最新の記事
アーカイブ
カテゴリー
労務管理8
時間外労働とは、労基法上の1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えた労働をいい、休日労働とは、週休制の法定基準による休日における労働をいいます。
所定労働時間を超えていたとしても、法定労働時間を超えていないのであれば、時間外労働にはあたりません。
たとえば、所定労働時間が1日7時間とされている会社で、8時間勤務した場合、所定労働時間を1時間超えていることになりますが、時間外労働は0ということになります。
同様に、法定休日が日曜日とされている会社で、所定休日(たとえば土曜日)に労働した場合であっても、休日労働とはならないことになります。
時間外・休日労働は、事業場における労使の時間外・休日労働協定(いわゆる三六協定)に基づく必要があります(労働基準法36条1項)。
また、時間外労働の限度について、次のような基準が定められています。
期 間 時間外労働の上限期間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1カ月 45時間
2カ月 81時間
3カ月 120時間
1年間 360時間
なお、この時間外労働の限度に関する基準は、強行的効力を有するものではないと考えられており、限度を超えた時間外労働の合意があったとしても直ちに無効となるものではありません。
また、割増率は、1か月の合計が60時間までの時間外労働および午後10時~午前5時までの深夜労働については、2割5分以上の率、②1か月の合計が60時間を超えた時間外労働の部分については、5割以上の率、③休日労働については3割5分以上の率とされています*。
なお、この割増賃金の規制は、年俸制を採用している場合や、歩合給や出来高給についても及ぶので注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)
*
ただし、このうち、②5割の割増率は、平成31年4月1日までは、中小事業主の事業について適用されません。
労務管理7
さて、先週まで、労働時間についてみてきましたが、今回は、休日・休暇についてです。
労働基準法上、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています(労働基準法35条1項)。
ここで「休日」とは、労働者が労働契約に基づく労働義務を負わない日をいい、労働日を労働日としたまま単に就労させない場合は、休業日であって、休日ではありません。
また、休日は、労働者が、労働日に労働をしなくてもよい権利として認められている「休暇」とも区別されています。
週の休日(週休日)をどの日にするのかについては、法律上規定がありません。
そのため、休日を日曜日にする必要はありません。
実際、飲食店などは、月曜日、不動産会社は水曜日を休みとしていることが多いといわれています。
また、祝祭日を休日にしなければならないものでもありません。
さて、使用者は、突発的な受注への対処など一時的な業務上の業務上の必要性から、就業規則上、休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更することができます。
その際の方法として、事前に休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更する、いわゆる「振替休日」と事後に行う「代休」という2つの制度があります。
双方とも労働契約上の根拠を必要とする、すなわち、就業規則等に根拠規定があることか労働者の個別の同意が必要である点で共通しています。
しかし、振替休日は、労基法の1週1休や、週40時間の制約を受け、また、本来の休日における労働が労働日における労働となるため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務は生じません。
これに対し、代休の場合、休日に労働したということに変更はないため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務が生じるという違いがあります。
(弁護士 國安耕太)
労務管理6
繰り返しになりますが、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。
では、この使用者の指揮命令は、明示のものである必要があるのでしょうか。
この点について、通説では、使用者の指揮命令は、明示のものである必要はなく、黙示のもので足りると解されています。
裁判例でも、従業員が時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった以上、少なくとも黙示的に業務命令があったものとして、使用者側の時間外労働を命じていないとの主張が排斥されています(大阪地判平成17.10.6労判907号5頁、ピーエムコンサルタント事件)。
このように、業務命令として残業を指示したか否かにかかわらず、業務命令があったと認定され、労働時間であると判断されているケースは、珍しくありません。
このような現状を踏まえると、むしろ、労働時間ではないと判断されているケースは、使用者が、労働者に対して業務を禁止していたにもかかわらず業務を行っていたため、自発的な労働と評価されたものに限られると考えておくのが無難でしょう。
たとえば、東京高判平成17.3.30(労判905号72頁、神代学園ミューズ音楽院事件)は、
「繰り返し36強定が締結されるまで残業を禁止する旨の業務命令を発し、残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、この命令を徹底していた」
として、時間外または深夜にわたる残業時間を使用者の指揮命令下にある労働時間と評価することはできないと判断しています。
(弁護士 國安耕太)
労務管理5
労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。
では、たとえば、緊急事態が発生した際に対応するため、泊まり込みで待機しているような場合、当該待機時間(仮眠時間)は、労働時間にあたるのでしょうか。
この点について判例は、
「不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」
としています(最判平成19.10.19民集61巻7号2555頁大林ファシリティーズ事件)
したがって、緊急事態が発生したとき以外は、部屋で待機していたり、寝ていたとしても、労働契約に基づく義務として、部屋での待機と緊急時には直ちに相当の対応をすることを義務付けられている以上は、労働時間にあたるといえるでしょう。
なお、労働時間にあたるか否かは、労働者が使用者の指示に従っていたかどうかには影響されません。
実際、タクシー運転手の客待ち時間に関する裁判例において、
会社が指定場所以外で30分を越える客待ち待機をしないように命令していたとしても、「その時間中には、被告の具体的指揮命令があれば、直ちに原告らはその命令に従わなければならず、また原告らは労働の提供ができる状態にあるのであるから、被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であるというべき」
とされています(大分地判平成23.11.30労判1043号54頁中央タクシー事件)*。
(弁護士 國安耕太)
*
ただし、別途、指揮命令違反として、懲戒処分の対象とはなりえます。