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さて、前回まで、賃貸借契約の解除についてみてきました。
解除の場合を含め、賃貸借契約が終了する場面で、問題となりやすいのは、賃借人の原状回復義務に関する点です。
原状回復義務とは、賃借物を借りてから生じた損傷を回復する(元に戻す)義務をいいます。
ただ、原状回復義務は、建物を借りた当時の状態まで完全に直さなければならないというわけではありません。
そもそも建物は、使用しているうちに古くなっていくものですから、賃借人が通常の使用によって汚損・破損したもの(通常損耗といいます。)については、原状回復義務を負わないとされています。
これは、仮に通常損耗についても賃借人の負担とするとの特約が定められていたとしても、特段の事情がない限り、同様と解されています。
なお、上記特約と似た特約として、クリーニング特約があります。
これは、汚損・破損に関わらず、専門業者による清掃費用を、賃借人の負担とする特約です。
通常損耗を賃借人の負担とするとの特約との差異が明確でないことも多く、その有効性に疑問が残るところです。
ただ、裁判所は、(1)特約を締結するものであることが明確に書面に記載されており、(2)その金額が清掃費用として高額とはいえないような場合には、有効と判断する傾向にあります。
クリーニング特約を付加する場合は、上記要件に注意するとともに、将来的に無効と判断されるリスクがあることを理解したうえで、行ってください。
(弁護士 國安耕太)