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たとえば、未成年者が自転車に乗っていて、高齢者をはねて怪我をさせてしまったような場合、誰がその責任を負うのでしょうか。
まず、未成年者に責任能力(小学校卒業程度の判断能力)がある場合は、原則として、当該未成年者が責任を負います。
他方、未成年者に責任能力がない場合は、親権者である親が責任を負うことになります(民法714条1項本文*1)。
ただし、この場合、親が監督義務を怠らなかったような場合は、責任を負いません(民法714条1項ただし書き)。
そして、この親の監督義務について、先日(平成27年4月9日)、最高裁は、つぎのような判断を示しました*2。
「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務がある」
「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」
本事案において、原審は、両親に損害賠償義務を認めていましたが、最高裁は、上記のとおり判示し、損害賠償義務を否定しました。
本事案は、小学校の校庭で、フリーキックの練習をしていたところ、蹴ったサッカーボールが、ゴールを外れ、たまたま校門の外に出てしまい、折から自動二輪車を運転していた被害者が、そのボールを避けようとして転倒した、というものであることにかんがみれば、妥当な判断ではないかと思います。
ただ、本事案を離れれば、未成年者の行為態様によっては、親が責任を負わなければならないことも十分考えられますから、事前にきちんと対策をしておくことが重要でしょう。
なお、本件では、問題とされていなかったようですが、ゴールに向かってボールを蹴るという通常の行為をしているだけにもかかわらず、校門の外に出てしまうような構造自体が、通常有すべき安全性を欠いていたとして、工作物責任(民法717条)を問う余地はあったのではないか、とも思います(工作物責任については、当事務所4月3日付けブログ*3をご覧ください。)。
(弁護士 國安耕太)
*1
民法714条1項
「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」
*2
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/032/085032_hanrei.pdf
*3