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昨日(2015年10月5日)、現役のプロ野球選手が、野球賭博に関与していたとの報道がありました*1。
この報道が事実であれば、非常に残念です。
さて、この報道によれば、当該選手に関し、刑法の賭博罪(185条*2)と野球協約(177条1項)違反が問題となっているようです。
まず、刑法の賭博罪ですが、結果が偶然の事情にかかっていることについて、財物を賭ける行為(賭博行為)が禁止されています。
当事者の能力が結果に及ぼすような場合でも賭博行為に該当しますから、野球やサッカー等のスポーツや、将棋や囲碁のようなゲームに関し、財物を賭けた場合も賭博行為に該当します。
また、現実に財物を提供していなくても、財物を賭ける行為があれば犯罪として成立します。
そうすると、当該選手は「プロ野球と大リーグの試合でそれぞれ10試合、賭けをした」「最終的に百数十万円の損になっていた」という報道が事実であれば、賭博罪が成立することになりそうです。
つぎに、野球協約違反ですが、野球協約177条1項は、様々な不正行為を禁止しており、これに違反した者は永久失格処分となり、組織内のいかなる職務につくことも禁止されます*3。
ここでの不正行為は、原則として、自己が所属する球団に関するものに限定されています。
たとえば、1号は、「所属球団のチームの試合において、故意に敗れ、又は敗れることを試み、あるいは勝つための最善の努力を怠る等の敗退行為をすること。」を禁止しています。
同様に、賭博行為についても、「所属球団が直接関与する試合について賭をすること。」に限定されています(6号)。
本件では、当該選手が出場していた試合は賭博の対象となっていなかったようですが、所属する球団の試合についても賭博の対象となっていたようですので、野球協約177条1項6号違反で、永久失格処分となる可能性は十分あるといえます。
なお、2010年には、大相撲でも賭博が発覚し、大関らが解雇となる等大きな騒ぎとなりました(ただし、一部の力士に関しては、後に裁判所で解雇無効との判断がされていますので、解雇処分については慎重に判断する必要があります。)。
本件についても、日本野球機構がどのような判断をするのか、永久失格処分(解雇)となった場合に、当該解雇が有効か、今後の推移が気になります。
(弁護士 國安耕太)
*1
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151006-00000021-spnannex-base
*2 刑法185条
「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」
*3 野球協約177条1項柱書き
「選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の不正行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を永久失格処分とし、以後、この組織内のいかなる職務につくことも禁止される。」