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2016年6月の投稿

会社に損害を加えた従業員に対し、損害賠償請求できるか

従業員が、会社に損害を加えた場合、会社は、当該従業員に対し、損害賠償請求できるのでしょうか。

たとえば、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合に、当該従業員に対し、その損害全額の賠償を求めることはできるのか、相談を受けることがあります。

 

従業員が会社に対し、損害を加えた場合、その損害を賠償する責任が生じます。

しかし、会社は、従業員の活動によって利益を得ていますから、従業員の活動によって被った損害についても、一定程度負担すべき、とするのが判例・通説の考え方です。

具体的には、最判昭和51年7月8日(民集第30巻7号689頁)は、

「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」

と判示しています。

 

したがって、従業員が、社用車を運転中、物損事故を起こした場合であっても、会社が、当該従業員に対して請求できる損害賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に制限されます。

 

なお、上記はあくまでも、会社と従業員間の内部分担の問題です。

会社は、物損事故の被害者に対して、直接責任を負います(民法715条1項、使用者責任)。

従業員が責任を負うことを理由に、第三者に対する賠償義務を免れることはできませんので注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

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自筆証書遺言の押印

先日(平成28年6月3日)、自筆証書遺言に関する、少し風変わりな最高裁判決が出されました*1。

 

自筆証書遺言について、民法は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」としています(968条1項)。

 

本件では、ここでいう押印は、通常用いられる印鑑を押すことのみならず、「花押*2」を書くことでもよいのか、ということが争われました。

 

原審の福岡高裁那覇支部は、「花押の一般的な役割に、a家及びAによる花押の使用状況や本件遺言書におけるAの花押の形状等を合わせ考えると、Aによる花押をもって押印として足りると解したとしても、本件遺言書におけるAの真意の確保に欠けるとはいえない。」と判示して、「花押」も民法968条1項の「押印」にあたると判断しました。

 

これに対し、最高裁は、「民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにある」との従来の最高裁判決を踏襲したうえで、「我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」として、「花押」は民法968条1項の「押印」にあたらないと判断しました。

 

なかなか「花押」を用いている方はいらっしゃらないと思いますが、興味深い事例ですので、ご紹介いたしました。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/930/085930_hanrei.pdf

 

*2

花押(かおう、華押)は、署名の代わりに使用される記号・符号をいう(ウィキペディアより)。

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盲導犬同伴の障害者の入店拒否に法的な罰則はあるか

当事務所の南部弘樹弁護士が、弁護士ドットコムの取材を受けました*1。

 

公益財団法人アイメイト協会が、盲導犬を連れている視覚障害者を対象に、今年3月に行った調査では、約9割が外出した際に「嫌な思い」をした経験があると回答したそうです。

 

身体障害者補助犬法では、盲導犬や聴導犬、介助犬(手や足が不自由になった人の日常生活を助けるよう訓練された犬)を身体障害者が同伴している場合、飲食店などの不特定かつ多数の人が利用する施設を管理する人に対して、原則として、『同伴を拒んではならない』としています(9条)*2。

 

しかし、この規定に違反したとしても、罰則はありませんので、実際には、同伴を拒まれるケースも多々あるようです。

 

ただ、日本は世界でもっとも速いスピードで高齢化が進んでおり、高齢化社会は障害者が急増する社会でもあります。

将来的には、障害者への配慮が、実はその店の収益に寄与する可能性は十分あります。

 

今後のビジネスにおいては、より一層バリアフリー、ユニバーサルデザイン*3という発想が求められることになるでしょう。

(弁護士 國安耕太)

 

*1

https://www.bengo4.com/other/1146/n_4721/

 

*2 身体障害者補助犬法9条

前二条に定めるもののほか、不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。

 

*3

障害の有無等にかかわらず、すべての人にとって使いやすいようにはじめから意図してつくられた製品・情報・環境のデザインのこと

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【雑感】素手で外野ノックを行い、怪我をさせた場合に傷害罪が成立するか。

先日(平成28年6月1日)、標記の件について、弁護士ドットコムの取材を受けました。

 

https://www.bengo4.com/c_1009/n_4714/

 

記事の中でも触れていますが、刑法は「罪を犯す意思(故意)がない行為は、罰しない」(刑法38条1項本文)と定めており、過失犯として特別に規定のある場合を除いて、故意がなければ犯罪にはなりません。

したがって、結論としては、監督には「故意」がないため、傷害罪(刑法204条)は成立しない可能性が高いです。

 

他方、民事上の責任については、どうでしょうか。

民法上、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法709条)とされており、不法行為に基づく損害賠償責任は、「故意」がある場合だけでなく、「過失」がある場合にも負うこととされています。

今回、傷害罪に該当しないとしても、不適切な指導であったことは、間違いありませんから、監督には、民法709条に基づいて、治療費等の損害を賠償するよう命じられる可能性があります。

 

また、少年野球の監督は、「法律行為でない事務の委託」を受けて、指導を行っていたと評価できますから、法的には、準委任契約(民法656条)にあたります。

そして、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」(民法644条)とされていますから、かかる注意義務違反として、民法415条(債務不履行責任)に基づいて、治療費等の損害を請求することも出来そうです。

 

少年野球の監督は、ボランティアでやっているのが一般的ですが、そうであるからといってその責任が軽減されるわけではないので、注意が必要です。

(弁護士 國安耕太)

 

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