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過労死と脳・心臓疾患の認定基準

先日(2015年3月4日)、2011年に26歳で亡くなった堺市の市立中学校の教諭が、公務災害(労災)による死亡と認定されたとの報道がありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150304-00000024-asahi-soci

 

報道では、『同僚教員の証言などを元に推計した前田さんの死亡直前3カ月の校内での残業時間は月61~71時間だった。国の過労死認定基準(2カ月以上にわたり月平均80時間以上)を下回る数値だったが、残された授業や部活の資料などから、「(一人暮らしの)自宅でも相当量の残業をこなしていた」と判断し』過労死と認定されたとされています。

 

では、「国の過労死認定基準」とは、どのようなものなのでしょうか。

 

過労死の労災認定について、国(厚生労働省)は、「脳・心臓疾患の認定基準」を公表し、これに基づいて判断しています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

 

具体的には、

次の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、労基則別表第1の2第9号に該当する疾病として取り扱う。

(1)発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事)。

(2)発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務)。

(3)発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)。

とされています。

 

そして(3)長期間の過重業務については、

業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。

としたうえで、特に労働時間について、

①発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

②発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること。

としています。

 

そうすると、報道では、『死亡直前3カ月の校内での残業時間は月61~71時間」で、「国の過労死認定基準(2カ月以上にわたり月平均80時間以上)を下回る数値だったが、残された授業や部活の資料などから、「(一人暮らしの)自宅でも相当量の残業をこなしていた」』とされ、あたかも月61~71時間の残業に加え、相当量の残業をしていたことを根拠に特別に労災認定されたかのように読めますが、実際には、むしろ忠実に認定基準に沿って判断されたということが分かります。

 

以上のとおり、脳・心臓疾患の労災認定は、あくまでも総合判断です。

1か月あたり45時間を超える時間外労働が認められない場合であっても、異常な出来事や短期間の過重業務があれば、労災認定される可能性もあります。

 

1か月あたりの時間外労働が45時間以上とならないよう注意することは、もちろん重要ですが、これだけにとらわれず、職場環境の改善に努めるようにしてください。

(弁護士 國安耕太)

 

 

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