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さて、前回まで、賃貸借契約の期間が満了しても、正当事由がなければ、建物を返してもらえない、という話をしてきました。
しかし、建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」というのは、何も賃貸借契約の期間が満了した場合に限りません。
賃料の支払義務は賃貸借契約の中心的な義務ですから(民法601条*)、賃借人がその義務を怠っている(賃料不払い)場合は、賃貸人は賃貸借契約を解除することができるはずです。
ところが、判例は、賃貸借契約が当事者双方の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることを理由に、当事者の一方がその信頼関係を破壊するような背信的な行為をした場合にのみ、契約の解除を認めています(最判昭和39年7月28日民集18巻6号1220頁等)。
そして、賃料不払いの場合も、わずかの不払いでは信頼関係の破壊があったとはいえず、賃貸借契約の解除もできないとされています。
なお、建物賃貸借契約の場合、おおよそ3か月分の賃料が不払いであれば、信頼関係の破壊があるとされることが多いですが、これはあくまでも目安です。
事情によっては、これより短い期間でも信頼関係の破壊があったと認められることがありますし、反対に、これより長い期間でも信頼関係の破壊があったと認められないこともあります。
このように、やはり建物は「一度貸してしまうと、簡単には返してもらえない」のです。
(弁護士 國安耕太)
*民法601条
「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」