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取締役は、会社に対し、任務を怠った(任務懈怠)ことによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項*)。
任務懈怠は、取締役が、会社に対して負ってる善管注意義務(民法644条)および忠実義務(会社法355条)に違反した場合に認められます。
ただし、経営にはリスクがつきものであり、会社に損害が生じた場合に常に責任を問われるということになれば、取締役が委縮してしまい、会社にとって効果的な意思決定を行うことができなくなる可能性があります。
そこで、取締役の経営判断が会社に損害を与える結果になっても、かかる経営判断が特に不合理・不適切でなければ結果の責任を問われないという「経営判断の原則」が適用されるとされています。
具体的には、
①経営判断の基礎となる事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
②経営判断の過程が合理的であること
③経営判断の内容が通常の企業経営者として明らかに不合理でないこと
という要件を満たしている場合は、会社に損害を与える結果になっても、取締役はかかる結果の責任を問われません。
実際、過去の裁判においても、取締役の経営判断に関し「その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではない」(最判平成22年7月15日、集民第234号225頁)。
このように、取締役に任務懈怠がある場合は損害賠償義務を負いますが、それはあくまでも経営判断が不合理・不適切な場合に限られます。
(弁護士 國安耕太)
* 会社法423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。