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先日(平成28年2月26日)、相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権(民法910条)に関し、遺産の価額算定の基準時を価額の支払を請求した時とする最高裁判決が出されました*1。
一般的な相続ではあまり関係のない条文ですが、この機会にちょっと整理をしてみましょう。
まず、共同相続人は、「いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。」のが原則です(民法907条1項*2)。
また、遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければならず、相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効となります。
ただし、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産分割協議に参加していなかったという場合は、例外的に無効とはなりません。
この場合、当該相続人は、価額の支払を請求することができます(民法910条*3)。
では、この価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時はいつか、ということが問題となりますが、これについて価額の支払を請求した時としたのが上記最高裁判決です。
この理由について最高裁は、「認知された者が価額の支払を請求した時点までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに、その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが、当事者間の衡平の観点から相当であるといえるから」としています。
以上のとおり、最高裁は、遺産の価額算定の基準時を価額の支払を請求した時としましたので、いつの時点で価格の支払を請求するかによって、遺産の価額算定の基準時が変動することになります。
今後は、いつの時点で価格の支払を請求するのか、不動産や経済状況の推移等を見て、判断していく必要がありそうです。
(弁護士 國安耕太)
*1
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/705/085705_hanrei.pdf
*2 民法709条1項
「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。」
*3 民法910条
「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」