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障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法の施行について

平成26年6月、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が公布され、本年4月から施行されます。
これまで、いわゆる差別として典型的に考えられてきたものは、たとえば盲導犬を連れた障害者の入店拒否や障害を持つ児童の入学拒否など、障害を理由とする排除や制限でした。これは直接差別と呼ばれてきました。
しかし、この法律は直接差別だけでなく、障害者に合理的な配慮をしないことも差別にあたるとしています。
障害者差別解消法第8条2項は、「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。」としています(知的障害等により本人自らの意思を表明することが困難な場合には、その家族などが本人を補佐して意思の表明をすることもできるとされています。)。
難解な表現ですが、同法は、事業者に対して、単に直接差別をしないだけでなく、障害者が生活するにあたってのハードルを取り除くよう、民間事業者に合理的な配慮をするよう努力する義務を課しました。これは、単に機会の平等を確保するだけではなく、障害者が他の人々と同じ社会的活動を営めるようにしようという考え方に基づくものです。
つまり、単に入店拒否や入学拒否をしないというだけでは十分ではなく、たとえば施設を利用しようとする障害者を民間事業者はサポートしなければならないとしたのです。具体的には、店舗にスロープを設置すること、障害者が電車やバスへ乗車する際に職員などによる手助けをする体制を整えること、飲食店に入ろうとする車いす利用者のために段差解消のための渡し板を設置するなどの措置をとることなどが考えられます。
そして、直接差別だけでなく、このような合理的配慮をしないことも新たに差別に当たるとされることになったのです。

 

さらに、障害者雇用促進法が改正され、やはり今年4月から施行されます。これにより障害者を雇用している事業主に対しても合理的な配慮をする義務が課されました。
しかもこれは先ほど述べた障害者差別解消法とは異なり努力義務ではありません。事業主は努力するだけでは足りず、法的な義務として合理的な配慮をしなければならなくなりました。
具体的にどのようなことが求められるのかは今後の実務の蓄積を待つことになりますが、たとえば、車いすを利用する方に合わせて机や作業台の高さを調整することや、知的障害をもつ方に合わせて口頭だけでなく分かりやすい文書・絵図を用いて説明することなどが想定されています(なお、障害者が希望する措置が事業主にとって過重な負担に該当する場合は、希望どおりの措置を講じる義務まではありません。ただし、その場合であっても、障害者と話し合い、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮に係る何らかの措置を講じる必要があるとされています。)。
近年、障害者の雇用は広がりを見せていますが、雇用している事業主としてはきめ細やかな対応をしなければ重大事故に繋がりかねません。そして、万一の事故の際、本年4月以降はこの合理的な配慮をしなかったことが事業主の損害賠償義務を肯定したり、賠償額が増額される要素となることが考えられます。
障害者を雇用している事業主の方は、障害者の方が安全な環境で働けているか、より注意を払わなければならない時代になったといえるでしょう。

(弁護士 南部弘樹)

 

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