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ブラック企業と経営者

先日、「ブラック企業大賞2013」の授賞式が開催され、大賞は大手居酒屋チェーンを経営するW社が受賞したようです。

ブラック企業について、明確に定義されているわけではありませんが、ウィキペディアでは、「広義には入社を勧められない労働搾取企業を指す。すなわち、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す」とされています。

私たち外部の人間には、ブラック企業大賞を受賞したW社が本当にブラック企業かどうかはわかりません。

しかし、仮に使用者である企業が、長時間のサービス残業を従業員に強いているとすれば、未払残業代(労基法37条1項)や付加金(労基法114条)を請求することができますし、長時間労働により身体に異常が生じたような場合には、安全配慮義務違反を根拠に損害賠償請求(民法709条)をすることができます。

また、サービス残業については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が労働基準局長通達(平成13年4月6日基発339号)として出されています。この通達では労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、始業・終業時刻の確認及び記録等が挙げられています。これに関連して、タイムカードによる労働時間の記録がある場合には、使用者による適切な反証がない限り、その記録に従って時間外労働の時間を算定するとの裁判例(丸栄西野事件、大阪地判平成20・1・11、労判957-5)もあります。サービス残業に対する裁判所の姿勢は近年厳しくなっているといえましょう。

さらには、悪質なサービス残業の事例では、労働基準監督署の立入検査や是正勧告を受けている場合もあります。

また、刑罰の対象にもなりえます。たとえば、残業代不払いの場合は、労基法24条に違反し、30万円以下の罰金となり(労基法120条)、36協定の締結がないのに時間外労働をさせた場合には、労働基準法32条に違反し、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。

昨今では、ひとたびニュースとなれば半永久的にネットに残り続けますから、万一これらの処分を受けて公表されると、企業にとって大きなダメージとなります。

さらに、パワーハラスメントについては、加害者である上司や同僚に対する慰謝料請求(民法709条)だけでなく、労働契約上の安全配慮義務違反を根拠に、企業に対し、損害賠償請求することも考えられます。現に川崎市水道局事件(東京高判平成15・3・25、労判849-87)では、使用者である川崎市に、安全配慮義務違反を理由とした国家賠償法上の責任が認められました。

このように、現代社会においては、昔と同じように従業員に働いてもらっていたにもかかわらず、突然ネット上でブラック企業であると批判されたり、現実に従業員から訴訟を提起されることも珍しくありません。

そして、企業にとっては、このような批判をされたり、訴訟を提起されること自体がリスクとなり得ます。

企業の経営者としては、このような批判や訴訟を防止するため、事前に専門家によるチェックを受けることが必要不可欠な時代となったといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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