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労務管理

近時の労働法改正9

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に関する主な改正点のうち、もっとも重要なのは、①不合理な待遇差を解消するための規定の整備に関する改正です。

 

まず、パートタイム・有期雇用労働法については、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者に関し、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをすることが禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法9条)。

また、同一企業内において、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます(パートタイム・有期雇用労働法8条)。

 

一般的に前者を「均等待遇規定」と呼び、㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、差別的取扱いが禁止されます。

同様に、後者を「均衡待遇規定」と呼び、㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲、㋒その他の事情の内容を考慮して不合理な待遇差が禁止されます。

 

どのような待遇差が不合理、差別的取扱いにあたるかは、ガイドラインに示されていますが*、押さえておきたい重要なポイントは、つぎの点です。

 

(1)㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、同様の待遇としなければならない。

(2)㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が異なっていても、その待遇差が不合理であってはならない。

 

このため、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、待遇差を設ける場合は、慎重に判断する必要があります。

 

実際、過去の裁判では、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、㋐職務内容および㋑職務内容・配置の変更範囲が異なっていたとしても、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に必要な費用が異なるわけではない通勤手当や、安全運転および事故防止の必要性は同じ無事故手当といった手当を、通常の労働者にのみ支給する規定は、均衡待遇規定に反する不合理なものと判断されていますので、㋐職務内容および㋑職務内容・配置の変更範囲余程の差異がない限り、不合理とされる可能性が高いでしょう。

 

なお、労働者派遣法については、パートタイム・有期雇用労働法と同様の派遣先均等・均衡方式と、一定の要件を満たす労使協定によって待遇を定める労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することが義務化されています。

(弁護士 國安耕太)

 

*  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

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近時の労働法改正8

来年(2020年)4月1日(中小企業については、2021年4月1日)から、パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が施行されます。

これまでパートタイム労働者に関しては、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が制定されていましたが、有期雇用労働者もこの法律の対象に含めることとされました。

 

本改正の主な目的は、同一企業内における正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることとされています。

 

同様の目的で、労働者派遣法に関しても、改正が行われています。

 

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に関する主な改正点は、つぎの3点です。

①不合理な待遇差を解消するための規定の整備

②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

次回以降、具体的に解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

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最低賃金が改訂されました

本年(2019年)8月9日、厚生労働省から最低賃金の改訂額が公表されました。

 

東京都および神奈川県で全国初の時給1000円超え、全国加重平均では時給901円となりました。

東京都は1013円、神奈川県は1011円、埼玉県926円、千葉県923円となり、いずれも本日(2019年10月1日)から適用されます。

 

都内を歩いていると、いまだに時給1000円~という求人を見かけますが、本日以降、「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」(4条1項)と定める最低賃金法違反となりますので、自社の応募要項を見直しておきましょう。

 

さて、とうとう1000円を超えた最低賃金ですが、10年前の2009年は、東京都は791円、神奈川県は789円、埼玉県735円、千葉県728円でした。

この10年で約25%も上がったことになります。

 

なお、最低賃金に関する規律を定めている最低賃金法ですが、法律自体には具体的な最低賃金の定めはありません。

法律上は、

・厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない(10条1項)

と定められており、実際には、各都道府県の労働局に設置されている地方最低賃金審議会が、最低賃金を定めています。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正7

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法の施行とともに、改正労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)が施行されています。

主な改正は、勤務間インターバル制度の導入促進です。

 

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みをいいます。

本改正では、この仕組みを導入することを事業主の努力義務としました(労働時間等設定改善法2条1項*1)。

この仕組みを事業主の努力義務とすることで、働く方々の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

 

また、この改正にあわせて、労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針*2)も改訂されています。

そして、労働時間等見直しガイドラインにおいては、勤務間インターバルを設定するに際しては、「労働者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるよう配慮すること。」とされていますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働時間等設定改善法2条1項

事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 

*2 労働時間等見直しガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html

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近時の労働法改正6

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法の施行とともに、改正労働安全衛生法が施行されています。

主な改正は、労働時間把握の義務化と産業医、産業保健機能の強化です。

 

まず、労働時間把握の義務化については、これまで割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定しているのみでした。

また、裁量労働制が適用される人などは、この通達の対象外とされていました。

本改正では、健康管理の観点から、事業者に対し、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての労働者の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握するよう法律で義務づけています(66条の8の3)。

 

つぎに、産業医、産業保健機能の強化については、これまでは産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対して勧告することができること、事業者は、産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務があることが規定されていました。

本改正では、事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないこととされ、事業者は、産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければならないこととされました(労働安全衛生法13条4項、13条6項等)。

このほか、産業医の独立性・中立性の強化が図られています。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正5

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

これまで主に中小企業に対する影響が大きいと考えられる改正について解説してきましたが、このほか、フレックスタイム制の拡充および高度プロフェッショナル制度の創設といった改正もされています。

 

まず、フレックスタイム制の拡充については、次のような改正がされました。

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるため、子育てや介護等の理由で、毎日固定の就業時間で勤務することが難しい労働者にとって働きやすい職場を提供することができ、ひいては離職率の低下につながるなど、使い方によっては労働者・使用者双方にメリットのある制度です。

ただ、これまでは清算期間の上限が「1か月」までとされていたため、労働者は1か月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1か月を超えた調整をすることはできませんでした。

本改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能となりました(労働基準法33条の3 1項2号*1)。

 

つぎに、高度プロフェッショナル制度の創設については、次のような改正がされました。

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者に関し、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないという制度です。

本改正では、①年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を付与すること、②選択的措置の実施、を義務化しました(労働基準法41条の2 1項4号・5号*2)。

 

このように本改正では、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方ができるよう様々な改正がなされています。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法33条の3 1項

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

二清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

 

*2 労働基準法41条の2 1項4号・5号

四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。

五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。

イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。

ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。

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近時の労働法改正4

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

主な改正のうち、時間外労働の上限規制・月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げとともに、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、年次有給休暇の取得義務付けです。

 

本改正で、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して年次有給休暇を与えなければならないことになりました(労働基準法39条7項*1)。

 

ただし、労働者が自らの希望で5日以上年次有給休暇を取得する場合や、計画的付与で5日以上年次有給休暇を付与した場合は、この規定は適用されません(労働基準法39条8項*2)。

 

年次有給休暇は、入社日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日間付与されます(労働基準法39条1項)。

また、継続勤務年数が増加するごとに、付与される年次有給休暇も増加していきます(労働基準法39条2項)。

このように、年次有給休暇は、全労働者一律に付与されるものではないため、労働者ごとにきちんと管理しておくことが必要となりますので、ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法39条7項

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

 

*2 労働基準法39条8項

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

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近時の労働法改正3

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

主な改正のうち、時間外労働の上限規制とともに、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げです。

 

労働基準法上、使用者が労働者に1日8時間・1週40時間を超える労働をさせた場合、25%の割増賃金を支払う義務があります*1。

たとえば、時給1500円の労働者が10時間労働した場合、通常の給与に加えて、1500円×1.25×2時間=3750円を支払わなければなりません。

 

また、同様に、1か月60時間を超える労働をさせた場合は、50%の割増賃金を支払う義務があるとされていますが、これまでは大企業にのみこの条項が適用され、中小企業に関してはこの条項の適用が猶予されていました。

 

しかし、本改正では、この猶予が撤廃され、2023年以降、中小企業も大企業同様50%の割増賃金を支払う義務を負うことになりました。

 

このため、2023年以降、労働者に60時間を超える時間外労働をさせる場合は注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法37条1項

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

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近時の労働法改正2

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

 

主な改正のうち、特に中小企業*1に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、時間外労働の上限規制です。

 

本改正では、

(1)時間外労働の上限が、原則として、月45時間・年360時間。

(2)臨時的な特別の事情がある場合、労使が合意をすれば、これを超えることができる。

(3)ただし、その場合でも、(ア)月45時間を超えることができるのは年6か月まで、(イ)時間外労働の合計が年720時間以内、(ウ)時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満かつ2~6か月の平均が80時間以内。

とされました(労働基準法36条4項、5項*2)。

 

労働基準法上、労働時間は1日8時間、週40時間までと定められています。

しかし、厚生労働省の通達により、36協定を結べば月45時間、年間360時間までの法定労働時間外の労働が認められており、また、「特別条項付き36協定 」を締結すれば、年6回に限り上限なく時間外労働を行わせることができるようになっていました。

 

本改正は、法律で時間外労働の上限を設け、長時間労働の抑制を図ろうとしています。

 

なお、この上限規制に関しては、自動車運転の業務、建設事業、医師等の職種に関しては、2024年まで適用が猶予されています。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

中小企業かどうかは、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者の数から判断されます。

たとえば、小売業であれば、資本金の額または出資の総額が5000万円以下で、常時使用する労働者の数が50人以下の場合、中小企業となります。

 

*2 労働基準法36条

4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。

5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。

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近時の労働法改正1

昨年、労働基準法、労働安全衛生法および労働時間等設定改善法が改正され、本年(2019年)4月1日から施行されています。

 

各法律の主な改正点は、次のとおりです。

 

①労働基準法

・時間外労働の上限規制

・月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げ

・年次有給休暇の取得義務付け

・フレックスタイム制の拡充

・高度プロフェッショナル制度の創設

 

②労働安全衛生法

・労働時間把握義務

・産業医、産業保健機能の強化

 

③労働時間等設定改善法

・勤務間インターバル制度の導入促進

 

これらの改正のうち、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるのが、労働基準法に関する改正です。

時間外労働の上限規制については、2020年4月まで、割増賃金率の引き上げについては、2023年4月までその適用が猶予されていますが、ぎりぎりになって慌てることがないよう、いまのうちにきちんと対応しておきましょう。

 

次回以降、具体的に解説をしていきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*8月10日~8月18日まで夏季休業となります。

そのため、次回配信は、8月20日です。

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労務管理8

時間外労働とは、労基法上の1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えた労働をいい、休日労働とは、週休制の法定基準による休日における労働をいいます。

 

所定労働時間を超えていたとしても、法定労働時間を超えていないのであれば、時間外労働にはあたりません。

たとえば、所定労働時間が1日7時間とされている会社で、8時間勤務した場合、所定労働時間を1時間超えていることになりますが、時間外労働は0ということになります。

同様に、法定休日が日曜日とされている会社で、所定休日(たとえば土曜日)に労働した場合であっても、休日労働とはならないことになります。

 

時間外・休日労働は、事業場における労使の時間外・休日労働協定(いわゆる三六協定)に基づく必要があります(労働基準法36条1項)。

 

また、時間外労働の限度について、次のような基準が定められています。

 

期 間         時間外労働の上限期間

1週間         15時間

2週間         27時間

4週間         43時間

1カ月         45時間

2カ月         81時間

3カ月         120時間

1年間         360時間

 

なお、この時間外労働の限度に関する基準は、強行的効力を有するものではないと考えられており、限度を超えた時間外労働の合意があったとしても直ちに無効となるものではありません。

 

また、割増率は、1か月の合計が60時間までの時間外労働および午後10時~午前5時までの深夜労働については、2割5分以上の率、②1か月の合計が60時間を超えた時間外労働の部分については、5割以上の率、③休日労働については3割5分以上の率とされています*。

 

なお、この割増賃金の規制は、年俸制を採用している場合や、歩合給や出来高給についても及ぶので注意が必要です。

 

(弁護士 國安耕太)

 

 

*

ただし、このうち、②5割の割増率は、平成31年4月1日までは、中小事業主の事業について適用されません。

 

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労務管理7

さて、先週まで、労働時間についてみてきましたが、今回は、休日・休暇についてです。

 

労働基準法上、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています(労働基準法35条1項)。

 

ここで「休日」とは、労働者が労働契約に基づく労働義務を負わない日をいい、労働日を労働日としたまま単に就労させない場合は、休業日であって、休日ではありません。

また、休日は、労働者が、労働日に労働をしなくてもよい権利として認められている「休暇」とも区別されています。

 

週の休日(週休日)をどの日にするのかについては、法律上規定がありません。

そのため、休日を日曜日にする必要はありません。

実際、飲食店などは、月曜日、不動産会社は水曜日を休みとしていることが多いといわれています。

また、祝祭日を休日にしなければならないものでもありません。

 

さて、使用者は、突発的な受注への対処など一時的な業務上の業務上の必要性から、就業規則上、休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更することができます。

 

その際の方法として、事前に休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更する、いわゆる「振替休日」と事後に行う「代休」という2つの制度があります。

 

双方とも労働契約上の根拠を必要とする、すなわち、就業規則等に根拠規定があることか労働者の個別の同意が必要である点で共通しています。

 

しかし、振替休日は、労基法の1週1休や、週40時間の制約を受け、また、本来の休日における労働が労働日における労働となるため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務は生じません。

 

これに対し、代休の場合、休日に労働したということに変更はないため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務が生じるという違いがあります。

(弁護士 國安耕太)

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労務管理6

繰り返しになりますが、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

 

では、この使用者の指揮命令は、明示のものである必要があるのでしょうか。

 

この点について、通説では、使用者の指揮命令は、明示のものである必要はなく、黙示のもので足りると解されています。

裁判例でも、従業員が時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった以上、少なくとも黙示的に業務命令があったものとして、使用者側の時間外労働を命じていないとの主張が排斥されています(大阪地判平成17.10.6労判907号5頁、ピーエムコンサルタント事件)。

 

このように、業務命令として残業を指示したか否かにかかわらず、業務命令があったと認定され、労働時間であると判断されているケースは、珍しくありません。

このような現状を踏まえると、むしろ、労働時間ではないと判断されているケースは、使用者が、労働者に対して業務を禁止していたにもかかわらず業務を行っていたため、自発的な労働と評価されたものに限られると考えておくのが無難でしょう。

 

たとえば、東京高判平成17.3.30(労判905号72頁、神代学園ミューズ音楽院事件)は、

「繰り返し36強定が締結されるまで残業を禁止する旨の業務命令を発し、残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、この命令を徹底していた」

として、時間外または深夜にわたる残業時間を使用者の指揮命令下にある労働時間と評価することはできないと判断しています。

(弁護士 國安耕太)

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労務管理5

労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

 

では、たとえば、緊急事態が発生した際に対応するため、泊まり込みで待機しているような場合、当該待機時間(仮眠時間)は、労働時間にあたるのでしょうか。

 

この点について判例は、

「不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」

としています(最判平成19.10.19民集61巻7号2555頁大林ファシリティーズ事件)

 

したがって、緊急事態が発生したとき以外は、部屋で待機していたり、寝ていたとしても、労働契約に基づく義務として、部屋での待機と緊急時には直ちに相当の対応をすることを義務付けられている以上は、労働時間にあたるといえるでしょう。

 

なお、労働時間にあたるか否かは、労働者が使用者の指示に従っていたかどうかには影響されません。

実際、タクシー運転手の客待ち時間に関する裁判例において、

会社が指定場所以外で30分を越える客待ち待機をしないように命令していたとしても、「その時間中には、被告の具体的指揮命令があれば、直ちに原告らはその命令に従わなければならず、また原告らは労働の提供ができる状態にあるのであるから、被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であるというべき」

とされています(大分地判平成23.11.30労判1043号54頁中央タクシー事件)*。

(弁護士 國安耕太)

 

*

ただし、別途、指揮命令違反として、懲戒処分の対象とはなりえます。

 

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労務管理4

休憩時間を除いて、1日8時間もしくは1週間40時間を超えて労働させた場合または休日に労働させた場合に、割増賃金の支払義務が生じます(労働基準法32条、37条1項)。

 

では、具体的にどのような要件を満たしていれば、労働時間と認められるのでしょうか。

 

判例では、労働時間といえるかどうかは、

 

「労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とされ、

 

使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうかは、

 

「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、または、これを余儀なくされたとき」は、「特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」る

 

とされています(最判平成12.3.9民集54巻3号801頁、三菱重工長崎造船所事件)

 

具体的には、同判例において、「実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていたなどというのであるから、作業服及び保護具等の着脱等は、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、右着脱等に要する時間は、それが社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当するというべきである。」とされ、作業服及び保護具等の装着についても、会社の指揮命令下に置かれたものと評価できると判断されています。

 

このように、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理3

法律上「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」(労働基準法37条1項)とされていることから、一般的に、残業代請求と呼ばれているものには、早出の場合や、休日労働の場合も含まれており、法律上は、「割増賃金」の請求です。

 

さて、ここで「労働時間を延長」とあるので、つぎに、労働時間とは何なのか、という問題が出てきます。

 

原則となる所定の労働時間に関する規定は、労働基準法32条にあります。

この規定を、法律で定められた労働時間という意味で「法定労働時間」と呼んでいます。

 

(労働基準法32条)

1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

 

労働基準法が規定する労働時間は、「休憩時間を除」いた時間であり、現に労働させる時間を指します。

 

そうすると、休憩時間を除いて、1日8時間もしくは1週間40時間を超えて労働させた場合または休日に労働させた場合に、割増賃金の支払義務が生じる、ということになります。

 

なお、ここでいう1日とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、午前0時から午後12時まで、1週とは、日曜日から土曜日までを指しています。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理2

平成25年の統計では、1年間に、賃金手当等に関する紛争(主に未払残業代請求)は、労働審判1456件、民事訴訟1929件の合計3385件が申し立てられています。

 

ちなみに、一般的に未払残業代請求と言われていますが、法律上「残業代」という概念は存在しません。

ご存知でしたか?

 

実は、法律上は、「割増賃金」という概念が存在しているだけなのです。

 

割増賃金については、労働基準法37条1項が規定しています。

 

(労働基準法37条1項)

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

一読しただけでは、よくわからないかもしれませんが、ここで重要なのは、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」とされていることです。

 

つまり、割増賃金は、いわゆる残業の場合のほか、所定の労働時間を勤務時間前に延長した場合に支払義務が生じる、すなわち、残業の場合のほか、早出の場合や、休日労働の場合にも支払義務が生じるということになります。

 

このように、一般的に、残業代請求と呼ばれているものには、早出の場合や、休日労働の場合も含まれており、法律上は、「割増賃金」の請求、ということになります。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理1

先日(平成29年10月20日)、つぎのような報道がありました*。

 

「日本放送協会(NHK)の山口放送局(山口市)で残業代の未払いがあったとして、山口労働基準監督署(同)が先月、労働基準法違反で同放送局に是正勧告を出していたことがわかった。勧告は9月29日付。

関係者やNHKの説明によると、同放送局に勤める一部の職員が申請した勤務時間が、タイムカードで記録された労働時間より短くなっていたことが労基署の調査で判明。労基署から残業代が未払いになっている可能性があると指摘されたことを受け、NHK側が同放送局内の勤務時間の実態を調べた結果、今年4~6月に、11人の職員に計約9万2千円分の未払い残業代があることがわかり、労基署から是正勧告を受けたという。」

 

この事件は、NHKの山口放送局が、山口労働基準監督署から、労働基準法違反で是正勧告を出されていた、というものです。

このように、近時、未払残業代をめぐって、労基署の調査や勧告がなされたり、訴訟や労働審判が申し立てられることが増えています。

 

確かに、実際に賃金手当等に関する紛争が生じる会社は一握りかもしれません。

 

しかし、賃金手当等に関する紛争が生じた場合、マクドナルド事件のように、1人あたり数百万円の支払いを求められる可能性もあり、会社の経営基盤に重大なダメージを与える可能性があります。

 

また、近時、働き方改革が叫ばれ、労働時間を巡る世間の視線は厳しいものになってきています。

 

そのため、労働時間の管理を適切に行っていくことは、会社の維持発展には必要不可欠といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00000017-asahi-soci

 

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