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労働基準法は、付加金の制度を設けています。
付加金とは、解雇予告手当(20条)、休業手当(26条)または割増賃金(37条)等を支払わない使用者に対し、裁判所が、労働者の請求に基づき、これら未払金に加えて支払いを命ずる金銭をいいます*1。
大雑把にいえば、会社が、200万円の残業代(割増賃金)を未払いであった場合、これに加えてさらに200万円の付加金の支払いが命じられ、合計400万円の支払義務が生じることになります。
この規定を見ただけで、労働基準法がいかに労働者を保護しており、割増賃金等の未払いがいかに会社にリスクをもたらすかがよくわかると思います。
さて、この付加金の請求に関し、付加金の請求の価額に相当する印紙代も支払う義務があるのかが争われ、先日(平成27年5月19日)、この点に関する最高裁の判断が示されました*2.
最高裁は、「未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは、民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれる」として、割増賃金等の請求と共に付加金の請求をするときは、付加金の価額に相当する印紙代の支払義務はないとしました*3。
この結果、例えば、200万円の残業代に加え、同額の付加金を請求した場合、2万5千円ではなく、1万5千円の印紙代で足りることになります。
額としては1万円の差ですが、手続費用の負担が低くなることは、訴訟提起の心理的ハードルが下がることにつながる可能性があります。
いずれにしても、付加金という制度によって、自社に大きなリスクが生じないよう、労務管理には細心の注意を払うようにしてください。
(弁護士 國安耕太)
*1
労働基準法114条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。
*2
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/112/085112_hanrei.pdf
*3
なお、付加金の規定について、「労働者の保護の観点から、割増賃金等の支払義務を履行しない使用者に対し一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし、その支払義務の履行を促すことにより上記各規定の実効性を高めようとするもの」としています。