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労働者災害補償保険法の「業務上の事由」の範囲

先日(平成28年7月8日)、ある交通事故が、労働者災害補償保険法(以下「労災法」)上の「業務上の事由*1」による事故といえるか、争われた事案に関し、最高裁判決が出されました*2。

 

具体的な事案としては、

ある労働者が、業務を一時中断して事業場外で行われた歓送迎会に途中参加した後、業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻るついでに、参加者をその住居に送る途中で発生した交通事故により死亡した

というものです。

 

原審(東京高判平成26年9月10日)は、

歓送迎会は、親睦を深めることを目的として、会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり、運転行為は、事業主の支配下にある状態でされたものとは認められない*3

として、当該労働者の死亡は、労災法上の「業務上の事由」によるものとはいえないと判断しました。

 

これに対し、最高裁は、

当該労働者が、歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、歓送迎会の終了後に当該業務を再開するために事業場に戻ることを余儀なくされていたこと

歓送迎会が、会社の事業活動に密接に関連して行われたものといえるものであったこと

事業場と住居の位置関係に照らし、飲食店から事業場へ戻る経路から大きく逸脱するものではないこと

等の事情を総合すれば、歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料も供されたものであり、当該参加者を住居まで送ることについて明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても、なお本件会社の支配下にあったというべき

として、当該労働者の死亡が労災法上の「業務上の事由」にあたるとしました。

 

本判決は、事例判断ですが、労災法の適用範囲を考えるにあたって参考になる事例といえるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

労災法は、「業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる」(労災法2条の2)と定め、保険給付ができる場合を「業務上の事由」または「通勤」による災害に限定しています。

 

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/000/086000_hanrei.pdf

 

*3

判例上「労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要である」とされています。

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