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従業員が、会社に損害を加えた場合、会社は、当該従業員に対し、損害賠償請求できるのでしょうか。
たとえば、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合に、当該従業員に対し、その損害全額の賠償を求めることはできるのか、相談を受けることがあります。
従業員が会社に対し、損害を加えた場合、その損害を賠償する責任が生じます。
しかし、会社は、従業員の活動によって利益を得ていますから、従業員の活動によって被った損害についても、一定程度負担すべき、とするのが判例・通説の考え方です。
具体的には、最判昭和51年7月8日(民集第30巻7号689頁)は、
「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」
と判示しています。
したがって、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合であっても、会社が、当該従業員に対して請求できる損害賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に制限されます。
なお、上記はあくまでも、会社と従業員間の内部分担の問題です。
会社は、物損事故の被害者に対して、直接責任を負います(民法715条1項、使用者責任)。
従業員が責任を負うことを理由に、第三者に対する賠償義務を免れることはできませんので注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)