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委託者の意思能力に問題が生じた場合、たとえば、委託者が認知症に罹患した場合、実質的に財産が凍結されてしまうことになります。
すなわち、財産の処分等を行うためには、意思表示をすることができなければなりません。
しかし、委託者が認知症に罹患した場合、本人は、意思表示をすることは困難ですから、財産の処分等を行うことができません。
そのため、たとえば、老人ホームの入居料を支払うために自宅の不動産を売却しようと思っても、それはできない、ということになります。
そのような時に備えて、成年後見という制度があるにはあります。
ところが、成年後見人が、実際に被後見人の自宅の不動産を売却するためには、家庭裁判所に対して、不動産を売却することについての必要性や妥当性を訴え、売却を許可してもらわなければならず、非常に困難なのです。
そこで、このような場合に備えて、自宅の不動産について、委託者兼受益者を親、受託者を子どもとする信託を組成しておく、ということが考えられます。
そして、信託契約の条項で、当該不動産の処分権限を認めておけば、受託者を売主として信託不動産を売却することができます。
なお、受託者の権限は、信託目的の範囲内で、自由に定めることができます。
そのため、処分権限はなく、管理権限のみと定めることも可能です。
このように、民事信託を利用することで、委託者が認知症に罹患した場合等委託者の意思能力に問題が生じた場合に、実質的に財産が凍結されてしまう事態を回避することができる可能性があるのです。
(弁護士 國安耕太)