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民法

民法改正8 まとめ

さて、先週まで、個別の改正箇所についてみてきました。

このほかにも重要な改正がなされていますが、基本的には、これまで判例で確立されてきた法理を明文化したものになっています。

 

たとえば、意思能力(判断能力)。

判例上、意思能力を有しないでした法律行為は無効と解釈されていましたが、これが明文化されました。

*改正法3条の2

「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」

 

また、判例上、将来発生する予定の債権であっても、譲渡や担保設定できると解釈されていましたが、明文はありませんでした。

これを明文化しています。

*改正法466条の6・1項

「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。」

 

さらに、賃貸借終了時の敷金返還や、原状回復に関する基本的なルールも追加されています。

*改正法621条

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

*改正法622条の2・1項

「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。」

 

このほか、多数の改正がなされていますので、改正法が施行される2020年4月1日までに、一度きちんとチェックしておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正7 瑕疵担保

現行法では、瑕疵担保責任が規定されています。

瑕疵担保責任とは、売買・請負等の有償契約において、その目的物に、容易に発見できないような欠陥があった場合、売主や請負人らが、買主や注文者に対して負わねばならない担保責任のことをいいます。

 

*570条本文

「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。」

*566条1項

「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」

 

このような瑕疵担保責任ですが、「隠れた瑕疵」の意義が分かりにくいといった批判がありました。

 

そこで、この度の改正では、瑕疵担保責任を契約不適合責任と再構成することになりました。

 

*改正法562条1項

「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」

 

そして、現行法では、買主は、損害賠償請求と解除しかできませんでしたが、改正法では、履行の追完請求(改正法562条)や代金減額請求(改正法563条)も選択できるようになりました。

 

このように、瑕疵担保責任は、契約不適合責任となり、大幅な改正がなされているので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正6 約款

約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項をいいます。

現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠となっており、たとえば、電車の運送約款、生命保険の保険約款、インターネットサイトの利用規約など、約款は、現実に数多くの場面で広範に利用されています。

このような約款を当事者間の契約内容とするためには、当該約款を契約内容とする旨の合意が必要となるのが原則です。

 

ところが、現行の民法には約款に関する規定がなく、また、確立した解釈も存在していませんでした。

そこで、改正法は、約款(「定型約款」)に関する規定を新設しています(改正法548条の2・1項)。

 

まず、「定型約款」については、「定型取引」において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体とし、

「定型取引」については、①ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、②その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものとしています。

 

そして、定型約款を契約の内容とするための要件についても明らかにしています。

すなわち、

(ア)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき

(イ)定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

は、相手方が定型約款の条項の内容を認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となるとされています(改正法548条の2・1項)。

 

ただし、(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなされず、契約内容とはなりません(改正法548条の2・2項)。

 

そのため、約款の内容については、専門家にきちんと相談してその有効性について検討しておくことが重要といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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民法改正5 保証

保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、主債務者に代わって支払をすべき義務のことをいい、主債務を保証している者を保証人といいます。

 

保証のうち、将来発生する不特定の債務を包括的に保証するものを「根保証」と呼んでいます*1。

その中でも、保証人が法人でない根保証契約(「個人根保証契約」)については、つぎのような規制が設けられています。

(1)極度額を定めない個人根保証契約は無効(改正法465条の2・2項*2)

(2)極度額の定めは、書面または電磁的記録で行わなければ無効(改正法465条の2・3項、446条3項*3)

(3)貸金等債務の根保証に関し、保証期間は原則3年、最長5年(改正法465条の3*4)

(4)主債務者の死亡、保証人の破産・死亡等の事情があれば、保証終了(改正法465条の4)

 

また、事業に係る債務(事業用融資)に関する保証契約についても、特則が設けられています(改正法465条の6・1項)。

すなわち、事業用融資に関する保証契約は、一定の場合(主債務者が法人である場合の取締役等が締結する場合等)を除き、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、効力を生じません。

 

なお、公証人による保証意思の確認の方式についても、詳細に規定されています(改正法456条の6・2項)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

このほか、保証には、通常の保証(単純保証)のほか、連帯保証、根保証、物上保証などの種類があります。

 

*2 改正法465条の2

「1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。」

 

*3 改正法446条3項

「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

 

*4 改正法465条の6・1項

「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」

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民法改正4 法定利率

債務に付けられる利息は、「年10パーセント」のように、一定の期間、一定の割合で発生する旨が定められます。

この利息を算定するための割合を「利率」といいます。

 

この利率には、法定利率と約定利率があり、法定利率は法律で定められた利率をいい、約定利率は当事者間の合意で定められた利率をいいます。

 

約定利率が定められている場合は、原則として約定利率に従います。

これに対し、法定利率は、

(1)利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定

(2)約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定

(3)逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除*1

に用いられます。

 

法定利率は、現行法では、民事の法定利率は年5%(404条)、商事の法定利率は年6%(商法514条)とされています。

 

しかし、昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いており、利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が 抑えられるなど、当事者の公平を害するとの指摘がなされていました。

 

そこで、改正法は、法定利率を市中の金利の変動に合わせて上下させる変動制を導入しています(改正法404条*2)。

具体的には、

(ア)利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による

(イ)当初の法定利率は、年3パーセント

(ウ)法定利率は、3年を一期とし、一期ごとに、変動する

ことになります。

 

なお、約定利率の上限がある場合(利息制限法等)、異なる法定利率が定められている場合(賃金の支払の確保等に関する法律等)もあるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 中間利息控除とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することをいいます。

 

*2 改正法404条

「1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。」

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民法改正3 消滅時効(2)

改正民法では、債権については

(ア)権利を行使することができる時から10年

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

のいずれか早い方の経過によって消滅時効が完成するのが原則です(改正法166条1項)。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時(権利を行使することができる時)から20年

(イ)損害および加害者を知った時から3年

とされています(改正法724条)。

 

しかし、これには、例外があります。

 

それは、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の場合です。

生命・身体は重要な法益であり、これに関する債権は保護の必要性が高く、また、治療が長期間にわたるなどの事情により、被害者にとって迅速な権利行使が困難な場合があります。

 

それゆえ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、つぎのような特則が設けられています。

すなわち、債務不履行の場合、不法行為の場合のいずれにおいても、

(ア)権利を行使することができる時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法167条*1、改正法724条の2*2)。

 

以上のとおり、債務不履行・不法行為のいずれを根拠とする場合も同じであり、かつ、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間が、伸長されていることに注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法167条

「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。」

*2 改正法724条の2

「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。」

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民法改正2 消滅時効(1)

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度をいいます。

 

現行法は、原則として、権利を行使することができる時から10年間行使しない場合、当該債権は時効で消滅する一方(167条1項)、職業別に短期の消滅時効を定めています(170条~174条)。

たとえば、医師の診療債権は3年(170条1号)、弁護士の報酬債権は2年(172条1項)で消滅するとされており、また、商取引によって生じた債権(商事債権)は、5年で消滅するとされています(商法522条)。

 

しかし、この短期の消滅時効制度は、どの時効期間が適用されるのか、複雑でわかり辛いという批判がありました。

他方で、消滅時効制度が設けられている趣旨は、(1)長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図るとともに、(2)権利の上に眠る者は保護しない(権利を行使しないのであれば、当該権利を行使しえなくなっても構わない)という点にあります。

 

そのため、これらを単純に撤廃するだけでは、時効期間の大幅な長期化を招くことになり、消滅時効制度が設けられている趣旨に反することになりかねません。

 

そこで、改正民法では、短期の消滅時効制度を撤廃したうえで、

(ア)権利を行使することができる時から10年

という時効期間を維持しつつ、

(イ)権利を行使することができることを知ったときから5年

という規定を新設し、いずれか早い方の経過によって消滅時効が完成することとしました(改正法166条1項*1)。

 

このように、新たに主観的な起算点から5年で消滅時効が完成することになるため、債権管理を行うにあたっては十分注意してください。

 

また、不法行為に基づく損害賠償請求権については、

(ア)不法行為の時から20年

(イ)損害および加害者を知った時から5年

とされています(改正法724条*2)。

 

なお、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、さらに特則が設けられています。

これについては、次週解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 改正法166条1項

「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」

 

*2 改正法724条

「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。」

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民法改正1 総論

2017年5月26日、民法の一部を改正する法律が成立しました(同年6月2日公布)。

今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます。

 

民法は、私人間の権利義務関係の基本となる法律で、私たちの生活に最も深く関係しています。

たとえば、コンビニでペットボトルの水を買う行為は、民法の売買に関する規定が、家を借りる行為は、民法の賃貸借に関する規定が適用されます。

 

ところが、この民法のうち、売買や賃貸借といった債権関係の規定は、1896年(明治29年)に制定された後、なんと約120年間ほとんど改正がされていませんでした。

 

今回の改正は、「民法のうち債権関係の規定について、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたもの」とされています。

(法務省HP:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html)

 

その改正箇所は、多岐にわたっていますが、次回以降、事業を行うにあたって、特に影響が大きいと考えられる部分を中心に、簡単な解説を行っていきたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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