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2021年3月の投稿

企業の倒産処理手続4(特別清算手続2)

前回お伝えしたとおり、破産手続と特別清算手続は、同じ「法的整理かつ清算型」に分類されますが、根拠法令、手続の対象、手続開始の原因等において違いがあります。

 

まず、破産手続の根拠が、破産法にあるのに対し、特別清算手続の根拠は、会社法です。

 

つぎに、破産手続が、個人・法人問わず、どのような法人でも対象となるのに対し、特別清算手続は、原則として解散後清算中の株式会社のみが対象となります。

 

また、破産手続では、債務超過が手続の開始原因とされていますが、特別清算手続では債務超過の疑いがあれば、手続の開始原因と認められます(会社法510条)*1。

特別清算手続において、破産手続よりも緩やかに、手続開始の原因が認められているのは、既に解散し、清算手続に入っている株式会社を対象としていることに基づきます。

 

なお、両手続ともに、債権者は、手続開始を申立てることができます。

他方で、破産手続では、債務者(会社)自身*2や取締役個人が申立てをすることができるのに対し、特別清算手続では、できません(ただし、清算人や監査役、株主が申立てできます。会社法511条1項)。

 

さらに、手続開始後、破産手続では、裁判所によって必ず破産管財人が選任され、財産の管理処分権を委ねられた破産管財人が清算事務を行うことになります。

他方で、特別清算手続では、原則として従来からの清算人が清算事務を行うことになります(会社法523条)。

 

もちろん、清算人は、自由に清算事務を行えるものではなく、債権者及び清算株式会社、株主に対する公平かつ誠実に清算事務を行う義務が課されています。

 

最後に、弁済についてです。

破産手続は、破産企業の財産が金銭化され、法律の定めに従って、債権者に配当されるという厳格な手続です。

 

これに対して、特別清算手続では、債権者の多数決によって定められる協定(会社法563条以下)に基づいて弁済します。

原則として債権者を平等に取り扱う必要がありますが、不利益を受ける債権者の同意がある場合や債権者間の衡平を害さない内容であれば、ある程度自由に協定の内容を定めることもできるなど(会社法565条)、破産手続に比べると、柔軟な対応が可能です。

 

破産手続 特別清算手続
根拠法 破産法 会社法
手続の対象 原則限定なし 解散後清算中の株式会社等
手続開始の原因 債務超過・支払不能 債務超過の疑いなど
手続開始の申立人 債権者・債務者・取締役 債権者・清算人・監査役・株主
清算事務を行う者 破産管財人 清算人
弁済の手続 法律の定めに基づく配当 債権者の多数決による協定

さて、これまで「法的整理かつ清算型」の手続を解説してきましたが、次回は、「法的整理かつ再建型」の代表的な手続である民事再生手続について解説したいと思います。

(弁護士 國安耕太)

*1

清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合にも手続開始の原因が認められるが、他方、支払不能は、手続開始の原因とされていない(会社法510条1号)。

 

*2

代表取締役が、取締役会の決議を得て、株式会社の名前で申立てることになる。

 

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企業の倒産処理手続3(特別清算手続1)

前回は最も代表的な倒産処理手続である破産手続について、解説しました。
今回は破産手続と同じく「法的整理かつ清算型」の手続である特別清算手続について、破産手続と比較しつつ解説していきます。

 

特別清算手続とは、裁判所の後見的な監督の下、清算人が解散後清算中の株式会社等*を消滅させるための手続です。

会社を閉鎖しようと思った場合、会社を解散することになりますが、実は、これだけでは会社は消滅しません。
会社を消滅させるためには、清算(現務の結了、債権の取立ておよび債務の弁済、残余財産の分配。会社法481条)を完了しなければなりません。
このとき、会社の財産で、すべての債務の弁済ができる場合は、債務の弁済をし、残余財産を株主に分配して、清算手続は完了します(通常清算)。

 

これに対し、会社の財産で、すべての債務の弁済ができない場合であっても、裁判所の監督の下、債務の処理方法について債権者と集団的に和解するために作成された協定を、債権者が多数決で可決し、清算中の会社がこの協定を実行したときは、清算手続は完了します。
これが特別清算手続です。

あくまでも、協定が債権者の多数決で可決され、協定が実行される必要があるので、多数決で可決される見込みのない場合や協定が実行される見込みのない場合は、破産手続に移行することになります(会社法574条)。

 

破産手続と特別清算手続は、破産管財人または特別清算人が、裁判所の関与の下、会社の財産を処分して、これによって得た金銭を債権者に弁済する手続である点は共通しており、同じ「法的整理かつ清算型」に分類されます。

他方で、根拠法令、手続の対象、手続開始の原因等において違いがあります。

次回は、この違いについて、解説していきます。
(弁護士 國安耕太)

*
例えば、保険業法によって、相互会社にも特別清算手続の規定が準用され、相互会社も特別清算手続の対象となる(保険業法184条)。

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企業の倒産処理手続2

さて、前回、倒産処理手続きには、(1)裁判所が継続的に関与する倒産処理手続である法的整理と、(2)裁判所が関与しない倒産処理手続である私的整理があり、この法的整理および私的整理は、それぞれ(ア)企業を解体する清算型と、(イ)企業を再生させる再建型(再生型)に分かれる、ということをお伝えしました。
今回は、その中でも最も代表的な手続きである、破産手続(法的整理かつ清算型)について、解説していきます。
 
破産手続は、裁判所が破産手続の開始を決定し、破産管財人を選任し、その破産管財人が破産する企業(債務者)の財産を調査・管理・換価処分して、債権者に弁済または配当する手続です。
 
破産の申立て(裁判所に対し、破産手続の開始決定を出すよう申し立てること)は、破産しようとする企業のみならず、その債権者も行うことができます。
 
もちろん、申立てがされれば無条件に、手続が開始されるというものではなく、手続開始の実態的要件として、破産手続開始の原因(破産原因)が必要です。
 
個人の場合は、支払能力を欠く*ために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(支払不能。破産法2条11項)のみが破産原因となります(破産法15条)。
これに対し、企業等の法人(合名会社および合資会社を除く)においては、支払不能である場合のみならず、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態(債務超過)である場合も、破産原因となります(破産法16条)。
 
そして、裁判所が破産手続の開始を決定すると、財産の管理処分権は、破産管財人に移行し、破産する企業は、財産の管理処分権を失うことになり、破産管財人が、破産手続開始の決定時点の破産企業の全ての財産を金銭に換えた上で、法律の定めに従って、弁済または配当することになります。
 
配当が完了した場合、破産手続は終了し、企業も消滅することになります(破産手続の終結。破産法202条)。
配当する財産がないことが判明した場合は、その時点で破産手続は終了し、企業は消滅します(異時廃止。破産法217条)。
 なお、一定金額以下の資産しか保有していない個人が破産する場合、この破産管財人が選任されないで、手続が終了することもあります(同時廃止。破産法216条)。
 
以上のように、破産手続は、裁判所の関与の下、財産も債務もすべて清算され、当該企業は消滅することになるので、「法的整理かつ清算型」の手続となります。
 
次回は、同じ「法的整理かつ清算型」の手続である特別清算手続を、破産手続と比較しつつ、解説します。
(弁護士 國安耕太)
 
*
弁済能力の欠乏は、財産、信用あるいは労務による収入のいずれをとっても、債務を支払う能力がないことを意味し、たとえ、財産があっても、その換価が困難であれば、支払不能とされる。他方で、財産がなくとも、信用や収入にもとづく弁済能力があれば、支払不能とはされない。

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企業の倒産処理手続1

現在、新型コロナウイルス(以下「コロナ」といいます。)の影響で、全世界的に経済活動が低下しています。

各種補助金・助成金の給付や、借入の支払猶予等で、この危機を一時的に乗り越えることができた企業も、今後は事業の統廃合を進めていかなければならなくなっていく可能性が高いのではないかと思います。

ところで、「企業の倒産処理手続」と聞くと、事業継続が困難になったため、裁判所の関与の下、企業が取り潰される、そんなイメージを持たれるかもしれません。
たしかに、そのイメージ通りの手続(いわゆる破産手続)もあります。
しかし、倒産処理手続には、裁判所の関与の下、事業継続が困難になった企業を再生させる手続や、裁判所が関与しないで弁護士や大口債権者などの主導の下で行うタイプの手続など、さまざまな手続があります。

具体的に見ていきましょう。

まず、大きく分けると、
(1)裁判所が継続的に関与する倒産処理手続である法的整理
(2)裁判所が関与しない倒産処理手続である私的整理
の2つに分けることができます。

また、この私的整理および法的整理は、それぞれ
(ア)企業を解体する清算型
(イ)企業を再生させる再建型(再生型)
に分かれます。

さらに、(1)(ア)法的整理の清算型手続は、破産手続、特別清算手続の2種類に、(1)(イ)再建型手続も、民事再生手続、会社更生手続の2種類に分かれます。

(2)(イ)私的整理の再建型手続も、一定のルールに基づく準則型私的整理(事業再生ADRや私的整理ガイドラインなど)と準則型でない私的整理(以下「純粋な私的整理」といいます。)などに分けることができます。

         (ア)清算型   (イ)再建型(再生型)
(1)法的整理     破産       民事再生
            特別清算     会社更生
(2)私的整理     清算型私的整理  準則型私的整理
                     純粋な私的整理

以上の通り、倒産処理手続と一口に言っても、さまざまなタイプの手続があります。

そこで、次回以降、各手続の概要について、解説していきたいと思います。
(弁護士 國安耕太)

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インターネット上の名誉棄損7

さて、前回は(1)加害者に対して(ア)損害賠償をすることについて、解説しました。

今回は、(1)加害者に対し(イ)謝罪広告を求めることおよび(2)サイト管理者等に対し、削除請求を行うことについて、その概略をご紹介します。

(1)(ア)謝罪広告が認められるには
(a)故意または過失があること
(b)違法性が特に強い悪質な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)謝罪広告等が名誉回復のために、相当であること
という要件を満たす必要があります。
裁判では、(b)と(d)はまとめて検討されることが多く、(b)と(d)が認められるかは、名誉侵害の内容・程度、指摘された事実の公共性の程度、金銭賠償・書き込み削除の有無などを総合的にみて判断されます。

次に、(2)サイト管理者等に対する削除請求についてです。
管理者等に対する削除請求が認められるには、
(a)名誉権が現在も侵害されていること
(b)内容が事実でないか、公益目的でないことが明らかであること
(c)金銭による損害賠償では、損害の補填が不十分であること
という要件を満たす必要があります。

なお、削除請求をする場合、通常の訴訟だけでなく、より迅速な判断を得られる仮処分という方法が用いられることも多いです。
この場合は、(a)(b)(c)に加えて、さらに
(d)保全の必要性(名誉侵害の程度が大きいことや、書き込みを放置しておくと、さらに多くの人がアクセスして、名誉侵害の被害が拡大することなど)。
を裁判官に説明(疎明)する必要があります。

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