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繰り返しになりますが、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。
では、この使用者の指揮命令は、明示のものである必要があるのでしょうか。
この点について、通説では、使用者の指揮命令は、明示のものである必要はなく、黙示のもので足りると解されています。
裁判例でも、従業員が時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった以上、少なくとも黙示的に業務命令があったものとして、使用者側の時間外労働を命じていないとの主張が排斥されています(大阪地判平成17.10.6労判907号5頁、ピーエムコンサルタント事件)。
このように、業務命令として残業を指示したか否かにかかわらず、業務命令があったと認定され、労働時間であると判断されているケースは、珍しくありません。
このような現状を踏まえると、むしろ、労働時間ではないと判断されているケースは、使用者が、労働者に対して業務を禁止していたにもかかわらず業務を行っていたため、自発的な労働と評価されたものに限られると考えておくのが無難でしょう。
たとえば、東京高判平成17.3.30(労判905号72頁、神代学園ミューズ音楽院事件)は、
「繰り返し36強定が締結されるまで残業を禁止する旨の業務命令を発し、残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、この命令を徹底していた」
として、時間外または深夜にわたる残業時間を使用者の指揮命令下にある労働時間と評価することはできないと判断しています。
(弁護士 國安耕太)