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さて、正当事由の補完となる財産上の給付(立退料)とは、いったいどのくらいの金額になるのでしょうか。
実は、あくまでも賃貸人と賃借人の具体的な事情によって立退料が算定されるので、立退料の額に明確な相場はありません。
そのため、定型的な計算式に数字を入力すれば、立退料のおおよその額が分かる、ということもありません。
ただ、裁判となった場合には、住居については賃料の●か月分といった計算がなされることが多いようです。
また、会社のオフィスや事務所については、移転費用(移転に必要な内装費、引越代等の費用を積み上げたもの)や、不動産鑑定による借家権価格を算定し、この金額を基準とすることが多いです。
さらに、飲食店や販売店など営業用の店舗については、「その場所」で培った顧客が移転によって離れてしまう可能性があるため、その分を補償(営業補償)しなければなりません。
このため、営業用の店舗については、立退料の額も高額になりがちで、賃料の額にもよりますが、1000万円を超えることも珍しくありません。
このように、正当事由の補完となる立退料は、高額になってしまう可能性があり、
正当事由の判断の難しさと相俟って、建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」のです。
以上を踏まえて、大家さんとしては「誰に貸すのか」を慎重に吟味する必要があるのです。
(弁護士 國安耕太)