのような内容の契約なのか、すなわち(2)契約の目的、内容がきちんと特定されているかもチェックする必要があります。
請負型の業務委託契約を締結したつもりが、準委任型の業務委託だった・・・、というようなことがないようにしなければなりません。
最後に、(3)当事者が特定されているか、も意外と重要です。
契約は、特定人の特定人に対する特定の権利関係を定めたものですから、当事者以外の者に拘束力は及びません。
後で、誰と契約したのかわからない、なんてことにならないよう、注意しましょう。
(弁護士 國安耕太)
業務委託契約の基礎(IT会社の場合)6
先週、通常、業務委託では、請負もしくは準委任、または双方の性質を有していることがほとんどである、ということをお伝えしました。
では、請負と準委任は、どのような基準で区別すればいいのでしょうか。
メルクマールは、仕事の完成を目的としているか、です。
仕事の完成を目的としているか否かによって、請負契約か準委任契約かが異なってきます。
逆にいうと、仕事の完成を目的とするのであれば、請負型の業務委託契約を締結しなければならない、ということになります。
このような観点から、自社が締結しようとしている契約が、請負と準委任のどちらなのか、どちらにすべきなのか、分析してみてください。
なお、注意していただきたいのは、準委任の場合であっても、契約書の定め方によっては、成果物の作成義務が生じることがある、ということです。
すなわち、委任契約において、何らかの成果物を作成することが義務付けられているのであれば、成果物の作成義務が生じます。
インターネット上では、このあたりのことを正確に記載していないものも多く、勘違いされている方が多いところですので、注意してください。
(弁護士 國安耕太)
業務委託契約の基礎(IT会社の場合)5
先週まで、業務委託契約の締結にあたっては、偽装請負(違法派遣)や下請法の規制に注意が必要である、ということをお伝えしてきました。
では、具体的に、業務委託契約は、どのような法的性質を有しているのでしょうか。
通常、業務委託では、請負もしくは準委任、または双方の性質を有していることがほとんどです。
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約するものとされています。
請負契約の目的は、仕事を完成することです。
完成しないと、報酬請求権は発生しません。
あくまでも、仕事の完成という結果が大事なのであって、その過程は問いません(もちろん、契約の内容になっていれば別ですが。)。
そのため、下請(再委託)は、自由に出来るのが原則です。
システム開発の業務委託や、ホームページ作成の業務委託等に適しています。
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立するとされており(民法643条)、この規定は、法律行為でない事務の委託について準用されています(民法656条)。
準委任は、業務の遂行さえしていれば、報酬請求権が生じます。
ただし、業務の遂行にあたり善管注意義務を果たしていなければ、債務不履行責任が生じることがあります。
また、信頼関係に基づいているので復委任(再委託)は、原則として禁止です。
システムの保守管理業務委託等に適しています。
では、請負と準委任は、どのような基準で区別すればいいのでしょうか。
来週、具体的に見ていきましょう。
(弁護士 國安耕太)
業務委託契約の基礎(IT会社の場合)4
先週、業務委託契約といっても、契約ごとに検討しなければならない事項が異なってくる、というのが最大の特徴である、という話をしました。
そして、基本的には、当事者間で合意ができれば、どのような内容を定めても構わないのですが、注意しなければならないことが2点あります。
1点目は、偽装請負(違法派遣)の問題です。
偽装請負とは、実質は労働者派遣(場合によっては労働者供給)でありながら、請負契約や業務委託契約の形式で行う労務提供を指します。
実質的には労働者派遣なのに、形式的に請負契約(業務委託契約)として、派遣法により課された元事業主および派遣先事業主の義務が果たされず、派遣労働者の保護という派遣法の趣旨を没却することが問題とされています。
偽装請負と判断されると、受託者は、派遣事業主と判断され、派遣法違反として罰則を受け、委託者も派遣法違反となり、行政処分の対象となります。
したがって、業務委託契約を締結するにあたっては、偽装請負との指摘を受けないよう、注意する必要があります。
2点目は、下請法の規制です。
下請法は、正式名称を下請代金支払遅延等防止法といいます。
下請法は、強行法規のため、たとえ当事者間で合意したとしても、その適用を排除することはできません。
下請法が適用される場合、親事業者は、下請法に定められた義務を履行し、一定の行為が禁止されます。
これらの規制に違反した場合には、行政処分(指導・勧告)の対象となります。
委託者としては、業務委託契約を締結する際に、下請法が適用されるかを確認し、適用される場合には、契約書が下請法に従った内容になっているかを確認する必要があります。
(弁護士 國安耕太)