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我が国においては、従前、「信託」といえば、信託銀行等が取り扱っている商事信託(信託を利用した金融商品)を指しており、委託者=受益者であることが原則でした。
しかし、本来、「信託」とは、委託者が受託者に対して財産権の移転等の処分をし、一定の目的(信託目的)に従って、受託者が、受益者のために財産(信託財産)の管理、処分をすることをいいます。
要するに、信託制度は、委託者が、受益者のために、受託者に対し、委託者の所有する財産の管理等を委ねる、という制度です。
すなわち、本来的には、委託者=受益者でなければならない、というものではありません。
むしろ、歴史的には、中世ヨーロッパの十字軍遠征の際、遠征する兵士が、信頼できる人に財産を譲渡し、そこから得た収益を残された家族に渡すための制度として利用されたといわれる制度です。
そのため、委託者≠受益者が本来の姿であるといってよいかもしれません。
そこで、信託という優れた制度を商事信託のみならず、後見的な財産管理や財産の承継を目的とした民事信託の分野でも活用できるよう2006年(平成18年)12月(2007年9月施行)に、信託法が改正されました。
改正された信託法では、多様な信託目的に応じられるようにするため、受託者の義務の合理化、受益者の権利行使の強化を図りつつ、その一方で信託制度を柔軟に運用できるようにし、従前の信託法では認められていなかった、自己信託、遺言代用信託、受益者連続信託等も新たに認められています。
このように、大きく変わった信託法ですが、今回は、その中でも、新しい相続対策として、民事信託の制度とその活用について考えていってみたいと思います。
(弁護士 國安耕太)