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企業法務

経営者のためのコンプライアンス入門8

さて、起こりがちなコンプライアンス違反例の最後は「飲酒した友人の運転する車に同乗すること」です。

 

まず、道路交通法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」(65条1項)と規定し、酒気帯び運転を禁止しています。

そのため、お酒を飲んだ後、車を運転すれば、当然、道路交通法の規定に抵触し*、コンプライアンス違反となります。

 

これは、みなさんもご存知のことかと思います。

 

また、注意しなければならないのは、自ら飲酒運転をした場合だけでなく、「飲酒した友人の運転する車に同乗」した場合も、道路交通法の規定に抵触するということです。

 

すなわち、道路交通法65条4項は「運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。」場合も、道路交通法違反となる旨、定めています。

 

昨今の飲酒運転に対する世間の厳しい目を踏まえれば、従業員が飲酒運転をすることは当然防止しなければなりません。

 

また、併せて、「飲酒した人の運転する車に同乗」することも道路交通法の規定に抵触することをきちんと伝え、コンプライアンス違反が生じることのないよう注意してください。

(弁護士 國安耕太)

 

*厳密には、罰則が適用されるのは、あくまでも、酒気を帯びて車両等を違反して運転した場合であって、「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたものに限られます。

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経営者のためのコンプライアンス入門7

さて、起こりがちなコンプライアンス違反例の二つ目は「他社のホームページに掲載されていた文章を無断で使用すること」です。

 

実は、これもコンプライアンス違反となりうる行為です。

もちろん、他社のホームページだけではなく、雑誌や書籍に記載されていた文章でも同じです。

 

他の人が書いた文章は、著作物に該当し、これを無断で使用することは、著作権法違反となる可能性があります。

 

著作権法上、著作者は、著作者人格権(著作権法18条1項、19条1項および20条1項に規定する権利)および著作財産権(著作権法21条から28条までに規定する権利)を享有し(著作権法17条1項)、「その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)とされています。

 

そして、複製とは、「既存の著作物に依拠して、その内容および形式を覚知することができる程度のものを有形的に再製」(2条1項15号)する行為をいいます。

 

このため、他の人が書いた文章を、その著作権者である当該他の人に無断で使用することは、この複製権を侵害するものとして、著作権法違反となる可能性があるのです。

 

なお、たまに、「文章は、多少書き方を変えていれば、無断で使用することも問題ない」といったことを言っている人がいます。

しかし、文章の内容を多少変更した程度では、元の著作物(これを「原著作物」といいます。)の複製となります。

 

また、著作権者は、複製権のほか、翻案*権も有しているため、全く別の著作物と認識できる程度に変えない限り、理論的には著作権法違反となるので注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

* 既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為

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経営者のためのコンプライアンス入門6

さて、前回、経営者としては、コンプライアンス違反が起きないよう注意するとともに、コンプライアンス違反が起きたときにそれをすぐに察知し、対応できる体制を整備することが重要、という話をしました。

 

そこで、今回からは、起こりがちなコンプライアンス違反例を3つほどご紹介したいと思います。

 

まず、一つ目は、「会社から支給されたボールペンを自宅に持ち帰って使うこと」です。

 

実は、これもコンプライアンス違反となりうる行為です。

 

ボールペンくらいならいいのではないか・・・と考える方もいるとは思います。

 

しかし、備品の無断持ち出しは、それがたとえボールペン1本、クリップ1個であったとしても、会社の持ち物を自分の物にしようとする行為ですから、刑法上、窃盗罪(刑法235条)または横領罪(刑法252条)となりえます。

 

ボールペン1本の値段は、100円やそこらですが、たとえ値段は安くても、犯罪にあたりうる行為であることは変わりありません。

 

また、いくら1本100円であったとしても、100円のボールペンを1000人に支給すれば、10万円です。

 

このようなことが積み重なっていくと・・・会社にとって看過しえない影響を及ぼす可能性も決して低くはないといえます。

 

さらにいえば、このような小さいコンプライアンス違反の陰に、大きなコンプライアンス違反が隠れていることも珍しくはありません。

大きなコンプライアンス違反から対処していく必要があるのは当然ですが、大きな違反の対処に目途が立ってきたら、このような細かい部分にもメスを入れていく必要があると思います。

(弁護士 國安耕太)

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経営者のためのコンプライアンス入門5

前回、無意識でコンプライアンス違反(違法な行為)をしていることもあるので、注意が必要である、ということをお話ししましたが、このような事象は会社資金の私的流用に限りません。

 

「会社から支給された携帯で、(家族に掛けるなど)私的な電話すること」

「会社から支給されたパソコンで、私的な調べ物をすること」

も、やってしまいがちな行動かもしれませんが、いずれもコンプライアンス違反となりうる行為です。

すなわち、このように会社から支給された携帯やパソコンは、業務で使用するという目的で支給されているものですから、これを私的に使用することは許されません。

 

他方で、休日や休憩中など勤務時間外であっても、従業員に会社貸与の携帯電話に出るよう求めている会社もあります。

このように、勤務時間外の電話対応を義務付けている場合、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務提供がされていると評価されてしまう可能性があります。

そして、労働契約上の役務提供がされていると評価されたときは、割増賃金(残業代)等の支払が必要となります。

このような場合、実際に割増賃金を支払っていることはないでしょうから、これもコンプライアンス違反となります。

 

無意識であったとしても、コンプライアンス違反は、会社の信用を貶めるリスクがある危険な事象です。

経営者としては、そのようなコンプライアンス違反が起きないよう注意するとともに、コンプライアンス違反が起きたときにそれをすぐに察知し、対応できる体制を整備することが重要です。

(弁護士 國安耕太)

 

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経営者のためのコンプライアンス入門4

ところで、コンプライアンス違反とは、メディアに大々的に報じられるようなスルガ銀行の不正融資事件やかんぽ生命保険の不適切販売事件のような大事件のみを指すものではありません。

実は従業員が、本人も気付かないうちに就業規則や規範に背く行為をしている等、無意識でコンプライアンス違反(違法な行為)を犯しているというケースもよくあります。

 

たとえば、「会社の経費で、自分の車にガソリンを入れた」ような場合に、これが、刑法上どのような犯罪になるかはわからなくても*、会社の財産を不当に奪う行為で、通常許されないものであることは容易に想像がつくと思います。

 

では、「会社のお金を私的に使用し、あとでその金額を補填すること」については、どうでしょうか。

 

これについては

「後日に補填する意思が行為時にあった」

としても、

「横領金員を補填する意思と資力があった」

としても、原則として、違法であり、横領罪(刑法252条)等が成立します。

 

ただし、

(ア)委任の趣旨にかんがみその取り立てた金銭の一時使用を許さないような特別の事情がないこと

(イ)遅滞なくこれを補填する意思があること

(ウ)何時にてもこれを補填し得うる十分な資力のあること

といった要件を満たす場合は、例外的に、違法とはならず、横領罪(刑法252条)等は成立しないとされています(東京高判昭和31年8月9日、判タ62号71頁、窃盗・詐欺被告事件)。

 

要するに、「会社のお金を私的に使用し、あとでその金額を補填すること」は、「外出している際に財布を落として、たまたま持っていた会社のお金を使用し、すぐにこれを補填した」といった特殊な場合以外は、違法な行為であるということです。

 

このように、無意識でコンプライアンス違反(違法な行為)をしていることもあるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*

権限や職務内容等によって、窃盗罪(刑法235条)、詐欺罪(刑法246条)、背任罪(247条)または横領罪(刑法252条)が成立する可能性があります。

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経営者のためのコンプライアンス入門3

さて、前回お伝えしたとおり、コンプライアンス体制を整備することは非常に重要ですが、コンプライアンス体制の整備をしていたとしても、それだけですべて解決するわけではありません。

 

上場会社をはじめ、多くの会社で、コンプライアンス体制の整備・強化を図るようになってきています。

ところが、そのような状況にもかかわらず、2018年に発覚したスルガ銀行の不正融資事件や、2019年に発覚したかんぽ生命保険の不適切販売事件など、不祥事が次々と発覚しています。

 

不祥事が起きた原因は、それぞれですが、不祥事事件に関する報告書等には、

 

「会社が利益追求主義に走るあまり、社員もまた目先の利益を追いかけ既得権益を守ることに躍起となり、それが体質化してしまった」

「組織の中に不正を監視し合い、指摘する風土がない」

「会社全体に倫理観の麻痺、社会常識の喪失がある」

「縦割組織におけるセクショナリズムやリスク意識の希薄さ」

 

といった原因分析が記載されています。

 

ただ、こういった問題を一気に解決する魔法の手段があるわけではありませんので、対処療法的、一過性の方策ではなく、常日頃から社員や役員に対しコンプライアンスの浸透を図ることが重要です。

 

行動規範集や社内規程など指針となる文書を時代に則した内容にして作り直したり、社員に対するコンプライアンス教育や、監査や内部通報のシステムの強化をしたりするなど対策を行うことを検討してください。

(弁護士 國安耕太)

 

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経営者のためのコンプライアンス入門2

前回、社会貢献、会社の信用やブランド力の維持・向上等、さまざまな要素を勘案して、自社がコンプライアンスとして遵守すべき範囲を定めていく必要がある、という話をしました。

 

確かに、どこまでを範囲に含めるのかは、各会社が決めるべき事柄です。

 

しかし、一方で、必ず範囲に含めて、適切な対応をしなければならないものもあります。

 

その1つは、コンプライアンス体制の整備です。

 

人は、必ずしも正しい行動ばかりをとることができるわけではありません。

 

「これくらいならいいだろう」

「今回だけだから仕方ない」

 

と誘惑に負け、過ちを犯してしまう従業員がいるかもしれません。

 

また、

 

「黙っていれば、誰も気づかないだろう」

「正直に報告したら、怒られるので嫌だな」

 

と処分を恐れ、ミスを隠してしまう従業員がいないとも限りません。

 

もちろん、これらは従業員だけでなく、社長をはじめとした役員であっても同様で、誰にでも起こり得ることです。

 

このように、

 

「現実には必ずしも全ての従業員・役員が常に合理的な行動をとることができるわけではない」

 

という前提で、そのような過ちやミスが起こることを防ぐ仕組み、過ちやミスが発生した場合にこれを早期に発見するための仕組みを構築し、それを適正に運用しておく必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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経営者のためのコンプライアンス入門1

さて、突然ですが、みなさんはコンプライアンスという言葉を聞いたことがありますか?

 

コンプライアンスを直訳すると「法令遵守(順守)」です。

これを、文字通り解釈すると、「法律や(行政)命令を遵守すること」つまり「法令違反をしないこと」となります。

 

では、法令に違反していなければ、何をしてもよいのでしょうか?

 

たしかに、法令に違反していなければ、違法な行為ではありません。

実際、法令に違反していなければ問題はないと、違法すれすれのグレーな行為をしている会社もあります。

 

しかし、現代社会は情報化社会です。

会社の悪い評判は、あっという間に広がります。

会社の規模・業種や問題の種類・内容によっては、「法令に違反していない」としても、それでは世間の理解を得ることができないことが多々あります。

特に、上場会社や会社ブランドを「うり」にする会社が、法の不備をつくような行為を繰り返し行なえば、世間の当該会社に対するイメージが悪化し、株価や会社ブランドを大きく棄損してしまう可能性があります。

 

そのため、現代における会社活動においては、単に「法令に違反していない」だけでなく、世間の理解を得ることが必要不可欠となっています。

 

この結果、いまではコンプライアンス=法令遵守において、

単に「法令に違反していない」

というだけでなく、

「社内規程・マニュアルの遵守や、社会貢献や会社倫理への取り組みを積極的におこない、社会的責任(CSR)を果たす」

ことまでが求められており、消費者も、これらの取組み姿勢に応じて会社を評価・選別するようになってきています。

 

ただ、「コンプライアンスとして遵守すべき範囲はここまでだ」という明確な指標はありません。

 

社会貢献、会社の信用やブランド力の維持・向上等、さまざまな要素を勘案して、自社が遵守すべき範囲を定めていく必要があるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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企業の倒産処理手続11(私的整理3)

前回に引き続き、準則型の私的整理についてです。

 

次に、中小企業再生支援協議会(以下「協議会」といいます。)による再生支援事業についてです。

 

協議会は、中小企業の事業再生に向けた取り組みを支援する「国の公的機関」(経済産業省委託事業)として47都道府県に設置されており、商工会議所等が受託・運営しています。

 

協議会による再生支援事業は、中小企業再生支援協議会事業実施基本要領というルールに基づき協議会の関与の下、行われます。

 

まず、協議会の統括責任者等と企業の代表者等との間で事業の再生に向けた取り組みに関する相談が行われ、統括責任者等が企業の財務状況等を把握した上で、課題解決に向けた助言、支援施策・支援機関の紹介を行います(第一次対応)。

また、企業が再生計画策定支援(第二次対応)を希望する場合は、統括責任者等は、事業価値があり関係者の支援により再生が可能であるか等の観点から、これを行うことが適当であるかを判断します。

 

再生計画策定支援を行うことが適当であると判断された場合、統括責任者は、企業の承諾を得たうえで、主要債権者に対し、企業の財務状況や再生可能性を説明し、主要債権者の意向を確認します。

主要債権者が反対しないときは、統括責任者は、再生計画の策定を支援することを決定し、企業の再生を支援する外部専門家で構成される個別支援チームを編成し、対象債権者(主要債権者や金融機関等の債権者)に、事業の再生への協力を要請します。

その後、個別支援チームが財務および事業のデューデリジェンスを実施し、企業は、個別支援チームの支援を受けて、再生計画案を作成します*。

 

再生計画案が作成された後、債権者会議を開催し、対象債権者に対し、再生計画案の説明等が行われ、対象債権者全員の同意が得られた場合には、再生計画が成立します。

再生計画成立後は、協議会のフォローアップを受けながら、再生計画に基づいて、事業を再生していくことになります。

(弁護士 國安耕太)

 

*

企業が、手続外において、会計士を選任して、自らデューデリジェンスを実施した上で、再生計画案を作成し、それを協議会が検証する方法(検証型)もあります。

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企業の倒産処理手続10(私的整理2)

前回は、準則型ではない私的整理の一般的な流れについて解説しましたが、今回は、準則型の私的整理についてです。

 

準則型の私的整理は、一定のルールに基づく私的整理です。準則型の私的整理は、企業の再建が目的であり、清算を目的としていません。

 

準則型の私的整理の代表的なものとしては、私的整理に関するガイドライン(以下「ガイドライン」といいます。)によるものや中小企業再生支援協議会による再生支援事業によるものなど*1があります。

 

まず、ガイドラインによる私的整理についてです。

 

ガイドラインによる私的整理は、会社更生法や民事再生法などの手続によらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務(主として金融債務)について猶予・減免などをすることにより、経営困難な状況にある企業の再建を図るものです。

 

ガイドラインでは、おおよそつぎの流れで手続きが進んでいきます。

 

(1)債務者である企業が、主要債権者(主にメインバンク)に対して、ガイドラインによる私的整理を申し出たうえで、主要債権者が、企業の作成した再建計画案の実行可能性などを検討し、私的整理を進めるのが相当か判断します。

 

(2)相当と判断したときは、主要債権者と企業が連名で、一時停止通知*2を発し、これにより手続きが開始されます。

 

(3)手続開始から2週間以内に、同じく企業と主要債権者の連名で、第1回債権者会議に対象債権者を招集し、企業の財務内容や再建計画案の内容等の説明、意見の交換が行われ、再建計画案の実行可能性や企業の財務内容を調査検証する専門家の必要性を検討し、必要な場合には選任が行われます。

 

(4)第2回債権者会議では、第1回債権者会議後の調査結果の説明、意見交換が行われた上で、再建計画案についての同意期限が定められ、期限までに対象債権者全員の同意が得られれば、再建計画が実行されます*3。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

他には、主に大規模な企業に関し、国から認証を受けた中立的な第三者機関が関与する「事業再生ADR」や、コロナなどの自然災害によって生活や事業が成り立たなくなった個人(個人事業主を含む)に関し、中立的な専門家が関与して私的整理を行う「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」、整理回収機構が関与する「企業再生スキーム」などもあります。

 

*2

一時停止通知は、再建計画が成立した場合に権利変更されることになる対象債権者(主に銀行と大口の取引先)に対して、個別的な権利行使等を控えるように求める通知のことです。

 

*3

全員の同意が得られない場合、通常は、法的整理に移行することになります。

 

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企業の倒産処理手続9(私的整理1)

これまでは、「法的整理」について、解説してきましたが、今回からは、「私的整理」について、解説していきます。

 

私的整理とは、裁判所が関与しない、債務者である企業と債権者などの利害関係人間の私的交渉によって行われる倒産処理手続です。

 

私的整理ガイドラインや事業再生ADRのように一定のルールに基づく準則型の私的整理もあれば、そのようなルールに基づかない私的整理もあります。

また、企業を解体する清算型の私的整理もあれば、企業を再生させる再建型の私的整理もあります。

 

さて、準則型でない私的整理については、特別なルールがあるわけではなく、関係者間の私的な交渉・合意によって行われるものであるため、その手続の進行、内容は千差万別です。

 

債権者が少数であれば、各債権者と個別に交渉して、私的整理が行われることも少なくありません。

他方で、複数のメインバンクや大口の取引先のある比較的規模の大きい中小企業では、つぎのような流れで私的整理が行われることもあるようです。

 

まず、債権者集会が招集されて、債務者である企業から倒産に至る経緯の報告、財務内容の説明、今後の方針の協議が行われます。

それに応じて、大口債権者を中心に、数名の債権者委員が選任され、債権者委員会が組織されます。

債権者委員会委員長が、管財人同様に企業の財産、帳簿等を占有、管理して財産状況の調査を行います。

その後、清算型の場合、総債権者の同意の下、財産を換価して、配当を実施し、私的整理を終了させます。

これに対し、再建型の場合、再建計画が策定され、債権者集会に討議を付して、大方の債権者の同意を得られたならば、その再建計画に基づいて、企業の再建が行われることになります*。

 

次回は、準則型の私的整理について解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*

総債権者の同意がある場合は特に問題となりませんが、一部の債権者が不同意の場合、当該債権者から破産申立がなされる可能性があります。

また、後に破産手続きに移行した場合、再建計画に基づいて弁済していたとしても、当該弁済が偏波弁済とされる可能性もあります。

 

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企業の倒産処理手続8(会社更生手続2)

企業の倒産処理手続8(会社更生手続2)

 

今回も引き続き、会社更生手続について、民事再生手続と比較しながら解説していきます。

 

民事再生手続と会社更生手続では、手続開始後の企業(債務者)の地位が異なります。

民事再生手続では、原則、企業は、財産の管理処分権および業務遂行権を失いません(民事再生法38条1項)。

これに対し、会社更生手続では、裁判所に選任された選任された管財人に財産の管理処分権が付与され、企業は財産の管理処分権を失います(会社更生法72条1項)。

 

また、これにあわせて、取締役の地位についても違いがあります。

民事再生手続では、原則としてその地位を失いませんが、会社更生手続では、更生計画認可の決定の時に原則退任することになります(会社更生法211条4項)。

 

最後に、株主の地位の違いについてです。

再生計画(民事再生手続)と更生計画(会社更生手続)において、株主の地位には大きな違いがあります。

再生計画において、株主の権利の変更は必ず記載しなければならない事項(必要的記載事項)ではなく、株主は議決権者でもないなど、株主は再生計画に取り込まれていません。

他方、更生計画において、株主の権利変更は必要的記載事項であり(会社更生法167条1項1号)、株主も原則として議決権者とされている(会社更生法166条1項)*など、株主は更生計画に取り込まれています。

これは、更生計画において募集株式の発行や組織変更など会社の組織再編に関する行為を行うことが予定されており、更生計画が株主に与える影響が大きいことから、株主に更生計画に関与する機会を与える趣旨とされています。

 

さて、これまで「法的整理」について解説してきましたが、次回からは、「私的整理」について解説していきます。

 

 

民事再生手続 会社更生手続
根拠法令 民事再生法 会社更生法
手続の対象 原則限定なし 株式会社
手続開始の原因 破産手続の原因となる事実の生ずるおそれなど
手続開始の申立人 企業(債務者) 企業(債務者)
債権者 一定の金額の債権者
株主は不可 一定の議決権を持つ株主
手続開始後の企業

(債務者)の地位

原則財産の管理処分権及び

業務遂行権を有する

財産の管理処分権を失う
取締役の地位 原則留任 原則退任
計画の名称 再生計画 更生計画
計画と株主 再生計画に取り込まれない 更生計画に取り込まれる

 

 

*

このように法律上は、原則、株主は議決権者であり、例外的に、債務超過の場合には、議決権を有しないとされています(会社更生法166条2項)。

ただし、会社更生手続の対象となる株式会社は、債務超過に陥っているケースが多く、株主が議決権を有しないケースも少なくないところです。

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企業の倒産処理手続7(会社更生手続1)

前回まで、「法的整理かつ再建型」の代表的な手続である民事再生手続について解説してきました。

今回は、民事再生手続と同じ「法的整理かつ再建型」の手続である会社更生手続について、民事再生手続と比較しつつ、解説します。

 

会社更生手続とは、倒産またはそれに近い状態にある株式会社について、裁判所に選任された管財人に財産の管理処分権を付与し、更生債権者や更生担保権者等の多数の同意により可決された更生計画に基づいて、事業の再生を図る手続です。

本年(令和3年)3月24日、電力の小売り事業を行ういわゆる「新電力」の株式会社F-Powerが、この会社更生法の適用を東京地方裁判所に申請し受理されたと話題になったことをご存知の方もいらっしゃると思います*。

 

さて、民事再生手続と会社更生手続は、立案された計画に従って、債権者に弁済を行い、企業を再生させる手続である点では共通しており、同じ「法的整理かつ再建型」に分類されます。

 

他方で、根拠法令、手続の対象等において、違いがあります。

 

まず、民事再生手続の根拠が、民事再生法であるのに対し、会社更生手続の根拠は、会社更生法にあり、また、民事再生手続では、個人のほか、どのような法人でも対象となるのに対し、会社更生手続では、株式会社のみが対象となるという相違点があります。

 

つぎに、手続の開始原因については、両手続の開始原因が、(1)破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときおよび(2)事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときであり、共通しています(民事再生法21条1項、会社更生法17条1項)。

 

これに対し、手続開始を申立てることができる者(申立人)の範囲は、異なっています。

民事再生手続では、債権者は、その債権額に関わりなく、手続開始を申立てることができます(民事再生法21条2項)。

一方、会社更生手続では、債権者のうち、当該株式会社の資本金の額の10分の1以上の金額の債権を有する者のみ、手続開始を申立てることができます。(会社更生法17条2項1号)。

また、民事再生手続では、株主が手続開始を申立てることはできませんが、会社更生手続では、総株主の議決権の10分の1以上を有する株主であれば、手続開始を申立てることができます(会社更生法17条2項2号)。

なお、企業(債務者)が、申立てることができることは共通しています。

 

次回も、引き続き、民事再生手続と会社更生手続の違いについて解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210325/k10012935141000.html

 

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企業の倒産処理手続6(民事再生手続2)

破産手続と民事再生手続では、手続開始後の企業(債務者)の地位も異なります。

破産手続では、裁判所によって必ず破産管財人が選任され、財産の管理処分権は破産管財人に委ねられ、企業は財産の管理処分権を失います。

他方、民事再生手続では、原則、企業は、財産の管理処分権および業務遂行権を失いません(民事再生法38条1項)。

 

これは、企業(実質的には企業の代表者等)の人脈や経験等を企業の再生に生かすためです。

ただし、企業には公平かつ誠実に再生手続を追行する義務が課されており(民事再生法38条2項)、また、裁判所の選任する監督委員によって監督されるため*1、必ずしも自由に財産を管理・処分できるというわけではありません。

また、企業の財産管理・処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の再生のために特に必要があると認められるときには、管財人が選任され(民事再生法64条1項)、財産の管理処分権等は管財人に委ねられることもあります(民事再生法66条)。

 

つぎに、債権者に対する弁済方法についても異なります。

破産手続では、破産企業の全ての財産を金銭に換えた上で、債権者に弁済または配当することになります。

これに対し、民事再生手続では、再生計画に基づいて、将来の収益から、債権者に弁済または配当が行われます。

 

さらに、破産手続では、破産手続が終了した場合、企業は消滅することになります。

他方、民事再生手続では、企業の再生を目的とした手続であることから、当然のことながら、通常は、手続が終了したとしても企業が消滅することはありません*2。

 

次回は、民事再生手続と同じ「法的整理かつ再建型」の手続である会社更生手続について、民事再生手続と比較しつつ、解説します。

(弁護士 國安耕太)

 

破産手続 民事再生手続
根拠法 破産法 民事再生法
手続開始の原因 債務超過・支払不能 破産手続の原因となる事実の生ずるおそれなど
手続開始の申立人 債権者・債務者
取締役個人も可 取締役個人は不可
手続開始後の企業(債務者)の地位 財産の管理処分権を失う 原則:財産の管理処分権及び業務遂行権を有する
弁済方法 全財産を金銭化して配当 再生計画に従い将来の収益から弁済
手続終了後 企業は消滅 企業は存続

 

*1

法律上、監督委員は必ず選任されるものではなく「必要があると認められるとき」に選任されることになっているが(民事再生法54条1項)、実務上、管財人が選任されない場合、監督委員が選任されることが多いです。

 

*2

ただし、再生計画が遂行される見込みがないことが明らかになったときは、手続の廃止決定がなされ、民事再生手続は終了します(民事再生法194条)。この場合、裁判所は、職権で破産手続開始決定をするのが通常です。

 

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企業の倒産処理手続5(民事再生手続1)

これまで「法的整理かつ清算型」の手続について解説してきました。

今回は「法的整理かつ再建型」の代表的な手続である民事再生手続について、破産手続と比較しつつ解説していきます。

 

民事再生手続とは、倒産またはそれに近い状態にある企業(債務者)が、原則、業務の遂行および財産の管理処分を継続しながら、再生計画を立案し、債権者の多数の同意により可決された再生計画に基づいて、事業や経済生活の再生を図る手続です。

 

民事再生手続と破産手続は、裁判所が継続的に関与する手続である点は共通しており、その点で、両手続は同じ「法的整理」に分類されます。

他方、破産手続では、企業の解体を目的としている「清算型」の手続であったのに対し、民事再生手続では、企業の再生を目的としている「再建型」の手続であることから、様々な違いがあります。

 

まず、当然のことですが、根拠法令が異なります。

破産手続の根拠が、破産法にあるのに対し、民事再生手続の根拠は、民事再生法にあります。

 

つぎに、手続きの開始原因にも違いがあります。

破産手続では、支払不能*1である場合か債務超過*2である場合に手続が開始されましたが、民事再生手続では、破産手続の開始原因となる支払不能または債務超過を生じる「おそれ」がある段階で、手続が開始されます(民事再生法21条1項前段)。

これは、企業の再生を図るには、支払不能や債務超過に至る前に、手続を開始し、手を打つ必要があるためです。

また、この企業の再生を図るという目的から、支払不能または債務超過のおそれがなくても、「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」にも手続きを開始することができます(民事再生法21条1項後段)。

 

なお、両手続ともに、債権者および債務者(企業自身)が手続開始を申立てることができます。

他方で、破産手続では、取締役個人が申立てをすることができるのに対し、民事再生手続では、できません。

 

次回も、引き続き、破産手続と民事再生手続の違いについて解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(破産法2条11項)

 

*2

その債務につき、その財産をもって完済することができない状態(破産法16条)

 

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企業の倒産処理手続4(特別清算手続2)

前回お伝えしたとおり、破産手続と特別清算手続は、同じ「法的整理かつ清算型」に分類されますが、根拠法令、手続の対象、手続開始の原因等において違いがあります。

 

まず、破産手続の根拠が、破産法にあるのに対し、特別清算手続の根拠は、会社法です。

 

つぎに、破産手続が、個人・法人問わず、どのような法人でも対象となるのに対し、特別清算手続は、原則として解散後清算中の株式会社のみが対象となります。

 

また、破産手続では、債務超過が手続の開始原因とされていますが、特別清算手続では債務超過の疑いがあれば、手続の開始原因と認められます(会社法510条)*1。

特別清算手続において、破産手続よりも緩やかに、手続開始の原因が認められているのは、既に解散し、清算手続に入っている株式会社を対象としていることに基づきます。

 

なお、両手続ともに、債権者は、手続開始を申立てることができます。

他方で、破産手続では、債務者(会社)自身*2や取締役個人が申立てをすることができるのに対し、特別清算手続では、できません(ただし、清算人や監査役、株主が申立てできます。会社法511条1項)。

 

さらに、手続開始後、破産手続では、裁判所によって必ず破産管財人が選任され、財産の管理処分権を委ねられた破産管財人が清算事務を行うことになります。

他方で、特別清算手続では、原則として従来からの清算人が清算事務を行うことになります(会社法523条)。

 

もちろん、清算人は、自由に清算事務を行えるものではなく、債権者及び清算株式会社、株主に対する公平かつ誠実に清算事務を行う義務が課されています。

 

最後に、弁済についてです。

破産手続は、破産企業の財産が金銭化され、法律の定めに従って、債権者に配当されるという厳格な手続です。

 

これに対して、特別清算手続では、債権者の多数決によって定められる協定(会社法563条以下)に基づいて弁済します。

原則として債権者を平等に取り扱う必要がありますが、不利益を受ける債権者の同意がある場合や債権者間の衡平を害さない内容であれば、ある程度自由に協定の内容を定めることもできるなど(会社法565条)、破産手続に比べると、柔軟な対応が可能です。

 

破産手続 特別清算手続
根拠法 破産法 会社法
手続の対象 原則限定なし 解散後清算中の株式会社等
手続開始の原因 債務超過・支払不能 債務超過の疑いなど
手続開始の申立人 債権者・債務者・取締役 債権者・清算人・監査役・株主
清算事務を行う者 破産管財人 清算人
弁済の手続 法律の定めに基づく配当 債権者の多数決による協定

さて、これまで「法的整理かつ清算型」の手続を解説してきましたが、次回は、「法的整理かつ再建型」の代表的な手続である民事再生手続について解説したいと思います。

(弁護士 國安耕太)

*1

清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合にも手続開始の原因が認められるが、他方、支払不能は、手続開始の原因とされていない(会社法510条1号)。

 

*2

代表取締役が、取締役会の決議を得て、株式会社の名前で申立てることになる。

 

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企業の倒産処理手続3(特別清算手続1)

前回は最も代表的な倒産処理手続である破産手続について、解説しました。
今回は破産手続と同じく「法的整理かつ清算型」の手続である特別清算手続について、破産手続と比較しつつ解説していきます。

 

特別清算手続とは、裁判所の後見的な監督の下、清算人が解散後清算中の株式会社等*を消滅させるための手続です。

会社を閉鎖しようと思った場合、会社を解散することになりますが、実は、これだけでは会社は消滅しません。
会社を消滅させるためには、清算(現務の結了、債権の取立ておよび債務の弁済、残余財産の分配。会社法481条)を完了しなければなりません。
このとき、会社の財産で、すべての債務の弁済ができる場合は、債務の弁済をし、残余財産を株主に分配して、清算手続は完了します(通常清算)。

 

これに対し、会社の財産で、すべての債務の弁済ができない場合であっても、裁判所の監督の下、債務の処理方法について債権者と集団的に和解するために作成された協定を、債権者が多数決で可決し、清算中の会社がこの協定を実行したときは、清算手続は完了します。
これが特別清算手続です。

あくまでも、協定が債権者の多数決で可決され、協定が実行される必要があるので、多数決で可決される見込みのない場合や協定が実行される見込みのない場合は、破産手続に移行することになります(会社法574条)。

 

破産手続と特別清算手続は、破産管財人または特別清算人が、裁判所の関与の下、会社の財産を処分して、これによって得た金銭を債権者に弁済する手続である点は共通しており、同じ「法的整理かつ清算型」に分類されます。

他方で、根拠法令、手続の対象、手続開始の原因等において違いがあります。

次回は、この違いについて、解説していきます。
(弁護士 國安耕太)

*
例えば、保険業法によって、相互会社にも特別清算手続の規定が準用され、相互会社も特別清算手続の対象となる(保険業法184条)。

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企業の倒産処理手続2

さて、前回、倒産処理手続きには、(1)裁判所が継続的に関与する倒産処理手続である法的整理と、(2)裁判所が関与しない倒産処理手続である私的整理があり、この法的整理および私的整理は、それぞれ(ア)企業を解体する清算型と、(イ)企業を再生させる再建型(再生型)に分かれる、ということをお伝えしました。
今回は、その中でも最も代表的な手続きである、破産手続(法的整理かつ清算型)について、解説していきます。
 
破産手続は、裁判所が破産手続の開始を決定し、破産管財人を選任し、その破産管財人が破産する企業(債務者)の財産を調査・管理・換価処分して、債権者に弁済または配当する手続です。
 
破産の申立て(裁判所に対し、破産手続の開始決定を出すよう申し立てること)は、破産しようとする企業のみならず、その債権者も行うことができます。
 
もちろん、申立てがされれば無条件に、手続が開始されるというものではなく、手続開始の実態的要件として、破産手続開始の原因(破産原因)が必要です。
 
個人の場合は、支払能力を欠く*ために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(支払不能。破産法2条11項)のみが破産原因となります(破産法15条)。
これに対し、企業等の法人(合名会社および合資会社を除く)においては、支払不能である場合のみならず、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態(債務超過)である場合も、破産原因となります(破産法16条)。
 
そして、裁判所が破産手続の開始を決定すると、財産の管理処分権は、破産管財人に移行し、破産する企業は、財産の管理処分権を失うことになり、破産管財人が、破産手続開始の決定時点の破産企業の全ての財産を金銭に換えた上で、法律の定めに従って、弁済または配当することになります。
 
配当が完了した場合、破産手続は終了し、企業も消滅することになります(破産手続の終結。破産法202条)。
配当する財産がないことが判明した場合は、その時点で破産手続は終了し、企業は消滅します(異時廃止。破産法217条)。
 なお、一定金額以下の資産しか保有していない個人が破産する場合、この破産管財人が選任されないで、手続が終了することもあります(同時廃止。破産法216条)。
 
以上のように、破産手続は、裁判所の関与の下、財産も債務もすべて清算され、当該企業は消滅することになるので、「法的整理かつ清算型」の手続となります。
 
次回は、同じ「法的整理かつ清算型」の手続である特別清算手続を、破産手続と比較しつつ、解説します。
(弁護士 國安耕太)
 
*
弁済能力の欠乏は、財産、信用あるいは労務による収入のいずれをとっても、債務を支払う能力がないことを意味し、たとえ、財産があっても、その換価が困難であれば、支払不能とされる。他方で、財産がなくとも、信用や収入にもとづく弁済能力があれば、支払不能とはされない。

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企業の倒産処理手続1

現在、新型コロナウイルス(以下「コロナ」といいます。)の影響で、全世界的に経済活動が低下しています。

各種補助金・助成金の給付や、借入の支払猶予等で、この危機を一時的に乗り越えることができた企業も、今後は事業の統廃合を進めていかなければならなくなっていく可能性が高いのではないかと思います。

ところで、「企業の倒産処理手続」と聞くと、事業継続が困難になったため、裁判所の関与の下、企業が取り潰される、そんなイメージを持たれるかもしれません。
たしかに、そのイメージ通りの手続(いわゆる破産手続)もあります。
しかし、倒産処理手続には、裁判所の関与の下、事業継続が困難になった企業を再生させる手続や、裁判所が関与しないで弁護士や大口債権者などの主導の下で行うタイプの手続など、さまざまな手続があります。

具体的に見ていきましょう。

まず、大きく分けると、
(1)裁判所が継続的に関与する倒産処理手続である法的整理
(2)裁判所が関与しない倒産処理手続である私的整理
の2つに分けることができます。

また、この私的整理および法的整理は、それぞれ
(ア)企業を解体する清算型
(イ)企業を再生させる再建型(再生型)
に分かれます。

さらに、(1)(ア)法的整理の清算型手続は、破産手続、特別清算手続の2種類に、(1)(イ)再建型手続も、民事再生手続、会社更生手続の2種類に分かれます。

(2)(イ)私的整理の再建型手続も、一定のルールに基づく準則型私的整理(事業再生ADRや私的整理ガイドラインなど)と準則型でない私的整理(以下「純粋な私的整理」といいます。)などに分けることができます。

         (ア)清算型   (イ)再建型(再生型)
(1)法的整理     破産       民事再生
            特別清算     会社更生
(2)私的整理     清算型私的整理  準則型私的整理
                     純粋な私的整理

以上の通り、倒産処理手続と一口に言っても、さまざまなタイプの手続があります。

そこで、次回以降、各手続の概要について、解説していきたいと思います。
(弁護士 國安耕太)

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インターネット上の名誉棄損7

さて、前回は(1)加害者に対して(ア)損害賠償をすることについて、解説しました。

今回は、(1)加害者に対し(イ)謝罪広告を求めることおよび(2)サイト管理者等に対し、削除請求を行うことについて、その概略をご紹介します。

(1)(ア)謝罪広告が認められるには
(a)故意または過失があること
(b)違法性が特に強い悪質な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)謝罪広告等が名誉回復のために、相当であること
という要件を満たす必要があります。
裁判では、(b)と(d)はまとめて検討されることが多く、(b)と(d)が認められるかは、名誉侵害の内容・程度、指摘された事実の公共性の程度、金銭賠償・書き込み削除の有無などを総合的にみて判断されます。

次に、(2)サイト管理者等に対する削除請求についてです。
管理者等に対する削除請求が認められるには、
(a)名誉権が現在も侵害されていること
(b)内容が事実でないか、公益目的でないことが明らかであること
(c)金銭による損害賠償では、損害の補填が不十分であること
という要件を満たす必要があります。

なお、削除請求をする場合、通常の訴訟だけでなく、より迅速な判断を得られる仮処分という方法が用いられることも多いです。
この場合は、(a)(b)(c)に加えて、さらに
(d)保全の必要性(名誉侵害の程度が大きいことや、書き込みを放置しておくと、さらに多くの人がアクセスして、名誉侵害の被害が拡大することなど)。
を裁判官に説明(疎明)する必要があります。

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インターネット上の名誉棄損6

さて、前回までご紹介した手続を経て、ようやく加害者を特定することができるわけですが、そこで終わりではありません。
むしろ、これまでの手続はあくまでも前哨戦で、ここからが本戦といってもいいくらいです。
加害者を特定できたとしても、被害回復がなされるわけではありませんから、被害回復の手続を別途取らなければならないからです。

 被害回復の手段としては、(1)加害者に対し、(ア)損害賠償や(イ)謝罪広告を求めること、また、(2)サイト管理者等に対し、書き込みの削除請求を行うことが考えられます。

 任意の交渉で応じてもらえればよいですが、応じてもらえなかった場合、訴訟を提起して解決することを検討することになります。

 まず、(1)加害者に対し、(ア)損害賠償請求をする場合を検討してみましょう。

 損害賠償請求が認められるためには、(ア)故意または過失があること(イ)違法な行為であること(ウ)特定個人の名誉権を侵害したこと(エ)損害が発生したことという要件を満たす必要があります。
 このうち、特に問題となるのが(イ)です。

 実は、大前提として、指摘した事実が真実であったとしても、原則として、名誉権の侵害となり、損害賠償義務を負うことになります。
 ただ、真実を指摘した場合に、常に損害賠償義務を負わなければならないとすると、憲法上の権利である表現の自由(21条)が著しく損なわれることになります。

 そこで、
(a)名誉棄損の対象が公共の利害に関することであること
(b)公益を図る目的があること
(c)指摘された事実が真実であることまたは(d)加害者が書き込みをするにあたり、相当な調査をし、指摘した事実が真実だと信じたこと
という要件を満たしている場合には、(イ)違法な行為とはいえない、として損害賠償義務を免れることできるとされています。
 
 そのため、実際の訴訟では、加害者の行為が(イ)違法な行為といえるか、について熾烈な争いとなることが多いです。

 なお、名誉権とは、人の品性、名誉、信用といった客観的な社会的評価のことをいい、「バカ」や「アホ」といった具体的な事実を伴わない侮辱的な書き込みでは、名誉権侵害は認められません。
 また、「特定個人」の名誉を侵害するものでなければなりませんから、たとえば、「日本の飲食店では、諸外国に比べて、コロナ対策が不十分である」といった抽象的な書き込みは、名誉権侵害として認められないということになります。

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インターネット上の名誉棄損5

さて、前回は(β)IPアドレス等のISPを特定するための情報を得る手段である1段階目の手続について説明しました。

今回は、(β)の手続きにより得たIPアドレス等を利用し、(γ)ISPを特定したうえで、ISPから加害者情報を得る2段階目の手続について解説していきます。

手続としては、(1)加害者の利用したISPの特定+ログの保存、(2)ISPに対し、加害者の契約者情報の開示を行います。

まず、(1)加害者の利用したISPの特定についてですが、これはインターネットで「IPアドレス ISP 特定」などと検索すれば、IPアドレスを入力しただけでISPを特定してくれるサイトが見つかりますので、それを利用します。

なお、ISPを特定した段階で行っておくべきことがあります。
それは、ログの保存です。
ログの保存方法としては、裁判外でISPにログ保存の要求をする方法と裁判上の手続による方法がありますが、要求をすればログを保存してくれるISPが多いので、裁判上の手続までは必要ないことが多いです。
 
 ログの保存後、(2)ISPに対し、加害者の契約者情報の開示を求めていくことになります。
 こちらも、裁判外による方法と裁判上の手続による方法があります。
 
 裁判外による方法として、テレコムサービス協会の書式を利用する手段があります。
ただ、契約者情報は、顧客の個人情報であるため、裁判外で開示される可能性は低く、あまり効果的な方法ではありません。
 
 そこで、主たる手段は、裁判上の手続による方法になります。
 この場合、第1段階の場合と違い、アクセスログが短期で抹消されるといった緊急性を基礎づける事情がないため、仮処分ではなく、通常の訴訟になります。
 
 この訴訟では、発信者情報開示請求権があることを証明する必要があります。
発信者情報開示請求権が認められるためには、前回も説明しましたが、(ア)特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたこと、(イ)特定電気通信役務提供者に対する請求であること、(ウ)権利侵害の明白性、(エ)開示を受けるべき正当な理由が必要です。

 以上の2段階の手続によって、インターネットに書き込みをした加害者を特定することができます。
 加害者を特定できれば、損害賠償や謝罪広告等の命令に関する訴訟を提起することができるようになります。

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インターネット上の名誉棄損4

さて、前回、書き込みをした加害者を特定するには、2つの段階を踏む必要がある、という話をしました。

今回は、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得るという1段階目の手続について、解説していきたいと思います*1。

コンテンツプロバイダからISPを特定するための情報であるIPアドレス等を入手する方法としては、裁判外による方法と裁判上の手続による方法という2つの手段があります。

まず、裁判外による方法については、テレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」という書式にしたがって、印鑑証明書や身分証の写しと共に、コンテンツプロバイダに対し郵送するのが一般的です。

つぎに、裁判上の手続としては、仮処分の申立てを用いるのが一般的です。
 この手続では、(1)発信者情報開示請求権があること、および(2)IPアドレス等を早急に開示してもらう必要性を裁判官に説明(疎明)する必要があります。

(1)発信者情報開示請求権があることという要件が認められるには、
・特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたこと
・特定電気通信役務提供者に対する請求であること
・権利侵害の明白性
・開示を受けるべき正当な理由
が必要です(プロバイダ責任制限法4条1項*2)。

(2)IPアドレス等を早急に開示してもらう必要性については、加害者を特定するには、アクセスログという通信履歴が必要ですが、一般に3か月ほどで削除されてしまうので、削除までの期間が経過していなければ、緊急性があるとされることがほとんどです。
 
以上を経て、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得ます。
そして、ここで得たIPアドレス等を利用し、(γ)ISPを特定したうえで、ISPから加害者情報を得るという2段階目の手続を行っていくことになります。
次回は、この2段階目の手続について解説していきます。

*1 現在、発信者情報開示請求について、手続きの迅速化に向けて改正案が作成されていると報道されています(産経新聞2021年1月9日「【SNSの罠】ネット被害、裁判迅速化へ 地方の負担軽減は不透明」等)。
そのため、手続が大幅に変更となる可能性があります。
*3 プロバイダ責任制限法第4条第1項
「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損 害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。」

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インターネット上の名誉棄損3

さて、今回は、インターネット上の名誉棄損の加害者に対し、各種請求等を行いたいにもかかわらず、加害者が誰かわからない、という場合に、どのような手続きを取れば、加害者を特定できるのでしょうか。

まず、最初に、インターネットを利用する一般的な仕組みを簡単に説明します。
(a)加害者の利用したパソコン・スマホ
 ↓   
(b)インターネットの接続窓口であるISP*1(NTTドコモなど)のサーバーに接続
 ↓
(c)SNSや動画サイトを提供するコンテンツプロバイダ*2のサーバーに接続、という流れになります。

そこで、加害者を特定するためには、この流れをさかのぼっていく必要がある、ということになります。

まず、(α)書き込みを見て、書き込みがされたSNSや動画サイトのコンテンツプロバイダがどれかを確認します。

つぎに、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者が利用したISPを特定するために必要な情報であるIPアドレス等の開示を求めます。

そして、明らかになったIPアドレス等を基に、(γ)加害者の利用したISPを特定した上で、そのISPに加害者が誰かであるかの情報の開示を求めていきます。

以上のように、加害者を明らかにするには、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得た上で、(γ)加害者の利用していたISPから情報を得て加害者を明らかにする、という2つの段階を踏む必要があります。

次回は、この1段階目の手続である、(β)コンテンツプロバイダに対し、加害者の利用していたIPアドレス等の開示を求め、その情報を得るための具体的な方法や要件について、詳しく見ていきます。

*1 ISPは、インターネットサービスプロバイダの略称であり、「インターネット通信に接続するサービスを提供している主体」のことです。一般にプロバイダーと呼ばれます。代表的な企業としてはNTTドコモやソフトバンクなどがあります。

*2 コンテンツプロバイダとは、「コンテンツを提供する事業者」のことであり、SNSや動画サイト、ショッピングサイトなどが、代表例です。

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インターネット上の名誉棄損2

さて、前回、インターネット上の書き込みにより被害が起きてしまった場合、会社は、(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請や(イ)削除請求を行う、(2)加害者本人に対し、(ウ)書き込みの削除要求や(エ)被害の回復を求めるためα損害賠償・β謝罪広告等を強制する命令に関する訴訟を提起することが考えられる、という話をしました。

では、具体的に、どのような要件を満たせば、上記各手段を取ることができるのでしょうか。

まず、(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請する場合は、サイト上のオンラインフォームを利用する方法やプロバイダ責任制限法*1のガイドラインの書式に従った送信防止措置依頼の方法*2があります。
いずれの方法も、書き込みが掲載されている場所、掲載されている情報、侵害された権利、なぜ自分の権利が侵害されたと言えるかといったことを、サイト管理者等に説明する必要があります。

つぎに、裁判上の手続きである(イ)削除請求を行う場合には  
(a)名誉権(人の品性、名誉、信用といった客観的な社会的評価のこと)が現在も侵害されていること
(b)内容が事実でないか公益目的でないことが明白であること
(c)金銭による損害賠償では、損害の補填が不十分であること
が必要になります*3。

(2)加害者本人に対し、(ウ)書き込みの削除要求する場合も、やはり、任意の交渉ですので、定まった要件というものはありませんが、書き込みが違法であることや名誉権を侵害していることなどを説明し、説得することになります。

さらに、被害回復の(エ)α損害賠償に関する訴訟を提起する場合は、
(a)故意または過失があること
(b)違法な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)損害が発生したこと
が必要になります。

同じく、β謝罪広告等を強制する命令に関する訴訟を提起する場合は、
(a)故意または過失があること
(b)違法性が特に強い悪質な行為であること
(c)特定個人の名誉権を侵害したこと
(d)謝罪広告等が名誉回復のために、相当であること
が必要になります。

このような各要件を満たせば、形式的には、加害者本人に対して、削除要求や各種訴訟を提起することができる、ということになります。
ただ、実際の事案では、匿名で書き込み等がなされており、そもそも誰が加害者かわからない、ということが往々にしてあります。

そこで、次回以降は、加害者が誰かわからない場合に、どのような手続きを取れば加害者を特定できるのか、について解説していきます。

*1 正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
*2 プロバイダ責任制限法のガイドラインでは、どのような送信防止措置(書き込みの削除)の依頼があった場合に、送信防止措置を行うべきかが解説されており、送信防止措置請求に関する書式が公開されています。
  このガイドラインに従わない場合、サイト管理者等は、損害賠償責任を負う可能性が出てきますので、サイトのフォームを利用するときよりも、事実上の強制力が高い手段といえます。
*3 なお、削除請求の要件についての見解は別れており、上記の要件でなくとも、削除請求が認められる場合もありえます。

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インターネット上の名誉棄損1

2021年1月8日、再び非常事態宣言が発令されることになりました。本年も、新型コロナウィルス(以下「コロナ」)の問題は長引きそうです。

このような状況の中、心配されるのは、クラスター(コロナの感染者集団)の発生の有無やコロナ対策の実施などについてインターネットで虚偽の情報を書き込まれることです。
例えば、とあるレストランで、クラスターが発生したと虚偽の情報がインターネット上に書き込まれた場合、そのレストランの社会からの信頼や評価が低下し、来店客や売上の減少という損害が発生してしまう可能性があります。
また被害者がもう少し広い例としては、ある市町村で、居酒屋のコロナ対策が十分にされていないと虚偽の情報がインターネット上に書き込まれ、その市町村のとある居酒屋が被害を受けるという場合も考えられます。

では、上記のような被害が起こってしまった場合、会社はどのような対応ができるのでしょうか。

まず、考えられるのは、

(1)情報が書き込まれたサイトの管理者等に対し、(ア)削除要請や(イ)削除請求を行う

ということです。

つぎに、(2)加害者本人に対し、

(ウ)書き込みの削除要求
(エ)被害の回復を求めるため
㋐損害賠償
㋑謝罪広告等を強制する命令
に関する訴訟を提起すること

等が考えられます。

もっとも、あらゆる書き込みに対して、上記の手段を行使出来るわけではありません。
次回は、どのような要件を満たせば、上記各手段を取ることができるのか、検討していきたいと思います。

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消費者契約法5

消費者の利益を不当に害するものとして無効となる条項の続きです。
 
(エ)消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項(法9条)
キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える賠償額を定めた条項や、遅延損害金について年14.6%を超える割合を定めた条項は、無効となります。
たとえば、飲食店の予約で、「1か月前のキャンセルは、料金の80%」としたり、「遅延損害金は年40%」としたりする条項です。
 
(オ)消費者の利益を一方的に害する条項(法10条)
法律の規定と比べて、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は、無効となります。
消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項であるか否かは、客観的に判断できる場合が多いと思います。
他方で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するといえるかどうかは、多分に解釈を含んでおり、一律に判断することが難しいところです。
実際、これまでも各種裁判例で、この部分の解釈が争われています。
 
ただ、消費者契約法が、そもそも消費者を保護するという目的で作られている法律であることにかんがみれば、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項は、その合理性をきちんと説明できなければ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であると判断されてしまう危険があるといえます。
 
そのため、消費者の権利を制限または消費者の義務を加重する条項を定める場合には、その合理性について慎重に検討する必要がるといえます。
(弁護士 國安耕太)
 

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消費者契約法4

先週まで、契約の取消事由を見てきましたが、消費者契約法の主たる効果としては、もう一つ(2)不当な契約条項が無効となる、というものがあります。
 
つぎのような内容の契約条項は、消費者の利益を不当に害するものとして無効となります。
 
(ア)事業者の損害賠償の責任を免除する条項(法8条)
損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意または重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項は無効となります。
たとえば、「いかなる場合であっても商品の利用によって生じた損害は賠償義務を負わない」といった条項です。
また、事業者が責任の有無や限度を自ら決定する条項も無効となります。
たとえば、「当社が責任を認めた場合に限り、損害を賠償します」といった条項です。
 
(イ)消費者の解除権を放棄させる条項(法8条の2)
事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項は無効となります。
たとえば、「契約締結後は、いかなる理由があってもキャンセルできない」といった条項です。
なお、ここで禁止されているのは、あくまでも事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権の放棄であるため、「債務不履行がない限りキャンセルできない」といった条項は有効です。
また、事業者が消費者の解除権の有無を自ら決定する条項も無効となります。
たとえば、「当社が責任を認めた場合に限り、契約を解除できます」といった条項です。
 
(ウ)事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項(8条の3)
事業者に対し後見開始の審判等を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項は無効となります。
たとえば、「後見開始の審判を受けた場合は、契約を解除できる」といった条項です。
 
モバゲーの規約に関する裁判では、「会員として不適切」などとディー・エヌ・エーが「合理的に判断」した場合は会員資格を取り消すことができ、これによって会員に損害が生じても「一切損害を賠償しない」と定めていたことが、消費者契約法8条に反すると判断されています。
(弁護士 國安耕太)

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消費者契約法3

先週ご紹介したもののほかに、つぎのような取消事由もあります。
 
(エ)次に掲げる行為をしたことにより困惑して契約してしまった消費者は、契約を取り消すことができます(法4条3項)。
・不退去(1号)
消費者が退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しない。
・退去妨害(2号)
消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去させない。
・不安をあおる告知(3号)
社会生活上の経験が乏しいことから、就職等願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げる。
・行為の感情の不当な利用(4号)
社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に対して好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いているものと消費者が誤信していることを知りながら、契約をしなければ関係が破たんすると告げる。
・判断能力の低下の不当な利用(5号)
判断力が著しく低下していることから、生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、契約が必要と告げる。
・霊感等による知見の利用(6号)
霊感等の特別な能力により、そのままでは重大な不利益が生じることを示して、その不安をあおり、契約が必要と告げる。
・契約前の履行(7号)
契約締結前に、契約を締結に基づき負うこととなる義務を履行し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。
 
(オ)過量契約(法4条5項)
通常の分量を著しく超えることを知りながら、契約の勧誘をすること。
1人暮らしの方に、何十枚も羽毛布団を購入させるような場合です。
 
まっとうな取引を行っており、一般的な感覚を持っていれば、このような行為をすることはないと思いますが、取消しの理由として使われる可能性があるので、注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)
 

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消費者契約法2

先週もお伝えしましたが、消費者契約法の主たる効果は、(1)契約を後から取り消すことができることと、(2)不当な契約条項が無効となる、という点にあります。
 
では、具体的に、どのような場合に、(1)契約を後から取り消されてしまうのでしょうか。
 
(ア)不実告知(法4条1項1号)
重要事項について事実と異なることを告げること。
当該告げられた内容が事実であるとの誤認した消費者は、契約を取り消すことができます。
ダイエット効果があるとうたって商品を販売したにもかかわらず、そのような効果がないような場合です。
 
(イ)断定的判断の提供(法4条1項2号)
将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。
当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認した消費者は、契約を取り消すことができます。
将来値上がりするかどうか不確実な不動産を、確実に値上がりすると説明して販売したような場合です。
 
(ウ)不利益事実の不告知(法4条2項)
消費者の利益となる事実を告げながら、重要事項について不利益となる事実を故意または重大な過失により告げなかったこと。
当該事実が存在しないとの誤認をした消費者は、契約を取り消すことができます。
隣に高層ビルが建ち、眺望が悪化するということを知りながら、眺望が良いと説明してマンションを販売したような場合です。
 
特に重要な条項は上記3つです。
「ちょっと誇張して話すこともセールストークのテクニックだ」などと考えていると手痛いしっぺ返しを受ける可能性があるので、注意が必要です。
(弁護士 國安耕太)

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消費者契約法1

『「モバゲー」の利用規約は不当との二審判決』『「モバゲー規約「明確性欠く」 高裁、DeNAの控訴棄却」『東京高裁がモバゲー規約を不明確と判断、規約の有効性について』

先日(2020年11月5日)、このようなニュースがニュースサイトに流れていました。

埼玉県の消費者団体が、モバゲーの利用規約の一部が不当だとして、モバゲーの運営会社である株式会社ディー・エヌ・エーを訴えていましたが、一審のさいたま地裁に続いて、二審の東京高裁も、利用規約の不当性を認める判決を出したようです。

この東京高裁の判決自体の評釈は、後ほど行うとして、この裁判での争点は、モバゲーの利用規約の一部が、消費者契約法に基づき、無効となるか、という点です。

消費者契約法は、不当な勧誘をされて契約してしまった場合に当該契約を取り消す権利や、不当な契約条項が無効となること等を規定している法律です。

消費者と事業者との間には、持っている情報の質・量や交渉力に格差があります。
そこで、消費者が不当に不利益を被ることがないよう、消費者の利益保護の観点から、このような法律が制定されています。

上記のとおり、消費者契約法の主たる効果は、(1)契約を後から取り消すことができることと、(2)不当な契約条項が無効となる、という点にあります。

たとえ、当事者間でその契約内容でよいとの合意があったとしても、後から取り消したり、契約条項の無効を主張できることになります。

せっかく商品やサービスを販売したにもかかわらず、あとからその契約の効力を失わせることができということですから、これは非常に強力な効果です。

BtoCサービスを提供している会社は、消費者契約法を押さえておくことが必須といえます。

次回以降、消費者契約法がどのような規制をしているのか、その概要をご紹介していきます。
(弁護士 國安耕太)

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感染症と労務管理10

さて、先週、会社は、できる限り従業員の解雇ではなく、合意退職となるよう努力すべきという話をしました。

 

しかし、どう説得しても労働者が退職してくれない、ということもあり得ると思います。

 

この場合、やむを得ず、労働者を解雇できないか、検討することになります。

ただ、前回お伝えしたように、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすことから、制限されています。

そのため、解雇が無効となるような解雇権の濫用とならないように、慎重に検討・判断しなければなりません。

 

特に業績の悪化を理由に従業員の解雇をする場合、いわゆる整理解雇の場合について、過去の裁判例がその判断基準を示しています。

具体的には、多くの裁判例で、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つの要件を検討し、当該解雇の有効性が判断されています。

 

そこで、コロナの影響で業績が悪化した場合であっても、この4要件を満たしているか、慎重に検討し、解雇の有効性を検討する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理9

最近、従業員に退職してもらいたい、との相談が増えてきました。

なぜこのような相談が増えてきているのか、正確なところはわかりません。

 

ただ、コロナの影響で業績が悪化したものの、各種助成金や補助金、融資で急場を凌いでいた会社が、緊急事態宣言の解除後も業績が十分回復していないといった状況もあるのかもしれません。

 

さて、上記のように、会社が従業員に退職してもらいたいと考えた場合、いきなり当該従業員を解雇してしまうということがありますが、このような対応は、正直、考えものです。

 

たしかに、法律上、解雇は自由に出来るのが原則です。

労働基準法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としており、解雇そのものを禁止するものではありません。

 

しかし、判例上、解雇権濫用法理が確立されており、これをうけて労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、事実上解雇を制限しています。

 

それゆえ、たとえコロナの影響で業績が悪化したとしても、それだけでは、解雇が無効となってしまう可能性があるのです。

 

会社は、このことを肝に銘じて、解雇ではなく、労働者が話し合いによって退職する合意退職となるよう努力すべきといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理8

先週、テレワーク等の場合、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することで対応することになるのが原則となるという話をしました。

 

これに対し、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働に関するみなし労働時間制(労働基準法38条の2の1項*)が適用されることになります。

 

では、どのような場合に、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるといえるのでしょうか。

 

この点について、厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、つぎの内容が記載されています。

 

(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること)

(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

以上の2つの要件を満たしていなければ、テレワーク等において、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難とはいえない。

 

そのため、テレワーク等を実施した際に、事業場外労働に関するみなし労働時間制の適用を受けようとする場合は、上記要件を満たすように実施する必要がありますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

* 労働基準法38条の2の1項

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

 

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感染症と労務管理7

さて、今般の新型コロナの流行にかんがみて、テレワーク・リモートワーク・在宅勤務(以下、総称して「テレワーク等」といいます。)を導入したり、導入を検討したりする企業が増えています。

 

では、テレワーク等を実施するにあたり、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

まず、テレワーク等を実施するため、許認可等の特別な法的手続きが求められるわけではありません。

 

ただ、従業員の職場環境や労働条件に関係するため、就業規則を整備しておくことが望ましいといえます。

また、会社は、労働契約を締結する際、従業員に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければならないとされていますので(労働基準法第15条1項*1、労働基準法施行規則5条1項1号の3*2)、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示する必要があります。

 

つぎに、テレワーク等を行う場合においても、会社は、その労働者の労働時間について適正に把握する責務を有しています(労働安全衛生法66条の8の3*3)。

 

テレワーク等の場合、会社(上司)が、直接視認して確認することは難しいと思いますので、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することで対応するのが原則になると思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働契約法15条1項

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

*2 労働基準法施行規則5条1項1号の3

使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

 

*3 労働安全衛生法66条の8の3

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施する ため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

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感染症と労務管理6

さて、先週、会社が新型コロナに関する感染防止策を実施していたにもかかわらず、従業員が新型コロナに罹患してしまった場合、労災保険給付の対象となりうるという話をしました。

 

では、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償と労災保険給付はどのような関係にあるのでしょうか。

 

この点、労基法84条*1には、労災保険給付がなされた場合、使用者は補償義務を負わないことが明記されています。

 

では、なぜ、使用者である会社の賠償義務が問題となるのでしょうか。

 

実は、これは労災保険の性質に基づきます。

すなわち、労災保険は、あくまでも「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行」うものにすぎません*2。

 

そのため、労災保険給付は、必ずしも損害を完全に賠償するものではないのです。

 

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法84条

1 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

2 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由 については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

 

*2 労働者災害補償保険法1条

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

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感染症と労務管理5

さて、先週、会社が、新型コロナに関する感染防止策を怠っていた場合、安全配慮義務違反を問われる可能性がある、という話をしました。

 

では、会社が新型コロナに関する感染防止策を実施していたにもかかわらず、従業員が新型コロナに罹患してしまった場合、当該従業員は何の補償も受けられないのでしょうか。

 

まず、考えられるのは、労災保険に基づく補償です。

 

新型コロナに罹患したことが労災保険給付の対象となるのかについて厚生労働省は、「業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。」としています(新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5労災補償 問1)。

 

では、つぎに、どのような場合であれば「業務に起因して感染したものである」とされるのでしょうか。

 

この点に関し、令和2年2月3日に出された厚生労働省の基補発0203第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労災補償業務の留意点について」との通達では、

(1)業務または通勤における感染機会や感染経路が明確に特定され、

(2)感染から発症までの潜伏期間や症状等に医学的な矛盾がなく、

(3)業務以外の感染源や感染機会が認められない場合

に該当するか否か等について個別の事案ごとに判断するとされています。

 

そのうえで、「接客などの対人業務において、新型コロナウイルスの感染者等と濃厚接触し、業務以外に感染者等との接触や感染機会が認められず発症」したような場合は、「業務上と考えられる」旨記載されています。

 

このことからすれば、上記(1)ないし(3)の要件を満たしているような場合には、「業務に起因して感染したものである」と認められる可能性が高いといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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感染症と労務管理4

さて、先週まで、新型コロナ等の感染症に基づく休業に関し、休業手当の支払義務が生じるか否かについて検討してきました。

 

では、休業せずに業務に従事していた従業員が新型コロナに罹患した場合、会社は当該従業員に対し、損害賠償義務を負うのでしょうか。

 

まず、会社(使用者)は、従業員に対し、安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)*。

 

安全配慮義務とは、会社が負っている従業員が安全で健康に働くことが出来るように配慮しなければならないという義務のことで、労働(雇用)契約書や就業規則に明示されていなかったとしても、労働契約に伴って会社が当然に負うべき義務とされています。

 

会社は、この安全配慮義務に基づき、従業員が勤務中や通勤中に新型コロナに罹患しないよう必要な措置を取らなければならない、ということになります。

 

具体的には、新型コロナが接触や飛沫で感染することは広く知られた事実であることから、事業所内を消毒したり、従業員に対しマスク着用・手洗いを呼び掛けたりするなど、新型コロナに罹患しないよう感染防止策を実施する義務があると考えられます。

そのため、これらの感染防止策を怠っていた場合、会社は、安全配慮義務違反を問われる可能性があるといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*労働契約法5条

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

 

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感染症と労務管理3

では、つぎに、緊急事態宣言後に、会社が休業することを決定した場合はどうでしょうか。

 

まず、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく協力要請(法24条9項)の一環として、休業を要請され、営業を自粛し、労働者を休業させた場合です。

 

協力要請の一環としての休業要請は、強制力を伴うものではありませんが、法律に基づく要請であることからすれば、休業の原因が事業の外部から発生したということができます。

 

それゆえ、協力要請の一環としての休業要請をされた場合は、休業手当の支払義務が生じないことが多いと思います。

 

ただし、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないためには、事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができないといえなくてはなりません。

 

そのため、テレワーク等で業務を行うことができるような場合は、休業手当の支払義務が生じる可能性があります。

 

この点について、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」でも、

「・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか

・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」

との観点から、事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができないといえるかを検討することとされています。

 

以上のことを踏まえ、休業手当の支払義務が生じるか否か、慎重に判断しましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理2

さて、前回の続きですが、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、不可抗力による休業といえるのでしょうか。

 

まず、社内感染防止等の観点から、会社が自主的な判断で休業することを決定した場合はどうでしょうか。

 

新型コロナの発生自体は、会社の事業の外部から発生したものと言うことができると思います。

しかし、新型コロナが発生したとしても、休業するかどうかの判断は、基本的には各会社に委ねられているといえます。

そうすると、休業の原因が事業の外部から発生したとすることは難しいように思います。

 

このことからすれば、使用者の自主的な判断で休業することを決定した場合、会社には休業手当の支払義務が生じるものと考えられます。

 

この点について、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」でも、

『自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。』

とされています。

(弁護士 國安耕太)

 

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感染症と労務管理1

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染症を理由に緊急事態宣言が発令され、5月25日に解除されるまで、多くの企業でリモートワークが導入され、また、従業員の休業措置が採られました。

 

さて、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、従業員に対し、休業手当を支払わなければならないのでしょうか。

 

労働基準法は、休業手当について、つぎの通り定めています。

 

*労働基準法26条

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

 

そこで、問題は、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるかどうかです。

 

この点について、厚生労働省が公表している「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」*では、

「不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。」

「ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。」

とされています(4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)の問1)。

 

このため、新型コロナを理由に事業所を閉鎖した場合に、この不可抗力による休業といえるのかを検討する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収16

さて、どんなに取引先の信用調査を行い、 しっかりした契約書も作成し、万全の体勢で取引が開始できたとしても、それだけでは十分ではありません。

 

その後の与信管理をおろそかにすると、結果的に債権回収に支障が生じてしまうからです。

 

では、与信管理とは、いったいどうすればよいのでしょうか。

 

まず重要なのは、取引先に対し、現在いくらの債権・債務があるかを正確に把握することです。

たとえば、取引基本契約に基づいて、継続的に取引するような場合は、少なくとも注文書・注文請書といった書面を取り交わし、どのような債権・債務が生じているのか、きちんと証拠に残すようにして、現在いくらの債権・債務があるかを正確に把握します。

これをしておかないと、取引先に未払が発生しているのかどうかもわからないからです。

 

つぎに、入金があったらただちに請求額と入金額をつき合わせます。

おおよそ一致しているかどうかではなく、1円単位で一致しているかどうかを確認しましょう。

合理的な理由がないにもかかわらず、請求したのに支払わないというのは、取引先が資金的な問題を抱えているという、もっとも顕著な徴候だからです。

 

また、支払金額の値下げや支払期限(納期)の延期を求めてくるといったことも、危険な兆候の一つです。

 

与信管理は、このような様々な危険な兆候を素早くキャッチするため、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けることに尽きるといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収15

つぎに不動産の登記事項証明書です。

 

不動産の登記事項証明書には、権利部(甲区)という記載があります。

 

「権利部(甲区)」には当該不動産の所有権に関する事項が記録されています。

たとえば、甲区欄に取引先ではなく、第三者の名前が記載されている場合には、取引先は不動産の賃貸を受けており、不動産資産を保有していないことを把握することができます。

 

また、甲区欄に取引先の名前があったとしても、国税や他の債権者の差押えが登記されているようなときは、税金や他の債権者に対し、支払いができないほどに資金繰りに行き詰まっていることが分かります。

 

したがって、そのような会社と取引をしても支払を受けられる見込みは薄いですから、その会社との取引は断念すべきといえます。

同様に、代表取締役の自宅に差押えがなされているような場合も、取引先として信用できるか、かなり疑問があるといえます。

 

このほかにも、不動産の登記事項証明書から読み取ることができる情報はいくつもあります。

取引開始前には、不動産の登記事項証明書を取得し、分析しておくことを強くお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

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債権回収14

このほか、法人や不動産の登記事項証明書を読み解くことで、貴重な情報を得られる可能性もあります。

 

まず、法人の登記事項証明書であれば、商号変更の履歴を見るだけで、重要な情報が得られることもあります。

 

たとえば、商号が頻繁に変更されているような会社は、会社が乗っ取られたり、支配権を巡って争いがあったりする可能性があるので、要注意です。

過去ご相談いただいた案件でも、現在の商号をインターネットで検索しても何も出てこなかったが、過去の商号で検索を掛けてみたら、詐欺会社として数多くの書き込みが見付かった、ということもありました。

 

また、本店の記載からも重要な情報が得られることがあります。

たとえば、本店が頻繁に移転している場合には、その理由について説明を求めた方がよいでしょう。

 

もちろん、世の中には引越マニアと呼ばれる人もいますので、頻繁に移転しているだけで危ない会社ということが確定するわけではありません。

また、会社が急激な成長を続けて短期間に引っ越しを繰り返しているというような特別な事情があることもあります。

しかし、一般的には、引越には相当の労力と手間がかかりますので、特別な事情がないにもかかわらず、頻繁に移転しているのは、移転しなければならないようなマイナスな事情が隠されている可能性があります。

特に商号変更と共に本店移転を繰り返している場合は、かなり「あやしい」といえます。

 

このほかにも、法人の登記事項証明書から読み取ることができる情報はいくつもあります。

取引開始前には、相手方の会社の登記事項証明書を取得し、分析しておくことを強くお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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債権回収13

つぎに、調査会社の調査報告書です。

 

代表的な信用調査会社として、株式会社帝国データバンクや、株式会社東京商工リサーチ等があります。

 

調査報告書には様々な情報が記載されています。

従業員・設備概要、系列・沿革、業績、取引先、銀行取引・資金現況、現況と見通し、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表情報、株主資本等変動計算書、財務諸表分析表、推定キャッシュフロー計算書・分析表等を取得することができます。

また、企業が健全な経営活動を行っているか、支払能力があるか、安全な取引ができるか等について100点満点で評価がされていることがあります。

 

そのため、決算書が手に入らなくても、ある程度の情報を得ることができます。

 

決算書を取得できなかったような場合や第三者機関による客観的な評価を自社による分析に併せて参考にしたいような場合には、取得してみるものよいかもしれません。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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債権回収12

さて、前回まで、取引先の調査の基本は、ヒアリング・現場調査と決算書であるということをお伝えしてきました。

 

しかし、これらは取引先の協力があって初めてできることです。

 

では、取引先の協力が得られない限り、取引先の調査はできないのでしょうか。

まず思い付くのは、インターネットを活用することです。

 

インターネットを活用することで、その取引先が公式に発表している情報を取得することができます。

取引先の公式ホームページをみれば、取扱商品やサービスの説明の他、会社概要、会社の沿革等を知ることができます。

 

また、取引先やその代表者の評判や口コミを得ることも出来ます。

検索エンジンで、取引先やその代表者名を検索ワードとして検索することで、取引先やその代表者に対する顧客による口コミや評判が掲載されたブログや掲示板が発見できることがあります。

これにより、取引先やその代表者が、どのような姿勢で仕事をしているのか、信頼に値するのか等を知ることができる可能性があります。

 

特に最近では、会社代表者が、フェイスブックやツイッター等を利用していることも多く、会社代表者の人となりや事業に対する取り組み方、交友関係等を確認できる場合があります。

 

インターネットの情報は、玉石混交ですが、社会からどのような評価を得ているのか、参考になります。

良く調べてみましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

※第11回企業法務セミナーを開催します。

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【お問い合わせ先】ノースブルー総合法律事務所 担当:三原 TEL:03-3269-8700

【キャンセルについて】参加申込み後のキャンセルは5月13日 (水) までにご連絡下さい。以降はキャンセル料をいただきます。

 

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債権回収11

つぎは、決算書です。

 

決算書からは、多くの情報を読み取ることができます。

 

しかし、株式会社は、会社法上、貸借対照表(大会社は貸借対照表及び損益計算書)を公告する義務が定められているにもかかわらず、中小企業の場合、履行されていない場合が多いです。

そのため、決算書を入手するには、相手方から直接交付を受ける必要があるのが通常です。

決算書の交付を嫌がる取引先もあるかもしれませんが、債権回収リスクを少しでも下げるためには、ぜひとも入手したい書類です。

 

決算書で特に重要なのは、貸借対照表と損益計算書です。

 

貸借対照表とは、決算日における会社の財政状態を表したもので、会社債権者の立場から見れば、会社がどこから資金を調達し、どこへ運用しているかという会社資金の調達と運用の状態を表すものです。

 

損益計算書は、会社の努力を費用・成果を収益としてそれぞれ表示し、結果的に獲得した儲けを利益として表した報告書をいいます。

 

これらの資料を分析することで、短期的な支払能力の有無や財務面の安定性を判断したり、取扱商品の商品力や営業効率を分析することができます。

 

もちろん、決算書上、問題が無いからといって、それだけで安心してしまうのは危険です。

世の中、粉飾決算を行っている会社も珍しくありません。

 

やはり、決算書等紙の上の情報のみを信用するのではなく、きちんとヒアリング・現場調査を行い、生の取引相手を見るようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

※第11回企業法務セミナーを開催します。

【内容】

・たったこれだけ!信用できる取引先の見極め方

・連鎖倒産リスクを抑えるためにすべき取引先との付き合い方

・慌てないために覚えておこう!未回収発生時に真っ先にすべきこと

【日時】2020年5月20日(水) 18:30~21:00 (18:15開場) ※配布資料がございますので、途中からのご参加も可能です。

【場所】東京都新宿区西新宿1-3-13 Zenken PlazaⅡ7Fレアルセミナールーム

【対象】経営者、総務・法務担当者

【定員】先着15名様(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせて頂きます。受付にてお名刺2枚をご提出下さい。)

【参加費】8,000円(税込)  ※当日会場にてお支払いください。領収書もご用意可能ですので当日お問い合わせください。

【お問い合わせ先】ノースブルー総合法律事務所 担当:三原 TEL:03-3269-8700

【キャンセルについて】参加申込み後のキャンセルは5月13日 (水) までにご連絡下さい。以降はキャンセル料をいただきます。

 

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債権回収10

では、実際に、新規の顧客と取引を開始する場合、どのようなチェックをすれば良いのでしょうか。

 

調査の基本となるのは、ヒアリング・現場調査と決算書です。

 

ヒアリング・現場調査は、思っている以上に重要です。

取引を開始する際、取引先を訪問しないで、電話やメールでのやりとりだけで、取引を開始してしまう場合が多々見受けられますが、それはとても危険なことです。

 

取引先のオフィスを訪問し、取引先の代表者や取引担当者から話を聞く等、「直接」見聞きすることで得られる情報は意外に多くまた参考になります。

たとえば、詐欺会社は、(1)すぐに逃げられるように必要最小限の備品しか置いていない、逆に信用度を増そうとして(2)必要以上に華美な調度品を揃えている等の特徴があると言われています。

 

また、把握した事項を端的に確認するため、取引先調査票を導入するということも考えられるところです。

取引先調査票には、会社名、所在地、代表者、担当者、従業員数、創立年月、主な仕入先等の記載を求めることが多いです。

 

債権回収を見据えて、可能な限り、様々な情報を入手しておくことが重要です。

(弁護士 國安耕太)

 

※第11回企業法務セミナーを開催します。

【内容】

・たったこれだけ!信用できる取引先の見極め方

・連鎖倒産リスクを抑えるためにすべき取引先との付き合い方

・慌てないために覚えておこう!未回収発生時に真っ先にすべきこと

【日時】2020年5月20日(水) 18:30~21:00 (18:15開場) ※配布資料がございますので、途中からのご参加も可能です。

【場所】東京都新宿区西新宿1-3-13 Zenken PlazaⅡ7Fレアルセミナールーム

【対象】経営者、総務・法務担当者

【定員】先着15名様(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせて頂きます。受付にてお名刺2枚をご提出下さい。)

【参加費】8,000円(税込)  ※当日会場にてお支払いください。領収書もご用意可能ですので当日お問い合わせください。

【お問い合わせ先】ノースブルー総合法律事務所 担当:三原 TEL:03-3269-8700

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債権回収9

さて、前回まで、「裁判となった場合に備えて、きちんとした証拠(契約書)を準備しておくこと」が重要であるという話をしました。

 

しかし、取引である以上、どんなに事前に調査していたとしても、取引先とのトラブルが発生してしまうことはありえますし、取引先の財務状況が悪化してしまうことはあり得ます。

 

この場合、どんなに立派な契約書があったとしても、契約書があるだけでは回収できない、という可能性があります。

 

そこで、そのような事態に備えて、担保(物的、人的)をあらかじめ取っておくことが重要です。

担保があれば、取引先が支払えなくなったとしても、売掛金等の債権を回収できる可能性が出てきます。

 

なお、担保の優先順位としては、物⇒代表者以外⇒代表者、です。

 

不動産に対する抵当権のような物的担保は、会社が破産してしまってもその効力を主張することができます。

しかし、会社代表者を保証人した場合、中小企業の場合、会社が支払不能となったときには、代表者も支払不能になっていることが多く、会社とともに代表者が破産することになってしまったら、担保としての効力が亡くなってしまうからです。

 

そのため、会社の代表者を保証人とすることは、担保としては最低限の効果しかなく、あまり効果的なものではないのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収8

さて、前回、「裁判となった場合に備えて、きちんとした証拠(契約書)を準備しておくこと」が重要であるという話をしました。

 

では、どのような点に注意して、契約書を作成すればよいのでしょうか。

 

重要なのは、いつ、どこで、誰が、誰に対し、何を、どうする義務を負うのかを明記することです。

 

たとえば、売買契約であれば、

・誰が、誰に対し、何を、売るのか。

・誰が、誰に対し、代金を、支払うのか。

・いつまでに、何を、どのように、売るor支払うのか。

といったことを明記しておかなければなりません。

 

当事者が直接売り買いをするのに「誰が、誰に対し、売るか」なんて争いにならないのではないか、と思うかもしれません。

 

しかし、一時期話題になった地面師事件では、不動産の所有者とは別の偽者の所有者が登場しましたし、そのような極端に事例ではないにしても、誰が契約当事者なのかによって法的効果が異なってくることもあります。

 

また、「何を売るか」についても、市場に流通している製品であれば、当事者間に齟齬は生じにくいですから、細かく特定しなくても、「Aという製品」というだけで構わないかもしれません。

しかし、ある特定の物、たとえば、中古車の売買といった場合は、詳細かつ具体的に特定しおかないと、「約束と違う!」といった紛争が生じかねません。

 

このように、契約書を作成するにあたっては、その契約の性質や目的物に応じて、いつ、どこで、誰が、誰に対し、何を、どうする義務を負うのかが明記されているかをきちんとチェックする必要があります。

(弁護士 國安耕太)

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債権回収7

さて、前回、「取引を始める前に、できるだけ相手方の情報を手に入れて、分析をしておくこと」が重要であるという話をしました。

 

しかし、取引である以上、どんなに事前に調査していたとしても、取引先とのトラブルが発生してしまうことはありえます。

 

トラブルが発生した場合、当事者間での話し合いで決着がつけば良いですが、決着がつかないときは、最終的には、裁判で決着をつけることになります。

 

裁判となった場合、自分の権利を実現するためには、自己の主張の根拠となる事実を証拠によって証明する必要があります。

 

繰り返しますが、裁判所は、正しい人(会社)を勝たせる機関ではありません。

あくまでも、証拠に基づいて、どちらの主張が確からしいか、を判断する機関にすぎません。

如何に自分が正しくても、証拠がなければ、裁判所は勝たせてくれないのです。

 

それゆえ、裁判となった場合に備えて、きちんとした証拠を準備しておくことが重要です。

 

そして、証拠としてもっとも効力が高いものの一つが、相手方の署名捺印のある契約書です。

 

みなさんの会社は、きちんとした契約書を用意していますか?

また、相手方から提示された契約書をきちんと分析して、内容を精査していますか?

 

このことが将来的に、債権回収の可否の分水嶺となるかもしれません。

 

自社の契約書をいま一度見直してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収6

さて、前回、債権回収におけるリスクの管理として重要なことは、

 

「取引開始前に、信用できる取引先か入念にチェックすること」、すなわち

 

「将来にわたって相手方のことを信用できるかをきちんと検討すること」、それも

「抽象的な理由ではなく、具体的な根拠に基づいて、信用できるかをきちんと判断するようにすること」

である、ということを述べました。

 

では、どうやって、具体的な根拠に基づいて、将来にわたって相手方のことを信用できるか、を検討すればよいのでしょうか。

 

まず、ぜひ最初にやっていただきたいことは、取引を始める前に、できるだけ相手方の情報を手に入れて、分析をしておく、ということです。

 

出来れば直近2年分の決算書の写しをもらって、貸借対照表から資金の調達と運用の状態を分析し、損益計算書から、費用・成果・利益の状況を分析したいところです。

 

もっとも、そうはいっても、相手方が自社よりも大きい会社の場合、なかなか決算書の写しが欲しいということが難しい場合もあると思います。

 

そのような場合は、調査会社の調査報告書を活用するということも考えられます。

 

いずれにしても、会社間の事業としての取引である以上、相手方の財務状況を客観的な資料に基づいてきちんと分析しておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収5

さて、前回まで、①正しい人(会社)が勝つ、②裁判所は、正しい人(会社)の味方である、③裁判に勝てば、未払債権を回収できるというのが幻想である、ということを説明してきました。

 

人(会社)を信用するのは大事なことですが、自分の会社は、自分で守らなければなりません。

会社経営者は、この現実を直視する必要があります。

 

では、どのように債権回収におけるリスクの管理をしていけばいいのでしょうか。

 

まず、なんといっても重要なことは「取引開始前に、信用できる取引先か入念にチェックすること」です。

 

「そんなこと、当たり前じゃないか」

「当然、信用できるかできないかチェックしているよ」

 

と思うかもしれません。

 

しかし、みなさんにぜひ覚えておいていただきたいのは、世の中で起きている紛争の多くは、

「信用して取引を始めた相手方とのトラブルである」

ということです。

 

これはある意味、当たり前です。

誰しも、信用できない相手となんて、最初から取引をしませんから、トラブルにもなりません。

 

では、なぜ、「信用して取引を始めたにもかかわらず、その信用が裏切られる事態が生じてしまう」のでしょうか。

 

ここで重要なのは、「いまここで相手方のことを信用できるか」ではなく、「将来にわたって相手方のことを信用できるか」をきちんと検討したかどうかです。

 

 

「もともと知っていて、信用できるから」

「信頼できる人からの紹介だから」

 

という抽象的な理由ではなく、具体的な根拠に基づいて、信用できるかをきちんと判断するようにしましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収4

前回、経営者が陥ってしまっている3つの落とし穴の2つ目を紹介しました。

今回は、3つ目の落とし穴を紹介したいと思います。

 

裁判を起こして、仮に勝訴したとしても、それだけで債権の回収ができるわけではありません。

 

実は、裁判所がしてくれるのは、「被告は原告に対し、金30万円を支払え」という文字を紙(判決書)に書いて渡してくれることだけです。

 

これで相手方が支払をしてくれればいいですが、世の中、そう簡単に事は運びません。

金30万円を支払え、との判決を出されても、支払わない人などいくらでもいるのです。

そして、たとえ裁判に勝ったとしても、裁判所が債権を回収してきて、お金を渡してくれることはありません。

 

そのため、勝訴したとしても、実際に回収するためには、自分で、強制執行という別の裁判をしなければならないのです。

そして、この強制執行をするためには、その対象となる財産を特定しなければなりません。

しかし、裁判所が、被告の財産がここにあるよ、と教えてくれるということもありません。

 

あくまでも、自分たちで、被告の財産の所在を調査しておかなければならないのです。

 

それゆえ、③裁判に勝てば、未払債権を回収できるというのも大きな幻想にすぎないのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収3

前回、経営者が陥ってしまっている3つの落とし穴の1つを紹介しました。

今回は、2つ目の落とし穴を紹介したいと思います。

 

たとえば、Aさんと、商品を30万円で売却する約束をし、商品を引き渡したとします。

Aさんが、支払期日までに支払ってくれない場合、請求書を送ったり、内容証明郵便を送ってみたりして、それでも支払ってくれない場合は、最終的には、諦めるか裁判をする、ということになります。

 

では、裁判所は、この請求を必ず認めてくれるのでしょうか。

30万円の商品を引き渡している以上、認めてくれるのでしょうか。

 

結論としては、証拠があれば、請求を認めてくれますが、証拠がなければ、認めてくれません。

 

裁判所は、正しい側を勝たせる機関ではありません。

また、真実を探求してくれる機関でもありません。

あくまでも、当事者の提出した証拠に基づいて、どちらの主張が確からしいか、を判断する機関にすぎません。

 

当事者の提出した証拠のみで、請求が認められるかどうかが決まります。

そこに情けはありません。

いくら真実30万円の商品を引き渡していたとしても、裁判所が自ら、その真実を探求し、真実を明らかにしてくれる、なんてことは、絶対にないのです。

 

それゆえ、②裁判所は、正しい人(会社)の味方であるという幻想は捨てなければなりません。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収2

会社にとって、債権回収は至上命題であり、そのリスク管理は必要不可欠です。

 

ところが、現実の会社経営にあたって、債権回収のリスク管理は、あまりにも疎かにされていないでしょうか。

 

どの会社も、自社の利益を上げることに必死です。

そのために、販売戦略を立てたり、多額のコンサルタントフィーを払ったりして、その実現に邁進するのです。

 

ところが、債権回収については、驚くほど無計画であることが少なくありません。

 

わたしは、それは、経営者がつぎの3つの落とし穴に陥ってしまっているからではないかと考えています。

 

①正しい人(会社)が勝つ。

②裁判所は、正しい人(会社)の味方である。

③裁判に勝てば、未払債権を回収できる。

 

意識的か無意識的かはわかりませんが、このような認識をもっていないでしょうか。

 

みなさん、一般論としては、必ずしも正しい人が勝つとは限らない、ということは理解していても、なぜか自分のことになると、この理解がすっぽり抜け落ちてしまうことが珍しくありません。

 

たとえば、Aさんと、商品を30万円で売却する約束をし、商品を引き渡したとします。

しかし、Aさんが本当に30万円を支払ってくれるとは限りません。

 

当然、30万円を払ってもらう権利はあります。

ですが、Aさんに支払う気がなければ、いくらAさんに支払ってくれと言っても、支払ってもらうことはできません。

また、Aさんがそもそも30万円を持っていなければ、支払ってもらうことは不可能です。

 

権利があるにもかかわらず、支払ってもらえないというのは理不尽ですが、それが現実なのです。

 

それゆえ、①正しい人(会社)が勝つという幻想にとらわれないようにしなければなりません。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収1

さて、新年最初のトピックスとして、債権回収について話をしていきたいと思います。

 

会社を維持し発展させるためには、リスクを適切にコントロールして、企業の維持や発展に大きな影響が生じることのないようにしなければなりません。

 

そのためには、自社の取引や自社の体制のどこにリスクがあるのか、分析し、必要に応じて対処することが重要です。

特に、債権回収におけるリスクの管理は非常に重要です。

 

なぜ、債権回収におけるリスクの管理が必要なのでしょうか。

 

それは、債権回収が出来ないことは、会社にとって最悪の事態だからです。

 

なぜ、最悪の事態なのでしょうか。

 

それは、債権回収が出来ないことは、会社のキャッシュが不足する、要するに会社に現預金がないことに繋がり、黒字倒産という事態にもなりかねません。

 

たとえば、事務所の賃料や従業員の給与等諸々の支払いとして、月々400万円の支払をしなければならない会社があるとします。

この会社が、売掛金として5000万円の債権を持っていれば、損益計算書上は黒字です。

しかし、売掛金の支払期限が1年後で、この売掛金以外に売上がないとすれば、その間、会社には1円の現金も入ってこないことになります。

 

いくら1年後に5000万円が入ってくるとしても、これでは賃料の不払いで事務所から追い出されてしまいますし、従業員もいなくなってしまうでしょう。

 

これは極端な例ですが、このように、会社にとって、債権管理・債権回収は至上命題であり、そのリスク管理は必要不可欠といえるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正10

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に関し、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化および③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備という改正もされています。

 

まず、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化については、事業主は、パートタイム・有期雇用労働者および派遣労働者を雇い入れる際に雇用管理上の措置の内容(賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換の措置等)に関する説明をする義務を負うことになりました(パートタイム・有期雇用労働法14条1項、労働者派遣法31条の2 2項・3項)。

また、パートタイム・有期雇用労働者および派遣労働者は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができることとされました(パートタイム・有期雇用労働法14条2項、労働者派遣法31条の2 4項)。

さらに、説明を求めた労働者に対する場合の不利益取扱いが禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法14条3項、労働者派遣法31条の2 5項)。

 

つぎに、③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備については、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の均等・均衡待遇等に関する個別労使紛争については、各都道府県労働局の紛争調整委員会に対し、無料かつ非公開の調停を申し立てることができるようになりました。

なお、調停委員は、弁護士や大学教授、家庭裁判所家事調停委員、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当し、高い専門性、公平性、中立性のもとで紛争の解決を図るとされています。

 

以上のとおり、パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法についても重要な改正がなされていますので、自社に影響がないか、一度確認してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正9

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に関する主な改正点のうち、もっとも重要なのは、①不合理な待遇差を解消するための規定の整備に関する改正です。

 

まず、パートタイム・有期雇用労働法については、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者に関し、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをすることが禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法9条)。

また、同一企業内において、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます(パートタイム・有期雇用労働法8条)。

 

一般的に前者を「均等待遇規定」と呼び、㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、差別的取扱いが禁止されます。

同様に、後者を「均衡待遇規定」と呼び、㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲、㋒その他の事情の内容を考慮して不合理な待遇差が禁止されます。

 

どのような待遇差が不合理、差別的取扱いにあたるかは、ガイドラインに示されていますが*、押さえておきたい重要なポイントは、つぎの点です。

 

(1)㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、同様の待遇としなければならない。

(2)㋐職務内容、㋑職務内容・配置の変更範囲が異なっていても、その待遇差が不合理であってはならない。

 

このため、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、待遇差を設ける場合は、慎重に判断する必要があります。

 

実際、過去の裁判では、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間で、㋐職務内容および㋑職務内容・配置の変更範囲が異なっていたとしても、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に必要な費用が異なるわけではない通勤手当や、安全運転および事故防止の必要性は同じ無事故手当といった手当を、通常の労働者にのみ支給する規定は、均衡待遇規定に反する不合理なものと判断されていますので、㋐職務内容および㋑職務内容・配置の変更範囲余程の差異がない限り、不合理とされる可能性が高いでしょう。

 

なお、労働者派遣法については、パートタイム・有期雇用労働法と同様の派遣先均等・均衡方式と、一定の要件を満たす労使協定によって待遇を定める労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することが義務化されています。

(弁護士 國安耕太)

 

*  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

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近時の労働法改正8

来年(2020年)4月1日(中小企業については、2021年4月1日)から、パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が施行されます。

これまでパートタイム労働者に関しては、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が制定されていましたが、有期雇用労働者もこの法律の対象に含めることとされました。

 

本改正の主な目的は、同一企業内における正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることとされています。

 

同様の目的で、労働者派遣法に関しても、改正が行われています。

 

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に関する主な改正点は、つぎの3点です。

①不合理な待遇差を解消するための規定の整備

②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

次回以降、具体的に解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

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最低賃金が改訂されました

本年(2019年)8月9日、厚生労働省から最低賃金の改訂額が公表されました。

 

東京都および神奈川県で全国初の時給1000円超え、全国加重平均では時給901円となりました。

東京都は1013円、神奈川県は1011円、埼玉県926円、千葉県923円となり、いずれも本日(2019年10月1日)から適用されます。

 

都内を歩いていると、いまだに時給1000円~という求人を見かけますが、本日以降、「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」(4条1項)と定める最低賃金法違反となりますので、自社の応募要項を見直しておきましょう。

 

さて、とうとう1000円を超えた最低賃金ですが、10年前の2009年は、東京都は791円、神奈川県は789円、埼玉県735円、千葉県728円でした。

この10年で約25%も上がったことになります。

 

なお、最低賃金に関する規律を定めている最低賃金法ですが、法律自体には具体的な最低賃金の定めはありません。

法律上は、

・厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない(10条1項)

と定められており、実際には、各都道府県の労働局に設置されている地方最低賃金審議会が、最低賃金を定めています。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正7

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法の施行とともに、改正労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)が施行されています。

主な改正は、勤務間インターバル制度の導入促進です。

 

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みをいいます。

本改正では、この仕組みを導入することを事業主の努力義務としました(労働時間等設定改善法2条1項*1)。

この仕組みを事業主の努力義務とすることで、働く方々の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

 

また、この改正にあわせて、労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針*2)も改訂されています。

そして、労働時間等見直しガイドラインにおいては、勤務間インターバルを設定するに際しては、「労働者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるよう配慮すること。」とされていますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働時間等設定改善法2条1項

事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 

*2 労働時間等見直しガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html

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近時の労働法改正6

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法の施行とともに、改正労働安全衛生法が施行されています。

主な改正は、労働時間把握の義務化と産業医、産業保健機能の強化です。

 

まず、労働時間把握の義務化については、これまで割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定しているのみでした。

また、裁量労働制が適用される人などは、この通達の対象外とされていました。

本改正では、健康管理の観点から、事業者に対し、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての労働者の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握するよう法律で義務づけています(66条の8の3)。

 

つぎに、産業医、産業保健機能の強化については、これまでは産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対して勧告することができること、事業者は、産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務があることが規定されていました。

本改正では、事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないこととされ、事業者は、産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければならないこととされました(労働安全衛生法13条4項、13条6項等)。

このほか、産業医の独立性・中立性の強化が図られています。

(弁護士 國安耕太)

 

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近時の労働法改正5

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

これまで主に中小企業に対する影響が大きいと考えられる改正について解説してきましたが、このほか、フレックスタイム制の拡充および高度プロフェッショナル制度の創設といった改正もされています。

 

まず、フレックスタイム制の拡充については、次のような改正がされました。

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるため、子育てや介護等の理由で、毎日固定の就業時間で勤務することが難しい労働者にとって働きやすい職場を提供することができ、ひいては離職率の低下につながるなど、使い方によっては労働者・使用者双方にメリットのある制度です。

ただ、これまでは清算期間の上限が「1か月」までとされていたため、労働者は1か月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1か月を超えた調整をすることはできませんでした。

本改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能となりました(労働基準法33条の3 1項2号*1)。

 

つぎに、高度プロフェッショナル制度の創設については、次のような改正がされました。

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者に関し、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないという制度です。

本改正では、①年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を付与すること、②選択的措置の実施、を義務化しました(労働基準法41条の2 1項4号・5号*2)。

 

このように本改正では、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方ができるよう様々な改正がなされています。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法33条の3 1項

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

二清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

 

*2 労働基準法41条の2 1項4号・5号

四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。

五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。

イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。

ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。

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近時の労働法改正4

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

主な改正のうち、時間外労働の上限規制・月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げとともに、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、年次有給休暇の取得義務付けです。

 

本改正で、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して年次有給休暇を与えなければならないことになりました(労働基準法39条7項*1)。

 

ただし、労働者が自らの希望で5日以上年次有給休暇を取得する場合や、計画的付与で5日以上年次有給休暇を付与した場合は、この規定は適用されません(労働基準法39条8項*2)。

 

年次有給休暇は、入社日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日間付与されます(労働基準法39条1項)。

また、継続勤務年数が増加するごとに、付与される年次有給休暇も増加していきます(労働基準法39条2項)。

このように、年次有給休暇は、全労働者一律に付与されるものではないため、労働者ごとにきちんと管理しておくことが必要となりますので、ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法39条7項

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

 

*2 労働基準法39条8項

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

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近時の労働法改正3

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

主な改正のうち、時間外労働の上限規制とともに、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げです。

 

労働基準法上、使用者が労働者に1日8時間・1週40時間を超える労働をさせた場合、25%の割増賃金を支払う義務があります*1。

たとえば、時給1500円の労働者が10時間労働した場合、通常の給与に加えて、1500円×1.25×2時間=3750円を支払わなければなりません。

 

また、同様に、1か月60時間を超える労働をさせた場合は、50%の割増賃金を支払う義務があるとされていますが、これまでは大企業にのみこの条項が適用され、中小企業に関してはこの条項の適用が猶予されていました。

 

しかし、本改正では、この猶予が撤廃され、2023年以降、中小企業も大企業同様50%の割増賃金を支払う義務を負うことになりました。

 

このため、2023年以降、労働者に60時間を超える時間外労働をさせる場合は注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 労働基準法37条1項

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

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近時の労働法改正2

本年(2019年)4月1日から、改正労働基準法が施行されています。

 

主な改正のうち、特に中小企業*1に対する影響が大きいと考えられるものの一つが、時間外労働の上限規制です。

 

本改正では、

(1)時間外労働の上限が、原則として、月45時間・年360時間。

(2)臨時的な特別の事情がある場合、労使が合意をすれば、これを超えることができる。

(3)ただし、その場合でも、(ア)月45時間を超えることができるのは年6か月まで、(イ)時間外労働の合計が年720時間以内、(ウ)時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満かつ2~6か月の平均が80時間以内。

とされました(労働基準法36条4項、5項*2)。

 

労働基準法上、労働時間は1日8時間、週40時間までと定められています。

しかし、厚生労働省の通達により、36協定を結べば月45時間、年間360時間までの法定労働時間外の労働が認められており、また、「特別条項付き36協定 」を締結すれば、年6回に限り上限なく時間外労働を行わせることができるようになっていました。

 

本改正は、法律で時間外労働の上限を設け、長時間労働の抑制を図ろうとしています。

 

なお、この上限規制に関しては、自動車運転の業務、建設事業、医師等の職種に関しては、2024年まで適用が猶予されています。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

中小企業かどうかは、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者の数から判断されます。

たとえば、小売業であれば、資本金の額または出資の総額が5000万円以下で、常時使用する労働者の数が50人以下の場合、中小企業となります。

 

*2 労働基準法36条

4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。

5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。

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近時の労働法改正1

昨年、労働基準法、労働安全衛生法および労働時間等設定改善法が改正され、本年(2019年)4月1日から施行されています。

 

各法律の主な改正点は、次のとおりです。

 

①労働基準法

・時間外労働の上限規制

・月60時間を超える部分の割増賃金率の引き上げ

・年次有給休暇の取得義務付け

・フレックスタイム制の拡充

・高度プロフェッショナル制度の創設

 

②労働安全衛生法

・労働時間把握義務

・産業医、産業保健機能の強化

 

③労働時間等設定改善法

・勤務間インターバル制度の導入促進

 

これらの改正のうち、特に中小企業に対する影響が大きいと考えられるのが、労働基準法に関する改正です。

時間外労働の上限規制については、2020年4月まで、割増賃金率の引き上げについては、2023年4月までその適用が猶予されていますが、ぎりぎりになって慌てることがないよう、いまのうちにきちんと対応しておきましょう。

 

次回以降、具体的に解説をしていきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*8月10日~8月18日まで夏季休業となります。

そのため、次回配信は、8月20日です。

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債権回収と民事執行法改正5

前回、金融機関等に対し、どのような相手方の財産の開示を求めることができるようになった、ということをお伝えしました。

 

このほかにも、重要な改正がなされています。

 

それが、「国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化」と「国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し」です。

 

国内の子の引渡しの強制執行については、現行法において明文がありませんでした。

そこで、今回の改正では、裁判の実効性を確保しつつ、子の利益に配慮する等の観点から、規律を明確化しています。

具体的には、

(1)裁判所が、執行官に子の引渡しの実施を命ずる旨を決定

(2)執行官が執行場所に赴き、債務者による子の監護を解いて債権者に引渡す

という手続きが明文化されました(民事執行法174条、175条)。

 

つぎに、国際的な子の返還の強制執行については、現行法上、間接強制前置とされていましたが、一定の場合に間接強制を経なくても申し立てられるようになりました(新ハーグ条約実施法136条)。

また、執行の際に、子と債務者が共にいること(同時存在)が必要とされていましたが、これも不要となりました(新ハーグ条約実施法140条)。

 

この改正の根底にあるのは、世界的に、一方の親が子どもを連れ去ることは、原則として違法であり、犯罪となりうるということです。

特に、国外からの連れ去りは、非常に大きな問題となりますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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債権回収と民事執行法改正4

前回、民事執行法の改正により、「債務者以外の第三者からの情報取得手続」が新設され、金融機関等に対し、相手方の財産の開示を求めることができるようになった、ということをお伝えしました。

 

そこで、今回は、具体的に、誰に対し、どのような情報の開示を請求できるようになったのか見ていきましょう。

 

まず、金融機関(銀行、信金、労金、信組、農協、証券会社等)から、①預貯金債権や②上場株式、国債等に関する情報を取得することができるようになりました(207条)。

 

つぎに、登記所から、③土地・建物に関する情報を取得することができるようになりました(205条)。

 

さらに、市町村、日本年金機構等から、④給与債権(勤務先)に関する情報を取得することができるようになりました(206条)。

ただし、給与債権に関する情報取得手続は、養育費等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立て可能とされているので注意が必要です。

 

この改正により、強制執行がしやすくなることが期待されています。

 

なお、保険に関する情報は、今回の改正では対象外となっています。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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債権回収と民事執行法改正3

前回、強制執行手続においては、相手方の財産がどこにあるのかを調査することが重要となってくる、という話をしました。

 

たとえば、差し押さえたい対象が不動産である場合には、その不動産所在地を特定する必要があります。

預金債権である場合には、預金債権の内容および銀行支店名を、売掛先に対する債権である場合には、その債権の具体的内容、売掛先の名前および住所地を特定する必要があります。

動産についても、動産の具体的内容および当該動産の存在する住所地を、特定しなければなりません。

 

当然ですが、これらの情報を、相手方が支払えなくなってから集めるのは至難の業です。

 

ところが、現行法では、裁判所は取引先の保有する財産を調査してはくれず、あくまでも、自分たちで、相手方の財産の所在を調査しなければなりませんでした。

 

そこで、今般、民事執行法を改正し、「債務者以外の第三者からの情報取得手続」を新設し、金融機関等に対し、相手方の財産の開示を求めることができるようになりました。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収と民事執行法改正2

さて、前回、債権回収のポイントは、事前準備・債権管理をきちんとしたうえで、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けることである、ということをお伝えしました。

 

しかし、事前準備・債権管理をいかにきちんとしていたとしても、相手方からの支払いが滞ってしまうことは当然あります。

また、契約内容そのものや、契約の履行に関してトラブルとなってしまうこともあり得ます。

 

このような場合、最終的には訴訟を提起し、裁判所で決着をつけることになりますが、強制的に回収するためには、別途強制執行手続きを経なければなりません。

そして、強制執行手続は、判決をもって裁判所に強制執行の申立てをして、裁判所に相手方の財産を差し押さえてもらい、差し押さえた財産から配当を受けるという過程を経る必要があります。

 

ところが、この場合に、大きな障害となるのが、相手方の財産がどこにあるのかわからないと、相手方の財産を差し押さえてもらうことができない、ということです。

 

相手方の財産がどこにあるのかわからないと、仮に勝訴したとしても、実際に回収することはできないのです。

 

そのため、相手方の財産がどこにあるのかを調査することが重要となってきます。

(弁護士 國安耕太)

 

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債権回収と民事執行法改正1

債権回収のポイントは、事前準備・債権管理をきちんとしたうえで、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けることです。

 

債権回収(売掛金の回収)が出来ないことは、会社にとって最悪の事態です。

いかに高額な売掛金が存在しているとしても、会社の現預金が尽きてしまえば、会社は立ち行かなくなってしまいます。

 

しかし、何の準備もせずに、危機状態にある相手方から、債権を回収することなど、基本的にはできません。

 

取引開始前に、相手方の登記事項証明書やインターネットの情報を確認するだけでも、売掛金を回収できないというリスクは低減することができます。

また、取引開始時に、相手方の決算書を分析したうえで、契約書を作成し、担保をとれば、売掛金の回収可能性が上がります。

 

ただし、自社を取り巻く環境は、刻一刻と変化していっていますから、取引開始時には問題がなかったとしても、債権回収時には信用に不安が生じている、ということも珍しくありません。

 

事前準備・債権管理をきちんとするとともに、売掛先の信用不安を表わす徴候(主要な取引先が倒産・契約打切りになった、中心的な社員・従業員が退任・退職した等)を見逃さないよう、こまめに情報収集を行うことが重要です。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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取締役の責任とは?7 取締役の刑事責任

犯罪行為に関しては、主として刑法に記載されていますが、会社法上取締役には、特別な刑罰が規定されています。

 

たとえば、取締役は、

①自己もしくは第三者の利益を図りまたは株式会社に損害を加える目的で、

②その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、

10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方に処せられます(特別背任罪、会社法960条1項3号)。

これは、通常の刑法上の背任罪(247条)より重い刑罰を課すことで、株主や会社債権者等会社の利害関係者が、不測の損害を被ることのないよう、取締役の任務違背行為を抑止しようとするものです。

 

また、裁判所や株主総会等で、一定の事項について虚偽の申述を行い、または事実を隠ぺいしたときは、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方に処せられます(会社財産を危うくする罪、会社法963条)。

これも会社の利害関係者が、不測の損害を被ることのないよう、取締役の任務違背行為を抑止しようとするものといえます。

 

このように、会社法上取締役には、特別な刑罰が規定されています。

もちろん、普通に業務を執行している限りは、このような刑罰を科されることはありません。

会社を経営していくにあたっては、取締役の責任の重さをきちんと理解し、適正な業務執行をしていくことが重要といえます。

(弁護士 國安 耕太)

 

 

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取締役の責任とは?6 株主代表訴訟

会社が取締役の責任を追及する場合、監査役が会社を代表するのが原則です。

株主は、監査役に対し、取締役の責任追及をするよう求めることができます。

 

しかし、取締役と監査役の馴れ合いによって、監査役が訴えを提起しない等、うまく機能しない場合があります。

 

そこで定められた制度が株主代表訴訟です。

 

上記のとおり、株主は、監査役に対し、取締役の責任追及をするよう求めることができますが、監査役がこの求めから3か月以内に訴えを提起しない場合は、株主自身が取締役の責任追及の訴えを提起することができます。

これが株主代表訴訟です。

 

なお、株主代表訴訟を提起できる株主は、原則として6か月前から引き続き株式を有する株主に限定されます(会社法847条1項)。

 

また、濫訴を防止するため、株主または第三者の不正な利益を図り、又は当該会社に損害を加えることを目的とする場合には、監査役に対する提訴請求自体ができません(会社法847条1項ただし書き)。

 

このように、不正な行為については、株主から直接責任追及される可能性があります。

(弁護士 國安耕太)

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取締役の責任とは?5 取締役の会社に対する賠償責任

取締役は、会社に対し、任務を怠った(任務懈怠)ことによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項*)。

 

任務懈怠は、取締役が、会社に対して負ってる善管注意義務(民法644条)および忠実義務(会社法355条)に違反した場合に認められます。

 

ただし、経営にはリスクがつきものであり、会社に損害が生じた場合に常に責任を問われるということになれば、取締役が委縮してしまい、会社にとって効果的な意思決定を行うことができなくなる可能性があります。

 

そこで、取締役の経営判断が会社に損害を与える結果になっても、かかる経営判断が特に不合理・不適切でなければ結果の責任を問われないという「経営判断の原則」が適用されるとされています。

 

具体的には、

①経営判断の基礎となる事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと

②経営判断の過程が合理的であること

③経営判断の内容が通常の企業経営者として明らかに不合理でないこと

という要件を満たしている場合は、会社に損害を与える結果になっても、取締役はかかる結果の責任を問われません。

 

実際、過去の裁判においても、取締役の経営判断に関し「その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではない」(最判平成22年7月15日、集民第234号225頁)。

 

このように、取締役に任務懈怠がある場合は損害賠償義務を負いますが、それはあくまでも経営判断が不合理・不適切な場合に限られます。

(弁護士 國安耕太)

 

* 会社法423条1項

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

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取締役の責任とは?4 取締役の義務

取締役は、会社に対し、①善管注意義務、②忠実義務、③競業避止義務等の義務を負っています。

 

①善管注意義務

会社と取締役との関係には、民法の委任に関する規定が適用されます(会社法330条)*1。

そのため、取締役は、委任の本旨に従い、その地位にある者に通常期待される注意をもって、委任事務を処理する義務を負うことになります(民法644条)*2。

条文上「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」とされているので、これを一般的に善管注意義務と呼んでいます。

 

②忠実義務

会社法上、取締役は、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」(会社法355条)とされており、これを一般的に忠実義務と呼んでいます。

なお、この善管注意義務と忠実義務との関係について、判例は「(忠実義務の規定は)善管義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであつて、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものとは解することができない。」としています(最判昭和45年6月24日、民集24巻6号625頁)。

 

③競業避止義務

取締役は、自己または第三者のために「会社の事業の部類に属する取引」を行うことが制限されています(会社法356条1項1号)。

これを競業避止義務と呼んでいます。

(弁護士)國安 耕太

 

*1 会社法330条

株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

*2 民法644条

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

 

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取締役の責任とは?3 取締役の権限

取締役の権限は、会社の組織形態によって異なります。

すなわち、取締役会(または委員会)があるかないかによって、その権限は大きく異なります。

 

まず、取締役会を設置していない会社(取締役会非設置会社)で、取締役が1名の場合、当該取締役が業務の方針を決定し、業務を執行します(会社法348条1項)*1。

取締役が2名以上いる場合は、業務の方針は、取締役の過半数によって決定することになりますが(会社法348条2項)、各取締役は1人で業務の執行をすることができます。

ただし、代表取締役が選任されている場合は、代表取締役のみが会社を代表する権限を有します(会社法349条4項)。

 

これに対し、取締役会設置会社では、取締役会が業務の執行をします(会社法362条2項1号)。

すなわち、取締役会が代表取締役や業務執行取締役を選任し、同人に業務執行を委任したうえで、その業務執行を監督する(会社法362条2項2号)ことになります。

そのため、実際には、代表取締役や業務執行取締役が、業務執行の決定を行い、執行することになります。

ただし、重要な業務執行の決定については、取締役会で決定しなければならず、代表取締役や業務執行取締役に委任することはできないとされています(会社法362条4項)*4。

 

このように、会社の組織形態によって、取締役の権限は大きく異なってきます。

(弁護士)國安 耕太

 

*1 会社法348条1項

「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。」

 

*2 会社法348条2項

「取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。」

 

*3 会社法349条4項

「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」

 

*4 会社法362条4項

「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

一 重要な財産の処分及び譲受け

二 多額の借財

三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項

六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除」

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取締役の責任とは?2 取締役の法的性質

取締役は、会社との間で、報酬や任期等について合意した会社の経営に関する委任契約を締結し(会社法330条)、業務執行を行います。

この委任契約は、同じく会社の業務を行う従業員が会社との間で締結している労働契約(雇用契約)とは、大きく異なっています。

 

まず、委任契約は、いつでも解除することができます(民法651条)。

そのため、取締役についても、「いつでも株主総会の決議によって解任することができる」(会社法339条1項)とされています。

これは、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)とされ、契約の解除が制限されている雇用契約との大きな違いです。

 

また、取締役は、業務執行の対価として会社から報酬を受領しますが、会社の業績が悪いと、報酬を大幅に減額される可能性があります。

他方、労働契約では、賃金全額払いの原則が定められている(「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」労働契約法24条1項本文)とされています。

 

さらに、取締役の任期は、原則として2年とされており(会社法332条1項)、伸長した場合でも最大で10年です(同2項)。

これに対し、労働契約は、定年までの労働契約を締結することができます。

 

このように、取締役の委任契約は、労働者の労働契約とは大きく異なっていることに留意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

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取締役の責任とは?1 総論

2017年版「中小企業白書」には、総務省「就業構造基本調査」を活用した、起業を希望する起業希望者や実際に起業した起業家といった起業の担い手の実態や経年推移等が記載されています*。

 

さて、起業する場合、個人事業主として起業するほか、会社を設立して起業するということも可能です。

会社を設立して起業する場合、みなさんは、(代表)取締役になることになりますが、会社法上、取締役には、取締役固有の責任が定められています。

 

これから取締役になる方は、ぜひ取締役の責任について、きちんと理解してから取締役に就任して欲しいと思います。

 

また、すでに取締役となっている方は、取締役がどのような責任を負っているのかについて改めて確認し、そのリスク管理をしていただければと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/h29_pdf_mokujityuu.html

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)7

先週(平成30年5月24日)、徳川綜合法務事務所と共催で、第2回経営者交流会を開催いたしました。

当日は、25名を超えるみなさまにご参加いただきました。

ありがとうございます。

 

その際のミニセミナーでも少しお話したのですが、契約書のチェックをする際の基本は、つぎの3つです。

(1)当事者双方の義務か、片面的か

(2)契約の目的、内容の特定がされているか

(3)当事者の特定がされているか

 

たとえ厳しい義務が課されていたとしても、当事者双方に対するものであれば、それほど問題となることはありません。

そのため、契約書を見る際は、まずここ(1)当事者双方の義務か、片面的かを確認する必要があります。

 

ただ、形式的には双方の義務とされていても、実質的には片面的な義務となっていることもありますので、注意が必要です。

 

また、どのような内容の契約なのか、すなわち(2)契約の目的、内容がきちんと特定されているかもチェックする必要があります。

請負型の業務委託契約を締結したつもりが、準委任型の業務委託だった・・・、というようなことがないようにしなければなりません。

 

最後に、(3)当事者が特定されているか、も意外と重要です。

契約は、特定人の特定人に対する特定の権利関係を定めたものですから、当事者以外の者に拘束力は及びません。

後で、誰と契約したのかわからない、なんてことにならないよう、注意しましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)6

先週、通常、業務委託では、請負もしくは準委任、または双方の性質を有していることがほとんどである、ということをお伝えしました。

 

では、請負と準委任は、どのような基準で区別すればいいのでしょうか。

 

メルクマールは、仕事の完成を目的としているか、です。

 

仕事の完成を目的としているか否かによって、請負契約か準委任契約かが異なってきます。

逆にいうと、仕事の完成を目的とするのであれば、請負型の業務委託契約を締結しなければならない、ということになります。

 

このような観点から、自社が締結しようとしている契約が、請負と準委任のどちらなのか、どちらにすべきなのか、分析してみてください。

 

なお、注意していただきたいのは、準委任の場合であっても、契約書の定め方によっては、成果物の作成義務が生じることがある、ということです。

すなわち、委任契約において、何らかの成果物を作成することが義務付けられているのであれば、成果物の作成義務が生じます。

 

インターネット上では、このあたりのことを正確に記載していないものも多く、勘違いされている方が多いところですので、注意してください。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)5

先週まで、業務委託契約の締結にあたっては、偽装請負(違法派遣)や下請法の規制に注意が必要である、ということをお伝えしてきました。

 

では、具体的に、業務委託契約は、どのような法的性質を有しているのでしょうか。

 

通常、業務委託では、請負もしくは準委任、または双方の性質を有していることがほとんどです。

 

請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約するものとされています。

 

請負契約の目的は、仕事を完成することです。

完成しないと、報酬請求権は発生しません。

あくまでも、仕事の完成という結果が大事なのであって、その過程は問いません(もちろん、契約の内容になっていれば別ですが。)。

そのため、下請(再委託)は、自由に出来るのが原則です。

 

システム開発の業務委託や、ホームページ作成の業務委託等に適しています。

 

委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立するとされており(民法643条)、この規定は、法律行為でない事務の委託について準用されています(民法656条)。

 

準委任は、業務の遂行さえしていれば、報酬請求権が生じます。

ただし、業務の遂行にあたり善管注意義務を果たしていなければ、債務不履行責任が生じることがあります。

また、信頼関係に基づいているので復委任(再委託)は、原則として禁止です。

 

システムの保守管理業務委託等に適しています。

 

では、請負と準委任は、どのような基準で区別すればいいのでしょうか。

来週、具体的に見ていきましょう。

(弁護士 國安耕太)

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)4

先週、業務委託契約といっても、契約ごとに検討しなければならない事項が異なってくる、というのが最大の特徴である、という話をしました。

 

そして、基本的には、当事者間で合意ができれば、どのような内容を定めても構わないのですが、注意しなければならないことが2点あります。

 

1点目は、偽装請負(違法派遣)の問題です。

 

偽装請負とは、実質は労働者派遣(場合によっては労働者供給)でありながら、請負契約や業務委託契約の形式で行う労務提供を指します。

実質的には労働者派遣なのに、形式的に請負契約(業務委託契約)として、派遣法により課された元事業主および派遣先事業主の義務が果たされず、派遣労働者の保護という派遣法の趣旨を没却することが問題とされています。

 

偽装請負と判断されると、受託者は、派遣事業主と判断され、派遣法違反として罰則を受け、委託者も派遣法違反となり、行政処分の対象となります。

 

したがって、業務委託契約を締結するにあたっては、偽装請負との指摘を受けないよう、注意する必要があります。

 

2点目は、下請法の規制です。

 

下請法は、正式名称を下請代金支払遅延等防止法といいます。

下請法は、強行法規のため、たとえ当事者間で合意したとしても、その適用を排除することはできません。

 

下請法が適用される場合、親事業者は、下請法に定められた義務を履行し、一定の行為が禁止されます。

 

これらの規制に違反した場合には、行政処分(指導・勧告)の対象となります。

 

委託者としては、業務委託契約を締結する際に、下請法が適用されるかを確認し、適用される場合には、契約書が下請法に従った内容になっているかを確認する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)3

先週まで、契約一般についてみてきましたが、今週から業務委託契約についてみていきましょう。

 

まず、業務委託は、自社で行っている業務の一部を、他社に代行してもらう、いわゆるアウトソーシングの一形態です。

 

アウトソーシングには、㋐業務を行う人を受け入れる場合と、㋑業務そのものを外部に出す場合とがあると思いますが、このうち業務委託は、後者の場合を指しています*。

 

ここで注意しなければならないのは、「業務委託」という概念は非常に曖昧なものであるということです。

 

システムの開発業務委託、システムの保守業務委託、清掃業務委託、経理業務委託、駐車場の管理業務委託、講師業務委託、商品販売業務委託・・・などあらゆる業務を委託することができます。

そのため、一言で業務委託契約といっても、

どのような業務を委託するのか(されるのか)によって、どのような事項を定めておかなければならないのかも変わってきてしまいます。

 

このように、業務委託契約は、具体的な契約ごとに検討しなければならない事項が異なってくる、というのが最大の特徴です。

(弁護士 國安耕太)

 

* 前者は、派遣や出向といった形式でなされることが多いです。

 

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)2

先週、契約書には、㋐契約内容の証拠化、㋑契約内容の明確化、㋒民法、会社法等の規定を変更・排除するという効果があるという話をしました。

 

では、IT会社と締結する業務委託契約書には、どのような内容を定めればよいのでしょうか。

 

まず、もっとも重要なのは、(1)契約の基本的な条件です。

たとえば、システム開発に関する業務委託契約であれば、どのような内容のシステムを開発するのか、いつまでに開発するのか、その対価(業務委託料)はいくらか、その支払時期はいつかなど、契約の基本となる条件を定めておく必要があります。

 

つぎに重要なのは、(2)民法、会社法等の規定を変更・排除するものです。

たとえば、システムのプログラムに不具合(瑕疵)があった場合、IT会社は、民法上、瑕疵担保責任を負います。この瑕疵担保責任の期間は、引渡しから1年とされています(民法637条1項)。

契約書に定めることで、この期間を、6か月にしたり、3か月に変更することができます。

また、民法上、損害賠償額に制限はありませんが、これに上限を設けることもできます。

 

このほか、(3)法律上、特段の定めがない事項や、(4)法律上、定められている事項を確認するもの、(5)実務上の手続きに関するものについて定めることもできます。

 

契約締結交渉を行うにあたって、(1)契約の基本的な条件や(2)民法、会社法等の規定を変更・排除するものは、当然のことながら重要なものですが、それ以外の事項についても、㋐契約内容の証拠化、㋑契約内容の明確化という意観点から、当事者間で認識に齟齬が生じないよう、できる限り明確にしておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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業務委託契約の基礎(IT会社の場合)1

みなさん、突然ですが、そもそも、契約書は、何のためにあるのでしょうか?

 

契約書を作成しなければ、契約は成立しないのでしょうか?

 

実は、契約は、契約書という書面を交わさなくても、口頭でも成立します。

たとえば、物の売り買いというのは、法的には売買契約ですが、スーパーでお菓子を買うときに、契約書なんて作成しませんよね?

 

「契約書を作成していないから、このお菓子の売買契約は無効だ!」なんてことは、当然有り得ないわけです。

このように、世の中には口頭で契約が成立していることが珍しくありません。

 

しかし、業務委託契約を締結する場合、契約書の締結は必要不可欠です。

 

では、なぜ、契約書を作成する必要があるのでしょうか。

実は、契約書には、つぎの効果があるとされています。

 

㋐契約内容の証拠化

㋑契約内容の明確化

㋒民法、会社法等の規定を変更・排除する

 

口頭では、後々、どのような約束があったのか分からなくなってしまうことがあります。

そこで、契約書を作成することによって、㋐契約内容を証拠化し、どのような約束があったのかを明らかにすることができます。

 

また、契約書を作成することによって、自分たちがどのような内容の契約をしようとしているのか、㋑契約内容を明確化することができます。

 

さらに、民法、会社法等の規定は、特約がない場合に補充的に適用されるものであることから、契約書を作成することによって、自己に不利な㋒民法、会社法等の規定を変更・排除することができます。

 

このように契約書は、非常に重要な意味を持っています。

(弁護士 國安耕太)

 

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中小企業の採用戦略4

先週、採否を判断する材料を得るため必要な調査を行う自由も保障されていると考えられている、ということをお伝えしました。

 

しかし、あくまでも、採用の自由を確保するため、採否を判断する材料を得るため必要な範囲での調査に限られますから、採用に無関係な事項を質問することまで許容されているわけではありません。

 

厚生労働省が公開している「公正な採用選考の基本*」では、

採用選考に当たっては、

・応募者の基本的人権を尊重すること

・応募者の適性・能力のみを基準として行うこと

の2点を基本的な考え方として実施することとされています。

 

また、個人情報保護の観点から、職業安定法第5条の4および平成11年告示第141号により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として禁止されています。

 

なお、広範な裁量を認められているのは、あくまでも、誰を採用するのか、についてです。

採用活動時に、差別的な取り扱いをすることは禁止されているので注意が必要です。

 

たとえば、男女雇用機会均等法では、労働者の募集および採用において、性別を理由とする差別が禁止され、男女均等な取り扱いが求められていますし(同法5条)、また、雇用対策法で、原則として募集採用の際の年齢制限は禁止されています(同法10条)。

(弁護士 國安耕太)

 

*

http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

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中小企業の採用戦略3

先週、会社が、従業員を一方的に辞めさせること、すなわち、解雇をすることは容易ではなく、採用の段階から、できる限り、モンスター社員を入社させないような対策をきちんと立てておかなければならないということをお伝えしました。

 

さて、では、採用に関して、法的規制はないのでしょうか。

 

この点に関しては、判例上、誰を採用するかについては、基本的に、広範な裁量が認められています。

 

すなわち、採用に関するリーディングケースである三菱樹脂事件最高裁判決(最判昭和48年12月12日、民集27巻11号1536頁)は、「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」と判示しています。

 

このように、会社には、経済活動の一環としての契約締結の自由があり、自己の営業のためにどのような者をどのような条件で雇うかについては、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に行うことができます。

 

また、このような採用の自由を確保するため、採否を判断する材料を得るため必要な調査を行う自由も保障されていると考えられています。

(弁護士 國安耕太)

 

 

 

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中小企業の採用戦略2

先週、平成30年1月17日に、法律を学び、攻めの経営を!第9回企業法務セミナー「中小企業の採用戦略」を開催いたしました。

定員の15名を超えるみなさまにご参加いただきました。

ありがとうございました。

 

さて、その中でも、少し触れたのですが、会社の事業に大きなマイナスの影響を与えるモンスター社員であっても、なかなか辞めさせることができません。

より正確にいえば、会社が、従業員を一方的に辞めさせること、すなわち、解雇をすることは容易ではありません。

 

日本の法令上、解雇そのものを禁止する規定はありません。

 

しかし、実際は、判例上解雇権濫用法理が確立されており、また、労働契約法16条も「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、事実上解雇を制限しています。

 

そして、解雇に客観的な合理性があるか、および相当性があるかどうかについては、

①職務能力や従業員としての適格性を欠いているかどうか

②規律違反行為があるかどうか

③社会的相当性があるかどうか

等を総合的に考慮して判断されます。

 

そのため、解雇が有効かどうかは、会社ごと、労働者ごとに異なり、一概に判断することはできず、解雇という手段には、常に無効となってしまうかもしれないと懸念がつきまとってしまいます。

 

このことから、採用の段階から、できる限り、モンスター社員を入社させないような対策をきちんと立てておかなければならないのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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中小企業の採用戦略1

明日、平成30年1月17日に、法律を学び、攻めの経営を!第9回企業法務セミナー「中小企業の採用戦略」を開催いたします*。

 

近時、ブラック企業が問題となっていますが、会社側の視点からは、モンスター社員が非常に増えてきているという印象です。

 

会社がその事業を発展させていくためには、優秀な人材を確保し、継続的に事業を担ってもらうことが必要不可欠です。

ところが、ひとたびこのようなモンスター社員が入社してしまうと、会社の雰囲気が悪化したり、優秀な人材は嫌気がさして辞めてしまうなど、会社の事業に大きなマイナスの影響を与えることになりかねません。

 

しかし、当該モンスター社員本人は、なかなか辞めさせることができません。

 

このような事情から、みなさんの会社がそのような事態に陥らないようにするためには、採用の段階から、きちんと対策を立てておかなければなりません。

(弁護士 國安耕太)

 

*法律を学び、攻めの経営を!第9回企業法務セミナー「中小企業の採用戦略」を開催いたします。

日時: 2018年1月17日(水) 18:30~21:00( 18:15開場)

場所:東京都新宿区西新宿1-3-13 Zenken PlazaⅡ7Fレアルセミナールーム

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:先着15名

参加費:8000円(税込) ※当日会場にてお支払いください

キャンセルについて:参加申込み後のキャンセルは 1月12日 (金) までにご連絡下さい。以降はキャンセル料をいただきます。

 

 

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労務管理8

時間外労働とは、労基法上の1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えた労働をいい、休日労働とは、週休制の法定基準による休日における労働をいいます。

 

所定労働時間を超えていたとしても、法定労働時間を超えていないのであれば、時間外労働にはあたりません。

たとえば、所定労働時間が1日7時間とされている会社で、8時間勤務した場合、所定労働時間を1時間超えていることになりますが、時間外労働は0ということになります。

同様に、法定休日が日曜日とされている会社で、所定休日(たとえば土曜日)に労働した場合であっても、休日労働とはならないことになります。

 

時間外・休日労働は、事業場における労使の時間外・休日労働協定(いわゆる三六協定)に基づく必要があります(労働基準法36条1項)。

 

また、時間外労働の限度について、次のような基準が定められています。

 

期 間         時間外労働の上限期間

1週間         15時間

2週間         27時間

4週間         43時間

1カ月         45時間

2カ月         81時間

3カ月         120時間

1年間         360時間

 

なお、この時間外労働の限度に関する基準は、強行的効力を有するものではないと考えられており、限度を超えた時間外労働の合意があったとしても直ちに無効となるものではありません。

 

また、割増率は、1か月の合計が60時間までの時間外労働および午後10時~午前5時までの深夜労働については、2割5分以上の率、②1か月の合計が60時間を超えた時間外労働の部分については、5割以上の率、③休日労働については3割5分以上の率とされています*。

 

なお、この割増賃金の規制は、年俸制を採用している場合や、歩合給や出来高給についても及ぶので注意が必要です。

 

(弁護士 國安耕太)

 

 

*

ただし、このうち、②5割の割増率は、平成31年4月1日までは、中小事業主の事業について適用されません。

 

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労務管理7

さて、先週まで、労働時間についてみてきましたが、今回は、休日・休暇についてです。

 

労働基準法上、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています(労働基準法35条1項)。

 

ここで「休日」とは、労働者が労働契約に基づく労働義務を負わない日をいい、労働日を労働日としたまま単に就労させない場合は、休業日であって、休日ではありません。

また、休日は、労働者が、労働日に労働をしなくてもよい権利として認められている「休暇」とも区別されています。

 

週の休日(週休日)をどの日にするのかについては、法律上規定がありません。

そのため、休日を日曜日にする必要はありません。

実際、飲食店などは、月曜日、不動産会社は水曜日を休みとしていることが多いといわれています。

また、祝祭日を休日にしなければならないものでもありません。

 

さて、使用者は、突発的な受注への対処など一時的な業務上の業務上の必要性から、就業規則上、休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更することができます。

 

その際の方法として、事前に休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の労働日である特定の日を休日に変更する、いわゆる「振替休日」と事後に行う「代休」という2つの制度があります。

 

双方とも労働契約上の根拠を必要とする、すなわち、就業規則等に根拠規定があることか労働者の個別の同意が必要である点で共通しています。

 

しかし、振替休日は、労基法の1週1休や、週40時間の制約を受け、また、本来の休日における労働が労働日における労働となるため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務は生じません。

 

これに対し、代休の場合、休日に労働したということに変更はないため、休日労働に基づく割増賃金の支払義務が生じるという違いがあります。

(弁護士 國安耕太)

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労務管理6

繰り返しになりますが、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

 

では、この使用者の指揮命令は、明示のものである必要があるのでしょうか。

 

この点について、通説では、使用者の指揮命令は、明示のものである必要はなく、黙示のもので足りると解されています。

裁判例でも、従業員が時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった以上、少なくとも黙示的に業務命令があったものとして、使用者側の時間外労働を命じていないとの主張が排斥されています(大阪地判平成17.10.6労判907号5頁、ピーエムコンサルタント事件)。

 

このように、業務命令として残業を指示したか否かにかかわらず、業務命令があったと認定され、労働時間であると判断されているケースは、珍しくありません。

このような現状を踏まえると、むしろ、労働時間ではないと判断されているケースは、使用者が、労働者に対して業務を禁止していたにもかかわらず業務を行っていたため、自発的な労働と評価されたものに限られると考えておくのが無難でしょう。

 

たとえば、東京高判平成17.3.30(労判905号72頁、神代学園ミューズ音楽院事件)は、

「繰り返し36強定が締結されるまで残業を禁止する旨の業務命令を発し、残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、この命令を徹底していた」

として、時間外または深夜にわたる残業時間を使用者の指揮命令下にある労働時間と評価することはできないと判断しています。

(弁護士 國安耕太)

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労務管理5

労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

 

では、たとえば、緊急事態が発生した際に対応するため、泊まり込みで待機しているような場合、当該待機時間(仮眠時間)は、労働時間にあたるのでしょうか。

 

この点について判例は、

「不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」

としています(最判平成19.10.19民集61巻7号2555頁大林ファシリティーズ事件)

 

したがって、緊急事態が発生したとき以外は、部屋で待機していたり、寝ていたとしても、労働契約に基づく義務として、部屋での待機と緊急時には直ちに相当の対応をすることを義務付けられている以上は、労働時間にあたるといえるでしょう。

 

なお、労働時間にあたるか否かは、労働者が使用者の指示に従っていたかどうかには影響されません。

実際、タクシー運転手の客待ち時間に関する裁判例において、

会社が指定場所以外で30分を越える客待ち待機をしないように命令していたとしても、「その時間中には、被告の具体的指揮命令があれば、直ちに原告らはその命令に従わなければならず、また原告らは労働の提供ができる状態にあるのであるから、被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であるというべき」

とされています(大分地判平成23.11.30労判1043号54頁中央タクシー事件)*。

(弁護士 國安耕太)

 

*

ただし、別途、指揮命令違反として、懲戒処分の対象とはなりえます。

 

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労務管理4

休憩時間を除いて、1日8時間もしくは1週間40時間を超えて労働させた場合または休日に労働させた場合に、割増賃金の支払義務が生じます(労働基準法32条、37条1項)。

 

では、具体的にどのような要件を満たしていれば、労働時間と認められるのでしょうか。

 

判例では、労働時間といえるかどうかは、

 

「労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とされ、

 

使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうかは、

 

「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、または、これを余儀なくされたとき」は、「特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」る

 

とされています(最判平成12.3.9民集54巻3号801頁、三菱重工長崎造船所事件)

 

具体的には、同判例において、「実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていたなどというのであるから、作業服及び保護具等の着脱等は、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、右着脱等に要する時間は、それが社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当するというべきである。」とされ、作業服及び保護具等の装着についても、会社の指揮命令下に置かれたものと評価できると判断されています。

 

このように、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理3

法律上「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」(労働基準法37条1項)とされていることから、一般的に、残業代請求と呼ばれているものには、早出の場合や、休日労働の場合も含まれており、法律上は、「割増賃金」の請求です。

 

さて、ここで「労働時間を延長」とあるので、つぎに、労働時間とは何なのか、という問題が出てきます。

 

原則となる所定の労働時間に関する規定は、労働基準法32条にあります。

この規定を、法律で定められた労働時間という意味で「法定労働時間」と呼んでいます。

 

(労働基準法32条)

1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

 

労働基準法が規定する労働時間は、「休憩時間を除」いた時間であり、現に労働させる時間を指します。

 

そうすると、休憩時間を除いて、1日8時間もしくは1週間40時間を超えて労働させた場合または休日に労働させた場合に、割増賃金の支払義務が生じる、ということになります。

 

なお、ここでいう1日とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、午前0時から午後12時まで、1週とは、日曜日から土曜日までを指しています。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理2

平成25年の統計では、1年間に、賃金手当等に関する紛争(主に未払残業代請求)は、労働審判1456件、民事訴訟1929件の合計3385件が申し立てられています。

 

ちなみに、一般的に未払残業代請求と言われていますが、法律上「残業代」という概念は存在しません。

ご存知でしたか?

 

実は、法律上は、「割増賃金」という概念が存在しているだけなのです。

 

割増賃金については、労働基準法37条1項が規定しています。

 

(労働基準法37条1項)

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

一読しただけでは、よくわからないかもしれませんが、ここで重要なのは、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」とされていることです。

 

つまり、割増賃金は、いわゆる残業の場合のほか、所定の労働時間を勤務時間前に延長した場合に支払義務が生じる、すなわち、残業の場合のほか、早出の場合や、休日労働の場合にも支払義務が生じるということになります。

 

このように、一般的に、残業代請求と呼ばれているものには、早出の場合や、休日労働の場合も含まれており、法律上は、「割増賃金」の請求、ということになります。

(弁護士 國安耕太)

 

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労務管理1

先日(平成29年10月20日)、つぎのような報道がありました*。

 

「日本放送協会(NHK)の山口放送局(山口市)で残業代の未払いがあったとして、山口労働基準監督署(同)が先月、労働基準法違反で同放送局に是正勧告を出していたことがわかった。勧告は9月29日付。

関係者やNHKの説明によると、同放送局に勤める一部の職員が申請した勤務時間が、タイムカードで記録された労働時間より短くなっていたことが労基署の調査で判明。労基署から残業代が未払いになっている可能性があると指摘されたことを受け、NHK側が同放送局内の勤務時間の実態を調べた結果、今年4~6月に、11人の職員に計約9万2千円分の未払い残業代があることがわかり、労基署から是正勧告を受けたという。」

 

この事件は、NHKの山口放送局が、山口労働基準監督署から、労働基準法違反で是正勧告を出されていた、というものです。

このように、近時、未払残業代をめぐって、労基署の調査や勧告がなされたり、訴訟や労働審判が申し立てられることが増えています。

 

確かに、実際に賃金手当等に関する紛争が生じる会社は一握りかもしれません。

 

しかし、賃金手当等に関する紛争が生じた場合、マクドナルド事件のように、1人あたり数百万円の支払いを求められる可能性もあり、会社の経営基盤に重大なダメージを与える可能性があります。

 

また、近時、働き方改革が叫ばれ、労働時間を巡る世間の視線は厳しいものになってきています。

 

そのため、労働時間の管理を適切に行っていくことは、会社の維持発展には必要不可欠といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00000017-asahi-soci

 

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起業のすゝめ 12 中小企業は上場を目指せ!?

では、最後、3つ目の仕組みです。

 

会社内部の仕組みを整え、対外的な仕組みを整えることによって、会社としての体制が整うことになります。

 

しかし、実はこれだけでは、将来的に事業を安定的に伸ばしていくための事業を支える仕組みとしては不十分なのです。

 

では、会社内部の仕組み、対外的な仕組みのほかにどのような仕組みが必要なのでしょうか?

 

前回、前々回と話をしてきた会社内部の仕組み、そして、対外的な仕組みは、いずれもハード面の話です。

要するに、後々トラブルとなった際に、解決の指針になるものです。

 

しかし、いかに立派なハード面の仕組みを整えたとしても、そこに入るソフト面の仕組みを整えなければ、ただの飾りにすぎません。

会社内部の仕組み、そして、対外的な仕組みをきちんと活用するため、役員・従業員を教育するための仕組み、すなわち、役員・従業員に、自分の行っている行為が不正なものなのかどうかを理解させる機会を設けるようにしてください。

 

多くの経営者は、会社内外の仕組みを作ることで満足してしまい、その仕組みを適正に運用するというところまで考えていません。

 

ぜひみなさんは、会社内部の仕組み、そして、対外的な仕組みを活用するため、役員・従業員を教育するための仕組みを整えていただければと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 11 中小企業は上場を目指せ!?

2つ目の仕組みは、対外的な仕組みです。

 

対外的な仕組みは、契約書・約款・利用規約等対外的な契約にかかわる文書を整備することです。

契約は、契約書という書面を交わさなくても、口頭でも成立します。

 

しかし、口頭では、後々、どのような約束があったのか分からなくなってしまうことがあります。

そこで、契約書という「書面」を作成することによって、契約の内容を証拠化し、将来的な紛争を回避していくことが重要になります。

 

そして、契約書という「書面」を作成するにあたり、最も重要なことは、自社そして当該取引に適した契約書等を準備することであり、それにつきます。

 

たとえば、同じ「売買契約書」、「業務委託契約書」や「ライセンス契約書」であったとしても、契約の実態や業種により内容が異なる場合があります。

そのため、本来は、契約実態に合った契約書を作成しなければならないにもかかわらず、定型のひな型を使用して、自社に不利な契約を締結してしまうといったことが珍しくありません。

 

トラブルを回避するための契約書が、逆に余計なトラブルになってしまう可能性すらあるのです。

 

毎回ゼロから契約書を作成していると、時間も手間もとても多くかかってしまいますので、ひな形を利用することが悪いというわけではありません。

しかし、ひな形を使用する場合には、自社そして当該取引に、どの条項が必要で、どのような条項が不足しているかを判断し、適切に修正する技術が要求されるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 10 中小企業は上場を目指せ!?

前回、創業当初から、事業を支えるための仕組みづくりをしておく必要がある、ということをお伝えしました。

 

では、どのような仕組みを整えておけばいいのでしょうか。

整えなければならないのは、大きく分けて3つの仕組みです。

 

まず、1つ目は、会社内部の仕組みです。

 

実際、上場するためには、社内規程を整備しなければなりません。

社内規程は、従業員、役員が遵守すべき事項を具体化したものであり、規程の整備は内部統制の浸透や運用にとって重要となります。

 

社内規程は、大別すると、①基本規程、②組織規程、③人事労務規程、④総務庶務規程、⑤業務規程の5種類に分けられます。

 

各規程の作成にあたっては、会社のすべての業務を過不足なく網羅していることが必要です。

 

業務上のルールや処理手順が規程として明文化されていないと、各業務処理に内在する問題点を継続的に改善できず、ノウハウが会社に蓄積されない等の弊害が生じる可能性があります。

また、業務範囲や責任関係が暖昧となり業務に支障をきたす可能性もあります。

 

このような意味で、社内規定の整備は必要不可欠なものなのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 9 中小企業は上場を目指せ!?

さて、前回、最終的に上場するかどうかは、メリット、デメリットを勘案して、総合的に判断すべきですが、上場できるような体制を整えておくという意味では、上場を目指すべきという話をしました。

 

では、なぜ、上場できるような体制を整えておく必要があるのでしょうか。

 

このことについては、いろいろな考え方があると思いますが、私は、つぎのように考えています。

 

会社が、安定的に伸びていくためには、将来性のある事業を行っているだけでなく、事業を支えるための仕組みを整えておくことが必要不可欠です。

どんなに売上があっても、現金が枯渇すれば、会社は潰れます。

 

実際、1億円以上の売上があるにもかかわらず、うまくいっていない会社はたくさんありますし、何10億の売上があったにもかかわらず、潰れてしまった会社はたくさんあります。

 

そうならないように、事業を支えるための仕組みづくりが重要なのです。

 

また、現実問題として、実際にトラブルとなってしまった後に、そのトラブルを解決しようとすると、多大な時間と費用が掛かります。

そのため、仕組みの整備は、できるだけ早く行うことが重要なのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 8 中小企業は上場を目指せ!?

先日(平成29年9月13日)、「中小企業の上場戦略~本気で会社を発展させたいなら中小企業は上場を目指せ!!~」というタイトルのセミナーを開催しました。

 

たしかに、上場することで生じるメリットはたくさんあります。

株主である創業者にとっては、創業者利潤の実現、株式価値の増大というメリットが、会社にとっても、資金調達能力の向上、知名度や信用度の向上、優秀な人材の確保が可能となるというメリットがあるといわれています。

 

他方、上場することで生じるデメリットもあります。

一般的には、情報の開示義務の発生、創業者の経営権の喪失、上場維持コストの発生というデメリットがあるといわれています。

 

このように、上場には、メリットもありますが、デメリットもあります。

 

そのため、すべての会社において、上場することが、ベストなわけではありません。

しかし、本気で会社を発展させたいなら、上場できるような体制を整えなくてはなりません。

 

最終的に上場するかどうかは、メリット、デメリットを勘案して、総合的に判断すべきですが、上場できるような体制を整えておくという意味では、上場を目指すべきなのです。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 7

先週、債権の管理をしっかりすることが、取引先の危険な徴候を読み解く大前提であるとお伝えしました。

 

そのうえで、取引先につぎのような事象が生じたら要注意です。

 

たとえば、

・支払金額の値下げ、支払期限(納期)の延期を求めてくる。

これは、資金繰りが厳しいことを端的に表す事象です。

 

・主要な取引先が倒産、契約打切りになった。

この事実が、即経営の悪化につながるわけではありません。

しかし、短期的には資金繰りが悪化する可能性があります。

 

さらに進んで、つぎのような事情が生じたら、具体的な回収行動に入る検討をする必要があります。

 

・赤字決算が続く

・ノンバンクから借金するようになる

・利益を考えないほど大幅な値引きを始める

 

このような徴候が現れたような場合、もうその会社は倒産寸前ですから、速やかに回収行動に入りましょう。

 

債権を回収できないリスクを防ぐためには、債権管理をきちんとしたうえで、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けること。

これに尽きます。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 6

さて、情報を収集し、事前にできる限りリスクは低減しておいたとしても、取引先が破たんし、債権回収が滞ってしまうといった事態も起こりえます。

 

しかし、会社が破たんする場合、事前に何らかの兆候が表れていることも珍しくありません。

その兆候を読み取っていれば、他社にとっては想定外の事態でも、自社にとっては、想定内であり、事前に対策をとることができた・・・ということも起きるかもしれません。

 

では、どのようにして取引先の危険な徴候を読み解けばいいのでしょうか。

 

何よりも重要なのは、債権の管理をしっかりすることです。

取引先の信用調査を行い、 しっかりした契約書も作成し、万全の体勢で取引が開始できたとしても、その後の与信管理をおろそかにすると、結果的に債権回収に支障が生じます。

 

そこで、まずは、取引先に対し、現在いくらの債権・債務があるかを正確に把握しましょう。

 

たとえば、取引基本契約に基づいて、継続的に取引するような場合は、少なくとも注文書・注文請書といった書面を取り交わし、どのような債権・債務が生じているのか、きちんと証拠に残すようにしてください。

 

そして、入金があったらただちに請求額と入金額をつき合わせ、1円単位で一致しているかどうかを確認します。

1円でも一致しないときは、なぜ一致しないのか、すぐにその理由を確認しなければなりません。

 

自社側に問題がない場合には、単に取引先が請求したとおりに支払わないというだけですから、要注意です。

請求したのに支払わないというのは、取引先が破たんする、もっとも顕著な徴候だからです。

 

このように、債権の管理をしっかりすることが、取引先の危険な徴候を読み解く大前提です。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 5

前回、(1)法人の登記事項証明書の調査と(2)インターネットの2つを使って調査するだけでも、リスクを低減することができるという話をしました。

 

ですが、当然、事前にできる限りリスクは低減しておきたいところですよね。

 

そこで、このほか、(3)不動産の登記事項証明書の調査、(4)ヒアリング・現場調査、(5)決算書の調査、(6)調査会社の報告書を活用することで、さらにリスクの低減を図っていくことが重要です。

 

たとえば、(1)法人の登記事項証明書を行い、本店所在地を把握し、本店所在地の(3)不動産全部事項証明書を入手することで、当該不動産の所有者は誰であるか、金融機関から借入れについて抵当権が設定されているか等を確認することで、担保としての価値や、会社の財務状況がわかることもあります。

 

同様に、(4)取引先のオフィスを訪問し、取引先の代表者や取引担当者から話を聞く等、「直接」見聞きすることで得られる情報は意外に多く、また参考になります。

たとえば、詐欺会社は、(ア)すぐに逃げられるように必要最小限の備品しか置いていない、逆に信用度を増そうとして(イ)必要以上に華美な調度品を揃えている等の特徴があると言われています。

取引先の代表者や取引担当者からのヒアリング・取引先オフィス等の訪問は必ず行うべきでしょう。

 

このほか、(5)決算書や(6)調査会社の報告書からも様々な情報を得ることができます。

 

情報を収集し、事前にできる限りリスクは低減しておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

※法律を学び、攻めの経営を!第8回企業法務セミナー

本気で会社を発展させたいなら中小企業は上場を目指せ!!を開催いたします。

開催日時:9月14日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:15名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください

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起業のすゝめ 4

さて、これまで、

・売掛金の回収ができないことは、会社にとって最悪の事態であること

・取引にあたって、事前にリスクを分析し、管理しておくことが必要不可欠であること

・リスク分析、管理にあたり、取引開始前に、信用できる取引先か入念にチェックすること

という話をしてきました。

 

では、信用できる取引先かどうか、どのように見極めたらいいのでしょうか。

 

調査の基本は、(1)法人の登記事項証明書の調査と(2)インターネットです。

この2つだけでも、かなりの情報を得ることができます。

 

たとえば、商号が頻繁に変更されているような会社は、会社が乗っ取られたり、支配権を巡って争いがあったりする可能性があります。

 

また、会社成立の年月日は、後に変更することができませんので、歴史がある老舗の会社であるのか、それとも新参の会社であるのかを把握することができます。

 

さらに、インターネットで、会社の評判や口コミを調べてみたり、グーグルマップ等で本店住所地を入力して調べてみることによって、どのような会社であるかを推認することもできます。

 

このように、(1)法人の登記事項証明書の調査と(2)インターネットの2つを使って調査するだけでも、リスクを低減することができるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

※法律を学び、攻めの経営を!第8回企業法務セミナー

本気で会社を発展させたいなら中小企業は上場を目指せ!!を開催いたします。

開催日時:9月14日(木)18:30~21:00(18:15開場)

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対象:経営者、総務・法務担当者

定員:15名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください

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起業のすゝめ 3

会社を維持し発展させるためには、リスクを適切にコントロールして、企業の維持や発展に大きな影響が生じることのないようにしなければなりません。

 

そのためには、自社の取引や自社の体制のどこにリスクがあるのか、分析し、必要に応じて対処することが重要です。

特に、債権回収におけるリスクの管理は非常に重要です。

 

債権の回収が出来ないと、会社のキャッシュが不足する、要するに会社に現預金が足りないという事態が生じます。

取引先は、お金を払うことができなければ、商品やサービスを提供してはくれませんし、従業員も働いてくれません。

次々と債権の回収が出来なくなれば、現金が枯渇し、黒字倒産の可能性もでてきます。

債権の回収が出来ないことは、会社にとって最悪の事態なのです。

 

このように、会社にとって、債権回収は至上命題であり、そのリスクの管理は必要不可欠といえるのです。

 

ところが、現実の会社経営にあたっては、債権の管理は、意外と疎かにされている感が否めません。

 

それは、経営者が3つの落とし穴に陥ってしまっているからかもしれません。

 

この3つの落とし穴を意識して経営をしていくことができるかどうかで、会社の維持や、発展の速度に違いが出てくるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

※法律を学び、攻めの経営を!第8回企業法務セミナー

本気で会社を発展させたいなら中小企業は上場を目指せ!!を開催いたします。

開催日時:9月14日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:15名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

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起業のすゝめ 2

会社を維持し発展させるためには、リスクを適切にコントロールして、企業の維持や発展に大きな影響が生じることのないようにしなければなりません。

 

そのためには、自社の取引や自社の体制のどこにリスクがあるのか、分析し、必要に応じて対処することが重要です。

特に、債権回収におけるリスクの管理は非常に重要です。

 

債権の回収が出来ないと、会社のキャッシュが不足する、要するに会社に現預金が足りないという事態が生じます。

取引先は、お金を払うことができなければ、商品やサービスを提供してはくれませんし、従業員も働いてくれません。

次々と債権の回収が出来なくなれば、現金が枯渇し、黒字倒産の可能性もでてきます。

債権の回収が出来ないことは、会社にとって最悪の事態なのです。

 

このように、会社にとって、債権回収は至上命題であり、そのリスクの管理は必要不可欠といえるのです。

 

ところが、現実の会社経営にあたっては、債権の管理は、意外と疎かにされている感が否めません。

 

それは、経営者が3つの落とし穴に陥ってしまっているからかもしれません。

 

この3つの落とし穴を意識して経営をしていくことができるかどうかで、会社の維持や、発展の速度に違いが出てくるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業のすゝめ 1

私は、中小企業、だいたい従業員数が10名から300名程度、売上規模でいうと1億から60億くらいの会社のリスク管理、労務管理体制の整備を主たる業務としています。

 

そんな私は、日々業務を行う中で、強く感じることがあります。

それは、なぜ経営者は、法律をもっと知ろうとしないのか、です。

 

みなさんが、起業を決意されたのは、単にお金のためだけですか?

 

違いますよね。

顧客ひいては社会に提供したい何かがあるからではないですか?

やり遂げたい何かがあるからではないのですか?

 

そうであるならば、会社を長期にわたり存続させていくため、会社を守るため、必要最低限の知識は備えておかなければなりません。

 

知っていることで防げるトラブルはたくさんあります。

これまで、単に知らなかったというだけで、多くの会社が不利益を被り、市場から退場していきました。

非常に残念です。

もちろん、専門的な事項は専門家に任せるべきですが、経営者にとって、必要最低限の事項を知らないということは罪なのです。

 

ぜひ、会社を発展させるためのツールを手に入れてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*次週は、お盆休みのため、配信いたしません。

 

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起業塾42:インターネット販売の基礎12(インターネット販売とその他の広告規制)

先週まで、特定商品取引法の規制をみてきましたが、このほかにも、広告に関する規制として、消費者契約法や景品表示法(不当景品類および不当表示防止法等があります。

 

消費者契約法は、消費者が契約を勧誘されている際に、事業者の不適切な行為があった場合、消費者に契約を取り消すことを認めたり、契約書に消費者の権利を不当に害する条項が記載されていた場合に、当該条項を無効とする等、消費者を保護する法律です。

 

たとえば、事業者が重要事項について事実と異なることを告げたことで、消費者が、当該告げられた内容を事実であると誤認して、それによって契約の申込み等の意思表示をしたときは、これを取り消すことができます。

 

また、景品表示法は、商品・サービスの内容等について、実際のものまたは競争事業者にかかるものよりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認される場合には、景品表示法上の不当表示として禁止されています。

 

このような消費者契約法や景品表示法の広告規制は、インターネット販売においても適用され、これらの規制に違反した場合は行政処分や罰則の適用を受けることになります。

 

したがって、インターネット販売を行う事業者は、特定商取引法の規制だけでなく、消費者契約法や景品表示法の広告規制にも従わなければなりません。

 

以上のとおり、インターネット販売を行うにあたっては、気を付けなければならない法的規制が多々あります。

思わぬところで足元をすくわれないよう、インターネット販売を行う際は、事前に法的規制を調査しておくことをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法等(第11回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾41:インターネット販売の基礎11(インターネット販売と特定商品取引法2)

本日のテーマは、前回に引き続き、インターネット販売と特定商取引法です。

インターネット販売は、特定商品取引上の通信販売に該当するため、インターネット販売を行う事業者は、特定商取引法の規制に従う義務があります。

 

たとえば、インターネット販売を行う事業者は、

(ア)商品等の販売価格、送料

(イ)商品・指定権利の売買契約の申込みの撤回・売買契約の解除に関する事項

(ウ)販売業者等の氏名、住所と電話番号

等の事項を表示しなければなりません(特定商品取引法8条、施行規則8条)。

 

また、広告をするときに商品の性能・品質・効能等の事項について、

(ア)著しく事実に相違する表示をしたり、

(イ) 実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示

をしてはならないとされています(特定商品取引法12条、施行規則11条)。

 

さらに、商品等の販売条件等について、原則として、その相手方となる者の承諾を得ないで電子メール広告をしてはならないとされています(特定商品取引法12条の3)。

 

このように、インターネット販売を行うにあたっては、特定商取引法の規制を熟知しておかなければなりません。

 

知らず知らずのうちに、この規制に違反していた、というようなことがないよう注意してください。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法等(第11回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾40:インターネット販売の基礎10(インターネット販売と特定商品取引法1)

本日のテーマは、インターネット販売と特定商取引法です。

 

みなさん、特定商取引法(特定商取引に関する法律)という法律はご存知でしょうか。

 

特定商取引法は、特定商取引、すなわち、(1)訪問販売、(2)通信販売および(3)電話勧誘販売に係る取引、(4)連鎖販売取引、(5)特定継続的役務提供に係る取引、(6)業務提供誘引販売取引ならびに(7)訪問購入に係る取引を規制する法律です(1条*1)。

 

このうち、(2)通信販売とは、販売業者等が、郵便等によって売買契約等の申込みを受けて行う商品の販売等のことをいい、郵便や電話機、ファクシミリ装置のほか、情報処理に用いられる機器を利用する方法が含まれることから(特定商品取引法2条2項*2、施行規則2条2号*3)、インターネット販売も、これに該当します。

 

このため、インターネット販売を行う事業者は、特定商取引法の規制に従う義務があり、違反した場合は行政処分や罰則の適用を受けることになります。

 

すなわち、インターネット上で商品等を販売する事業者は、特定商取引法の規制に従って、

①一定事項を表示しなければならず(11条)、また、

②誇大広告が禁止されている(12条)ほか、

③承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供が禁止される(12条の3)

等の規制を受けることになります。

 

各規制の詳細については、次週以降でみていくことにします。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 特定商品取引法1条

「この法律は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう。以下同じ。)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」

 

*2 特定商品取引法2条2項

『「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは指定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。』

 

*3 特定商品取引法施行規則2条2号

「法第二条第二項 の主務省令で定める方法は、次の各号に掲げるものとする。

二 電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器又は情報処理の用に供する機器を利用する方法」

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法等(第11回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾39:インターネット販売の基礎9(インターネット販売と商標権3)

さて、商標権のラストです。

これまで商標権に関する一般的な話をしてきましたが、今回は、インターネット販売で特に気を付けなければならない点について、解説します。

 

商標権の効力は、一定の場合に制限されています(商標法26条1項)。

たとえば、自社名と同じ会社名が他人によって登録されてしまった場合に、自社名を使用することが出来なくなってしまうと、自社は営業活動をすることが出来なくなってしまいます。

そこで、「自己の名称を普通に用いられる方法で表示する」場合には、商標権の効力は及びません(商標法26条1項1号)。

 

このほか、判例上認められた制限もあります。

その1つが、用尽(消尽)論です。

用尽論は、一旦商標権者によって販売等拡布された商品についての商標権は、以後の商品の再譲渡や再販売等については及ばないという理論のことです。

この考え方は、裁判例上も支持されていますが、注意しなければならないのは、    たとえ商標権者から購入した真正商品であっても、これに別途の行為を及ぼした場合には、商標権侵害となる場合があるということです。

たとえば、真正商品を購入してきて、これを小分けし、詰め替えた物に同じ登録商標や類似商標を付して販売する行為は、商標権侵害となります(大阪地判昭和51年8月4日、大阪地判平成6年2月24日等)。

 

また、並行輸入にも注意しなければなりません。

並行輸入とは、知的財産権者が、外国で製造した真正商品の輸入に関し、当該権利者の総代理店等のルートがあるにもかかわらず、知的財産権者より外国の市場に置かれた商品を現地で購入したうえで、総代理店等を通さずに輸入することをいいます。

しかし、商標法上は、我が国の登録商標の指定商品と同一の商品に、登録商標と同一の商標を付したものを輸入し、国内で販売する行為は、商標権者の許諾がない限り、商権侵害となります(商標法2条3項・25条)。

 

適法な並行輸入となるよう気を付けなければなりません。

 

このようにインターネット販売をするにあたっては、商標法上の規制にも注意する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法(第11回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾38:インターネット販売の基礎8(インターネット販売と商標権2)

さて、先週に引き続き商標権です。

 

先週お伝えしたとおり、商標権者等は、自己の登録商標と同一または類似の標章を使用する者に対し、差止請求(商標法36条)等をすることができます。

 

では、商標の同一性または類似性の判断は、どのように行えばいいのでしょうか。

 

この点に関して、判例は、

「商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断する」(最判昭和43年2月27日、民集22巻2号399頁、氷山印事件)

 

「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない」最判平成20年9月8日、判時2021号92頁、つつみのおひなっこや事件)

としています。

 

ポイントは、

(1)外観、観念、称呼という3つの要素を考慮して類似性を判断する

(2)その商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断する

(3)一部を抽出し、その一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、許されない

という3点です。

 

ただ、明らかに似ていないものであればともかく、実際に類似性を判断することは、非常に難しいと思いますので、迷ったときは、弁護士・弁理士といった専門家に相談することをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法(第11回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾37:インターネット販売の基礎7(インターネット販売と商標権1)

さて、先週まで、著作権をみてきましたが、今回からは、商標権です。

インターネット販売を行う場合、著作権と共に問題となってくるのが、この商標権です。

 

商標法は、商標権者は、登録商標の使用をする権利を専有する(商標法25条本文)と定めています(この専有できる権利を、専用権といいます。)。

そして、かかる専用権の効果として、他人が登録商標と同一の標章を使用することを禁止できる、すなわち排他的独占権が認められています。

 

また、商標法は、商標を使用する専用権の範囲に入る行為ではないが、その範囲に他人が入り込む蓋然性の高い行為を捉えて侵害とみなし、その行為を禁止する権利を認めています(商標法37条1号)。

すなわち、登録商標に類似する標章の使用も禁止することができます。

 

さらに、侵害の予備的行為も侵害とみなして、その行為を禁止する権利を認めています(商標法37条2号等)。

したがって、第三者が権原なく、これらの行為をした場合、商標権侵害に該当します。

 

そして、商標権侵害がなされた場合、商標権者等は、差止請求(商標法36条)、損害賠償請求(民法709条)、信用回復請求(商標法39条、特許法106条)等をすることが認められています。

 

そのため、何らかの標章を使用する際は、当該標章が登録されていないか、調べておいた方が無難です。

 

また、自社のブランド戦略として、社名や商品名、インターネットサイトの名称等の商標権を取得する、ということも検討してみても良いと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

第12回経営者勉強会

日時:平成29年7月11日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾36:インターネット販売の基礎6(インターネット販売と著作権3)

前回、前々回に引き続き、著作権についてです。

 

前々回、少し触れましたが、一定の場合には著作権者の許諾なく著作物を利用することができます(著作権法30条以下)。

この中でも特に問題となるのが引用(著作権法32条)です。

 

条文上、引用は、

「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」(著作権法32条1項)

と規定されています。

 

ところが、最高裁(最判昭和55年3月28日、民集34巻3号244頁、パロディ事件)は、条文上明示されていない明瞭区分性と主従関係という2つの要件を用いており、この2つの要件と条文上の文言との関係は必ずしも明らかではなく、学説も錯綜しています。

 

一つの考え方は、「引用」(32条1項)といえるためには、①公表された著作物であること、②公正な慣行に合致するものであること(明瞭区分性と主従関係)、③報道、批評、研究その他の目的上正当な範囲内でなされること、が必要であるとするものです。

 

ただ、このように引用にあたるかは、一律に判断することができません。

そのため、安易に引用にあたると判断して、著作権者に無断で他人の著作物を利用するのは非常に危険です。

 

引用をする場合には、このくらいは大丈夫だろうと自己判断せず、きちんと相談することをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第8回経営者勉強会

日時:平成29年4月18日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について(第7回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾35:インターネット販売の基礎5(インターネット販売と著作権2)

前回に引き続き、著作権についてです。

 

著作権法上、著作者とは、著作物を創作する者をいい(著作権法2条1項2号)、著作者は、著作者人格権(著作権法18条1項、19条1項及び20条1項に規定する権利)および著作財産権(著作権法21条から28条までに規定する権利)を享有する(著作権法17条1項)とされています。

 

したがって、著作権者の許諾なく、著作物を利用する行為は、著作権侵害となるのが原則です(ただし、一定の場合には著作権者の許諾なく著作物を利用することができます。著作権法30条以下)。

 

そして、著作権は、複製権、上演権等の複数の権利の束(これらひとつひとつの権利を「支分権」といいます。)で構成されています。すなわち、各権利は、個別の独立した権利として存在しているということです。

 

たとえば、著作権者から、複製の許諾を得ていたとしても、ホームページにアップロード(送信可能化、自動公衆送信)するためには、別途その旨の許諾が必要となります。もし、ホームページにアップロード(送信可能化、自動公衆送信)するための許諾を得ていないのであれば、それは、著作権者の許諾なく、著作物を利用する行為となり、著作権侵害となってしまいます。

 

同様に、音楽の著作物について、演奏の許諾を得ても、その演奏を録音・録画するためには、別途複製について許諾が必要ということになります。

 

なお、支分権のうち、インターネット販売との関係で、最も問題となりやすいのは、㋐複製権(著作権法21条、2条1項15号)と㋑翻案権(著作権法27条)という2つの支分権です。

①既存の著作物と全く同一の作品を作出した場合や、②既存の著作物に修正増減を加えているが、その修正増減について創作性が認められない場合は、㋐複製権の侵害になり、③既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われるに至っていない場合は、㋑翻案権の侵害となります。

 

このため、他の販売サイトに記載されている商品説明をそのままコピーしたり、多少表現を変更しただけで使用することは、㋐複製権または㋑翻案権の侵害になる可能性が高いです。

 

したがって、このような行為は、極力避けるべきであるといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾34:インターネット販売の基礎4(インターネット販売と著作権1)

インターネット販売を行う場合、販売のためのウェブサイトを作成することになります。

もちろん、自社のホームページを活用する場合や、楽天のようなインターネット上のショッピングモールで販売する場合等その形態は様々であるとは思います。

しかし、いずれの場合でも著作権に関する知識は欠かせません。

 

たとえば、商品を販売する際に、カタログ写真をコピーして載せることができるのか、他の販売サイトに記載されている商品説明をそのまま使用できるのか、商品の写真に第三者の著作物が写り込んでいた場合どうなるのか等、インターネット販売を行う際には、著作権が関連してきます。

 

では、そもそも著作権とは、どのような権利なのでしょうか。

 

著作権法は、主として著作物に関する規律を定めた法律です。

すなわち、著作物の創作者である著作者に「著作者の権利」(著作者人格権および著作権)を定めることによって、著作者の利益を保護するものです。

 

つぎに、「著作物」とは一体なんなのでしょうか?

 

著作権法上、著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)とされています。

「思想または感情」の表現であることが要求されていますから、思想・感情を表現したものとはいえないもの、単なる事実やデータは著作物にはあたりません。

したがって、たとえば、列車の時刻表や料金表は著作物にはあたりません。

 

また、「創作的な」表現でなければなりませんから、表現が平凡、かつありふれたものである場合には、創作性が否定される場合があります。

したがって、たとえば、機械の部品などのカタログ写真は、機械のメカニズムを利用して被写体を忠実に再製しただけにすぎず、著作物にはあたりません。

 

したがって、商品を販売する際に、カタログ写真をコピーして載せたとしても、著作権侵害となる可能性は低いでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第8回経営者勉強会

日時:平成29年4月18日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について(第7回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾33:インターネット販売の基礎3

前回、前々回と、インターネット販売に特有の契約の成立に関する問題をみてきました。

このほかにも、インターネット販売に関しては、通常の取引とは異なる電子商取引特有の規定が設けられていることがあります。

特に注意しなければならない規定として、電子契約法3条があります。

 

「民法第九十五条ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。

一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。

二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。」

 

これだけ読んでも、なにをいっているのかよくわからないかもしれません、

この規定は、要するに、

(1)消費者が申込を行う前に、消費者の申込内容等を確認する措置を事業者側が講じた場合、または消費者自らが確認措置が不要である旨意思の表明をした場合を除き、

(2)操作ミスによる消費者の申込の意思表示は無効となる

ということを明らかにしています。

 

つまり、(1)の場合を除き、後々、消費者から、

「あれは誤操作だった」(全く申込みを行う意思がないにもかかわらず、操作を誤って申込みを行ってしまった)、「あれは契約内容を勘違いしていた」(操作を誤って申込みの内容を入力してしまったにもかかわらず、それを訂正しないままに内心の意思と異なる内容の申込みであると表示から推断される表示行為を行ってしまったような場合)として、契約の無効を主張されてしまう危険性がある、ということです。

 

したがって、インターネット販売を行う場合は、このような問題が生じないよう、きちんと消費者の申込内容等を確認する措置を講じておく必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第8回経営者勉強会

日時:平成29年4月18日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について(第7回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

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起業塾32:インターネット販売の基礎2

前回、契約は、申込の意思表示と、承諾の意思表示の合致によって成立するということを例にとり、インターネット販売では、店舗での販売とは異なった配慮が求められるため、注意が必要であるという話をしました。

 

その際には触れなかったのですが、実は、法律上、承諾の意思表示の効力発生時期に関する規定があります。

 

まず、隔地者に対する意思表示は、「その通知が相手方に到達した時」から効力が生じます(民法97条1項)。

 

ただし、こと契約に関しては、「承諾の通知を発した時」に効力が生じるとされています(民法526条1項)。

 

したがって、郵送で契約を締結する場合、承諾の通知の発信時に契約が成立することになります。

これが大原則です。

 

ところが、電子消費者契約および電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子契約法電)4条は、「民法第五百二十六条第一項および第五百二十七条の規定は、隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合については、適用しない。」と定めています。

そのため、電子商取引の場合は、承諾の通知の到達時に契約が成立することになります。

 

通常、この違いが大きな問題となることはありませんが、契約の成否が争われた場合等には問題となりうるところですから、インターネット販売を行う方は覚えておくとよいでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

 

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第8回経営者勉強会

日時:平成29年4月18日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について(第7回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権(第9回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第11回経営者勉強会

日時:平成29年6月6日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと特定商取引法

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾31:インターネット販売の基礎1

契約は、申込の意思表示と、承諾の意思表示の合致により、成立します。

 

申込の意思表示、というのがわかりにくいかもしれませんが、買主の立場からすれば、これが欲しいです、売ってください、と相手方に申し込むことが申込の意思表示になります。

これに対し、いいですよ、売りますよ、と買主である相手方に答えることが、承諾の意思表示です。

 

コンビニで買い物をする場合を例にとると、棚から商品を手に取ってレジに持っていく行為が申込の意思表示で、店員がこれをバーコードリーダーで読み込む行為が承諾の意思表示ということになるでしょう。

 

では、インターネット販売では、何が申込の意思表示または承諾の意思表示となるのでしょうか。

 

まず、申込の意思表示ですが、これはわかりやすいと思います。

購入者が、購入ボタンを押す行為です。

 

つぎに承諾の意思表示ですが、たとえば、販売店が、注文を承諾したという内容の返信メールを送信した場合は、承諾の意思表示となるでしょう。

 

ただ、この場合、もし商品の在庫がなかったら、成立した売買契約の不履行となってしまいます。

 

そのため、たとえばアマゾンでは、注文を承諾したという内容の返信メールではなく、あくまでも注文を受領したことを確認するだけにすぎないものであることを明記した返信メールを送信し、返信メールが承諾の意思表示ではないことを明記しています。

 

このようにインターネット販売では、店舗での販売とは異なった配慮が求められるため、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

※「法律を学び、攻めの経営を! 第7回企業法務セミナー※インターネット販売の落とし穴編」を開催いたします。

 

開催日時:6月21日(水)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

*席数に限りがありますので、参加をご希望の方は、お問い合わせください。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

第7回経営者勉強会

日時:平成29年4月4日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について

参加費(昼食代):1500円

 

第8回経営者勉強会

日時:平成29年4月18日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について(第7回と同内容です。)

参加費(昼食代):1500円

 

第9回経営者勉強会

日時:平成29年5月9日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

 

第10回経営者勉強会

日時:平成29年5月23日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネットと著作権

参加費(昼食代):1500円

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起業塾30:情報管理4(情報漏えいを起こした者に対する責任追及)

情報管理の最終回は、情報漏えいを起こした者に対する責任追及です。

 

情報漏えいを起こした者に対しては、

①民事上の責任追及

②刑事上の責任追及

③懲戒処分(従業員の場合)

という3つの責任追及をすることが考えられます。

 

まず、①民事上の責任追及ですが、漏えい者が、故意または過失によって、情報漏えいを起こした場合、会社は、当該漏えい者に対し、債務不履行または不法行為を理由に損害賠償請求をすることができます。

 

つぎに、②刑事上の責任追及ですが、たとえば、漏えい者が情報を記録していた媒体を不法に領得した場合、窃盗罪(刑法235条)や業務上横領罪(刑法253条)に該当します。

 

したがって、漏えい者が、故意または過失によって、情報漏えいを起こした場合、会社は、当該漏えい者に対し、警察に被害届を出したり、告訴をする等して、刑事責任を追及することが考えられます。

 

最後に、漏えい者が従業員であったような場合、会社は、就業規則に基づいて、③懲戒処分をすることが考えられます。

この場合、故意・過失や、行為態様、情報流出の規模や会社への影響等を勘案して、処分を検討することになります。

 

以上のとおり、情報漏えいを起こした者に対しては、①民事上の責任追及、②刑事上の責任追及、③懲戒処分(従業員の場合)という3つの責任追及をすることが考えられます。

 

ただ、やはり漏えいを起こしたことの責任追及をするよりも、日頃からきちんと、漏えいが起きないような情報管理体制を整備していただければ幸いです。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第7回経営者勉強会

日時:平成29年4月4日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾29:情報管理3(情報漏えいのリスク3)

前回、残念ながら情報管理がうまくいかず、情報漏えいを起こしてしまった場合、金銭的な損失を迫られたり、評判・信用の低下が起きてしまう可能性についてお伝えしました。

今回は、漏えいした情報が個人情報であったような場合に、これらに加えてさらに刑事罰を受ける可能性があります。

 

個人情報保護法上、「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」とされています(20条)。

 

また、個人情報取扱事業者は、従業員や委託先に個人データを取り扱わせるにあたっては、これら安全管理措置として、従業員や委託先に対しても、必要かつ適切な監督を行うことが義務付けられています(個人情報保護法21条、22条)。

 

したがって、たとえば、会社が保管していた個人情報を従業員が正当な理由なく漏えいしてしまった場合には、会社は、その従業員に対する個人情報保護法上の安全管理措置の監督義務に違反したとして、個人情報保護委員会の勧告・命令(個人情報保護法34条)の対象となる可能性があります。

 

そして、この命令に違反した場合は、「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」とされています(個人情報保護法74条)。

 

このように、情報漏えいが起きた場合、会社は民事上の責任だけでなく、刑事上の責任まで負わなければならない可能性があるのです。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第7回経営者勉強会

日時:平成29年4月4日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾28:情報管理2(情報漏えいのリスク2)

今回は、残念ながら情報管理がうまくいかず、情報漏えいを起こしてしまった場合についてです。

 

2014年に起きたベネッセの個人情報流出事件のほかにも、個人情報が漏えいした事案は多数存在します。

 

たとえば、電気通信サービス事業者が保有していた、会員約450万人分の個人情報が外部に漏えいした事案では、情報漏えいの被害者から訴訟を提起され、1人あたり5500円の損害賠償義務が認められました(大阪高判平成19年6月21日(判タ1230号227頁)。

 

この事案は、外部から不正アクセスされ、会員の個人情報が外部に漏洩したというものですが、裁判所は、会社側に外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を怠った過失があり、当該過失により不正取得を防ぐことができなかったのであるから、情報漏えいの被害者に対し、その損害を賠償する義務があると判断しました。

 

この事案は、外部から不正アクセスされた事案であり、会社は不正アクセスを行った者との関係では、いわば被害者ともいえる立場ですが、情報漏えいの際は、責任を負わされ、金銭的な損失を迫られてしまうのです。

 

そして、さらに、レピュテーションリスク、評判・信用の低下による影響は計り知れません。

 

このように、情報漏洩によって、会社は甚大な損害を被ることがありうるのです。

また、理論的には、取締役個人としても賠償責任を負う可能性があります。

 

会社としては、自社の従業員や取引先との間で適正に情報を管理するだけでなく、外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講じる義務を負っていることに注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第7回経営者勉強会

日時:平成29年4月4日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾27:情報管理1(情報漏えいのリスク1)

前回まで、秘密情報の管理についてお伝えしてきました。

ただ、いかに管理をしっかりしなければならないといっても、実際、情報漏えい事故はどのくらい起きているのでしょうか。

 

少し古い情報ですが、消費者庁が公表している「平成25年度 個人情報の保護に関する法律施行状況の概要」(平成26年10月)によれば、ここ5年くらいは、苦情相談が5000件強、漏えい事案は、300~500件の間で推移しているようです。

 

これを多いとみるか少ないとみるかは、人によって評価が分れるところかもしれません。

 

しかし、ひとたび情報漏えいが起きると、会社に大きなダメージを与える可能性があります。

最悪の場合、会社が倒産する、という事態も考えられます。

 

2014年に起きたベネッセの個人情報流出事件は記憶に新しいところと思いますが、この事件では、実際に顧客情報に関するデータベースの運用や保守管理受託していたベネッセの子会社が倒産しています。

 

このように、情報漏えい事故による影響は、無視できないものなのです。

 

次回は、どのようなリスクが生じるのか、具体的な事案を参考に見ていきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第7回経営者勉強会

日時:平成29年4月4日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:インターネット上のオンライン契約について

参加費(昼食代):1500円

 

 

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起業塾26:秘密情報の管理6(会社外の秘密保持義務2)

前回、秘密保持契約を検討する際には、①秘密情報の対象は何か、②秘密保持義務の内容はどのようなものか、③情報を開示する側か、開示される側か、という視点が重要であるということをお伝えしました。

 

では、なぜこのような視点が重要なのでしょうか。

 

まず、秘密保持契約は、文字通り、「秘密」を保持するための契約書です。

ところが、無限定に秘密情報としてしまうと、本当に秘密とすべき情報が一体どれなのか、分からなくなってしまいます。

その結果、秘密情報として保護されない、という最悪の事態も起こりえます。

 

また、秘密保持義務を課しているにもかかわらず、これに反した場合、最終的には金銭的な解決(損害賠償)がはかられることになります。

この損害賠償の請求にあたっては、被開示者に、秘密情報を漏洩したことについて、故意または過失があることが必要です。

ところが、保護すべき秘密情報がどれかわからないと、故意・過失のいずれも存在しない、とされ、損害賠償義務が認められないということにもなりかねません。

 

そのため、このように秘密情報が特定されていること、すなわち、①秘密情報の対象は何か、というのは秘密保持契約において非常に重要な事項なのです。

 

また、秘密保持義務に限らず、一体どのような義務を負っているのか(②秘密保持義務の内容)は、とても重要ですし、自社がどのような義務を負っているのかを考えるにあたっては、③情報を開示する側か、開示される側なのか、という視点がとても重要になってきます。

 

このような理由から、秘密保持契約を検討する際には、①秘密情報の対象は何か、②秘密保持義務の内容はどのようなものか、③情報を開示する側か、開示される側か、という視点をもっておくとよいでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

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※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾25:秘密情報の管理5(会社外の秘密保持義務1)

前回まで、従業員との関係では、会社は、従業員と個別に秘密保持に関する誓約書を締結したり、秘密保持規程を作成したりして、従業員が守るべき義務として、秘密保持義務を、その対象となる秘密の内容や範囲を明確化しておく必要がある、ということをお伝えしてきました。

 

それでは、会社外部との関係では、どのようにして秘密を秘密として保持していけばよいのでしょうか。

 

まず、押さえておかなければならないのは、会社外部の取引先や協力会社は、当然には秘密保持契約を負うことにはならない、つまり、会社外部の取引先や協力会社に秘密保持義務を課すためには、その旨の契約をしなければならない、ということです。

 

これは、その対象となる秘密の内容や範囲が不明確である等の問題があるものの、労働契約上の付随義務・誠実義務の一環として、秘密保持義務を負っていた従業員の場合と大きく異なる点です。

 

そして、会社外部の取引先や協力会社に秘密保持義務を課すためには、その旨の契約をしなければならないということは、すなわち、秘密情報の対象や秘密保持義務の内容を具体的に定めなければならない、ということです。

 

そこで、秘密保持契約を検討する際には、①秘密情報の対象は何か、②秘密保持義務の内容はどのようなものか、という点に注意しなければなりません。

 

また、③情報を開示する側か、開示される側か、という視点も非常に重要です。

これは、いずれの立場になるかで、条項を検討・変更する方向性が変ってくるからです。

 

次回は、なぜこのような視点が重要なのか、について解説していきます。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

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※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

*第6回経営者勉強会

日時:平成29年3月28日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは(第5回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾24:秘密情報の管理4(従業員の秘密保持義務2)

前回、会社が健全に存続・発展していくためには、営業秘密以外の情報についても、その流出を防止しなければならず、会社は、秘密保持規程を作成したり、従業員と個別に秘密保持に関する誓約書を締結したりして、従業員が守るべき義務として、秘密保持義務をその対象となる秘密の内容や範囲を明確化しておく必要がある、ということをお伝えしました。

 

では、この秘密保持に関する誓約書を、いつの時点で作成しておくべきでしょうか。

 

最も望ましいのは、入社時、具体的なプロジェクト時、退社時と異なるタイミングで、それぞれ誓約書にサインをしてもらうことです。

こうすることで、秘密保持義務を負っているとは知らなかった、何が秘密保持義務の対象かわからなかったといったといった従業員からの反論を封じることができます。

 

これに対し、最悪なのは、退職時に、いきなり誓約書を書かせようとすることです。

これからこの会社で働こうという意欲がある入社時と異なり、退社時は、その会社と縁を切ろうとしている段階です。

そのようなときに会社側が誓約書へのサインを求めたとしても、従業員は、なかなかそれに応じてくれません。

 

したがって、ベストは、入社時、具体的なプロジェクト時、退社時と異なるタイミングで、それぞれ誓約書にサインをしてもらうことです。

そして、それが難しいようであれば、少なくとも、入社時にサインをしてもらうことをお勧めします。

 

次回は、会社外に秘密情報を提供する場合に、どのように保護するのか、いわゆる秘密保持契約書について、検討していこうと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

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※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

 

*第4回経営者勉強会

日時:平成29年2月7日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは(第3回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾23:秘密情報の管理3(従業員の秘密保持義務1)

前回、前々回と、会社の秘密情報の保護に関する法律は不正競争防止法という法律1つしかないこと、不正競争防止法の保護を受けるためには、「営業秘密」に該当しなければならないこと、「営業秘密」として保護されるためには①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3つの要件を満たしている必要があることについて、お伝えしてきました。

 

しかし、営業秘密にあたらないものであっても、会社としては流出を防止しなければならない情報は多々あります。

 

たとえば、従業員の不祥事に関する情報、従業員が横領や背任等で逮捕されたといった情報は、事業活動に有用な技術上または営業上の情報とはいえないでしょう。

また、社員や役員の人事に関する情報や、人事組織に関する情報は、有用な情報であっても、直ちには、事業活動に有用な技術上または営業上の情報とはいえません。

 

したがって、会社が健全に存続・発展していくためには、営業秘密以外の情報についても、その流出を防止しなければなりません。

 

一応、従業員は、労働契約上の付随義務・誠実義務の一環として、秘密保持義務を負っています。

しかし、労働契約上の付随義務・誠実義務の一環としての秘密保持義務は、その対象となる秘密の内容や範囲が不明確である等の問題があります。

 

そこで、会社は、従業員と個別に秘密保持に関する誓約書を締結したり、秘密保持規程を作成したりして、従業員が守るべき義務として、秘密保持義務をその対象となる秘密の内容や範囲を明確化しておく必要があります。

 

ぜひ情報の適正な管理を行い、会社が発展していく礎を築いてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*第6回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!情報管理の基本を習得し、万全な対策を!』

※情報管理の基本 情報漏えいリスクとその対策編

開催日時:3月16日(木)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:8000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第4回経営者勉強会

日時:平成29年2月7日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは(第3回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾22:秘密情報の管理2(営業秘密)

前回、会社の秘密情報の保護に関する法律は不正競争防止法という法律1つしかないこと、そして、不正競争防止法の保護を受けるためには、「営業秘密」に該当しなければならないということをお伝えしました。

 

では、不正競争防止法の保護を受ける「営業秘密」とは、どのようなものなのでしょうか。

 

不正競争防止法は、「営業秘密」について、つぎのとおり定めています。

 

「この法律において営業秘密とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」(不正競争防止法2条6項)

 

すなわち、

①秘密管理性(「秘密として管理されている」)

②有用性(「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」)

③非公知性(「公然と知られていないもの」)

という3つの要件を満たしているものが、営業秘密として保護されます。

 

この中で最も重要な要件は、①秘密管理性です。

営業秘密として保護されるためには、会社が、「これは営業秘密である」と主観的に認識しているだけでは足りません。

㋐特定の情報を秘密として管理するという意思

㋑経済合理的な秘密管理措置が取られていること

㋒従業員が、当該情報が秘密であると認識できること

が必要です。

 

具体的には、たとえば、紙媒体であれば、ファイルの利用等により一般情報からの合理的な区分を行ったうえで、当該文書に「マル秘」など秘密であることを表示するといった管理を行うことが必要です。

 

なお、次回は、営業秘密にあたらない情報であっても、会社としては流出を防止しなければならない情報をどのように保護していくのか、についてみていきます。

(弁護士 國安耕太)

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

 

*第4回経営者勉強会

日時:平成29年2月7日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは(第3回と同内容となります。)

参加費(昼食代):1500円

 

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾21:秘密情報の管理1(会社の秘密情報の保護)

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

2017年、最初のテーマは、秘密情報の管理です。

 

会社は、その事業を行う過程で、様々な情報を獲得し、活用していくことになります。

その中で、対外的に公開したくない、秘匿しておきたい情報(秘密情報)というものがあると思います。

たとえば、技術に関する情報、社員や役員の人事に関する情報などは、一定の時期が経過するまで(または、半永久的に)秘匿しておきたいと考えるのが通常でしょう。

また、顧客に関する情報、社員や役員個人に関する情報も、一般的には公開したくない情報でしょう。

 

では、そのような会社の秘密情報の保護に関する法律は、どのくらいあるのでしょうか。

 

実は、会社の秘密情報の保護に関する法律は、不正競争防止法という法律1つしかありません。

 

しかも、この不正競争防止法だけでは、すべての秘密情報が保護されるわけではありません。

 

不正競争防止法は、「営業秘密」に該当する秘密情報しか保護の対象としていないのです(不正競争防止法2条1項4号ないし10号)。

 

次回は、この「営業秘密」とはどのようなものなのか、見ていくことにします。

(弁護士 國安耕太)

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

 

*第4回経営者勉強会

日時:平成29年2月7日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

 

*第5回経営者勉強会

日時:平成29年2月21日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:秘密保持契約とは

参加費(昼食代):1500円

 

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起業塾20:社内体制の整備11(モデル就業規則の問題点)

前回の最後に、厚生労働省のモデル就業規則*1には多々問題がありますので、利用には注意が必要です、という話を少ししました。

 

では、具体的に、モデル就業規則のどのような規定が問題なのでしょうか。

 

たとえば、モデル就業規則には、「休職」に関する規定があります*2。

「休職」とは、業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

 

従業員と会社との間の労働契約は、従業員が会社に対し、労働力を提供することをその内容としていますから、従業員が私傷病によって会社に対し労務提供できない場合、本来は解雇として取り扱われます。

そのため、休職は、従業員が会社に対し労務提供ができないとしても、即時に解雇するのではなく、労働契約関係を維持しながら、一定期間猶予を与えるものといえます。

 

要するに、従業員を保護するための制度なのです。

 

ところが、実は、労働基準法をはじめとした労働法には、「休職」に関する規定が一切ありません。

これは、つまり、休職の対象となる従業員や休職期間その他の条件を会社が自由に決められるというにとどまらず、そもそも休職制度を置くかどうかも自由に決められるということです。

 

スタートアップの会社や、従業員が10数名しかいない会社で、本当に休職制度を設ける必要があるのでしょうか。

休職期間中、給与の支払義務はないとしても、社会保険の支払義務は残ります。

 

もちろん、考えた結果、制度が必要だ!という判断もあり得るでしょう。

しかし、少なくとも本当に必要なのか、きちんと検討する必要はあるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

 

*2

第9条

1 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

①業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき:  年以内

②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき:必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第2回経営者勉強会

日時:平成29年1月10日午前7時〜8時30分

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(朝食代):1500円

 

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

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起業塾19:社内体制の整備10(就業規則の有用性)

常時10人以上の従業員を使用する会社は、労働基準法89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。

 

では、従業員が10人未満の会社は、就業規則を作成しなくてもよいのでしょうか。

 

確かに、法律上、従業員が10人未満の会社には、就業規則の作成義務はありません。

しかし、スタートアップの会社等、従業員が10人未満の会社であっても、就業規則を作成しておくメリットは複数あります。

 

まず、最も大きなメリットは、個々の会社の状況に則した服務規律を定めることができるという点です。

たとえば、無断欠勤や、遅刻早退を繰り返す従業員がいたとしても、そのような場合の処分に関する明確なルールが定められていなければ、会社は、当該従業員を減給処分等することはできません。

また、当然ですが、前々回ご紹介した固定残業手当(定額残業代)制度を利用することもできません。

 

また、厚生労働省管轄の助成金の中には、就業規則の作成が前提とされているものがあります。

就業規則を作成しておくで、このような助成金を申請することが可能になります。

 

その他、従業員とのトラブルを未然に防止することができたり、良い人材確保ができたりといった副次的なメリットもあるでしょう。

 

このように、就業規則を作成しておくメリットは複数あります。

 

ただ、就業規則であれば、何でもよいというわけではありません。

実際、社会保険労務士や弁護士に就業規則の作成を依頼せず、厚生労働省が公表しているモデル就業規則*を自社の就業規則としている会社を見かけます。

しかし、モデル就業規則には多々問題がありますので、利用には注意が必要です。

 

次回は、モデル就業規則等ひな形の問題点について、見ていきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第2回経営者勉強会

日時:平成29年1月10日午前7時〜8時30分

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(朝食代):1500円

 

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

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起業塾18:社内体制の整備9(安全配慮義務)

業務が原因で、従業員が死傷した場合、従業員ないしその家族は、会社に対し、不法行為を理由とする損害賠償請求(民法709条)をすることができます。

 

また、債務不履行(安全配慮義務違反)を理由とする損害賠償請求(民法415条)をすることもできます。

安全配慮義務とは、判例上、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」(最判昭和59.4.10、民集38-6-557、川義事件)とされてきたもので、現在では、労働契約法5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。

 

そして、たとえば、過重労働が問題となった過去の裁判例では、「会社は、労働者であるAを雇用し、自らの管理下におき、a駅店での業務に従事させていたのであるから、Aの生命・健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を負っていたといえる。具体的には、Aの労働時間を把握し、長時間労働とならないような体制をとり、一時、やむを得ず長時間労働となる期間があったとしても、それが恒常的にならないよう調整するなどし、労働時間、休憩時間及び休日等が適正になるよう注意すべき義務があった。」として、長時間労働を原因とする死亡につき、会社に損害賠償義務を認めています(京都地判平成22年5月25日、労判1011号35頁)。

 

また、昨今では、会社だけでなく、取締役等の役員個人に対する損害賠償訴訟も提起されるようになってきました。そして、実際に損害賠償請求が認められる事案も出てきています。

上記裁判例でも、会社のみならず、役員個人に対しても、会社法429条1項*に基づく損害賠償義務を認めています。

 

会社にとって、事前に専門家によるチェックを受け、適正な労務管理を行うことは非常に重要ですが、会社のみならず、役員個人にとっても、適正な労務管理を行うことが直接的かつ重要な意味を持つといえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*会社法429条1項

役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第1回経営者勉強会

日時:平成28年12月20日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(昼食代):1500円

 

*第2回経営者勉強会

日時:平成29年1月10日午前7時〜8時30分

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(朝食代):1500円

 

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

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起業塾17:社内体制の整備8(固定残業手当制度)

近時、いわゆる固定残業手当(定額残業代)制度、すなわち、定額の残業手当を支払うことで、時間外労働に対する割増賃金の支払いに代えるとの制度を導入している会社が増えています。

 

固定残業手当制度も、現実の時間外労働時間に基づいて算出される割増賃金額を下回らないかぎり適法です。

 

ただし、そもそも固定残業手当制度として認められるためには、少なくとも、(1)基本給部分と固定残業手当部分とを明確に区別できること、(2)他の支給目的と混同する名称が用いられていないこと、(3)固定分を超えた部分について差額を支払うことが、(4)就業規則・賃金規程・労働条件通知書等に記載されていることが必要とされています。

 

これらの要件を満たしていないと、制度が無効となってしまう可能性があるので、注意が必要です。

 

実際、過去の裁判例では、就業規則および賃金規程が明確性・一義性に欠けること、実際に労働者が自己の毎月の労働による具体的時間外割増賃金額を了知できないこと等から、割増賃金が能力給に含まれるとの会社の主張を認めなかった事案があります(東京地判平成20年3月21日、労判967号35頁、フジビルメンテナンス事件)。

 

また、たとえ労働者と、固定額しか支払わないとの合意をしていたとしても、そのような合意は労働基準法37条に反し無効となります。

 

そして、固定残業手当(定額残業代)制度が無効とされると、当該手当の額が割増賃金算定の基礎金額に算入されてしまい、予想外の金額を支払わなければならなくなる危険性があります。

 

固定残業手当(定額残業代)制度を導入・運用する際は、きちんと弁護士、社会保険労務士等の専門家に相談することをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第1回経営者勉強会

日時:平成28年12月20日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(昼食代):1500円

 

*第2回経営者勉強会

日時:平成29年1月10日午前7時〜8時30分

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(朝食代):1500円

 

*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

テーマ:営業秘密とは

参加費(昼食代):1500円

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起業塾16:社内体制の整備7(名ばかり管理職)

みなさんは、数年前、某ファーストフード店の店長が、某ファーストフード店に対し、数百万円の割増賃金の支払を求める訴訟を提起して話題になりましたが、ご存じでしょうか。

これは、某ファーストフード店側が、店長は管理監督者であるとして、割増賃金を支払っていなかったところ、店長側が、某ファーストフード店の店長は管理監督者に該当しないとして、未払いの割増賃金の支払を求めた事案です。

 

みなさんの中には、課長や部長という役職がついていれば、残業代を支払わなくてよいという話を聞いたことがある、という方がいらっしゃるかもしれません。

 

確かに、労働基準法上、割増賃金に関する32条は、(1)農業、畜産・水産業に従事する者、(2)管理監督者および(3)監視・継続労働従事者には適用されないとされています(41条)。

そのため、某ファーストフード店の店長が、この労働基準法41条の「管理監督者」に該当するのであれば、割増賃金の支払義務はありません。

 

しかし、管理監督者にあたるかどうかは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、名称にとらわれず、実態に即して判断されます。

具体的には、㋐職務内容、権利と権限が、管理者としてふさわしいものであるか、㋑出退勤の自由ないし裁量性が存在しているか、㋒地位にふさわしい待遇を与えているかどうかを総合的に考慮して判断されることになります。

 

これらにかんがみると、管理監督者に該当する人は、意外に少ないということが分かると思います。

 

結果的に上記事案でも、「店長は、その職務の内容、権限および責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない」(東京地判平成20.1.28判時1998号149頁)として、某ファーストフード店側に、数百万円の割増賃金の支払を命じられています。

 

管理職であるというだけで、割増賃金の支払いを拒むことはできません。

自社の制度設計をきちんと見直してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

※下記の日程で経営者勉強会を開催いたします。定員少数のため満席の場合はご容赦ください。

*第1回経営者勉強会

日時:平成28年12月20日午前11時30分~午後1時

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

参加費(昼食代):1500円

 

*第2回経営者勉強会

日時:平成29年1月10日午前7時〜8時30分

定員:7名

テーマ:従業員の秘密保持義務(秘密保持誓約書の作り方)

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*第3回経営者勉強会

日時:平成29年1月24日午前11時30分〜午後1時

定員:7名

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参加費(昼食代):1500円

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起業塾15:社内体制の整備6(残業代請求)

近時、いわゆる未払残業代を請求される事案が増えています。

かなり高額の請求がなさるケースもあるようで、中小企業にとっては、経営の存続にかかわるような大きなダメージを与える可能性があります(もちろん、本来、会社が支払っておかなければならないものですが。)。

 

さて、「いわゆる」未払残業代と記載したのは、法律上「残業代」という概念が存在していないからです。

労働基準法上は、「労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」(労働基準法37条1項*)と規定しており、法律上は、あくまでも未払「割増賃金」請求です。

この割増賃金の典型が残業代ですが、上記の定義にもあるように、労働時間を勤務時間前に延長した場合、すなわち、早出の場合や、休日労働の場合にも割増賃金の支払義務が生じることになります。

 

そして、この割増賃金の基準となる「労働時間」に関する規定は、労働基準法32条にあります。

労働基準法32条は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない(1号)」「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない(2号)」と規定しています。

 

結局のところ、いわゆる残業代請求とは、「労基法上の、1日8時間、1週40時間の上限を超えた労働(時間外労働)を行った場合、割増賃金の支払義務が生じているにもかかわらず、これを支払っていない」会社に対し、この支払いを求めていくもの、ということになります。

 

なお、この労働基準法32条の「労働時間」としてカウントできるか否かについて、最高裁は、「労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否か」で、判断しています(最判平成12年3月9日、民集54巻3号801頁、三菱重工長崎造船所事件)。

(弁護士 國安耕太)

 

*労働基準法37条1項

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

*第5回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!労務管理の基本を習得し、労務リスク対策を』

※労務管理の基本 雇用と業務委託契約の使い方編

開催日時:11月25 日(金)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 七F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:5000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

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起業塾14:社内体制の整備5(試用期間終了時の本採用拒否)

会社が、労働者と労働契約を締結する際、試用期間が設けられることがあります。

試用期間とは、採用後に従業員としての適格性を観察・評価するために会社が設ける期間をいいます。

そして、試用期間中における会社と仮採用の従業員との関係は、「解約権留保付労働契約」であるというのが判例です*1。

 

ここで、重要なのは、解約留保付きの「労働契約」であるということです。

すなわち、たとえ試用期間満了時の「本採用拒否」であったとしても、これは採用の問題ではなく、労働契約の解消の問題=解雇の問題ということになります。

従業員の解雇に関しては、解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用され、客観的合理性と社会的相当性の2つの要件を満たさない限り、無効になります*2。

 

ただし、判例は、「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない」としており、本採用後の)通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由を認めています。

 

以上をまとめると、試用期間満了時の本採用拒否は、解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用され、通常の解雇よりも広い範囲で認められているものの、客観的合理性と社会的相当性の2つの要件を満たしていなければならない、ということになります。

 

試用期間満了時の本採用拒否であるとしても、自由にできるものではない、ということに注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

最判昭和48年12月12日(民集27巻11号1536頁、三菱樹脂事件)

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/931/051931_hanrei.pdf

 

*2

労働契約法16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

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起業塾13:社内体制の整備4(解雇権濫用法理)

会社と労働者との間の労働契約が解消される場面としては、つぎの5つが存在します。

①契約当事者の消滅、死亡

②包括的同意(定年に達するなど一定の事由が発生すると当然に労働契約が終了するもの。「当然退職」)

③個別的同意(一般的に、労働者が退職を申込み、使用者が承諾する形で、双方の合意により労働契約を終了させるもの。「合意退職」)

④労働者の単独行為(労働者の一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「辞職」)

⑤使用者の単独行為(使用者の一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「解雇」)

 

このうち、もっとも問題となるのが⑤使用者の単独行為である解雇の場合です。

 

法律上、解雇は自由に出来るのが原則です。

労働基準法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としており、解雇そのものを禁止するものではありません。

 

しかし、実際は、判例上解雇権濫用法理が確立されており、現在では労働契約法16条も「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、事実上解雇を制限しています。

 

このように従業員の解雇には、大きな制約が課せられています。

そのため、従業員を解雇するにあたっては、社会保険労務士や弁護士等、外部の専門家に相談のうえ、慎重に判断する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

*経営者交流会「落合会(仮称)」を開催いたします。

開催日時:11月9日(水)19:00~21:00

会場:五反田ワイン酒場「マルミチェ」2F

住所:品川区西五反田1-4-8

定員:36名

参加費:6000円前後

 

*第5回企業法務セミナーを開催いたします。

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※労務管理の基本 雇用と業務委託契約の使い方編

開催日時:11月25 日(金)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan Plaza2 七F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:5000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

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起業塾12:社内体制の整備3(労働契約と業務委託契約)

会社との間で締結される労働の提供に関する契約の典型は、労働契約ですが、このほかに、会社の外にいる者を活用する契約として、請負契約、業務委託契約、派遣契約等も存在します。

通常、このような会社の外にいる者は、当該会社の労働者とはなりません。

しかし、業務の態様によっては、当該会社の労働者であるとして、残業代請求や解雇無効確認請求がなされることがあります。

いわゆる偽装請負、偽装派遣の問題です。

 

そのため、会社としては、どのような場合に自社の「労働者」とみなされるのか、その判断基準、いわゆる労働者性の判断基準を押さえておく必要があります。

 

まず、外形上の契約形態のみによって判断されるものではありません。すなわち、契約の名称では、労働者かどうかの判断はできず、実質的に労働契約といえるかどうかで判断されます。

もちろん、契約の名称は一つの判断材料にはなります。

しかし、たとえば、契約書の名称が業務委託契約や請負契約であったからといって、必ず労働者ではないと判断されるわけではありません。

 

そこで、過去の裁判例では、実質的に労働契約といえるかどうかを、指揮命令関係があるか否かで判断しています。

具体的には、①諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③時間的・場所的拘束性の有無、④労務提供の代替性の有無、⑤報酬の労務対償性の有無等を総合的に考慮して、指揮命令関係の有無が判断されます。

 

業務委託契約や請負契約を活用している会社は、上記考慮要素に照らして、自社の契約が労働契約とされるおそれはないか、一度きちんと確認してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

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開催日時:11月9日(水)19:00~21:00

会場:五反田ワイン酒場「マルミチェ」2F

住所:品川区西五反田1-4-8

定員:36名

参加費:6000円前後

 

*第5回企業法務セミナーを開催いたします。

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開催日時:11月25 日(金)18:30~21:00(18:15開場)

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対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:5000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー(株)セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

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起業塾11:社内体制の整備2(労働条件明示義務)

会社が、労働者と労働契約を締結する場合、会社は労働者に対し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。

 

そして、つぎの6項目に関しては、書面で明示しなければなりません(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条2項・3項・1項1ないし4号の2)。

①労働契約の期間に関する事項

②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

③就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑤賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 

また、つぎの⑨項目に関しても、書面または口頭等で明示しなければなりません(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則1項)。

①昇給に関する事項

②退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

③臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

④労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

⑤安全及び衛生に関する事項

⑥職業訓練に関する事項

⑦災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑧表彰及び制裁に関する事項

⑨休職に関する事項

 

この労働条件明示義務に違反した場合、会社は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働基準法120条1号・15条1項)。

また、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができるとされている点にも注意が必要です(労働基準法15条2項)。

(弁護士 國安耕太)

 

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起業塾10:社内体制の整備1(労働契約と雇用契約)

会社がその事業を発展させていくためには、優秀な従業員を確保し、継続的に事業を担ってもらうことが必要不可欠です。

その際に、会社と従業員との間で締結される労働の提供に関する契約が、労働契約です。

 

ここで、「あれ?労働契約という言葉も聞いたことがあるけれど、雇用契約という言葉もあったような気がする。」

という方もいらっしゃるかもしれません。

 

そうなんです。

労働契約という概念とは別に、雇用契約という概念もあります。

 

まず、雇用契約とは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」契約です(民法623条)。

これに対し、労働契約とは、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者および使用者が合意することによって成立する」契約です(労働契約法6条)。

 

定義だけ見ると、「同じものなのでは?」と思うかもしれませんが、厳密には、労働契約と雇用契約とは別のものです。

ただ、会社と従業員との間で締結される労働の提供に関する契約は、一般的には、労働契約かつ雇用契約です。

そして、労働契約に該当する場合、労働契約に関する規定が雇用契約に関する規定に優先して適用されます。

そのため、通常、両者を区別する必要は、あまりありません。

 

しかし、労働契約法や労働基準法は、同居の親族のみを使用する場合には、適用されない旨を明記しています*。

そのため、同居の親族のみを使用しているような会社の場合は、労働契約ではなく、雇用契約として、民法の規定のみが適用されることになります。

 

なお、労働契約に該当する場合、労働契約法のほか、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法、最低賃金法、労働安全衛生法等様々な労働にまつわる法律による規制を受けるので注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

*

労働契約法22条2項

この法律は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない。

 

労働基準法106条2項

この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

 

*第10回JSH交流会(ミニセミナー付き)を開催いたします。

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:10月21 日(金)19~22時

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など(経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名

会 費(飲食代込み):6000円

 

*経営者交流会「落合会(仮称)」

開催日時:11月9日(水)19:00~21:00

会場:五反田ワイン酒場「マルミチェ」2F

住所:品川区西五反田1-4-8

定員:36名

会費:6000円前後

 

*第5回企業法務セミナーを開催いたします。

『あなたの知識が会社を守る!労務管理の基本を習得し、労務リスク対策を』

※労務管理の基本 雇用と業務委託契約の使い方編

開催日時:11月25 日(金)18:30~21:00(18:15開場)

場所:レアルセミナールーム 新宿区西新宿1-3-13 Zenkan PlazaⅡ7F

対象:経営者、総務・法務担当者

定員:20名(1社2名様まで。定員になり次第締め切らせていただきます。受付にてお名刺2枚をご提出ください。)

参加費:5000円

申込・お問合わせ先:アミエージェンシー㈱セミナー事務局 担当:井上 TEL03-5940-3450

 

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起業塾9:知的財産権の活用5(著作権法)

著作権法は、著作物ならびに実演、レコード、放送および有線放送に関し著作者の権利およびこれに隣接する権利を保護する法律です(著作権法1条)。

著作権法が主として規定しているのは、著作物に関する著作者の権利ですが、この定義のとおり、著作者の権利に隣接する権利(著作隣接権)についても規定されているのが特徴です。

 

ここで著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいい(著作権法2条1項1号)、著作物を創作する者を著作者といいます(著作権法2条1項2号)。

 

そして、著作権法は、著作者は、著作者人格権および著作権を享有すると定め(著作権法17条1項*)、著作者人格権(18条以下)と著作権(21条以下)をそれぞれ規定しています。

 

著作者人格権は、著作物を公表するかどうか(公表権、18条)ならびに公表示に氏名を表示するかどうか(氏名表示権、19条)を決定できる権利および著作物の内容を改変されない権利(同一性保持権、20条)があります。

 

一方、著作権は、複製権(21条)、公衆送信権(23条)、翻案権(27条)等様々な10の権利の集合体で、それぞれの権利を個別に譲渡することも可能です。

 

そして、著作権者(譲渡されない限り、著作者が著作権者です。)の許諾を得ずに、著作権の対象となる行為をした場合、著作権侵害となります。

 

なお、著作権侵害がなされた場合、著作権者は、差止請求(著作権法112条)、損害賠償請求(民法709条)、信用回復請求(著作権法115条)等をすることが認められています。

 

著作権は、権利の対象が広く、また、著作権の制限規定(30条以下)や著作隣接権が存在している等、様々な考慮をする必要があります。

自社にかかわる権利をきちんと管理するとともに、著作物を利用する際は、権利関係をよく調査・確認するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*

著作権法17条1項

著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。

 

*第10回JSH交流会(ミニセミナー付き)を開催いたします。

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:10月21 日(金)19~22時

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など(経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名

会 費(飲食代込み):6000円

 

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起業塾8:知的財産権の活用4(商標法)

商標法は、特定の商品またはサービスを示すマーク等(標章)*を保護する法律です。

 

商標法は、商標権者は、登録商標の使用をする権利を専有する(商標法25条本文)と定め、商標権者に一定期間(10年)、その商標を独占的排他的に使用できる権利を認めています。

そのため、第三者が権原なく、商標を使用した場合、商標権侵害に該当します。

 

ただ、実務上、登録商標の無断使用が問題となる場面は、そう多くはありません。

 

すなわち、商標法は、商標を使用する専用権の範囲に入る行為ではないが、その範囲に他人が入り込む蓋然性の高い行為を捉えて侵害とみなし、その行為を禁止する権利を認めています(商標法37条1号)。

そのため、登録商標に類似する標章の使用も禁止することができるのです。

 

また、商標法は、侵害の予備的行為も侵害とみなして、その行為を禁止する権利を認めています(商標法37条2号等)。

 

したがって、実務上は、登録商標に類似するといえるか、が争われることがほとんどです。

 

なお、商標権侵害がなされた場合、商標権者等は、差止請求(商標法36条)、損害賠償請求(民法709条)、信用回復請求(商標法39条、特許法106条)等をすることが認められています。

 

以上のことから、何らかの標章を使用する際は、当該標章が登録されていないか、調べておいた方が無難です。

そして、類似か否かの判断は、専門家の間でも意見が分かれることも珍しくありません。できれば事前に専門家に相談しておくことをお勧めします。

また、自社のブランド戦略として、社名や商品名の商標権を取得する、ということも検討してみても良いと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*

商標の典型例は、マークですが、その他にも文字や色彩、音等も商標となりえます。

商標法2条1項

この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

 

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開催日時:10月21 日(金)19~22時

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定員:30名

会 費(飲食代込み):6000円

 

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起業塾7:知的財産権の活用3(意匠法)

意匠法は、物品のデザイン(形状、模様、色彩等)を保護する法律です*1。

 

意匠法は、「意匠権者は、業として登録意匠およびこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する」と定め(意匠法23条本文)、意匠権者に一定期間(20年)、その意匠を独占的排他的に使用できる権利を認めています。

前回取り上げた特許と異なり、意匠の場合は、「類似する意匠」にまで専有権が認められています。

そのため、第三者が権原なく、登録意匠を実施*2した場合だけでなく、類似する意匠を実施した場合も、意匠権の直接的な侵害なります。

 

また、意匠法においても、侵害の予備的行為も侵害とみなして、その行為を禁止する権利を認めています(意匠法38条)。

 

そして、意匠権侵害がなされた場合、意匠権者等は、差止請求(意匠法37条)、損害賠償請求(民法709条)、信用回復請求(意匠法41条、特許法106条)等をすることが認められています。

 

なお、意匠の類否は、「需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする」(意匠法24条2項)とされていますが、その判断は容易ではありません。できれば事前に専門家に相談しておくことをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

意匠法2条1項

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

 

*2

意匠法2条3項

この法律で意匠について「実施」とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。

 

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起業塾6:知的財産権の活用2(特許法)

特許法は、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものである発明を保護する法律です。

 

特許法は、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」(特許法68条)と定め、特許権者に一定期間(原則20年)、その特許発明を独占的排他的に実施できる権利(排他的独占権)を認めています。

そのため、第三者が権原なく、特許発明の実施をした場合、特許権侵害に該当します。

 

また、特許発明を実施したときのように直接侵害行為を行う場合だけでなく、侵害の予備的ないし幇助的な行為についても、侵害とみなされます(特許法101条)。これは、このような行為を放置しておくと、侵害を誘発する蓋然性が極めて高く、かつ侵害が生じてからでは侵害を補足することが困難であるために設けられた規定とされています。

 

そして、特許権侵害がなされた場合、特許権者等は、差止請求(特許法100条)、損害賠償請求(民法709条)、信用回復請求(特許法106条)等をすることが認められています。

 

なお、発明には、①物の発明、②方法の発明、③物を生産する方法の発明の3種類がありますが(特許法2条3項)、①物の発明および③物を生産する方法の発明の場合、輸出入、譲渡等の行為も実施にあたります。

そのため、商品の輸出入、転売等を業として行っている場合は、当該商品が特許権を侵害していないか、慎重に検討する必要があります。

(弁護士 國安耕太)

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起業塾5:知的財産権の活用1

起業したての会社にとっても、知的財産戦略はとても重要です。

 

普段、私たちが目にしている商品やサービス(役務)には、様々な知的財産権が用いられています。

財産権は、形のある動産や不動産が一般的ですが、人間の精神活動の結果として創作される技術やブランド、アイデア等無形のものの中に、財産的価値が見出されるものがあります。

このような人間の知的な活動から生じる創造物に関する権利を総称して、知的財産権と呼んでいます。

 

たとえば、フォルクスワーゲン社の自動車。

フォルクスワーゲン社の自動車には、VとWを組み合わせたマーク(標章)があります。この標章は、特許庁に登録することで、商標法上の「商標権」の対象となります。同じく、自動車本体のデザインも、特許庁に登録することで意匠法上の「意匠権」の対象となります。

また、自動車の製造には、数多くの技術が用いられており、これらの技術は、特許庁に登録することで、特許法上の「特許権」や実用新案法上の「実用新案権」の対象となります。

さらに、自動車を作動させるためのプログラムは、著作権法上の「著作物」に該当すれば、「著作権」の対象となります。

このように、1つの商品だけでも、商標権、意匠権、特許権および著作権といった、様々な知的財産権が組み合わされて用いられています。

 

知的財産の保護が不十分な場合、自社の技術やブランドを無断で使用されたり、偽物の商品が出回ることを止めることができない等のリスクが生じえます。

また、他社の情報をきちんと調査しないまま研究開発を進めた場合、他社の特許権や商標権と抵触して、研究成果を製品化できなかったり、他社から損害賠償を請求されてしまう、といった事態も考えられます。

 

ぜひ一度知的財産戦略について、考えてみてください。

(弁護士 國安耕太)

*弁護士ドットコムの取材を受けました。

従業員間の守秘義務について記載しています。

https://www.bengo4.com/houmu/n_5068/

 

 

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起業塾4:資本政策の重要性

起業した会社にとって、資本政策をどのように考えるかは、とても重要です。

 

資本政策とは、一般的に、株式公開(上場)に向けて、株主構成や資金調達等に関する計画を作ることをいいます。

具体的には、いつ、誰に、いくらで、どのような方法で、いくつの株式を割り当てるのかを計画します。

 

また、株式公開を目指していなかったとしても、数人の仲間で会社を始めるような場合には、きちんと資本政策を考えておく必要があります。

 

なぜなら、資本政策を後からやり直すことが非常に難しいからです。

すなわち、上記のとおり、資本政策とは、いつ、誰に、いくらで、どのような方法で、いくつの株式を割り当てるのか、という問題です。

一度株式を割り当て、株主にした場合、株主を追い出すことは容易ではありません。

 

そして、株主には、様々な権利があります。

単独で行使できる権利(議決権、株主総会における議案提案権等)もありますが、一定数以上の株式を有している場合に求められる少数株主権(帳簿閲覧権、株主総会招集権、解散請求権等)もあります。

 

どの株主に、どのような権利まで認めるのかは、その後の会社の方向性を左右しうるものです。

したがって、起業したての会社であったとしても、資本政策をどのように考えるかは、とても重要といえるのです。

(弁護士 國安耕太)

*弁護士ドットコムの取材を受けました。

従業員間の守秘義務について記載しています。

https://www.bengo4.com/houmu/n_5068/

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起業塾3:取締役って何人必要なの?

旧商法では、取締役は必ず3人以上必要とされていました(旧商法255条)。また、必ず取締役会を設置し、監査役も1人以上選任しなければならないとされていました。

 

これに対し、現行の会社法では、このような規制は撤廃されています。

すなわち、取締役は、1人以上であれば何人でもよく、取締役会の設置や監査役の選任も原則として自由です(会社法326条*1)。

 

ただし、取締役会を設置するためには、取締役を3人以上選任しなければなりません(会社法331条5項)。

また、公開会社等は、取締役会を設置しなければならない(会社法327条1項*2)、取締役会設置会社は、原則として監査役を選任しなければならない(会社法327条2項)といった制限があります。

 

なお、取締役会は、会社の業務執行の意思決定機関であり、この取締役会を設置する一番のメリットは、株主総会ではなく取締役会で決定すれば足りる事項が大幅に増加するという点にあります。

すなわち、逐一株主総会を招集して意思決定をしなければならないとすると、株主にとっても会社にとっても煩雑ですし、迅速な意思決定が阻害されてしまうため、会社にとって重要な事項を除き、取締役会の決議で業務執行が可能となります。

 

自社の状況をみて、取締役を何人選任するのか、取締役会、監査役を設置するのかといった機関設計をどのようにするのか、考えてみてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

会社法326条

1 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。

 

*2

会社法327条1項

次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。

一 公開会社

二  監査役会設置会社

三  監査等委員会設置会社

四  指名委員会等設置会社

 

**本文とは直接関係がありませんが、以前、起業した会社名のメールアドレスを取得した方が、当該メールアドレスを記載した名刺等を作成した後に、メールアドレスの費用を振り込むのを忘れ、当該メールアドレスを取得できていなかったことが発覚した、ということがありました。あまりないとは思いますが、きちんと手続きが完了しているか、慎重に確認するようにしましょう。

***株式会社全国賃貸住宅新聞社発行の「家主と地主」から取材を受けました(8月号の30ページに掲載されています。)。

 

 

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起業塾2:社名に注意!

起業する際、必ずしも会社等の法人を設立しなければならないわけではありません。

会社等の法人を設立せずに、個人事業主として、事業を展開することもできます。

この場合、基本的には、どのような名前を付けても構いません。

 

ただし、商標登録されている商標と同一または類似の名前や、商標登録されていなくても、著名または周知な他人の名称と同一または類似の名前を使用した場合、商標法違反や不正競争防止法違反となる可能性があります。

商標法違反や不正競争防止法違反となった場合、当該名前の使用差止請求や損害賠償請求を受けることがあります。

 

つぎに、会社等の法人の場合ですが、商標法および不正競争防止法に注意しなければならないのは、個人事業主の場合と同様です。

 

また、基本的には、どのような名前を付けても構いませんが、法律上、会社の名称に関する規制があります。

たとえば、会社法上、「会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。」(会社法6条2項)、「会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。」(同3項)とされています。

 

このように、社名一つにも、様々な法的規制があります。

 

自社の社名を使用し続けることができるのか、きちんと調査してから事業を始めることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

*株式会社全国賃貸住宅新聞社発行の「家主と地主」から取材を受けました(8月号の30ページに掲載されています。)。

 

*本文とは直接関係がありませんが、以前、起業した会社名のメールアドレスを取得した方が、当該メールアドレスを記載した名刺等を作成した後に、メールアドレスの費用を振り込むのを忘れ、当該メールアドレスを取得できていなかったことが発覚した、ということがありました。あまりないとは思いますが、きちんと手続きが完了しているか、慎重に確認するようにしましょう。

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起業塾1:弁護士にいつ相談すればいいのか

最近、起業したての方から、いつ、どの段階で弁護士に相談したらよいのか、よく相談されます。

 

このことについては、様々な考え方があると思います。

ただ、私の答えは、可能な限り速やかに、です。むしろ、起業前に相談していただいてもよいと思っています。

 

近年、企業のコンプライアンス(法令順守)が重視されています。

会社の規模が拡大していくにつれて求められる程度は異なるとしても、起業当初であっても、最低限、当該事業が適法であることが必要です。

 

事業を長期間継続していくためには、会社の信用が重要であることは論を待ちませんが、信用というものは築くのには時間と労力がかかり、失うのは一瞬です。

そして、事業が違法であった場合、会社の信用は一瞬で失われ、これを取り戻すのは著しく困難です。

また、医者と同じで、事前の対策よりも、事後に対応をすると、結果的に大きな費用と労力を割かなければならなくなってしまいます。

 

そのような事態にならないよう、これからやろうとしている事業が適法なのか、ぜひきちんと相談してから、起業し、事業を始めることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

*株式会社全国賃貸住宅新聞社発行の「家主と地主」から取材を受けました(8月号の30ページに掲載されています。)。

 

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値引きが違法?! 2

さて、先週は、値引き表示が、違法となってしまう可能性があるという話をしました。

今週は、具体的にどのような値引き表示に気を付けなければならないかです。

 

まず、1つ目は、他の顧客向けの販売価格と比較対照する二重価格表示を行う場合です。

たとえば、先週ご紹介したセミナーの事例のように、「通常価格 ●●万円、参加者特別価格 ●●万円」といった表示を行うような場合です。

このような二重価格表示自体は、よく用いられている表示ですが、通常価格での購入者がほとんど存在しないようなときは、このような値引き表示が不当表示(景品表示法5条2号*)に該当し、違法となることがあります。

 

また、「標準価格●万円のところ、●月●日~●月●日に限り、●万円」といった表示も、標準価格とされる金額で販売されている期間が限定されているようなときは(標準価格とされる金額の方が例外的なとき)、不当表示(景品表示法5条2号)に該当し、違法となることがあります。

 

2つ目は、過去の販売価格と比較対照する二重価格表示を行う場合です。

たとえば、「通常価格●●●万円 セール価格●●万円」といった表示をしている場合です。

このような場合、通常価格で販売していた期間が相当期間にわたっていないと、不当表示(景品表示法5条2号)に該当し、違法となることがあります。

なお、相当期間とは、原則的に、セール開始時前8週間のうち過半を占めている場合を指すと考えられています。

 

3つ目は、

希望小売価格と比較対照する二重価格表示を行う場合です。

たとえば、「メーカー希望小売価格●●万円の品を●万円」といった表示をしている場合です。

製造業者等が設定・公表している希望小売価格であれば問題とはなりませんが、そうではない場合は、値引き表示が不当表示(景品表示法5条2号)に該当し、違法となることがあります。

 

このように、値引き(表示)をするにあたっては、景品表示法5条2号に十分注意する必要があります。

 

知らないうちに不当表示を行っていた、ということのないようにしましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

* 景品表示法5条

「 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

1 (略)

2 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

3 (略)」

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値引きが違法?! 1

先日、とあるマーケティングに関するセミナーに参加しました。

内容は非常に面白かったのですが、その中で、一つ気になることがありました。

 

それは、「本セミナー参加者限定で、通常30万円の合宿に3万円で参加できます!」という表現です。

もちろん、この表現自体が直ちに違法となるわけではありません。

 

しかし、高額なセミナー参加者限定での大幅な値引きである等、何らかの特別な事情があるのであればともかく、このセミナーは、無料セミナーで、特別な事情もないようでした。

そうであれば、通常30万円の商品を10分の1の値段で販売することは通常あり得ません。

 

もしかしたら、本来3万円で参加できる合宿を、割安に見せるために「通常30万円」と表現しているのでは・・・と勘ぐってしまいます。

 

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、自己が提供するサービスの販売価格について、実際に販売価格よりも著しく有利であると誤認させる表示を不当表示として禁止しています(景品表示法5条2号*)。

 

そして、他の価格と比較対照する二重価格表示を行う場合は、当該比較対照する価格を事実に基づいて表示する必要があり、比較対照する価格が虚偽のものである場合、不当表示に該当する可能性があります。

また、比較対照する価格が曖昧な場合も不当表示に該当する可能性があります。

 

もし、本来3万円で参加できる合宿を、割安に見せるために「通常30万円」と表現しているような場合は、比較対照する価格が虚偽のものであるとして、不当表示に該当する可能性があります。

 

このように、値引き(表示)は、違法となってしまう可能性があるので注意が必要です。

 

なお、次週は、具体的にどのような値引き表示に気を付けなければならないか、について話を進めていきたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

* 景品表示法5条

「 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

1 (略)

2 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

3 (略)」

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労働者災害補償保険法の「業務上の事由」の範囲

先日(平成28年7月8日)、ある交通事故が、労働者災害補償保険法(以下「労災法」)上の「業務上の事由*1」による事故といえるか、争われた事案に関し、最高裁判決が出されました*2。

 

具体的な事案としては、

ある労働者が、業務を一時中断して事業場外で行われた歓送迎会に途中参加した後、業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻るついでに、参加者をその住居に送る途中で発生した交通事故により死亡した

というものです。

 

原審(東京高判平成26年9月10日)は、

歓送迎会は、親睦を深めることを目的として、会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり、運転行為は、事業主の支配下にある状態でされたものとは認められない*3

として、当該労働者の死亡は、労災法上の「業務上の事由」によるものとはいえないと判断しました。

 

これに対し、最高裁は、

当該労働者が、歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、歓送迎会の終了後に当該業務を再開するために事業場に戻ることを余儀なくされていたこと

歓送迎会が、会社の事業活動に密接に関連して行われたものといえるものであったこと

事業場と住居の位置関係に照らし、飲食店から事業場へ戻る経路から大きく逸脱するものではないこと

等の事情を総合すれば、歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料も供されたものであり、当該参加者を住居まで送ることについて明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても、なお本件会社の支配下にあったというべき

として、当該労働者の死亡が労災法上の「業務上の事由」にあたるとしました。

 

本判決は、事例判断ですが、労災法の適用範囲を考えるにあたって参考になる事例といえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

労災法は、「業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる」(労災法2条の2)と定め、保険給付ができる場合を「業務上の事由」または「通勤」による災害に限定しています。

 

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/000/086000_hanrei.pdf

 

*3

判例上「労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要である」とされています。

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固定残業代制度にご注意を!

最近、主として残業代(割増賃金)請求対策として、固定残業代制度を設けている会社があります。

たとえば、①基本給の中に一定時間数の残業代を含むとしていたり、②一定時間数の残業代に相当する一定の金額を手当で支給する、といった制度を定めている場合です。

 

当然ですが、このような固定残業代制度を就業規則等で設けること自体は、適法です。

しかし、適切な規程の仕方をしていないと、後に裁判になった際に、残業代を含んでいるとはいえない(①の場合)とされたり、当該手当は残業代の支払いとはいえない(②の場合)とされ、残業代として支払われていると認められない可能性があります。

 

具体的な制度設計としては、㋐残業代として支払うことが明確にされており、㋑基本給にあたる部分と残業代にあたる部分とが明確に区別できていることが重要です。

 

また、固定残業代制度は、あくまでも一定時間数の残業代を含んでいるだけですから、当該一定時間数を超えた場合は、超えた分の残業代を支払う必要があります。

当該一定時間数を超えているにもかかわらず、超えた分の残業代が支払われていない場合、残業代として支払われていると認められない可能性があります。

 

このように、固定残業代制度を設ける場合には、その規程の仕方に十分注意する必要があります。

固定残業代制度を設ける場合は、ぜひ一度弁護士、社会保険労務士等の専門家に相談してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

 

 

 

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会社に損害を加えた従業員に対し、損害賠償請求できるか

従業員が、会社に損害を加えた場合、会社は、当該従業員に対し、損害賠償請求できるのでしょうか。

たとえば、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合に、当該従業員に対し、その損害全額の賠償を求めることはできるのか、相談を受けることがあります。

 

従業員が会社に対し、損害を加えた場合、その損害を賠償する責任が生じます。

しかし、会社は、従業員の活動によって利益を得ていますから、従業員の活動によって被った損害についても、一定程度負担すべき、とするのが判例・通説の考え方です。

具体的には、最判昭和51年7月8日(民集第30巻7号689頁)は、

「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」

と判示しています。

 

したがって、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合であっても、会社が、当該従業員に対して請求できる損害賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に制限されます。

 

なお、上記はあくまでも、会社と従業員間の内部分担の問題です。

会社は、物損事故の被害者に対して、直接責任を負います(民法715条1項、使用者責任)。

従業員が責任を負うことを理由に、第三者に対する賠償義務を免れることはできませんので注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

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厚生労働省、長時間労働に関する行政指導で企業名を初めて公表

先日(平成28年5月19日)、厚生労働省が、長時間労働に関する行政指導で企業名を初めて公表したとの報道がありました*1。

 

千葉市にある棚卸し業務の代行会社「エイジス」が、従業員63人に対し、違法に月100時間を超える残業をさせていたとのことです。

 

昨年、厚生労働省は、過重労働対策強化のため、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う「過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)」を、東京労働局と大阪労働局に新設し、社会的に影響力の大きい企業が、違法な長時間労働を繰り返している場合には、是正を指導した段階で公表するとの方針を発表していました*2。

 

なお、具体的には、

①複数の都道府県に事業場を有している企業であって、中小企業に該当しない企業であること

②㋐労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ㋑1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えている違法な長時間労働を行わせていること

③1箇所の事業場において、10人以上の労働者または当該事業場の4分の1以上の労働者に違法な長時間労働を行わせていること

④上記①②のような実態が概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で繰り返されていること

という要件を満たしている場合に、指導・公表の対象となります*3。

 

このように、近時は、従業員に違法な長時間労働を行わせることによって、従業員自身に健康障害が発生し、損害賠償請求を受けてしまうというリスクのみならず、公表されることによって、企業イメージや信用の低下というリスクも生じ得ます。

 

このような状況にかんがみて、企業にとっては、長時間労働の是正が喫緊の課題といえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*セミナーを開催いたします。

『新入社員定着セミナー』

開催日時:5月26日(木)

セミナー 19~20時30分

懇親会  20時30分~

場所:株式会社アセットリード「セミナールーム」

東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビル9F

お問合せ先:03-6453-8270

株式会社TGIインデペンデント(担当:小林)

参加資格:なし(経営者・人事担当者向けセミナーになります。)

講師:森 泰造(株式会社みらい創世社代表取締役)

村中幸代(ノースブルー社会保険労務士事務所代表)

定員:30名

受講料:5000円

 

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20160519-00000046-ann-soci

 

*2

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000085324.pdf#search=’%E9%81%8E%E9%87%8D%E5%8A%B4%E5%83%8D%E6%92%B2%E6%BB%85%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%AF%BE%E7%AD%96%E7%8F%AD+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81+%E5%85%AC%E8%A1%A8

 

*3

「長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。」

 

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『勤務間インターバル制度』の導入と助成金

厚生労働省は、勤務間インターバル制度を就業規則に明記し、導入した企業に助成金を出す方針を固めたとの報道がありました(日本経済新聞 2016年5月4日掲載)。

 

勤務間インターバル制度とは、従業員が退社してから翌日に出社するまで一定時間を空けることを強制する制度で、たとえば、欧州連合(EU)では、1993年に法律を制定し、退社から出社までの休息時間を11時間確保したうえで、4か月平均で48時間以上は働かせてはならないと義務づけています。

 

我が国でも、労働基準法第32条で、休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間を超えて、労働させてはならないという規制があります。

また、使用者と労働者(以下「労使間」という。)で、書面による協定をし、行政官庁に届け出ない場合には、労働時間を延長し、または休日に労働させることができない(いわゆる36協定)という規制もあります。

しかし、労使間で36協定を結んだ場合でも、特別条項を結べば月45時間以上の労働が可能となるため、実質的に労働時間に上限がない状態になってしまっています。すなわち、特別条項を結ぶ場合、延長できる時間についての上限時間は定められておらず、できる限り延長時間を短くするよう努めることという努力義務が定められているにとどまります(「労働時間の延長の限度等に関する基準(第3条第2項)」)。

実際、同記事に記載されていた統計でも、週49時間以上働く人が約22%で、欧米の10~15%と比べて多いとされています。

 

このため、我が国では、長時間労働の解消が喫緊の課題となっており、厚生労働省はその解消方法を検討していました。

 

なお、厚生労働省は、今のところ、勤務間インターバル制度を義務化するのではなく助成金を交付することで自主的に導入を促し、長時間労働の解消を進めていく方針です。

具体的には、長時間労働の解消に取り組む中小企業を対象とする「職場意識改善助成金」に勤務間インターバル制度に関する項目を加え、労務管理用のソフトウェアの購入費や生産性を高めるための設備や機器の導入費用などを支援します。

 

現時点では、インターバルの時間や支給額等の詳細は未定ですが、早ければ2017年度から最大100万円の支給があるかもしれません。

 

今後の動向に注目です。

なお、助成金申請は、手続きが複雑で、必要な書類も多いです。

自社での対応も不可能ではありませんが、事前に一度社会保険労務士に相談してみることをお勧めします。

(弁護士 國安耕太、社会保険労務士 村中幸代)

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有期労働契約の無期転換ルールにご注意を!

労働契約法18条1項は、有期労働契約の無期転換ルールを定めています。

 

*労働契約法18条1項

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」

 

この規定は、要するに、

①同一の使用者との間で、

②有期労働契約が通算で5年を超える労働者は、

③現に締結している有期労働契約の期間満了までに、

④使用者に申し込むことにより、

無期労働契約に転換することができる、というものです。

 

これだけを読むと、有期労働契約の期間が、単に5年を超えなければ、無期転換権は生じないように読めます。

たしかに、1年の有期労働契約の場合、その通算期間が5年を「超える」のは、5回目の更新時、すなわち、有期労働契約が6年目に入った時点ですから、5回目の更新をしなければ、無期転換権は生じないことになります*1。

 

他方、3年の有期労働契約の場合は、1回更新しただけで、その通算期間が5年を超えてしまいます。

そのため、1回目の更新時、すなわち、4年目に入った時点で、無期転換権が生じることになります。

 

「5年経過していないから、大丈夫!」と思っていると思わぬ痛手を被ることになりかねません。

有期労働契約の無期転換ルールを正確に理解しておきましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

ただし、労働契約法19条によって、更新拒絶(雇止め)が無効となる場合があります。

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パワハラにご注意を!

近年、職場のパワーハラスメントに関する都道府県労働局や労働基準監督書等への相談件数が、増加しています。

 

パワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。

 

上司から部下に対する行為が典型例ですが、同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含まれます。

 

また、つぎの6つ行為が、パワーハラスメントの典型的な行為とされています(なお、これ以外は問題ないということではありません。)。

(1)身体的な攻撃・・・暴行、傷害など

(2)精神的な攻撃・・・脅迫、名誉棄損、ひどい暴言など

(3)人間関係からの切り離し・・・隔離、仲間外し、無視など

(4)過大な要求・・・業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害など

(5)過小な要求・・・業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えないなど

(6)個の侵害・・・私的なことに過度に立ち入るなど

 

このうち、(1)については、どのような場合であっても許容されるものではなく、身体的な攻撃=パワーハラスメントと認定されるのが通常です。

また、(2)および(3)についても、通常、業務遂行に必要な行為であるとはいえないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるもの、すなわちパワーハラスメントと認定される可能性が極めて高いといえます。

 

したがって、自社内で、(1)~(3)に該当する行為がなされているのを見掛けたら、即座に是正する必要があります。

 

つぎに、(4)~(6)の類型ですが、これらについては、程度問題ということもあり、パワーハラスメントかどうかが個別具体的に検討されることになります。

 

部下を熱心に教育していたつもりが、ある日突然パワーハラスメントだと訴えられる。

そういったことがないよう十分ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

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障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法の施行について

平成26年6月、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が公布され、本年4月から施行されます。
これまで、いわゆる差別として典型的に考えられてきたものは、たとえば盲導犬を連れた障害者の入店拒否や障害を持つ児童の入学拒否など、障害を理由とする排除や制限でした。これは直接差別と呼ばれてきました。
しかし、この法律は直接差別だけでなく、障害者に合理的な配慮をしないことも差別にあたるとしています。
障害者差別解消法第8条2項は、「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。」としています(知的障害等により本人自らの意思を表明することが困難な場合には、その家族などが本人を補佐して意思の表明をすることもできるとされています。)。
難解な表現ですが、同法は、事業者に対して、単に直接差別をしないだけでなく、障害者が生活するにあたってのハードルを取り除くよう、民間事業者に合理的な配慮をするよう努力する義務を課しました。これは、単に機会の平等を確保するだけではなく、障害者が他の人々と同じ社会的活動を営めるようにしようという考え方に基づくものです。
つまり、単に入店拒否や入学拒否をしないというだけでは十分ではなく、たとえば施設を利用しようとする障害者を民間事業者はサポートしなければならないとしたのです。具体的には、店舗にスロープを設置すること、障害者が電車やバスへ乗車する際に職員などによる手助けをする体制を整えること、飲食店に入ろうとする車いす利用者のために段差解消のための渡し板を設置するなどの措置をとることなどが考えられます。
そして、直接差別だけでなく、このような合理的配慮をしないことも新たに差別に当たるとされることになったのです。

 

さらに、障害者雇用促進法が改正され、やはり今年4月から施行されます。これにより障害者を雇用している事業主に対しても合理的な配慮をする義務が課されました。
しかもこれは先ほど述べた障害者差別解消法とは異なり努力義務ではありません。事業主は努力するだけでは足りず、法的な義務として合理的な配慮をしなければならなくなりました。
具体的にどのようなことが求められるのかは今後の実務の蓄積を待つことになりますが、たとえば、車いすを利用する方に合わせて机や作業台の高さを調整することや、知的障害をもつ方に合わせて口頭だけでなく分かりやすい文書・絵図を用いて説明することなどが想定されています(なお、障害者が希望する措置が事業主にとって過重な負担に該当する場合は、希望どおりの措置を講じる義務まではありません。ただし、その場合であっても、障害者と話し合い、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮に係る何らかの措置を講じる必要があるとされています。)。
近年、障害者の雇用は広がりを見せていますが、雇用している事業主としてはきめ細やかな対応をしなければ重大事故に繋がりかねません。そして、万一の事故の際、本年4月以降はこの合理的な配慮をしなかったことが事業主の損害賠償義務を肯定したり、賠償額が増額される要素となることが考えられます。
障害者を雇用している事業主の方は、障害者の方が安全な環境で働けているか、より注意を払わなければならない時代になったといえるでしょう。

(弁護士 南部弘樹)

 

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社員の金銭的不正行為への対応2

先週に引き続き、従業員の金銭的不正行為への対応です。

 

従業員の金銭的不正行為が発覚した場合、会社は、事実確認を入念に行ったうえで、

①懲戒処分(懲戒解雇)をするか否か

②損害の賠償を請求するか否か

③刑事告訴をするか否か

を検討することになります。

 

それでは、前回の続きです。

 

②損害の賠償を請求するか否かについて

 

①の懲戒処分とは別に、金銭的不正行為をした従業員に対しては、損害賠償請求または不当利得返還請求をすることができます。

ただし、一方的に給与や退職金と相殺することはできないので、注意が必要です(労働基準法24条1項本文*1、賃金全額払いの原則)。

そのため、退職金と相殺したり、退職金を放棄させるのであれば、従業員の同意が必要となります。

過去の判例でも、労働者の自由な意思に基づいてなされた退職金債権放棄の意思表示が有効と判断されています(最判昭和48年1月19日、民集27巻1号27頁、シンガー・ソーイング・メシーン事件*2)。

 

③刑事告訴をするか否かについて

 

刑事告訴を行ったとしても、会社が被った損害が回復されるわけではありません。

むしろ刑事告訴をすることによって、会社が悪い意味で話題になってしまう可能性もあります。

また、刑事告訴は、義務でもありません。

 

ただ、金額が大きかったり、態様が悪質であったような場合、会社として放置できないということもあるでしょう。

また、他の従業員との関係を考慮して、厳しい姿勢で臨む必要がある場合もあります。

それゆえ、刑事告訴をする場合には、これによって生じるメリットとデメリットを十分検討することが重要です。

なお、証拠がないにもかかわらず、従業員を告訴したような場合、会社の側に名誉毀損が成立することもあるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

労働基準法24条1項本文

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」

 

*2

最判昭和48年1月19日

「全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、本件のように、労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、右全額払の原則が右意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。」

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社員の金銭的不正行為への対応1

最近、従業員の金銭的不正行為(窃盗、横領、詐欺等)への対応についてアドバイスを求められることが多くなっています。

 

従業員の金銭的不正行為が発覚した場合、会社は、事実確認を入念に行ったうえで、

①懲戒処分(懲戒解雇)をするか否か

②損害の賠償を請求するか否か

③刑事告訴をするか否か

を検討することになります。

 

以下、個別にみていきましょう。

 

①懲戒処分(懲戒解雇)をするか否かについて

 

まず、現在の我が国の法制度は、解雇権濫用の法理*1*2を採用しており、労働者を手厚く保護しています。

そのため、懲戒処分の中でも懲戒解雇については、慎重な判断が求められることが多いです(すなわち、懲戒解雇が無効となることが多々あります。)。

 

しかし、従業員の金銭的不正行為に関しては、過去の裁判例では、その額や回数を問わず、有効とされる傾向にあります。

そのため、従業員の金銭的不正行為に関し、懲戒解雇を行っても、後に無効とされる可能性は低いといえます。

 

ただし、あくまでも懲戒事由に該当する事実を証明できる場合であることが必要です。

過去の裁判例では、従業員が、使途不明金の一部を着服した旨の自認書および念書を書いていた事案において、事実に即して書かれたとはいい難く、これによって着服の事実を基礎づけることはできないとされたものがあります*3。

それゆえ、本人が認めているだけでなく、客観的な資料に基づいて事実を証明できるようにしておかなければなりません。

 

また、実務上は、懲戒解雇事由に該当する事実を証明できる場合であっても、懲戒解雇とせずに諭旨解雇や普通解雇、自主退職にとどめるということもありえます。

このあたりは、金銭的不正行為の額、被害弁償の有無、これまでの処分事例との均衡等を考慮して、判断していくことになります。

 

なお、②損害の賠償を請求するか否か、③刑事告訴をするか否かについては、次回解説します。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

労働契約法16条

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

 

*2

最判昭和50年4月25日(労判227-32、日本食塩製造事件)

「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」

 

*3

東京地八王子支判平成15年6月9日(労判861号56頁、京王電鉄府中営業所事件)

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偽装請負に注意しましょう 3

先週、先々週と、労働者派遣と請負の区別に関する厚生労働省の告示をご紹介してきました。

本日は、その3回目です。

 

(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること、および(2)請け負った業務を自己の業務として独立して処理することという2つの要件を満たしていない限り、たとえ請負契約(業務委託契約)としていたとしても、労働者派遣事業を行う事業主、すなわち偽装請負とされてしまいます*1。

 

では、(2)請け負った業務を自己の業務として独立して処理している、といえるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。

厚労省の告示では、つぎの3つの要件をいずれも満たしていることが必要であるとされています。

 

(ア)業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

(イ)業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

(ウ)①自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く)又は材料若しくは資材により、業務を処理しているか、または、②労自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること、のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

 

なお、厚生労働省から、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)に関する疑義応答集も公表されていますので、こちらも参考にしてみてください*2。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/h241218-01.pdf

 

*2

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03.pdf

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03_02.pdf

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偽装請負に注意しましょう 2

先週、労働者派遣と請負の区別に関する厚生労働省の告示をご紹介しました。

本日は、その続きです。

 

(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること、および(2)請け負った業務を自己の業務として独立して処理することという2つの要件を満たしていない限り、たとえ請負契約(業務委託契約)としていたとしても、労働者派遣事業を行う事業主、すなわち偽装請負とされてしまいます*。

 

では、(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用している、といえるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。

厚労省の告示では、つぎの3つの要件をいずれも満たしていることが必要であるとされています。

 

(ア)①労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行い、また、②労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うことにより、「業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行う」ものであること。

(イ)①労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を自ら行い、また、②労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く)を自ら行うことにより、「労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行う」ものであること。

(ウ)①労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行い、また、②労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うことにより、「企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行う」ものであること。

 

(ア)ないし(ウ)のいずれも、種々の事情を総合的に勘案して判断されることになりますが、大雑把に言えば、業務遂行・労働時間等・企業秩序等に関し、受託者が、自己の従業員(労働者)を自ら指揮命令監督をしていなければならない、ということを意味しています。

 

なお、(2)請け負った業務を自己の業務として独立して処理することについては、次週解説していきたいと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/h241218-01.pdf

 

 

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偽装請負に注意しましょう 1

先日開催した第4回企業法務セミナー「契約書を学び、攻めの経営を!」*1でも少し触れましたが、請負契約や業務委託契約を締結するにあたっては、偽装請負とならないよう注意する必要があります。

 

偽装請負とは、実質は労働者派遣(場合によっては労働者供給)でありながら、請負契約や業務委託契約の形式で行う労務提供を指します。

実質的には労働者派遣であるにもかかわらず、形式的に請負契約(業務委託契約)とすることにより、派遣法により課された元事業主および派遣先事業主の義務を回避し、ひいては派遣労働者の保護という派遣法の趣旨を没却することが問題視されています。

 

そのため、偽装請負と判断されると、受託者は、派遣事業主と判断され、派遣法違反として罰則を受け、委託者も派遣法違反となり、行政処分の対象となります。

したがって、請負契約や業務委託契約を締結するにあたっては、偽装請負との指摘を受けないよう、注意する必要があります。

 

そして、労働者派遣と請負の区別に関しては、厚生労働省から基準が示されています*2。

具体的には、(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること、および(2)請け負った業務を自己の業務として独立して処理することという2つの要件を満たしていない限り、たとえ請負契約(業務委託契約)としていたとしても、労働者派遣事業を行う事業主とされてしまいます。

すなわち、偽装請負と判断されてしまうことになります。

 

では、どうすれば、この(1)および(2)を満たしているといえるのか、については、次週解説することにします。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

https://north-blue-law.com/blog-child/%e7%ac%ac%ef%bc%94%e5%9b%9e%e4%bc%81%e6%a5%ad%e6%b3%95%e5%8b%99%e3%82%bb%e3%83%9f%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%82%92%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%97%e3%88%be%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81/

 

*2

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)

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業務委託契約の基礎

今週木曜日(平成28年1月14日)午後6時30分から、第4回企業法務セミナー「契約書を学び 、攻めの経営を!」を開催いたします。

今回は、取引の基本、業務委託契約を題材に、①契約の基本、②リーガルチェックのポイント、③具体的な条項の検討等を解説いたします。

 

さて、セミナーで取り上げる業務委託契約ですが、一番のポイントは、「業務委託」という概念自体が非常に曖昧なところにあります。

システムの開発業務委託、清掃業務委託、経理業務委託、駐車場の管理業務委託、講師業務委託、商品販売業務委託・・・などあらゆる業務を委託することができます。

誰か(委託者)が、誰か(受託者)に、業務を委託する取引を、「業務委託」と一括りにしているため、同じ「業務委託契約」という名称であっても、どのような事項を定めておかなければならないのかも変わってきてしまいます。

このように、業務委託契約といっても、契約ごとに検討しなければならない事項が異なってくる、というのが最大の特徴です。

 

では、どのように考えていけば良いのか・・・ポイントは、「仕事の完成」を目的としているか否かです。

詳細は、セミナーでお話ししますので、内容が気になる方は、ぜひご参加ください。

なお、参加特典(リーガルチェックシート)もご用意していますので、お楽しみに!

(弁護士 國安耕太)

 

*第4回企業法務セミナー『契約書を学び、攻めの経営を!』

開催日時:2016年1月14日(木)18:30 ~ 21:00

場所:知恵の場オフィス  セミナールーム

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-7

イマス浜田ビル5階(新宿駅から徒歩6分)

地図⇒http://exwill.jp/chienoba/access/

参加資格:契約書の基本を学びたい経営者、総務・法務担当者

定員:20名

会費:5000円(懇親会費別)

 

*昨年末に受けた取材に関する記事が、ヤフーニュースに掲載されました。

ぜひご一読ください。

*http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160102-00004124-bengocom-soci

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契約書の意義4

今回は契約書の意義4です。

 

さて、前回、契約書には、①契約内容の証拠化、②契約内容の明確化、③民法、会社法等の規定の変更・排除という意義がある、というお話をしました。

(https://north-blue-law.com/blog-child/%e5%a5%91%e7%b4%84%e6%9b%b8%e3%81%ae%e6%84%8f%e7%be%a9%ef%bc%93/)

 

これは、

①口頭では、どのような約束があったのか分からなくなってしまうため、これを防ぐ・・・契約内容の証拠化

②契約書は誰が見ても契約内容を理解できるようにする・・・契約内容の明確化

③特約がない限り、民法等の規定が適用されてしまうため、契約書に特約を記載する・・・民法、会社法等の規定を変更・排除

ということでしたね。

 

ただ、これについては、

「これまで契約書なんてなくても問題なかった・・・」

「信頼できる相手としか商売をしていないから・・・」

契約書なんて不要、と考えている方もいるかもしれません。

 

たしかに、今後もこれまでとまったく同じ取引先とだけ商売をしていくことで足りるのであれば、それでも構わないかもしれません。

しかし、世の中は刻一刻と変化していますから、そのような保証はどこにもありません。

 

また、取引相手と紛争になった場合、最終的には裁判所で決着をつけることになります。

しかし、裁判所は、正しい側を勝たせる機関ではありませんし、真実を探求してくれる機関でもありません。

 

あくまでも、当事者の提出した証拠に基づいて、どちらの主張が確からしいか、を判断する機関にすぎません。

当事者の提出した証拠のみで、請求が認められるかどうかが決まります。そこに情けはありません。

自分の権利を守るためには、きちんと証拠、すなわち必要な事項が網羅されている契約書等を準備しておかなければならないのです。

(弁護士 國安耕太)

 

*セミナーを開催します。

①第8回JSH交流会(ミニセミナー付き)

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:12月3 日(木)19~22時

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など( 経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名(残席2席)

会 費(飲食代込み):事前申込 5500円 当日申込 6500円

 

②第4回企業法務セミナー『契約書を学び、攻めの経営を!』

開催日時:2016年1月14日(木)18:30 ~ 21:00

場所:知恵の場オフィス  セミナールーム

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-7

イマス浜田ビル5階(新宿駅から徒歩6分)

地図⇒http://exwill.jp/chienoba/access/

参加資格:契約書の基本を学びたい経営者、総務・法務担当者

定員:20名

会費:5000円(懇親会費別)

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契約書の意義3

2週連続で契約書の意義について解説してきましたが、今回は契約書の意義3です。

 

まず、先週の復習です。

契約書には、

①口頭では、どのような約束があったのか分からなくなってしまうため、これを防ぐ・・・契約内容の証拠化

②契約書は誰が見ても契約内容を理解できるようにする・・・契約内容の明確化

という意義がある、ということをお伝えしました。

(https://north-blue-law.com/blog-child/%e5%a5%91%e7%b4%84%e6%9b%b8%e3%81%ae%e6%84%8f%e7%be%a9%ef%bc%92/)

 

しかし、契約書には、もう一つ大きな意義があります。

 

それは、③民法、会社法等の規定を変更・排除する、ということです。

 

・・・といっても、ピンとこないかもしれません。

このことを理解するためには、民事法(私法)の世界観を理解しておく必要があります。

 

民法、会社法等、私法上の法律関係については、原則として、個人が自由意思に基づき自律的に形成することができるという、私的自治の原則が採用されています。

そのため、当事者間にトラブル(紛争)が発生した場合、その処理について予め取り決めがあれば、その取り決め(=特約)に従って処理されることになります(=上記私的自治の原則)。

 

ただ、すべての事象を予測して、すべてについて特約をしておくことは現実的ではありません。

そこで、民法等は、この様に特約のない事項についての解決方法を定めているのです。

 

このように、特約がない限り、民法等の規定が適用されてしまうため、契約書に特約を記載することによって、③民法、会社法等の規定を変更・排除することができます。

 

このように、契約書には、①契約内容の証拠化、②契約内容の明確化、③民法、会社法等の規定の変更・排除という意義があります。

契約書をチェックする際は、この3つの意義から考えていくことが重要です。

 

具体的にどのような点に着目するかについては、ぜひ後記のセミナーを聞きに来てください(笑)。

(弁護士 國安耕太)

 

*第8回JSH交流会(ミニセミナー付き)

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:12月3 日(木)19~22時

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など( 経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名

会 費(飲食代込み):事前申込 5500円 当日申込 6500円

 

*第4回企業法務セミナー『攻める契約書を学ぶ!』

開催日時:2016年1月14日(木)18:30 ~ 21:00

場所:知恵の場オフィス  セミナールーム

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-7

イマス浜田ビル5階(新宿駅から徒歩6分)

地図⇒http://exwill.jp/chienoba/access/

参加資格:契約書の基本を学びたい経営者、総務・法務担当者

定員:20名

会費:5000円(懇親会費別)

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契約書の意義2

先週に引き続き、今回も契約書の意義について考えてみましょう。

 

まず、先週の復習ですが、

㋐一部の契約を除き、契約が成立するために、契約書は必要不可欠なものではないが、

㋑口頭では、後々、どのような約束があったのか分からなくなってしまうため、

㋒重要や契約については、契約書という「書面」を作成することによって、契約の「内容を証拠化」し、将来的な「紛争を回避」していくことが重要

ということでしたね。

(https://north-blue-law.com/blog-child/%e5%a5%91%e7%b4%84%e6%9b%b8%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/)

 

では、ただ契約書という「書面」を作成して、契約の「内容を証拠化」すれば、将来的な「紛争を回避」することができるのでしょうか。

 

上記のとおり、ここで契約書という「書面」を作成して、契約の「内容を証拠化」するのは、口頭では、どのような約束があったのか分からなくなってしまうため、これを防ぐことにあります。

すなわち、契約書という「書面」を作成することによって、どのような約束があったのかを明らかにする、という目的があります。

 

しかし、契約書という「書面」があっても、契約書を読んでその内容がわからなければ、「どのような約束があったのか、結局よく分からない」、なんてことも起こりえます。

 

そこで、「契約書は誰が見ても理解できるように作成する」必要があります。

 

このように、契約書には、将来的な「紛争を回避」するため、①契約の「内容を証拠化」するだけでなく、②契約の「内容を明確化」する、という意義があります。

 

さて、このように、契約書には、①契約内容の証拠化、②契約内容の明確化という意義がありますが、実はもう一つ大きな意義があります。

これについては、次回解説いたしますので、少し考えてみてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*セミナーを開催しています。お時間のある方は、ぜひご参加ください。

①第8回JSH交流会(ミニセミナー付き)

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:12月3 日(木)19~22時

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など( 経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名

会 費(飲食代込み):事前申込 5500円 当日申込 6500円

 

②第8回想続セミナー~想い続ける~

開催日時:11月19日(木)19時~21時

場所:東京都港区新橋1-18-19

キムラヤオオツカビル7階

定員:15名

会費:2000円(税込)

 

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契約書の意義

突然ですが、契約書は、一体何のためにあるのでしょうか。

 

もちろん、契約をするためですよね。

でも、契約書を作成しなければ、契約は成立しないのでしょうか。

 

実は、契約が成立するために、契約書は必要不可欠なものではありません(例外はありますが。*1)。

すなわち、契約は、申込の意思表示と、承諾の意思表示の合致があれば、それだけで成立します。

 

みなさんも、普段の生活のなかで、多数の契約を締結しているはずです。

たとえば、コンビニでお菓子を買う、これは法的には売買契約です。

また、切符を買って電車に乗る、これは法的には運送契約です。

 

このように私たちは、生活のなかで、沢山の契約を締結しているのです。

 

しかし、口頭では、後々、どのような約束があったのか分からなくなってしまうことがあります。

 

そこで、重要や契約については、契約書という「書面」を作成することによって、契約の「内容を証拠化」し、将来的な「紛争を回避」していくことが重要になります。

 

それでは、契約書のどこを見ていけばいいのでしょうか。

続きは、本年12月3日(木)19時~第8回JSH交流会にて、『リーガルチェックのポイント~秘密保持契約書を題材に~』というミニセミナーを実施しますので*2、ぜひ聞きに来てください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

たとえば、保証契約については、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」(民法446条2項)とされています。

 

*2

第8回JSH交流会(ミニセミナー付き)

『人事・総務・法務のための交流会』

開催日時:平成27年12月3 日(木)19:00~ 22:00

場所:フレンチバル&レストランジェイズ

TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

参加資格:人事、総務、法務担当者の方など( 経営者、役員、管理職の方もご興味のある方ならOK)

定員:30名

会 費(飲食代込み):事前申込 5500円 当日申込 6500円

 

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労働者派遣のルールが変わります!

先日(平成27年9月17日)、当事務所主催(共催)の第3回企業法務セミナーを開催しました。

当日は、生憎の天気でしたが、多数の方にご参加いただきました。ありがとうございます。

 

さて、その際、当事務所髙安弁護士が、「雇用と請負」の相違点、メリット・デメリット等を解説しましたが、この他、雇用との区別が問題となる契約形態として、「派遣」があります。

 

この派遣に関する法律(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。以下「派遣法」)が改正され、今月30日から施行されます*。

今回の改正では、派遣労働は、 臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、派遣労働者の雇用の安定やキャリアアップを図ることを目的としています。

 

主な改正点は、つぎの4点です。

①労働者派遣事業を許可制に統一

②期間制限のルールの変更

③派遣元事業主の義務の強化

④労働契約申込みみなし制度の導入

 

まず、①についてですが、これまで、労働者派遣事業には、一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の2種類が存在していました。

これが、許可制に一本化されます。

 

つぎに、②についてですが、これまで、特定の業務以外の業務に対する労働者派遣に関する派遣期間の上限は、原則1年(最長3年)とされていました。

これに対し、改正法では、つぎの2つのルールが設けられました。

㋐派遣先事業所単位の規制

一つの事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期間が、原則3年以内となります。

㋑派遣労働者個人単位の規制

派遣先の事業所における同一の組織単位(課)において、同一の派遣労働者を受け入れることができる期間が、原則3年以内となります。

たとえば、甲社の人事課に派遣されていたAさんを、3年後に、同社の会計課に派遣することは可能です。

 

③については、派遣元事業主に、つぎの義務が課されました。

㋐雇用安定措置の実施

派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者に対し、派遣終了後の雇用を継続させる措置(雇用安定措置)を講じる義務があります。

㋑キャリアアップ措置の実施

派遣元事業主は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、

・段階的かつ体系的な教育訓練

・希望者に対するキャリア・コンサルティング

を実施する義務があります。

㋒均衡待遇の推進

派遣元事業主は、派遣労働者から求められたときは、賃金の決定、教育訓練の実施および福利厚生の実施について、派遣先の労働者と待遇の均衡を図るために考慮した内容を説明する義務があります。

 

最後に、④について、派遣先が違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と 同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。

 

以上のとおり、派遣法の改正は、国が正規雇用をより推進していこうとしていることを明確に示しています。

派遣業を営んでいる方、派遣の利用を検討している方は、本改正と共に今後の動向にご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

* http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

 

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リストラと解雇権濫用法理

本日、インターネット上に「東芝赤字転落 リストラ不可避」とのニュースが配信されていました*1。

 

使用者と労働者との労働契約を解消するためには、

①包括的同意(定年に達するなど一定の事由が発生すると当然に労働契約が終了するもの。「当然退職」)

②個別的同意(一般的に、労働者が退職を申込み、使用者が承諾する形で、双方の合意により労働契約を終了させるもの。「合意退職」)

③労働者の単独行為(労働者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「辞職」)

といった方法がありますが、この他、

④使用者の単独行為(使用者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「解雇」)

があります。

 

そして、リストラは、このうち④の「解雇」にあたります。

 

労働基準法上、この「解雇」は、自由に出来るのが原則です*2。

しかし、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼします。

そこで、裁判所は、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」として、実質的には解雇を制限してきました(「解雇権濫用の法理」)*3。

 

リストラ(整理解雇)も、解雇の一種ですから、原則的には自由であるものの、解雇権の濫用となるような場合は、無効となります。

そして、整理解雇の正当性を判断する際、多くの裁判例が、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つ要件を検討してきました。

 

したがって、本件でも、上記4つの要件を満たすよう慎重に手続を検討し、実行していくことになるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150914-00000112-mai-bus_all

 

*2

労基法19条は解雇制限、20条は解雇予告手当に関する条文ですが、いずれも時期・手当等の要件を満たせば、解雇は可能であることを前提としています。

 

*3

なお、現在では、労働契約法16条に同趣旨の規定がある。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

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損害賠償と不可抗力

先日(平成27年8月14日)、中華人民共和国の天津市で大規模な爆発があり、これを受けて現地に工場を有しているトヨタ自動車が3日間操業を停止する、との報道がありました*。

 

さて、このような事情で操業が停止し、約束の期日に商品を納入できなかった場合、商品を納入する側(上記では、トヨタ自動車)は、何らかの損害賠償責任を負うのでしょうか。

 

この点につき民法は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」(415条1項)と定めています。

つまり、損害賠償義務が生じるのは、あくまでも、債務者が、「その債務の本旨に従った履行をしないとき」に限定されます。

そのため、債務者が履行をしたくてもできないとき、いわゆる不可抗力の場合は、損害賠償責任を負いません。

 

そして、大規模な爆発によって、操業停止に追い込まれたという事情は、この不可抗力にあたるといえます。

したがって、商品を納入する側(上記では、トヨタ自動車)は、損害賠償責任を負わない、ということになるでしょう。

 

これに対し、金銭債務の場合、民法上「債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」(419条3項)とされていますので、注意が必要です。

 

なお、契約書の中には、通常不可抗力とはいえないストライキや輸送機関の事故を不可抗力に含めていることがあります。

自身が、商品を納入する側であれば、有利な規定ですが、商品を購入する側の場合、不利な規定となります。

 

契約書を作成・締結するにあたっては、条項の意味・内容に十分注意するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

* http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150816-00050050-yom-bus_all

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最低賃金法の引き上げ

先日(平成27年7月30日)、厚生労働省中央最低賃金審議会は、最低賃金を全国で16~19円引き上げる旨の小委員会報告を公表しました*1。

 

これにより、たとえば、東京では、最低賃金が現在の888円から19円上昇し、907円となります。

現在は、アルバイトの時給を900円にしているところもよく見掛けますが、改定後は法律違反となってしまいますので注意が必要です。

 

実際、毎年のように、労働基準監督署が、最低賃金法違反容疑で検察庁に書類送検しています*2。

特に、平成27年3月には、居酒屋経営者が逮捕されるという事件も起きています*3。

この事案では、平成23年1月1日から平成25年8月16日までの間、当該居酒屋の元労働者から、勤務した最後の月の給料が支払われない旨の賃金不払に関する申告が4件あり、労働基準監督署が、この申告を受け、当該居酒屋に対し、不払賃金を支払うよう行政指導を行ったにもかかわらず、その行政指導に従わず、再三の出頭要求に応じなかったようです。

 

通常は、逮捕までされることはあまりありませんが、この事案では、行政指導に従わず、再三の出頭要求に応じなかったことから、非常に悪質であると判断されたものと思われます。

 

労働法の分野では、労災、解雇や未払残業代がフォーカスされることが多いですが、最低賃金法にも注意するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000092841.pdf

 

*2

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei.html

 

*3

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei/backnumber/_121377.html

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ストレスチェック制度の義務化

本年(2015年)12月1日から、労働者を常時50人以上使用する事業場は、ストレスチェック制度が義務化されます(改正労働安全衛生法第66条の10・附則第4条)。

 

このストレスチェック制度に関し、本年7月22日、厚生労働省から、ストレスチェックの受検、結果の出力等を簡便に実施できるプログラムを開発しているとの発表がありました*1。

 

このプログラムには、つぎの機能の実装が予定されています。

① 労働者が画面でストレスチェックを受けることができる機能

② 労働者の受検状況を管理する機能

③ 労働者が入力した情報に基づき、あらかじめ設定した判定基準に基づき、自動的に高ストレス者を判定する機能

④ 個人のストレスチェック結果を出力する機能

⑤ あらかじめ設定した集団ごとに、ストレスチェック結果を集計・分析(仕事のストレス判定図の作成)する機能

⑥ 集団ごとの集計・分析結果を出力する機能

⑦ 労働基準監督署へ報告する情報を表示する機能

 

ただし、上記プログラムを使用する場合でも、社内規程を整備しておく必要がありますし、高ストレスと判定された者に対する面接指導等は、会社の側で準備・判断しておかなければなりませんので注意が必要です(詳細は、厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルをご覧ください。*2)。

 

上記プログラムがどのようなものになるのか、まだ不透明な部分もありますが、上手に活用して、ストレスチェックの実施に備えてください。

 

なお、このストレスチェック制度の義務化に関し、来週8月6日木曜日、社会保険労務士・精神保健福祉士の田中豪先生に「企業のメンタルヘルス対策の最前線(仮)」についてご講演いただきます。

田中先生は、県警本部、大手家電量販店、大手不動産会社等にてメンタルヘルスケアサポートを手掛けた、企業のメンタルヘルス対策の専門家です。

非常に貴重な機会ですので、ぜひ参加をご検討ください。

 

【第7回JSHセミナー】

[日時]平成27年8月6日(木)19時~22時

[場所]フレンチバル&レストランジェイズ TEL 03-3365-0341

東京都新宿区歌舞伎町1-1-16 テイケイトレードビルB1

[定員]25名

[会費]事前申込5500円、当日6500円

 

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150722-1.pdf

*2

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

 

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セクハラと会社の責任

昨日(平成27年7月21日)、上司によるセクハラ等が原因で自殺したとして、レストランチェーン「サイゼリヤ」の元店員の遺族が、会社等に対し、約9800万円の損害賠償を求める訴訟を提起したとのニュースがありました*1。

 

セクハラによって、従業員が自殺したり、うつ病等に罹患してしまった場合、セクハラに直接の責任がある者だけでなく、会社自体も損害賠償責任を負う可能性があります。

すなわち、セクハラをした本人は、不法行為に基づく損害賠償義務を負いますが(民法709条)、その使用者である会社も、民法の使用者責任の規定*2によって、不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになります。

 

詳細な事実関係は今後明らかになると思いますが、セクハラで、会社が高額の賠償を命じられる、といった事態も十分考えられると思います。

 

なお、セクハラに関しては、厚生労働省が、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のために講ずべき措置について資料を開示しています*3。

これらを参考にしたり、専門家である弁護士、社会保険労務士に相談する等して、職場環境をきちんと整えるようにしましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150721-00000130-jij-soci

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150721-00000075-mai-soci

 

*2 民法715条1項

「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

 

*3

http://www.positiveaction.jp/09/09_07.html

http://www.positiveaction.jp/09/09_08.html

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続・債権管理のススメ

先日(平成27年7月9日)、アミエージェンシー社会保険労務士事務所・アミエージェンシー株式会社と共催で、「事業拡大と会社の守りを両立しよう!( 第2回企業法務セミナー)」を開催しました。

当初の定員20名を大幅に超える33名の方にお申し込みをいただき、急遽座席数を増やして、実施いたしました。

お忙しい中、ご出席いただいたみなさまに感謝すると共に、ぜひ今後の会社経営に活かしていただけたら幸いです。

 

さて、上記セミナーでも触れましたが、債権回収のポイントは、事前準備・債権管理をきちんとしたうえで、取引先に対し、興味を持ち続け、情報を収集し続けることです。

 

債権回収(売掛金の回収)が出来ないことは、会社にとって最悪の事態です。

いかに高額な売掛金が存在しているとしても、会社の現預金が尽きてしまえば、会社は立ち行かなくなってしまいます。

しかし、何の準備もせずに、危機状態にある相手方から、債権を回収することなど、基本的にはできません。

取引開始前に、相手方の登記事項証明書やインターネットの情報を確認するだけでも、売掛金を回収できないというリスクは低減することができます。

また、取引開始時に、相手方の決算書を分析したうえで、契約書を作成し、担保をとれば、売掛金の回収可能性が上がります。

ただし、自社を取り巻く環境は、刻一刻と変化していっていますから、取引開始時には問題がなかったとしても、債権回収時には信用に不安が生じている、ということも珍しくありません。

 

事前準備・債権管理をきちんとするとともに、売掛先の信用不安を表わす徴候(主要な取引先が倒産・契約打切りになった、中心的な社員・従業員が退任・退職した等)を見逃さないよう、情報収集を怠らないようにしましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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債権管理のススメ

当事務所は、社員数10~200名程の顧問先企業のリスク管理・労務管理を中心に業務を行っていますが、顧問先企業から、知り合いの中小企業をご紹介いただき、ご相談を受けることがあります。

その中で、最もよくご相談を受ける案件の一つが、売掛金の回収です。

 

売掛金の回収が出来ないことは、会社にとって最悪の事態です。

いかに高額な売掛金が存在しているとしても、会社の現預金が尽きてしまえば、会社は立ち行かなくなってしまいます。

 

しかし、売掛先が倒産の危機に瀕してから、債権者が取りうる手段はごくわずかです。

売掛金の回収率を上げるためには、「事前に」きちんと対策(リスク分析)をし、支払が完了するまで継続的に管理(債権管理)していくしかありません。

 

取引にあたって、事前にリスクを分析し、継続的に債権を管理しておくことは、会社を守るために必要不可欠なものなのです。

(弁護士 國安耕太)

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精神障害と労災

厚生労働省は、毎年「過労死等の労災補償状況」を調査・公表していますが、先日(平成27年6月25日)、その平成26年度版が公表されました*1。

これによれば、精神障害を理由とする労災請求件数は1456件、支給決定件数は497件で、いずれも過去最多を記録したようです。

 

また、平成23年と少し古い情報ですが、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」によれば、精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、約320万人との統計が出されています*2。

 

このように現在の日本社会には、多くの精神疾患を有する患者を抱えており、どの会社においても、社員がうつ病等に罹患してしまうという危険を内包しているといえます。

そして、いったん社員が精神疾患に罹患してしまうと、当該社員のケア、業務の調整等、会社は多大なコストを投じなければならなくなります。

また、社員が亡くなってしまった場合には、数千万円から1億円超の損害賠償義務を負う可能性も十分あります。

 

このように企業においてメンタルヘルス対策をしておくことは、必要不可欠といえます。

 

なお、精神障害を理由とする労災と認定されるためには

①対象疾病を発病していること。

②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

という3要件を満たしている必要があります*3。

 

ただ、現実の運用では、業務による心理的負荷が強いか否かにかかわらず、業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したと認められなければ、業務起因性が肯定されてしまう傾向にありますので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089447.html

*2

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html

*3

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120118a.pdf

 

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会社の生存率

みなさんは、会社の生存率をご存知ですか?

これは、設立された会社が、何年後まで存続しているか、という統計をとったものです。

 

中小企業庁は、毎年、中小企業を取り巻く状況などを「中小企業白書」としてまとめ、公表していますが*1、2011年度版中小企業白書に、会社(企業)の生存率についての記載があります*2。

 

この記載によれば、5年で82%、10年で70%の生存率とされています。

ただ、同じ中小企業白書でも2006年度版*3では、5年で41.8%、10年で26.1%の生存率となっています。

他方、インターネット上では、5年で15%、10年で6%の生存率であるとする説もあります*4。

 

いずれにしても、長期にわたり会社を存続させていくこと、すなわち安定的に利益を上げ続けることは、容易ではありません。

特に、リスクに対する意識が低い会社は、不安定な取引先と契約を交わし、取引先の資金状況の悪化や倒産により売掛金が回収できない事態が発生することが多いです。

 

ぜひリスクを適切にコントロールして、10年後も発展し続ける会社を目指してください。

なお、当事務所代表弁護士國安耕太が、きたる7月9日(木)18:30から、「事業拡大と会社の守りを両立できるようになる!第2回企業法務セミナー」にて講演いたします。

会社の利益拡大のために押さえるべき取引先の見極め方・付き合い方・契約書の作り方や、売掛金が回収できないトラブルが発生した時の対策等について、解説する予定ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

【セミナー詳細】

[日 時]7月9日(木) 18:30~21:00 (開場:18:15~)

[会 場]東京都新宿区西新宿7-4-7 イマス浜田ビル5階

[参加費]税込5000円

[お支払]当日受付にて現金でお支払下さい。

[定 員]先着10名(1社2名までとさせていただきます。受付にて各名刺2枚をご提出下さい)

[キャンセルについて]準備の都合上、参加申込み後のキャンセルは 7月2日 (木) までにご連絡下さい。 以降にキャンセルされる場合キャンセル料をいただきます。

[講師]弁護士 國安耕太(ノースブルー総合法律事務所代表)平成20年弁護士登録 (第一東京弁護士会)/中央大学法科大学院実務講師、中央大学法学部兼任講師/2014年 財務省税関研修所 委託研修講師(知的財産法)その他セミナー実績多数/

(弁護士 南部弘樹)

*1

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

*2

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/Hakusyo_part3_chap1_web.pdf#search=’%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E7%99%BD%E6%9B%B8+%E7%94%9F%E5%AD%98%E7%8E%87′

*3

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h18/H18_hakusyo/h18/html/i1220000.html

*4

http://broadnakanishi.blog118.fc2.com/blog-entry-68.html

 

 

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労災保険法に基づく療養補償給付等と労基法75条に定める療養補償の意義

昨日(平成27年6月8日)、最高裁は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく療養補償給付等が労働基準法(労基法)75条に定める療養補償に該当するか否かに関し、初めての判断を示しました* 1。

 

労基法は、労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合、使用者は、平均賃金の1200日分を支払えば、解雇できる旨規定しています(労基法81条、75条1項、19条1項*2*3*4)。

 

他方、労災保険法に基づく療養補償給付は、使用者が、労働者に対し、直接支払うものではないため、労災保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者は、この労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者に該当しないのではないか、という点が問題となりました。

 

原審(東京高判平成25年7月10日)は、労基法81条・75条1項が、労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等から、労災保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者は、この労基法75条1項に定める療養補償を受ける労働者に該当しないと判断しました。

 

これに対し、最高裁は、

①業務災害に関する労災保険制度は、労基法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提として、その補償負担の緩和を図りつつ被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、使用者による災害補償に代わる保険給付を行う制度である

②労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものである

としたうえで、

③労災保険法に基づく、療養補償給付を受ける労働者は、解雇制限に関する労基法19条1項の適用に関しては、労基法81条・75条1項に定める療養補償を受ける労働者に含まれる

と判断しました。

 

本判決を受けて、労災による休業がしにくくなるのではないか、といった論調も見られますが、そもそも打切り補償による解雇は労基法上認められているものであり、また、労災保険分は、全額事業主負担であることを考えれば、妥当な判断ではないかと思います。

 

なお、打切り補償による解雇の場合であっても、解雇である以上、解雇権濫用*5にあたらないことが前提となります(本件も、この点をさらに審理するため、差し戻されています。)。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/148/085148_hanrei.pdf

 

*2労基法81条

「第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」

 

*3労基法75条1項

「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」

 

*4労基法19条1項

「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。」

 

*5労働契約法16条

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

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情報漏えい事故が会社に与える影響

昨日(平成27年6月1日)、外部からの不正アクセスによって、日本年金機構が保有する約125万件の個人情報が外部に流出したとの報道がありました*1*2。

 

昨年も、ベネッセホールディングスの情報漏えい事故が社会的に大きな問題となりました。

ベネッセは、情報を盗まれた、いわば被害者ともいえる立場ですが、個人情報が流出した顧客へのお詫び費用等で総額306億円の特別損失を計上したほか、国内通信教育講座「進研ゼミ」等の会員数が前年比で約25%減るなど、金銭的な損害だけでなく、会社としての信用についても大きな損害を被っています*3。

 

先日(平成27年5月14日)、当事務所主催の第4回労務管理セミナーで、情報管理の実務と情報漏えいが起きたらどのように対応すべきか等について講演をしましたが、やはり情報漏えいが会社に与えるダメージは、甚大と言わざるを得ません。

 

そして、消費者庁が公表している「平成25年度 個人情報の保護に関する法律施行状況の概要(平成26年10月)」*4によれば、ここ5年くらいは、毎年300~500件の情報漏えい事故が起きているとされていますので、決して他人事ではありません。

 

また、情報漏えい事故の恐ろしいところは、第三者の不正アクセス等、第三者の加害行為によって情報漏えいが起きてしまったとしても、不正アクセスを防止するために必要な措置をとっていなかったことを理由に、損害賠償義務が認められてしまう可能性があることです。

過去にも、宇治市の住民基本台帳データが外部に漏えいした事案において、宇治市には、データの管理に万全を尽くすことが要請されていたというべきとして、1人あたり1万5000円の損害賠償義務が認められた事案があります(京都地判平成13.2.23、判例地方自治 265号17頁)。

 

情報管理システムを構築するだけでなく、継続的に運用をチェックすることおよび情報漏えいが発生したら、直ちに弁護士等の専門家に相談することが重要といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150601-00000111-mai-soci

*2

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150601/k10010099511000.html

*3

http://mainichi.jp/select/news/20150502k0000m020121000c.html

*4

http://www.caa.go.jp/planning/kojin/pdf/25-sekou.pdf#search=’%E3%80%8C%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%95%E5%B9%B4%E5%BA%A6+%E5%80%8B%E4%BA%BA%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B%E6%96%BD%E8%A1%8C%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%80%8D’

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パワーハラスメント対策していますか?

先日(平成27年5月15日)、厚生労働省から「パワーハラスメントスメント導入マニュアル」*1が公表されました。

 

近年、職場のパワーハラスメントスメントに関する都道府県労働局や労働基準監督書等への相談件数が、増加しています。

しかし、厚生労働省の調査では、従業員数1000人以上の会社の76%強がパワーハラスメントスメント対策を実施しているのに対し、従業員数99人以下の会社では18%強しか実施していないとされています。

そのため、従業員規模が小さい会社ほど、パワーハラスメント対策が進んでおらず、企業リスクが高いと言えます。

 

また、平成24年度 厚生労働省「職場のパワーハラスメントスメントに関する実態調査」*2によると、過去3年以内に

①パワーハラスメントをしたと感じたり、パワーハラスメントをしたと指摘されたことがあると回答した従業員は7.3%

であるのに対し、

②勤務先で、パワーハラスメントを見たり、相談を受けたことがあると回答した従業員は、28.2%

③パワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、25.3%

とされています。

 

この統計をみる限り、パワーハラスメントの加害者は、自分の行為がパワーハラスメントにあたると認識しておらず、知らず知らずのうちにパワーハラスメントを行っている可能性があるといえます。

すなわち、部下を熱心に教育していたつもりが、ある日突然パワーハラスメントだと訴えられる、そういったリスクがあるということです。

 

まさか自分の会社でパワーハラスメントなんて起きるわけがない、と思っていませんか?

ぜひ一度、パワーハラスメント対策について、厚生労働省のマニュアルで概要を確認してください。

 

また、不明な点がある場合は、社会保険労務士や弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

(社会保険労務士村中幸代 弁護士國安耕太)

 

*1

http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/pdf/pwhr2014_manual.pdf

*2

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002qx6t-att/2r9852000002qx9f.pdf

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付加金と印紙代

労働基準法は、付加金の制度を設けています。

付加金とは、解雇予告手当(20条)、休業手当(26条)または割増賃金(37条)等を支払わない使用者に対し、裁判所が、労働者の請求に基づき、これら未払金に加えて支払いを命ずる金銭をいいます*1。

 

大雑把にいえば、会社が、200万円の残業代(割増賃金)を未払いであった場合、これに加えてさらに200万円の付加金の支払いが命じられ、合計400万円の支払義務が生じることになります。

 

この規定を見ただけで、労働基準法がいかに労働者を保護しており、割増賃金等の未払いがいかに会社にリスクをもたらすかがよくわかると思います。

 

さて、この付加金の請求に関し、付加金の請求の価額に相当する印紙代も支払う義務があるのかが争われ、先日(平成27年5月19日)、この点に関する最高裁の判断が示されました*2.

 

最高裁は、「未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは、民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれる」として、割増賃金等の請求と共に付加金の請求をするときは、付加金の価額に相当する印紙代の支払義務はないとしました*3。

 

この結果、例えば、200万円の残業代に加え、同額の付加金を請求した場合、2万5千円ではなく、1万5千円の印紙代で足りることになります。

額としては1万円の差ですが、手続費用の負担が低くなることは、訴訟提起の心理的ハードルが下がることにつながる可能性があります。

 

いずれにしても、付加金という制度によって、自社に大きなリスクが生じないよう、労務管理には細心の注意を払うようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

*1

労働基準法114条

裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。

 

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/112/085112_hanrei.pdf

 

*3

なお、付加金の規定について、「労働者の保護の観点から、割増賃金等の支払義務を履行しない使用者に対し一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし、その支払義務の履行を促すことにより上記各規定の実効性を高めようとするもの」としています。

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ライザップと広告表示

昨日(平成27年5月19日)、神戸市の適格消費者団体*1・NPO法人「ひょうご消費者ネット」が、トレーニングジムを運営するRIZAP株式会社(以下「ライザップ」)に対し、ライザップが広告でうたっている「30日間全額返金保証」表記が、景品表示法の有利誤認や特定商取引法の誇大広告に当たる疑いがあるとして、同表記の削除を求める申入書を送付したとの報道がありました*2*3。

 

ひょうご消費者ネットのホームページに、当該申入書の全文が掲載されており*4、これをみる限り、

広告には、全額返金保証と記載されているにもかかわらず、

①返金を受けるためには、会社(ライザップ)の承認が必要とされていること

②転勤や妊娠等の場合には返金が受けられないとされていること

③健康食品等については対象外とされていること

から、

㋐広告の記載が、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(景品表示法4条1項2号)であり、また、

㋑著しく事実に相違する表示、または実際のものよりも有利であると人を誤認させるような表示(特定商取引法12条)である、

との主張のようです。

 

かかる主張に対し、ライザップがどのような反論をするのか注目です。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 景品表示法および特定商取引法では、2008年改正から、消費者に代わって消費者団体が消費者全体の被害防止のために、事業者の不当な行為そのものを差止め請求できるようにするために消費者団体訴訟制度が取り入れられており(消費者契約法は、2006年改正から)、適格消費者団体のみが団体訴訟を提起することができます。

*2 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150519-00050000-yom-soci

*3 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150518-00000147-jij-soci

*4 http://hyogo-c-net.com/pdf/150518_rizap.pdf

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JASRACと独占禁止法

先日(平成27年4月28日)、テレビやラジオで使われる楽曲の著作権管理事業を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が独占禁止法違反(私的独占)にあたるかどうかが争われた訴訟の最高裁判決が出されました*1。

 

新聞報道等では、JASRACの独占禁止法違反が認められたとの記載もありますが、正確には、本判決は、JASRACの契約方法が「他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にする効果を有する」との判断を示したにすぎず、独占禁止法違反を認めたものではありません。

 

独占禁止法3条は、「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」と定め、私的独占を禁止していますが、この「私的独占」とは、「事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」とされています(独占禁止法2条5項)。

 

大雑把にいえば、「私的独占」にあたるためには、①他の事業者の事業活動を排除する行為と②一定の取引分野における競争の実質的制限という2つの要件を満たす必要がある、ということです。

 

そのため、本判決は、判決末尾にて、

㋐JASRACの契約方法は、特段の事情のない限り、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有する

㋑したがって、①他の事業者の事業活動を排除する行為という要件の該当性につき、特段の事情の有無を検討の上、

㋒上記要件の該当性が認められる場合には、②一定の取引分野における競争を実質的に制限するものに該当するか否か

など、同項の他の要件の該当性が審理の対象になるとしています。

 

本件は、公正取引委員会で、再度審理されることになっています。

今後の判断が楽しみです。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/064/085064_hanrei.pdf

 

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労災事故と労働災害保険

3月20日、大阪地方裁判所は過労自殺した社員の勤務先に約1億円の損害賠償を命じました。原告は、時間外労働時間が月約113~254時間にも及んでいたと主張しています。

http://www.sankei.com/west/news/150320/wst1503200053-n1.html

 

労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 」と定め、また過労死・過労自殺に関する代表的な裁判例である最高裁判所第二小法廷平成12年3月24日は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」としています。

具体的には、労働者の心身の状況に応じ、長時間労働の抑制、配置転換、休暇の付与、配置人員を増やす、業務体制を見直すなどの措置をとらなければいけません。

これらの義務に違反したことにより健康被害、死亡や自殺が発生したとされる場合には、使用者は損害賠償義務を負います。

 

一方、労働者を1人でも雇用している場合、その使用者はごく一部の例外を除いて労災保険に加入しなければなりません。

しかし、労災保険から支払われる額は、本来損害賠償できる額の一部でしかありません。特に、慰謝料は支払の対象ではありません。

 

従業員が亡くなるような重大事故の場合、慰謝料が極めて高額になります。

そして、労働安全衛生法が改正され、今年12月1日より従業員の医師・保健師などによるストレスチェックが義務化されることに伴い、使用者の負う義務はますます重くなっていく可能性があります。

 

このようなリスクに対応するものとして労働災害総合保険(法定外補償保険・使用者賠償責任保険)があります。これは、労災保険がカバーしない部分について支払対象とする保険です。

 

そもそも労災事故が起きないことが望ましいのはもちろんですが、近時の裁判例の動向を踏まえますと、万一に備えて労働災害総合保険への加入も検討すべき時代になったと言えるでしょう。

(弁護士南部弘樹)

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無期転換の例外

今月1日から、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期雇用特別措置法)が施行されています(*1)。

これは、同一の使用者との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申込により、無期労働契約に転換されるという労働契約法18条(*2)の例外を定めたものです。

 

特例の対象者は、

①「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く専門的知識等を有する有期雇用労働者(有期雇用特別措置法2条3項1号)

および

②定年後に有期契約で継続雇用される高齢者(有期雇用特別措置法2条3項2号)

です。

 

つぎに、特例の効果は、つぎの各期間、無期転換申込権が発生しないというものです(有期雇用特別措置法8条)。

①専門的知識等を有する有期雇用労働者については、一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(ただし、上限10年)

②定年後に有期契約で継続雇用される高齢者については、定年後引き続き雇用されている期間

 

ただし、いずれも、雇用管理に関する措置についての計画を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、当該計画が適当である旨の認定を受けていることが条件となります。

 

また、専門的知識等を有する有期雇用労働者には、博士の学位を有する者や弁護士・税理士等の士業の他、大学卒で5年以上の実務経験を有するシステムエンジニア等も含まれています。

ただ、年収1075万円以上との要件も課されていますので、対象は相当限定されると思われます。

 

以上のとおり、無期転換の例外は、かなり範囲を限定されています。

システムエンジニアだから、技術者だから、という理由で無期転換を拒むことはできませんので、ご注意ください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf

http://hyogo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roudoukeiyakuhou/yuukitokusohou.html

 

*2

労働契約法18条1項

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。」

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会社の不祥事と取締役の責任

早いもので、本日(3月23日)で、35歳になりました。

これまで大きな病気もなく、健康でこれたことおよび不安なく仕事に打ち込める環境を整えてくれていることを両親・義母そして家族に感謝します。

また、公私に渡り支援してくれる諸先輩方、事務所の仲間そして友人達に深く感謝します。

みなさま、これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

さて、先日来、東洋ゴム工業株式会社(以下「東洋ゴム」)の販売する、免震ゴムの性能偽装問題が話題となっています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150321-00000556-san-soci

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150322-00050109-yom-soci

 

事実関係については、まだ明らかになっていない部分も多いですが、一部の報道では、偽装問題が発覚した後も、出荷をしていたとされています。

 

本件では、東洋ゴムの取締役等の役員が、偽装の事実を認識していたのかは明らかではありません。

しかし、仮に、偽装の事実を認識していたにもかかわらず、これを公表していなかったような場合には、取締役等に損害賠償責任が課される可能性があります。

 

実際、過去の裁判例では、食品衛生法上、使用の認められていない添加物を使用した商品が販売されていたことを認識したにもかかわらず、その事実を公表しなかった取締役等に、巨額の損害賠償責任が認められたものがあります(大阪高判平成18年6月9日判時1979号115頁、ダスキン肉まん事件)。

 

もちろん、会社経営に損失はつきものであり、会社に損失(損害)が生じたからといって、常に取締役に損害賠償責任が生じるわけではありません。

ただ、経営上の判断の内容およびその決定過程に不合理な点が存する場合は、取締役の善管注意義務(会社法330条・民法644条)、忠実義務(会社法355条)に違反すると判断され、損害賠償責任を負う可能性があります。

 

たしかに偽装のような不祥事に関する事実は、会社の評判を毀損するものですから、これを隠したくなる心理はわからないでもありません。

しかし、上記のとおり、事実の隠匿は、損害賠償責任を負わされる可能性があります。

また、過去の不祥事事案をみる限り、不祥事を起こしたことそのものよりも、その後の対応の悪さ(隠匿、ごまかし、開き直り等)による影響の方が大きいといえます。

 

いずれにしても、不祥事が起きた際は、初動が大事です。

速やかに弁護士等の専門家に相談し、対応するようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

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従業員の退職後の秘密保持義務

先日、某家電量販大手の元幹部社員が、退職して競合他社に再就職後、退職前の会社の事業に関する情報を不正に取得したとして、不正競争防止法違反で逮捕されました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150113-00050083-yom-soci

 

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保することを目的とする法律で、様々な行為を「不正競争」行為として規制をしていますが、本件は、このうち営業秘密の不正取得行為が問題とされています。

ここで、不正取得行為は、不正競争防止法上「窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為」と定義されています(同法2条1項4号)。

そのため、単に転職後に、転職前に得た情報を利用しただけでは、不正競争防止法には違反しません。

 

ただし、「労働者が雇用関係中に知りえた業務上の秘密を不当に利用してはならないという義務は、不正競争防止法の規定及びその趣旨並びに信義則の観点からしても、雇用関係の終了後にも残存する」(仙台地判平成7.12.22、判タ929-237)というのが、通説的な見解です。

したがって、必ずしも転職前に得た情報を自由に利用できるわけではありませんので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

 

 

 

 

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創業支援

1月9日、平成26年度補正予算案が閣議決定され、経済産業省関連の補助金の概要が公表されました。

詳細は、後記URLのとおりですが、創業促進支援等が含まれています。
ただ、予算がそもそもあまり用意されていないことと、金額的に低額な上限が定められていますので、費用、時間、労力を掛けてまで申請するメリットがあるかどうかよく検討する必要があります。
また、上記のとおり、予算があまり用意されていないため、利用を検討する方は、早急に手続きを進める必要があります。
中小企業庁HPhttp://www.meti.go.jp/main/yosan2014/hosei/pdf/sme.pdf
(弁護士 國安耕太)

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助成金の活用をしよう!

助成金を申請してみませんか?

 

今、中小企業に人気の助成金が「キャリアアップ助成金」です。

例えば、期間を定めて雇用している労働者を、正社員に転換させた場合、1人あたり50万円(大企業は40万円)が国から助成されます(1年度1事業所当たり15人まで。)。 

労働者が1人しかいない会社や個人事業主でも、条件にあてはまれば助成金を貰える可能性があります。

また、交付された助成金は、会社が自由に利用することができます。

従業員の福利厚生、営業活動、修繕費等用途は問いません。

ぜひ、助成金の活用を検討してみてください。

 

なお、助成金の申請は、要件が複雑で、そもそも対象となっているのかが分からないこともあります。

また、必要書類が多く、手続きが複雑な場合もあります。

「助成金を申請してみたいけど、どうすればいいかわからない。」「手続が面倒」と思われる方は、当職が申請を代行することも可能ですので、ぜひ一度当職までお問い合わせ下さい。

(社会保険労務士 村中幸代)

 

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妊娠による降格の可否

すでにニュース等になっていますが、昨日(平成26年10月23日)、妊娠による降格に関し、最高高裁判決が出されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf

 

判決の枠組みはつぎのとおりです。

 

①女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として違法

「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たる」

 

②例外的に、㋐当該労働者が、真に降格を承諾したとき、および㋑特段の事情が存在するときは、例外的に適法

㋐「当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」

㋑「事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務 への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」

は、同項の禁止する取扱いに当たらない

 

今後、様々な方が、詳細な分析をされると思いますが、妊娠による降格を原則として無効とし、例外的に有効となる一般的な基準を示した点で、非常に大きな意義を有する判決であるといえます。

 

みなさまの会社におかれましても、これを機に社内の人事規定について見直しをしてみることをお勧めいたします。

(弁護士 國安耕太)

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日経産業新聞(オンライン)の「経営喝!力 企業マネジメント最新トレンド」に、当事務所の國安弁護士が、連載中です。

日経産業新聞(オンライン)の「経営喝!力 企業マネジメント最新トレンド」に、当事務所の國安弁護士が、未払残業代請求と労務管理について、連載中です。
近年、従業員から、未払残業代を請求される会社が増えており、ひとたび未払残業代請求がなされれば、多額の支払いが命じられることも少なくありません。
また、会社の規模・状況によっては、未払残業代の支払いが原因で倒産する可能性もあります。
未払残業代の実態を正しく理解し、適正な労務管理を行ってください。
http://ss-smb.nikkei.co.jp/column/

(事務局)

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誤表示(?)と刑事罰

1 10月22日、関西の阪急阪神ホテルズが、メニューの表示とは違う食材を使っていたことを公表しました。その後、同ホテルだけでなく、東京の椿山荘や帝国ホテル等多数のホテルで、同様の問題が発覚しています。また、この問題はホテルにとどまらず、レストランや大手百貨店の総菜売場等他の業界にも波及しています。

では、このようにメニューの表示とは違う食材を使用した場合、会社(ホテル等)やその経営者は、どのような法的責任を負うことになるのでしょうか。

 

2 まず、当初から消費者を騙す目的で、メニューの表示とは違う食材を使っていた場合には、会社の経営者に刑法上の詐欺罪(246条1項)が成立する可能性があります。過去には、北海道の食品加工卸売会社ミートホープの代表取締役が、牛肉に他の肉を混入した肉を牛肉として販売したとして、詐欺罪等の罪で有罪判決を受けています(札幌地判平成20.3.19、裁判所ウェブサイト)。

しかし、本件について、実際に詐欺罪の責任を問うことは、現実的には難しいと思われます。

少し専門的な話になりますが、刑法上の詐欺罪が成立するためには、①人を欺くこと(欺罔行為)、②欺罔行為により相手方が錯誤(主観的な認識と客観的な事実との間に齟齬が生じていること)に陥ること(錯誤)、③錯誤に陥った相手方が、財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)、④行為者が財物ないし利益を得ること(取得行為)、⑤①ないし④の因果関係という客観的要件および⑤故意という主観的要件を満たす必要があります。

本件で難しいのは、そもそも、②欺罔行為により相手方が錯誤に陥ったといえるかという点です。

すなわち、食材単体の販売の場合であれば、当該食材の内容・品質そのものが重要かつ唯一の関心事となります。たとえば、芝エビを買いに行ったにもかかわらず、騙されてバナメイエビを販売されたのであれば、芝エビを買ったという主観と、バナメイエビを買ったという事実との間に齟齬がありますから、間違いなく錯誤にあたります(ミートホープ事件は、まさにこのような事件でした。)。

他方、食材は、レストランで提供される料理の一部分を構成するにすぎません。消費者は、調理された料理に対して代金を支払うのであって、食材そのものに代金を支払うものではありません。たとえば、「芝エビのエビチリ」というメニューを見たときに、どれだけの消費者が「芝エビ」という部分を重視しているのでしょうか。そうすると、料理人の作ったエビチリという主観と事実には、齟齬はなく、錯誤はないとも考えられます。

このように、本件では、②錯誤の要件を満たすか、一概には判断できません。

また、これだけ多くのホテル等がメニューの表示とは違う食材を使っていたとなると、その妥当性・相当性はともかく、消費者を騙す意図(⑤故意)まであったといえるのか、疑問もあります。

したがって、会社の経営者に対し、刑法上の詐欺罪(246条1項)としての法的責任を問うことは、現実的には難しいでしょう。

 

3 そこで、現実的には、会社に対し、不当景品類および不当表示防止法(以下「景表法」)違反としての責任を追及されることになると思われます。

景表法は、商品の品質等について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、不当に顧客を誘引すること等を禁止しています(4条、優良誤認表示の禁止)。

かかる禁止に違反した場合には、措置命令(6条)が出される可能性があり、措置命令に反すると2年以下の懲役また300万円以下の罰金(15条)に処せられる可能性があります。

そして、重要なことは、故意に偽って表示した場合のみならず、誤って表示してしまった場合であっても、責任を免れないということです。

実際、平成25年11月12日、消費者庁が、阪急阪神ホテルズに対し、景品表示法違反(優良誤認)の疑いで立入検査したことが報道されています(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1200U_S3A111C1000000/)。

なお、製造日と消費期限を偽った伊勢名物の赤福事件では、食品の品質表示などを定めた農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)違反を問われました。

JAS法は、製造業者等(農林物資の製造、加工、輸入または販売を業とする者)に対し、名称、原料または材料、保存の方法、原産地等を表示する義務を負わせています(19条の13の2、19条の13)。

しかし、JAS法をうけて定められている加工食品品質表示基準は、一般消費者に直接販売する場合および飲食料品を設備を設けて飲食させる場合を対象から除外しています(3条)。

そのため、対面販売を行うデパートの総菜店や、レストランには、JAS法は適用されず、本件についてもJAS法に基づく法的責任を負うことはありません。

 

4 以上のとおり、本件に関しては、景表法に基づく法的責任を負う可能性があります。

また、相次ぐ偽装事件をうけ、近年、食に対する消費者の視線は厳しくなってきています。最初に発覚した阪急阪神ホテルズでは、代表取締役が辞任するに至っていますし、前述のミートホープ事件では、代表取締役に懲役4年の実刑判決が下されています。

 

5 会社および会社の経営者は、本件を教訓として、自社の行っている事業にどのような問題が生じる可能性があるのか、十分に検討し、必要に応じて専門家と協議して、しっかりとした対策をとるようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

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会社の労務管理と取締役の責任

1 10月30日(水)午後6時30分から東京都港区新橋1-18-19キムラヤオオツカビル7階JWAグループセミナールームにて、第3回労務管理セミナー『社長さん必見!会社を守るための「健康管理と労災補償・損害賠償の実務」』を開催いたします。

残席にまだ余裕がありますので、お時間のある方は、お誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。

 

2 さて、上記セミナーでも取り上げますが、先日、居酒屋チェーンの男性従業員(当時24歳)が死亡したのは過労が原因であるとして、当該従業員の遺族が、T社および役員個人に対し、損害賠償を求めた事案に関し、最高裁はT社らの上告を棄却する判決を下しました(平成25年9月24日)。

これにより、T社に対して合計約7800万円の支払いを命じた京都地裁判決(平成22.5.25、労判1011号35頁)、大阪高裁判決(平成23.5.25、労判1033号24頁)が確定しました。

 

3 過重労働が原因で、従業員が死傷した場合、従業員ないしその家族は、会社に対し、不法行為を理由とする損害賠償請求(民法709条)をすることができます。

また、債務不履行(安全配慮義務違反)を理由とする損害賠償請求(民法415条)をすることもできます。安全配慮義務とは、判例上、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」(最判昭和59.4.10、民集38-6-557、川義事件)とされてきたもので、現在では、労働契約法5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。

本件でも、原告となった従業員の遺族は、不法行為および債務不履行(安全配慮義務違反)を根拠に損害賠償を求めていましたが、京都地裁は、「被告会社は、労働者であるAを雇用し、自らの管理下におき、a駅店での業務に従事させていたのであるから、Aの生命・健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を負っていたといえる。具体的には、Aの労働時間を把握し、長時間労働とならないような体制をとり、一時、やむを得ず長時間労働となる期間があったとしても、それが恒常的にならないよう調整するなどし、労働時間、休憩時間及び休日等が適正になるよう注意すべき義務があった。」としたうえで、「給与体系において、本来なら基本給ともいうべき最低支給額に、80時間の時間外労働を前提として組み込んでいた」、「三六協定においては1か月100時間を6か月を限度とする時間外労働を許容しており、実際、特段の繁忙期でもない4月から7月までの時期においても、100時間を超えるあるいはそれに近い時間外労働がなされており、労働者の労働時間について配慮していたものとは全く認められない」等の事実を認定し、「被告会社が、Aの生命、健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を怠り、不法行為上の責任を負うべきであることは明らかである。」として、不法行為を理由とする損害賠償請求を認めました(大阪高裁、最高裁もかかる判断を支持しています。)。

 

4 さらに、本件訴訟では、上記のとおり、T社のみならず、T社の役員個人に対しても、会社法429条1項に基づく損害賠償義務を認めました。

会社法429条1項は「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定していますが、過重労働によって従業員が死亡した事案に関し、取締役の個人責任が認められるのは、非常に珍しいといえます。

ただ、本件では、上述のとおり、給与体系において、最低支給額に80時間の時間外労働を前提として組み込んでいたり、三六協定においては1か月100時間を6か月を限度とする時間外労働を許容している等、労務管理の制度設計からして不備があるとされても仕方がないような体制を取っていました。

そうであるからこそ、京都地裁も、「被告取締役らにおいて、労働時間が過重にならないよう適切な体制をとらなかっただけでなく・・・一見して不合理であることが明らかな体制をとっていたのであり、それに基づいて労働者が就労していることを十分に認識し得たのであるから、被告取締役らは、悪意又は重大な過失により、そのような体制をとっていたということができ、任務懈怠があったことは明らかである。」として、取締役個人の責任を認めたものと考えられます。

 

5 このように、昨今では、会社だけでなく、取締役等の役員個人に対する損害賠償訴訟も提起されるようになってきました。そして、実際に損害賠償請求が認められる事案も出てきています。

会社にとって、事前に専門家によるチェックを受け、適正な労務管理を行うことは喫緊の課題ですが、会社のみならず、取締役個人にとっても、適正な労務管理を行うことが直接的かつ重要な意味を持つ時代となったといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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白斑問題と製造物責任

1 先日、東京都内に住む女性が、9月18日、化粧品会社であるK社に対し、K社の美白化粧品で肌がまだらに白くなる白斑症状が出たとして、約4800万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したとのニュースが配信されました。

 

訴状の内容が公開されていませんので、この女性がどのような法的根拠に基づいて損害賠償を求めているのかは不明ですが、一般的にこのような場合、どのような法的根拠に基づいて、損害の賠償を請求できるのでしょうか。

 

2 まず、①会社に対し、製造物責任法に基づき損害賠償請求をすることが考えられます。

すなわち、製造物責任法は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入・・・した製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(3条)と定めています。本件でも、K社の美白化粧品の欠陥により、白斑症状が出たということが立証できれば、K社は、それにより生じた損害を賠償する責任があります。

 

つぎに、②会社に対し、民法709条、710条の規定に基づき損害賠償(慰謝料)を請求することも考えられます。

 

さらに、③K社の役員等が、自社の製品によって白斑症状が出ることを知りながら放置していたような場合には、役員等に対し、損害賠償請求(会社法429条)することができる場合もあります。

 

3 近時、上記のような法的根拠に基づき、製造物責任を問う訴訟が増えています。たとえば、お茶を原材料とした石鹸を使用したことで多数の方が小麦アレルギーを発症してしまったという事件は、記憶に新しいところと思いますが、この事件では、北は北海道から南は沖縄まで、各地で被害者弁護団が結成され、各地の裁判所に提訴されています。

 

また、過去には、化粧品を使用したことにより、その顔面などに接触性皮膚炎を生じたとして、製造・販売会社に対して、化粧品に指示・警告上の欠陥が存在したなどと主張して、製造物責任法(2条、3条)又は不法行為(民法709条)による損害賠償請求を行った事案があります。

この事案について東京地裁は、化粧品の使用と皮膚障害が生じた製品事故について因果関係を肯定したものの、右事故について化粧品の製造業者の警告上の欠陥を否定して、原告の請求を棄却しています(東京地判平成12.5.22判例時報1718号3頁)。

 

このほか、化粧品に関する事案ではありませんが、製造物責任を問題とした有名な裁判例として、こんにゃく入りゼリーを子供(当時1歳9か月)が食べ、喉に詰まらせて窒息死したことついて、亡くなった子供の両親が、製造会社及び役員等に対し、製造物責任法(3条)又は不法行為(民法709条、会社法429条)等による損害賠償請求を求めた事案(大阪高判平成24.5.25)もあります。

この事案について大阪高裁は、こんにゃくゼリーによる窒息事故の危険性は、食品自体の危険性ではなく、食べ方に起因して発生する危険であり、本件事故当時,本件警告表示が不十分であって,本件こんにゃくゼリーが通常の安全性を欠くとまではいえないなどとして、控訴人らの各控訴をいずれも棄却しました。

 

4 上記のとおり、化粧品やこんにゃくゼリーの事案では、製造物自体に欠陥があるということを立証できず、会社等の損害賠償責任は認められませんでした。

しかし、会社等にとっては、このような事件が起こると、製造物の回収・調査のため費用を支出しなければならなくなりますし、このような訴訟を提起されること自体が、風評被害等のリスクを生じます。

また、製造物の欠陥が明らかな場合には、予想外に高額な賠償金を支払わなければならなくなることもあります。

 

ぜひ今回の白斑問題を他山の石として、自社製品を改めてチェックするとともに、不具合等の社内報告および社外からのクレームを吸い上げるようなシステムを構築しましょう。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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ブラック企業と経営者

先日、「ブラック企業大賞2013」の授賞式が開催され、大賞は大手居酒屋チェーンを経営するW社が受賞したようです。

ブラック企業について、明確に定義されているわけではありませんが、ウィキペディアでは、「広義には入社を勧められない労働搾取企業を指す。すなわち、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す」とされています。

私たち外部の人間には、ブラック企業大賞を受賞したW社が本当にブラック企業かどうかはわかりません。

しかし、仮に使用者である企業が、長時間のサービス残業を従業員に強いているとすれば、未払残業代(労基法37条1項)や付加金(労基法114条)を請求することができますし、長時間労働により身体に異常が生じたような場合には、安全配慮義務違反を根拠に損害賠償請求(民法709条)をすることができます。

また、サービス残業については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が労働基準局長通達(平成13年4月6日基発339号)として出されています。この通達では労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、始業・終業時刻の確認及び記録等が挙げられています。これに関連して、タイムカードによる労働時間の記録がある場合には、使用者による適切な反証がない限り、その記録に従って時間外労働の時間を算定するとの裁判例(丸栄西野事件、大阪地判平成20・1・11、労判957-5)もあります。サービス残業に対する裁判所の姿勢は近年厳しくなっているといえましょう。

さらには、悪質なサービス残業の事例では、労働基準監督署の立入検査や是正勧告を受けている場合もあります。

また、刑罰の対象にもなりえます。たとえば、残業代不払いの場合は、労基法24条に違反し、30万円以下の罰金となり(労基法120条)、36協定の締結がないのに時間外労働をさせた場合には、労働基準法32条に違反し、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。

昨今では、ひとたびニュースとなれば半永久的にネットに残り続けますから、万一これらの処分を受けて公表されると、企業にとって大きなダメージとなります。

さらに、パワーハラスメントについては、加害者である上司や同僚に対する慰謝料請求(民法709条)だけでなく、労働契約上の安全配慮義務違反を根拠に、企業に対し、損害賠償請求することも考えられます。現に川崎市水道局事件(東京高判平成15・3・25、労判849-87)では、使用者である川崎市に、安全配慮義務違反を理由とした国家賠償法上の責任が認められました。

このように、現代社会においては、昔と同じように従業員に働いてもらっていたにもかかわらず、突然ネット上でブラック企業であると批判されたり、現実に従業員から訴訟を提起されることも珍しくありません。

そして、企業にとっては、このような批判をされたり、訴訟を提起されること自体がリスクとなり得ます。

企業の経営者としては、このような批判や訴訟を防止するため、事前に専門家によるチェックを受けることが必要不可欠な時代となったといえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

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スーパーの冷凍庫に入る行為と刑事罰

1 先日、つぎのニュースが、話題となりました。

「スーパーの冷凍庫に客入り撮影 ツイッターに投稿」

http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013082101001073.html

軽い気持ちでこのような行動に出たのでしょうが、場合によっては刑事罰を科せられる可能性があります。

 

2 まず、当初から、アイスケースに入る目的でスーパーに立ち入ったような場合は、住居侵入罪(刑法130条前段)が成立します。

(参考判例:最判昭和58年4月8日、刑集 37巻3号215頁)

「刑法一三〇条前段にいう「侵入シ」とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないというべきである。」

このような目的での立ち入りは、スーパーの管理権者が容認していないといえるからです。

住居侵入罪の罪責は、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

なお、買物目的でスーパーに来店し、アイスケースを見て犯行を思い立ったような場合には、住居侵入罪は成立しません。

 

3 つぎに、アイスケースに入っていたアイスについて、器物損壊罪が成立しえます。

器物損壊罪(刑法261条)における「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為を指します。

(参考判例:最決昭和35年12月27日、刑集14巻14号2229頁)

「校庭に「アパート建築現場」と墨書した立札を掲げ巾六間長さ二〇間の範囲で二箇所にわたり地中に杭を打込み板付けをして、もって保健体育の授業その他生徒の課外活動に支障を生ぜしめたときは、該物件の効用を害するから器物損壊罪を構成するものと解するを相当とする。」

他人が寝転んだアイスを購入したいと考える人は通常いないので、当該アイスをアイスとして売却することは、事実上不可能であり、物の効用を害する行為といえます。

過去の判例では、食器に放尿する行為が「損壊」にあたるとされています(大判明治42年4月16日、刑録 15輯452頁)。

器物損壊罪の罪責は、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。

 

4 最後に、アイスケースに入る行為につき、スーパーに対する威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

威力業務妨害罪(刑法234条)における「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力の使用をいいます。

(参考判例:最判昭和28年1月30日、刑集 7巻1号128頁)

「「威力」とは犯人の威勢、人数及び四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解するを相当とするものであり、且つ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであって、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきものである。」

本件では、客がスーパーの売り場にあるアイスケースに入ることによって、必然的にアイスを販売するという業務の執行を中止または制限せざるを得ない状況になります。

そのため、当該行為自体が、業務主催者に心理的威圧を加えるものとして、「威力」に該当すると考えることができます。

過去の裁判例では、大阪万博の展示館「太陽の塔」の地上60メートルの右眼孔部に入り込む行為が「威力」にあたるとされています(大阪地判昭和47年2月17日、刑事裁判月報4巻2号394頁)。

威力業務妨害罪の罪責は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

 

5 以上のとおり、スーパーの冷凍庫に入る行為は、住居侵入罪、器物損壊罪および威力業務妨害罪の罪責を負う可能性があります。

また、民事上多額の損害賠償を負担しなければならない可能性もあります。

このように軽い気持ちで行った行為によって、思わぬ刑罰・損害賠償責任を負担することがありますので、十分注意してください。

(弁護士 國安耕太)

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