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民事信託は、受託者が、特定の委託者から、営利を目的とせず、反復継続しないで引き受ける信託をいいます。
実は、信託法とは別に信託業法という法律があり、受託者が、「信託の引受けを行う営業」を行う場合、信託業の免許が必要になります(信託業法2条1項、3条)。
この信託業法の適用を回避するため、「営業」もあたらないこと、すなわち、営利の目的をもって反復継続して行わないことが必要となります。
そのため、複数の依頼者から依頼を受けて受託者になることはできません。
他方で、受託者が信託報酬を受け取ることは禁止されていません。
ただし、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬を受ける旨の定めがある場合に限ります(信託法54条)。
なお、未成年は受託者になることができませんが(信託法7条)、法人は受託者になることができます。
さて、このような民事信託ですが、この制度を利用した場合の主たるメリットは、つぎの3つに集約されます。
1つ目は、委託者の意思能力に問題が生じた場合(委託者が認知症に罹患した場合など)、実質的に財産が凍結してしまいますが、そのような事態を回避することができる可能性があります。
2つ目は、遺言等では、つぎの承継者を指定できるにすぎないのに対し、委託者の希望通りに、承継者の順番を決めることができる可能性があります。
3つ目は、遺言等では承継者が承継した財産をどのように使用・処分するのか指定することはできませんが、使用・処分を制限することができる可能性があります。
では、それぞれ、どのような場面で有用なのか、具体的に見ていきましょう。
(弁護士 國安耕太)