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先日(平成27年4月28日)、テレビやラジオで使われる楽曲の著作権管理事業を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が独占禁止法違反(私的独占)にあたるかどうかが争われた訴訟の最高裁判決が出されました*1。
新聞報道等では、JASRACの独占禁止法違反が認められたとの記載もありますが、正確には、本判決は、JASRACの契約方法が「他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にする効果を有する」との判断を示したにすぎず、独占禁止法違反を認めたものではありません。
独占禁止法3条は、「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」と定め、私的独占を禁止していますが、この「私的独占」とは、「事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」とされています(独占禁止法2条5項)。
大雑把にいえば、「私的独占」にあたるためには、①他の事業者の事業活動を排除する行為と②一定の取引分野における競争の実質的制限という2つの要件を満たす必要がある、ということです。
そのため、本判決は、判決末尾にて、
㋐JASRACの契約方法は、特段の事情のない限り、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有する
㋑したがって、①他の事業者の事業活動を排除する行為という要件の該当性につき、特段の事情の有無を検討の上、
㋒上記要件の該当性が認められる場合には、②一定の取引分野における競争を実質的に制限するものに該当するか否か
など、同項の他の要件の該当性が審理の対象になるとしています。
本件は、公正取引委員会で、再度審理されることになっています。
今後の判断が楽しみです。
(弁護士 國安耕太)
*1 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/064/085064_hanrei.pdf