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雑感

【雑感】出張講義に行ってきました!

先日(平成28年8月1日)、中央大学法学部(通信課)の講師として、名古屋へ出張講義に行ってきました。

入学したての方を対象に、朝9時半~夕方5時まで6時間、みっちりと(?)法律家としての基本的な考え方をお伝えしてきました。

 

さて、その中で、法解釈についての話をしました。

 

私たち法律家は、具体的事実を法律にあてはめ、結論を導きます。

一般的に法律は、一定の「要件」を満たすと、一定の「効果」が生じるという構造になっており、一定の法的効果が生じるための「要件」は、「条文」に規定されています。

 

しかし、必ずしも全ての「要件」が条文として記載されているわけではなく、また、条文の文言も一般的抽象的な文言とならざるを得ず、一義的かつ明確になっているわけではありません。

これは、すべての事象を個別具体的な条文として作成しようとすると、膨大な量となってしまい、現実的ではないからです。

 

そこで、一般的抽象的な「条文」の文言を解釈し、当該要件を明確にする必要がでてきます。

 

このように、法律を学ぶ上で、法解釈を避けて通ることはできませんし、実際に法律を扱ううえでも必要不可欠といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*株式会社全国賃貸住宅新聞社発行の「家主と地主」から取材を受けました(8月号の30ページに掲載されています。)。

 

 

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【雑感】素手で外野ノックを行い、怪我をさせた場合に傷害罪が成立するか。

先日(平成28年6月1日)、標記の件について、弁護士ドットコムの取材を受けました。

 

https://www.bengo4.com/c_1009/n_4714/

 

記事の中でも触れていますが、刑法は「罪を犯す意思(故意)がない行為は、罰しない」(刑法38条1項本文)と定めており、過失犯として特別に規定のある場合を除いて、故意がなければ犯罪にはなりません。

したがって、結論としては、監督には「故意」がないため、傷害罪(刑法204条)は成立しない可能性が高いです。

 

他方、民事上の責任については、どうでしょうか。

民法上、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法709条)とされており、不法行為に基づく損害賠償責任は、「故意」がある場合だけでなく、「過失」がある場合にも負うこととされています。

今回、傷害罪に該当しないとしても、不適切な指導であったことは、間違いありませんから、監督には、民法709条に基づいて、治療費等の損害を賠償するよう命じられる可能性があります。

 

また、少年野球の監督は、「法律行為でない事務の委託」を受けて、指導を行っていたと評価できますから、法的には、準委任契約(民法656条)にあたります。

そして、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」(民法644条)とされていますから、かかる注意義務違反として、民法415条(債務不履行責任)に基づいて、治療費等の損害を請求することも出来そうです。

 

少年野球の監督は、ボランティアでやっているのが一般的ですが、そうであるからといってその責任が軽減されるわけではないので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

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【雑感】プロ野球観戦と損害賠償(続報)

昨年(平成27年)3月26日、札幌地裁で、観客が、打者の打ったファウルボールで失明した事故に関し、球団や球場等に損害賠償責任を認める判決が出され、本ブログでも、紹介しました*1。

この判決については、球団および球場が札幌高裁に控訴していましたが、先日(平成28年5月20日)、控訴審の判決が出されました*2。

 

控訴審判決は、一審判決と異なり、工作物責任ないし営造物責任上の瑕疵を否定しました。

すなわち、一審判決は、「座席付近の観客席の前のフェンスの高さが、ファウルボールの飛来を遮断できるものではなかったこと」を主たる理由として、安全設備等の内容が通常有すべき安全性を欠いていており、工作物責任ないし営造物責任上の瑕疵があったと判断しました。

 

他方、控訴審判決は、本件ドームにおける内野フェンスの高さは、公益財団法人日本体育施設協会が作成した「屋外体育施設の建設指針」(平成24年改訂版)および他のプロ野球の球場におけるフェンス等と比較しても特に低かったわけではないことや他の安全対策を考慮すれば、「通常の観客を前提とした場合に、観客の安全性を確保するための相応の合理性を有しており、社会通念上プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。」と判断しています。

 

控訴審判決も指摘していますが*3、過度な安全設備を要求することは、プロ野球観戦の娯楽としての価値を著しく損なうものとなりかねませんから、妥当な判断ではないかと思います。

 

なお、上記のとおり、控訴審判決は工作物責任ないし営造物責任上の瑕疵を否定しましたが、野球観戦契約に信義則上付随する安全配慮義務違反を根拠に、球団に被害者に対する損害賠償金の支払を命じており、被害者の一定の救済を図っています。

 

野球観戦をする際には、打球の行方に十分注意してください。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

【雑感】プロ野球観戦と損害賠償

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/916/085916_hanrei.pdf

 

*3

「危険がほとんどないような徹底した安全設備を設けることを法律上要求することは、プロ野球観戦の娯楽としての本質的な要請に反する面があり、相当とはいえない」

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【雑感】国民の休日

ゴールデンウィークが終わりました。

みなさまは、いかがお過ごしでしたでしょうか。

海外に行かれた方、国内でゆっくりされた方、仕事だった方もいるかもしれません。

(当事務所も、だいたい誰かは出てきているような状況でしたが・・・。)

 

さて、そんなゴールデンウィークですが、現在は、5/3の憲法記念日、5/4のみどりの日、5/5のこどもの日という3つの祝日が定められています(「国民の祝日に関する法律第2条」)。

 

具体的には、つぎのとおり規定されています。

憲法記念日 五月三日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。

みどりの日* 五月四日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。

こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。

 

憲法記念日とみどりの日の意味合いは、イメージのとおりですが、こどもの日に、「母に感謝する」との意味があるのは少し意外かもしれません。

 

また、国民の祝日に関する法律には、『「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。』(3条2項)との規定があります。

この規定によって、たとえば5月3日が日曜日だったような場合、5月6日の水曜日が振替休日となります(昨年のカレンダーを確認してみてください。)。

 

さらに、『その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。』(3条3項)との規定もあります。

(現状、この規定が適用される可能性があるのは敬老の日と秋分の日がある9月だけです。)

 

このように、身近なところで法律が運用されています。

(弁護士 國安耕太)

 

*

2006年までは、みどりの日は4/29でした(現在、同日は昭和の日になっています。)

昭和の日 四月二十九日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。

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【雑感】採用活動を行っています。

現在、当事務所では、新人弁護士の採用活動を行っています。

かつては、弁護士の数が少なく、いわゆる就職活動というものは存在しなかったようですが、私が修習生になる頃から、本格的に就職活動が行われるようになってきました。

また、小泉改革で司法試験合格者が増大したことにより、就職したいのに就職できない弁護士も出てきています。

そのせいか、当事務所は、まだ弁護士3名の小さな事務所ですが、それでも多くの応募をいただいております。

 

ただ、その中で、非常に気になることもでてきています。

通常の就職(転職)活動にも応用できると思いますので、備忘録的に失敗例を書き留めておきます。

 

①募集要項を読んでいない。

当事務所は、意図的に郵送でのみエントリーを受け付けています。

ところが、事務所のEメールアドレスに履歴書を送り付けてくる方がいます。

また、要求している資料をきちんと添付してこない方もいます。

形式的要件を満たしていないのは、論外でしょう。

 

②志望動機が書かれていない。

確かに、履歴書の書式は自由としています。

しかし、履歴書は、応募者の人となりをみるものです。

単に経歴のみを書いているだけでは、話になりません。

 

③志望動機がコピペ。

本当に考えて書かれたものかどうかは、読めば一目で分かります。

当事務所は、中小企業法務(リスク管理・労務管理)が専門ですが、単に、「企業法務に興味があるので!」ということが書かれていることが非常に多いです。

しかし、採用側が知りたいのは、応募者のポテンシャルです。

なぜ企業法務がやりたいのか、なぜほかの業務ではないのか、その背景や理由を深掘りしておく必要があります。

 

この他にもいろいろありますが、これから就職活動をされる方は、少し考えてみてください。

(弁護士 國安耕太)

 

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謹賀新年 ヤフーニュースに取材記事が掲載されました。

みなさま、あけましておめでとうございます。

 

さて、標記の件ですが、昨年末に受けた取材に関する記事が、ヤフーニュースに掲載されました。

1月2日という非常に微妙な時期の掲載ですが、ぜひご一読ください。

*http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160102-00004124-bengocom-soci

 

当事務所は、より良質なリーガルサービスをご提供できるよう、事務所体制の整備を進めて参ります。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

(弁護士 國安耕太)

*セミナーを開催いたします。

第4回企業法務セミナー『契約書を学び、攻めの経営を!』

開催日時:2016年1月14日(木)18:30 ~ 21:00

場所:知恵の場オフィス  セミナールーム

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-7

イマス浜田ビル5階(新宿駅から徒歩6分)

地図⇒http://exwill.jp/chienoba/access/

参加資格:契約書の基本を学びたい経営者、総務・法務担当者

定員:20名

会費:5000円(懇親会費別)

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【雑感】2つの最高裁判決

先日(平成27年12月16日)、最高裁で、2つの判決が出されました。

1つは、女性にのみ再婚禁止期間を設けている民法733条1項に関し、100日を超える部分が、憲法14条1項および24条2項に違反するというものです*1。

もう1つは、婚姻の際は、夫または妻の氏を称しなければならないとする民法750条が、憲法13条、14条1項および24条に違反しないとするものです*2。

判決の内容の詳細につきましては、様々な方が評釈等をしていますので、割愛しますが、いずれの判決も現行規定のままでなければならない、という判断をしたものではなく、どのような規定にするのかは立法府である国会の判断に委ねています。

 

たとえば、2つ目の判決では、「夫婦同氏制を規制と捉えた上、これよりも規制の程度の小さい氏に係る制度(例えば、夫婦別氏を希望する者にこれを可能とするいわゆる選択的夫婦別氏制)を採る余地がある点についての指摘をする部分があるところ、上記(1)の判断は、そのような制度に合理性がないと断ずるものではない。上記のとおり、夫婦同氏制の採用については、嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」とされています。

 

そのため、今後も、これらの点については、議論が続けられることになるのだろうと思います。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/547/085547_hanrei.pdf

 

*2

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf

 

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【雑感】財務省税関研修所で講師を務めてきました。

先々週から先週にかけて(平成27年12月2日~11日)、昨年(平成26年度)に引き続き2年連続で、税関研修所での講師業務(知的財産法)を担当させていただきました。

 

国の仕事なので、毎年入札になるのですが、入札で受注が決定してから実施までの期間が3週間程度しかなく、直前は急ピッチでの準備に追われます。

また、他の弁護士、弁理士にも協力を仰ぎ、1人あたりの負担を軽減させましたが、それでも1日6時間計3日間の18時間を担当したため、実施期間中を含めて、かなり通常業務にも影響がでました。

 

しかし、人に教えるためには、それ以上に自分が理解し、勉強しておかなければなりません。

準備のために新しい裁判例・判例を読み直したり、レジュメを作成したり、どのような話をするのかを考えたりすることで、自分自身非常に勉強になりました。

また、実際に研修生の前に立ち、話をしたり、会話をしたりしていると、毎回新たな発見があり、非常に楽しく過ごさせていただきました。

なかなかできない経験ですから、チャンスがあれば、また来年も担当してみようと思います。

 

なお、当職は、民法、商標法および著作権法を担当しましたが、商標法の講義では、「鳥貴族」と「鳥二郎」は類似しているといえるのか等、最近のトピックスについても触れました。

気になる方は、チェックしてみてください(異議申立の審判番号は2014-900320です。)*。

(弁護士 國安耕太)

 

*

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/shinpan/spdb/SPDB_GM301_Detailed.action

 

*セミナーを開催いたします。

第4回企業法務セミナー『契約書を学び、攻めの経営を!』

開催日時:2016年1月14日(木)18:30 ~ 21:00

場所:知恵の場オフィス  セミナールーム

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-7

イマス浜田ビル5階(新宿駅から徒歩6分)

地図⇒http://exwill.jp/chienoba/access/

参加資格:契約書の基本を学びたい経営者、総務・法務担当者

定員:20名

会費:5000円(懇親会費別)

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【雑感】プロ野球と賭博

昨日(2015年10月5日)、現役のプロ野球選手が、野球賭博に関与していたとの報道がありました*1。

この報道が事実であれば、非常に残念です。

 

さて、この報道によれば、当該選手に関し、刑法の賭博罪(185条*2)と野球協約(177条1項)違反が問題となっているようです。

 

まず、刑法の賭博罪ですが、結果が偶然の事情にかかっていることについて、財物を賭ける行為(賭博行為)が禁止されています。

当事者の能力が結果に及ぼすような場合でも賭博行為に該当しますから、野球やサッカー等のスポーツや、将棋や囲碁のようなゲームに関し、財物を賭けた場合も賭博行為に該当します。

また、現実に財物を提供していなくても、財物を賭ける行為があれば犯罪として成立します。

そうすると、当該選手は「プロ野球と大リーグの試合でそれぞれ10試合、賭けをした」「最終的に百数十万円の損になっていた」という報道が事実であれば、賭博罪が成立することになりそうです。

 

つぎに、野球協約違反ですが、野球協約177条1項は、様々な不正行為を禁止しており、これに違反した者は永久失格処分となり、組織内のいかなる職務につくことも禁止されます*3。

ここでの不正行為は、原則として、自己が所属する球団に関するものに限定されています。

たとえば、1号は、「所属球団のチームの試合において、故意に敗れ、又は敗れることを試み、あるいは勝つための最善の努力を怠る等の敗退行為をすること。」を禁止しています。

同様に、賭博行為についても、「所属球団が直接関与する試合について賭をすること。」に限定されています(6号)。

本件では、当該選手が出場していた試合は賭博の対象となっていなかったようですが、所属する球団の試合についても賭博の対象となっていたようですので、野球協約177条1項6号違反で、永久失格処分となる可能性は十分あるといえます。

 

なお、2010年には、大相撲でも賭博が発覚し、大関らが解雇となる等大きな騒ぎとなりました(ただし、一部の力士に関しては、後に裁判所で解雇無効との判断がされていますので、解雇処分については慎重に判断する必要があります。)。

 

本件についても、日本野球機構がどのような判断をするのか、永久失格処分(解雇)となった場合に、当該解雇が有効か、今後の推移が気になります。

(弁護士 國安耕太)

*1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151006-00000021-spnannex-base

 

*2 刑法185条

「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」

 

*3 野球協約177条1項柱書き

「選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の不正行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を永久失格処分とし、以後、この組織内のいかなる職務につくことも禁止される。」

 

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【雑感】プロ野球観戦と損害賠償

プロ野球が開幕しました。

みなさんの応援しているチームの調子はどうでしょうか。

私の応援しているホークスは、いまいちのようで、少し残念です。

 

さて、そんなプロ野球ですが、先日、観客が、打者の打ったファウルボールで失明した事故に関し、球団や球場等に損害賠償責任を認める判決が出されました(札幌地裁平成27年3月26日判決)。

*http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/019/085019_hanrei.pdf

 

この判決は、

①座席付近の観客席の前のフェンスの高さは、ファウルボールの飛来を遮断できるものではなかったこと

②これを補完する安全対策においても、打撃から約2秒のごく僅かな時間のうちに高速度の打球が飛来して自らに衝突する可能性があり、投手による投球動作から打者による打撃の後、ボールの行方が判断できるまでの間はボールから目を離してはならないことまで周知されていたものではないこと

から、

③設置されていた安全設備は、ファウルボールへの注意を喚起する安全対策を踏まえても、観客の生命・身体に生じ得る危険を防止するに足りるものではなかったというべき(したがって、安全設備等の内容が通常有すべき安全性を欠いており、工作物責任ないし営造物責任上の瑕疵があった)

として、球団や球場等に損害賠償責任を認めています。

 

本判決は、被害者の救済という観点からは、理解できる部分もあります。

しかし、本判決のように、結局のところ「ファウルボールの飛来を遮断できるか」を基準とされてしまうと、球団等の側として、損害賠償責任を回避するために、球場全体をネットで覆うといった議論になりかねません。

その点で、もう少し配慮があってもよかったのではないかな、と思います。

 

いずれにしても、報道等によれば、本件は控訴されるようですので、高裁でさらなる検討がなされるものと思います。

 

以上のとおり、プロ野球観戦で負傷した場合、球団等が損害賠償責任を負うという可能性があります。

ただ、あくまでも損害の賠償であり、怪我が完治するとは限りません。

球場で観戦する際には、打球の行方に十分注意してください。

(弁護士 國安耕太)

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[雑感]ダルビッシュ投手と300日問題

先日(平成27年2月22日)、元レスリング世界王者山本聖子さんが妊娠しており、父親はメジャーリーガーであるダルビッシュ投手であるとの報道がありました。

その中で、ある報道では「300日問題」は大丈夫か?との懸念が示されていました。

 

「300日問題」とは、母が、元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合、その子は民法上元夫の子と推定されるため(民法772条2項)、子の血縁上の父と元夫とが異なるときであっても、原則として、元夫を父とする出生の届出しか受理されず、戸籍上も元夫の子として扱われることになってしまうというものです。

(なぜ、このような制度になっているかは、法務省のホームページに詳しく記載されています。*1)

 

詳細な事実は報道されていませんが、山本聖子さんが離婚したのが平成26年9月で、現在妊娠6か月であるとすると、離婚後300日以内に出産する、という事態も確かに考えられるとことです。

 

このように、民法772条2項により、離婚後300日以内に出産した場合は、原則として、元夫の子として取り扱われることになります。

そして、この場合に、元夫との親子関係を争う方法は、①嫡出否認、②親子関係不存在、③強制認知のいずれかの方法をとるしかありません。

 

ただし、②親子関係不存在および③強制認知の手続を取るためには、嫡出推定が及ばない事情、すなわち「妻がその子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」であることが要件とされています(最判平成26年7月17日、平成25(受)233参照*2)。

また、上記最高裁判決では、「夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が、現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできない」と判示されていますから、最高裁は、②親子関係不存在および③強制認知の手続をとることができる場合を、相当限定して考えているといえます。

 

以上を踏まえれば、元妻が離婚後300日以内に出産した場合に、生まれた子どもと元夫との親子関係を争うのであれば、速やかに①嫡出否認の手続をとる、ということになるでしょう。

ダルビッシュ投手と山本聖子さんの場合も、注意が必要かもしれません。

(弁護士 國安耕太)

 

*1 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji175.html#q1-1

*2 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/344/084344_hanrei.pdf

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