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消費者契約法5
消費者の利益を不当に害するものとして無効となる条項の続きです。
(エ)消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項(法9条)
キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える賠償額を定めた条項や、遅延損害金について年14.6%を超える割合を定めた条項は、無効となります。
たとえば、飲食店の予約で、「1か月前のキャンセルは、料金の80%」としたり、「遅延損害金は年40%」としたりする条項です。
(オ)消費者の利益を一方的に害する条項(法10条)
法律の規定と比べて、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は、無効となります。
消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項であるか否かは、客観的に判断できる場合が多いと思います。
他方で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するといえるかどうかは、多分に解釈を含んでおり、一律に判断することが難しいところです。
実際、これまでも各種裁判例で、この部分の解釈が争われています。
ただ、消費者契約法が、そもそも消費者を保護するという目的で作られている法律であることにかんがみれば、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項は、その合理性をきちんと説明できなければ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であると判断されてしまう危険があるといえます。
そのため、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項を定める場合には、その合理性について慎重に検討する必要がるといえます。
(弁護士 國安耕太)
消費者契約法4
先週まで、契約の取消事由を見てきましたが、消費者契約法の主たる効果としては、もう一つ(2)不当な契約条項が無効となる、というものがあります。
つぎのような内容の契約条項は、消費者の利益を不当に害するものとして無効となります。
(ア)事業者の損害賠償の責任を免除する条項(法8条)
損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意または重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項は無効となります。
たとえば、「いかなる場合であっても商品の利用によって生じた損害は賠償義務を負わない」といった条項です。
また、事業者が責任の有無や限度を自ら決定する条項も無効となります。
たとえば、「当社が責任を認めた場合に限り、損害を賠償します」といった条項です。
(イ)消費者の解除権を放棄させる条項(法8条の2)
事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項は無効となります。
たとえば、「契約締結後は、いかなる理由があってもキャンセルできない」といった条項です。
なお、ここで禁止されているのは、あくまでも事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権の放棄であるため、「債務不履行がない限りキャンセルできない」といった条項は有効です。
また、事業者が消費者の解除権の有無を自ら決定する条項も無効となります。
たとえば、「当社が責任を認めた場合に限り、契約を解除できます」といった条項です。
(ウ)事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項(8条の3)
事業者に対し後見開始の審判等を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項は無効となります。
たとえば、「後見開始の審判を受けた場合は、契約を解除できる」といった条項です。
モバゲーの規約に関する裁判では、「会員として不適切」などとディー・エヌ・エーが「合理的に判断」した場合は会員資格を取り消すことができ、これによって会員に損害が生じても「一切損害を賠償しない」と定めていたことが、消費者契約法8条に反すると判断されています。
(弁護士 國安耕太)
消費者契約法3
先週ご紹介したもののほかに、つぎのような取消事由もあります。
(エ)次に掲げる行為をしたことにより困惑して契約してしまった消費者は、契約を取り消すことができます(法4条3項)。
・不退去(1号)
消費者が退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しない。
・退去妨害(2号)
消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去させない。
・不安をあおる告知(3号)
社会生活上の経験が乏しいことから、就職等願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げる。
・行為の感情の不当な利用(4号)
社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に対して好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いているものと消費者が誤信していることを知りながら、契約をしなければ関係が破たんすると告げる。
・判断能力の低下の不当な利用(5号)
判断力が著しく低下していることから、生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、契約が必要と告げる。
・霊感等による知見の利用(6号)
霊感等の特別な能力により、そのままでは重大な不利益が生じることを示して、その不安をあおり、契約が必要と告げる。
・契約前の履行(7号)
契約締結前に、契約を締結に基づき負うこととなる義務を履行し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。
(オ)過量契約(法4条5項)
通常の分量を著しく超えることを知りながら、契約の勧誘をすること。
1人暮らしの方に、何十枚も羽毛布団を購入させるような場合です。
まっとうな取引を行っており、一般的な感覚を持っていれば、このような行為をすることはないと思いますが、取消しの理由として使われる可能性があるので、注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)
消費者契約法2
先週もお伝えしましたが、消費者契約法の主たる効果は、(1)契約を後から取り消すことができることと、(2)不当な契約条項が無効となる、という点にあります。
では、具体的に、どのような場合に、(1)契約を後から取り消されてしまうのでしょうか。
(ア)不実告知(法4条1項1号)
重要事項について事実と異なることを告げること。
当該告げられた内容が事実であるとの誤認した消費者は、契約を取り消すことができます。
ダイエット効果があるとうたって商品を販売したにもかかわらず、そのような効果がないような場合です。
(イ)断定的判断の提供(法4条1項2号)
将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。
当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認した消費者は、契約を取り消すことができます。
将来値上がりするかどうか不確実な不動産を、確実に値上がりすると説明して販売したような場合です。
(ウ)不利益事実の不告知(法4条2項)
消費者の利益となる事実を告げながら、重要事項について不利益となる事実を故意または重大な過失により告げなかったこと。
当該事実が存在しないとの誤認をした消費者は、契約を取り消すことができます。
隣に高層ビルが建ち、眺望が悪化するということを知りながら、眺望が良いと説明してマンションを販売したような場合です。
特に重要な条項は上記3つです。
「ちょっと誇張して話すこともセールストークのテクニックだ」などと考えていると手痛いしっぺ返しを受ける可能性があるので、注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)