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2018年3月の投稿

相続の基礎7(遺言2)

さて、先週、特別な方式による場合を除き、遺言は、①自筆証書、②公正証書または③秘密証書によってしなければならないとされており(民法967条)、形式を満たしていない遺言は無効となることをお伝えしました。

 

では、具体的に、どのようなような形式を満たさなければならないのでしょうか。

 

まず、①自筆証書遺言ですが、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」(民法968条1項)とされています。

「自書」とされていますので、すべての部分を自書する必要があり、パソコンによる印字や代筆が含まれていると、たとえ一部であっても無効となります*1。

 

つぎに、②公正証書遺言ですが、公証人が関与して作成されます(民法969条*2)。

公証人が関与して作成されるため、形式を満たしていないということは通常あり得ず、その効力が問題となることが少なく、また、その原本は公証役場で保管されるため、偽造や紛失等のおそれがないというメリットがあります。

 

最後に、③秘密証書遺言ですが、公証人または証人の前に封印した遺言書を提出することで、遺言の存在は明らかにしながらも内容を秘密にすることができる方式の遺言です(民法970条*3)。

 

②公正証書遺言以外の、①自筆証書遺言および③秘密証書遺言については、法律家が関与せずに作成することができるので、費用があまり掛からないというメリットがあります。

 

他方、法律家が関与しないため、方式を満たしていないと、遺言そのものが無効となってしまうというデメリットがあります。

 

そのため、遺言書を作成する際は、②公正証書遺言を活用することをお勧めします。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

ただし、現在、国会で民法の相続分野の改正が審議されており、財産目録については自書でなくても有効となる可能性があります。

また、自筆証書遺言の保管制度も創設される予定です。

 

*2 民法969条

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人2人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を附記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を附記して、これに署名し、印をおすこと。

 

*3 民法970条

秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

三 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

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相続の基礎6(遺言1)

相続の基礎、最後は、遺言についてです。

 

遺言とは、遺言者が、自身の死後の法律関係を定めるためにする意思表示をいいます。

大雑把にいえば、自分の死後に自分の財産を誰に対し、どのように分配するかなどを明らかにするものです。

 

遺言によって定めることができる事項(遺言事項)は、法律(民法等)に定められており、法律で定められていない事項は、法的な効力を生じません。

 

遺言事項は、おおむね

(1)相続に関する事項(相続分の指定(902条)や遺産分割方法の指定(民法908条)など)

(2)相続以外の財産に関する事項(遺贈(民法964条)や生命保険金の受取人の変更(保険法44条)など)

(3)身分関係に関する事項(認知(民法781条2項)や未成年後見人の指定(民法839条1項)など)

(4)遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定(民法1006条1項))

に分類することができます。

 

また、原則として、遺言は、書面でしなければならず(民法968条1項、969条、970条1項)、口頭でした遺言は無効となります(民法960条)。

また、特別な方式による場合を除き、遺言は、①自筆証書、②公正証書または③秘密証書によってしなければならないとされています(民法967条)。

 

なお、形式を満たしていない遺言は無効となるので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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相続の基礎5

先週は、遺留分について、簡単にご紹介しましたが、このほか、特別受益や寄与分が問題となることも多いです。

 

特別受益とは、相続人のうちの1人が、被相続人から、遺贈や生前贈与などで特別の利益を受けた場合に、当該相続人の当該利益分について、遺産取得分が減額されるという制度です(民法903条*1)。

 

これまでお伝えしてきたとおり、遺言書等がない場合、原則として、法定相続人が法定相続分に応じて、被相続人の遺産を相続します。

しかし、相続人の中に、被相続人から高額な生前贈与を受けるなどによって特別に利益を得ていた人がいる場合にまで単純に法定相続分に従って相続することになると、相続人間で不公平が生じてしまいます。

 

そこで、民法では、このような特別受益がある相続人の遺産取得分を減らすことで、各相続人間の公平をはかっています。

 

ただ、どのような場合であれば、特別受益にあたるといえるのか必ずしも一概にはいえません。

 

つぎに、寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の増加や維持に特別に貢献した人がいる場合に、当該相続人の遺産取得分を増額するという制度です(民法904条の2*2)。

 

寄与分も、各相続人間の公平をはかる制度ですが、特別受益同様、寄与分にあたるといえるのか必ずしも一概にはいえません。

 

このように相続に際しては、遺留分、特別受益や寄与分といった法的問題が生じる可能性があるので、きちんと専門家に相談することが重要といえます。

(弁護士 國安耕太)

 

*1民法903条

「1 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるとき は、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表 示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」

 

*2民法904条の2

「1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。」

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相続の基礎4

先週、遺言書等がなく、遺産分割協議がまとまらない場合、(1)不動産は、不可分であり、相続持分に応じて分割して相続するということが基本的に出来ず、相続割合に従って共有となること、(2)共有は、非常に不安定な状態であることをお伝えしました。

 

ただ、上記でも述べていますが、共有となってしまうのは、あくまでも、遺言書等がなく、遺産分割協議がまとまらない場合です(もちろん、遺産分割協議の結果、あえて共有にするということがないわけではありません。)。

 

遺言書等を作成していれば、相続割合に縛られず、自分の財産を自分の思うように相続させることができます。

しかし、遺言書等があれば、何でもできるというものではありません。

 

それは、相続人には、遺留分、という権利があるからです。

 

遺留分とは、一定の相続人に留保されていて、遺言による自由な処分に対して制限が加えられている持分的利益をいいます。

要するに、遺言書等で、自分の相続分がゼロにされていたとしても、一定の財産はもらう権利があるということです(民法1028条)。

 

*民法1028条

「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1

二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1」

 

このように相続対策を行う場合は、相続税だけでなく、この遺留分についても十分検討しておく必要があります。

(弁護士 國安耕太)

 

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