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さて、先週、会社が新型コロナに関する感染防止策を実施していたにもかかわらず、従業員が新型コロナに罹患してしまった場合、労災保険給付の対象となりうるという話をしました。
では、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償と労災保険給付はどのような関係にあるのでしょうか。
この点、労基法84条*1には、労災保険給付がなされた場合、使用者は補償義務を負わないことが明記されています。
では、なぜ、使用者である会社の賠償義務が問題となるのでしょうか。
実は、これは労災保険の性質に基づきます。
すなわち、労災保険は、あくまでも「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行」うものにすぎません*2。
そのため、労災保険給付は、必ずしも損害を完全に賠償するものではないのです。
(弁護士 國安耕太)
*1 労働基準法84条
1 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
2 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由 については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。
*2 労働者災害補償保険法1条
労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。